「宮沢賢治の食卓」に登場した“星めぐりの歌”とは?

連続ドラマW 宮沢賢治の食卓

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ドラマ「宮沢賢治の食卓」第1話が放送されました。
第1話では、花巻に戻ってきた賢治が、やりたいことを見つけられずに苦悩する日々が描かれました。

今回は、ドラマ第1話の中にさりげなく盛り込まれていた賢治の作った童話や歌についてご紹介します。賢治の作品を知れば、ドラマの世界もより深まるかも?

第1話「幸福のコロッケ」に登場した作品は?

星めぐりの歌

賢治が花巻に帰ってきた夜、父・政次郎と言い争いになります。
やりたいことが見つからない賢治と、現実を見て質屋を継いでほしいと願う父。
賢治は父とわかり合えないことに落ち込み、井戸端で月を見上げて歌を口ずさみます。

それが「星めぐりの歌」です。
賢治が作詞・作曲をし、「双子の星」に歌詞が登場します。
現存する「双子の星」の原稿は、大正10年頃のものと考えられているため、ちょうどドラマの設定年代とぴったり合いますね。

とても有名な曲なので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
高倉健さんの最後の主演映画「あなたへ」で田中裕子さんが歌ったり、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」でも挿入曲として使われました。

ドラマでは、鈴木亮平さん演じる賢治が「あかいめだまのさそり~」の一節だけを歌っていましたが、もちろん続きがあります。

あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の  つばさ
あをいめだまの 小いぬ、
ひかりのへびの とぐろ。

オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす、
アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。

大ぐまのあしを きたに
五つのばした  ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて。

ちなみに「あかいめだま」とは、さそり座の赤い星、アンタレスのことを指しています。アンタレスはさそりの心臓と言われているのですが、賢治は「めだま」に見立てたようです。

「双子の星」は、そのタイトル通り、双子の星が主人公です。
なので、「星めぐりの歌」は誰かが星をめぐる歌ではなく、星たちが(自転によって)回るという解釈なのかもしれません。

歌詞は、現在の星座の解釈とは異なる部分もあるようですが、おそらく賢治はそういうことにとらわれずに、独自のイメージを膨らませて書いたように思われます。

注文の多い料理店

ドラマの中で賢治が吉盛の息子に語って聞かせていた物語。山猫軒が登場するお話といえば、「注文の多い料理店」です。こちらも大正10年に制作されたと考えられています。

あらすじ森に狩猟にやってきた2人の青年紳士が、山の中で道に迷い、一軒のレストラン「山猫軒」に入ります。

最初は「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」という注意書きがあり、そこから2人が扉を開けるごとに、「帽子と外套と靴をおとりください」「壷の中のクリームを塗ってください」など、さまざまな注意書きが現れます。2人はおかしな注意書きを好意的に解釈し、その通りにします。

そして最後に現れた注意書きを見て、2人は「どうもおかしい」と気づきます。そしてようやく店の意図を察します。その店は、西洋料理を食べさせる店ではなく、来た人を西洋料理にして食べる店でした。

2人はなんとか逃げ出しますが、その時の恐怖で紙くずのようにくしゃくしゃになった顔は、東京にもどってもなおりませんでした。

作品は、青空文庫↓で読めます。

参考 注文の多い料理店|宮沢賢治青空文庫

原作の魚乃目三太さんの漫画「宮沢賢治の食卓」では、第一話で賢治がこの作品を思いつく場面が登場します。

賢治が行きつけの蕎麦屋に行くと、東京から来た人間が「今日撃ち逃がした山鳥はでかかった」などと、笑いながら話しているのを聞きます。

必死に堪えていた賢治でしたが、すぐに席を立つと店を飛び出し、家に帰って原稿に向かいます。僕にしかできないことがあった、そんな思いで書き上げた「注文の多い料理店」の原稿を、賢治はトシに読んで聞かせるのでした。

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ひとこと

今、こうして賢治の作品を読んだり聞いたりできるのも、妹のトシさんが賢治の夢を支え、弟の清六さんが賢治の原稿を守り、本にしてくれたおかげです。

もし賢治が質屋を継いでいたら、「銀河鉄道の夜」も「風の又三郎」も読めなかったかもしれないなぁ~と思うと、お父さんには申し訳ないのですけれど、質屋を継いでくれなくて本当によかった、と思ってしまいますね。


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