大女優殺人事件|原作を無視すれば面白い

「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」

どうも、夏蜜柑です。
アガサ・クリスティ二夜連続ドラマスペシャルの第二夜、「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」。

第一夜より面白かったです。犯人の動機が明らかになる謎解きのシーンは緊迫感があって引きこまれたし、伏線の回収も丁寧で見応えがありました。原作を気にしなければ、そこそこ楽しめたと思います。でもやっぱり2時間は物足りないね。

第一夜のネタバレ感想はこちら
パディントン発4時50分~寝台特急殺人事件~ パディントン発4時50分|残念な主人公と謎解き

以下、ネタバレを含みますのでご注意ください。

番組情報

  • 放送局:テレビ朝日系
  • 放送時間:2018年3月25日(日)夜9:00~
  • 原作:アガサ・クリスティ『鏡は横にひび割れて』
  • 脚本:長坂秀佳(「特捜最前線2013~七頭の警察犬」「そして誰もいなくなった」)
  • 監督:和泉聖治(「相棒」「そして誰もいなくなった」)
  • 音楽:吉川清之(「臨場」「刑事7人」「警視庁捜査一課9係」)

あらすじ

  • 大物女優・綵まど香(黒木瞳)が購入した“神の館”でパーティーが開かれ、その屋敷の以前の持ち主だった神ノ小路凛(平岩紙)が毒殺される。警視庁捜査一課の警部・相国寺竜也(沢村一樹)は計画殺人と位置づけ、関係者から聞き込みを行う。
  • パーティー会場で撮影された写真から、まど香が階段の踊り場を見て“驚いたような表情”をしていたことがわかり、気になった相国寺はまど香に話を聞きに行く。まど香は「考え事をしていた」と言ってはぐらかす。
  • まど香は、事件の前日から3通の脅迫状を受け取っていたことを相国寺に明かす。まもなく、海堂の秘書・朱田〆子(西尾まり)と、院殿寿郎(長谷川朝晴)が殺害される。〆子は関係者に「おまえが薬を入れるところを見た」という電話を手当たり次第かけており、院殿は殺害直前に500万円を受け取っていたことがわかる。
  • 相国寺は、3通の脅迫状がすべて事件後の新聞の切り抜きで作られていたことや、殺された凜が以前ジキ熱に感染したことをまど香に話していたことから、一連の事件の犯人はまど香だと推測。
  • 凜はジキ熱に感染した状態でまど香に会い、まど香もジキ熱に感染、ようやく身籠もった子供を死産させてしまったのだった。凜のブログで彼女を怪しんだまど香は、事実を確かめるため“神の館”を購入して彼女をパーティーに招き、話を聞き出していた。
  • 写真に写っていたまど香の“驚いたような表情”は、凜の口からジキ熱にかかっていたことを知らされた直後のものだった。まど香は毒物を入れたダイキリを凜に飲ませて殺害した。
  • 海堂粲(古谷一行)は妻の犯行に気づき、まど香を愛するが故に毒入りのココアを飲ませて殺そうとする。夫の思いに気づいたまど香は、結婚式で着たウェディングドレスを身に纏い、自ら死を選ぶ。

登場人物(キャスト)

  • 相国寺竜也……沢村一樹
  • 朝風沙霧……財前直見
  • 多々良伴平……荒川良々
  • 谷口小雨……川口春奈
  • 松田松虫……磯村勇斗
  • 朱田〆子……西尾まり
  • 院殿寿郎……長谷川朝晴
  • 軽鴨兵庫……八嶋智人
  • 神ノ小路公記……中原丈雄
  • 岬笛子……水沢エレナ
  • 神ノ小路凛……平岩紙
  • 段原平臣……津川雅彦
  • 海堂粲……古谷一行
  • 綵まど香……黒木瞳

感想

原作はアガサ・クリスティの推理小説で、マープルシリーズの長編第8作目「鏡は横にひび割れて」です。

今回は、原作のタイトルのままでよかったのになぁ……。
「大女優殺人事件」って、思いっきりネタバレしてるじゃん(実際わたしはこのタイトルで犯人のアタリをつけました)

でも、今夜はまぁまぁ楽しめました。原作ファンには不評のようですが……それもわかります。ミス・マープルの影も形もないもんね。

昨年の「そして誰もいなくなった」にも登場した沢村一樹さん演じる相国寺のキャラが立っているのはドラマとしては成功なんだけど、アガサ・クリスティのドラマではないね。

わたしはアガサ読んだことないし、ミス・マープルのドラマも見てないので、普通に推理ドラマとして楽しめたけど。

原作タイトルの「鏡は横にひび割れて」は、ドラマの中でも説明がありましたが、イギリスの詩人、アルフレッド・テニスンの有名な詩「シャーロット姫」に由来しています。

織物はとび散り、ひろがれり、
鏡は横にひび割れぬ
「ああ、呪いがわが身に」と
シャーロット姫は叫べり

黒木瞳さん演じるまど香が浮かべた一瞬の表情を、川口春奈さん演じる谷口小雨が「鏡が横にひび割れたのを見たような」と形容するんですね。

彼女はかつてまど香の養子だったので、まど香からテニスンの詩を読み聞かせられていたんです。

まど香が真実を知った瞬間の凍りついた表情を、こんなシャレた詩の一節を引用して例えるなんてさすが、と感心してしまった。こういうところはアガサ・クリスティっぽいのかなぁ、と勝手に想像したりしました。

この“鏡が横にひび割れたのを見たような”女優の表情は、物語の重要な鍵となっているのですが、原作はドラマと違って衝動的な殺人という設定になっているそうです。

その場で初めて真実を知り、その瞬間、凍りついた表情を浮かべた……ということですかね。なるほど。

ドラマでは計画的殺人に変えられているので、女優は犯行当日以前にうすうす真実に気づいています。だから、ここで凍りついた表情を浮かべるっていうのは、少し矛盾してるかも。

3人の養子をもらっておきながら、自分が妊娠した途端に他人に譲っちゃう女優もひどいけど、感染症にかかっているのに好きな女優のコンサートに出掛けて感染させるファンもひどいですよね……無自覚だったんだろうけど。

この熱心なファン・凜役を平岩紙さんが演じておられて。悪気がなくて鈍感そうなところがすごくうまいなと。最近「命売ります」でも平岩さんを見たばかりで、好きになっちゃいました。

この感染症、ドラマでは「ジキ熱」という架空の病気になっていましたが、原作では「風疹」なのだそうです。風疹ならすぐにピンと来るんだけど、「ジキ熱?何それ?」ってなりました。

風疹じゃダメだったのかしら。地上波のドラマでありがちな誰かへの忖度?
思わず勘ぐってしまいますわ。

まど香はジキ熱に感染したせいで子供を死産し、ショックで自殺を図るほどでした。その後の人生が大きく狂い、女優として復帰するまでに長い時間がかかりました。

凜が感染症を軽くとらえ安易な行動をとったために、まど香の人生を狂わせてしまったことは、本人に悪意がないにしても重く受け止めなくちゃいけない。もちろん殺されていいという意味ではなく。

凜やまど香の立場になる可能性は、誰にでもあるから。

ツッコミどころはたくさんありましたが、二夜とも豪華で楽しい夜ではありました。
なんかBBCが作ったミス・マープルのドラマが見たくなっちゃったよー。

できれば、次回はポアロやマープルが出てくるシリーズものじゃなくて、「そして誰もいなくなった」のような単発作品にしてほしいです。

それだったら、沢村さん演じる相国寺が出てきても抵抗がないような気がする。


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