Netflixで配信中のドラマ「ウェンズデー」(全8話)についてまとめました。
ティム・バートンが監督・製作総指揮を務めるゴシック・ミステリー作品。『アダムス・ファミリー』の長女ウェンズデー・アダムスを主人公に据え、彼女の学園生活と超常現象にまつわる謎解きを描いています。IMDbの評価は8.0。
無表情で皮肉屋、でもどこかキュートなウェンズデーの冷徹な推理力と破天荒な行動がクセになります。ダークで美しい世界観、細部までこだわった美術セットや衣装も魅力。
1991年映画版でウェンズデーを演じたクリスティーナ・リッチが教師役で出演しているところにも注目です。
Contents
作品概要
- 配信:Netflix
- 配信開始日:2022年11月23日
- 製作国:アメリカ
- 原題:Wednesday
- 原作:チャールズ・アダムス『アダムス・ファミリー』
- 脚本:アルフレッド・ガフ/マイルズ・ミラー
- 監督:ティム・バートン
- 製作総指揮:ティム・バートン
あらすじ
アダムス・ファミリーの頭脳明晰な娘ウェンズデーを主人公に、ブラックユーモアたっぷりに描く学園ドラマ。5年間で8つの学校から退学させられた問題児がついに放り込まれたのは…。
Netflix公式サイトより
予告動画
原作について
このドラマの原作は、チャールズ・アダムスの漫画『アダムス・ファミリー』です。
1930年代に『ザ・ニューヨーカー』誌で始まった一コマ漫画で、常識はずれの風変わりな一家を描いた作品。
1964年のテレビドラマ化をきっかけに、「アダムス・ファミリー」という名称やキャラクター設定が確立され、映画やアニメなどさまざまなメディアに展開されました。ブラックユーモアとゴシックな美意識を通じて、個性の尊重や家族愛といった普遍的なテーマも浮かび上がります。
原作コミックを収録した『アダムス・ファミリー全集』では、アダムスの世界観をより深く味わうことができます。
わたしは1991年公開の映画が初見で、原作コミックやアニメの存在はまったく知りませんでした。映画も、ホラーが苦手というのもあって、当初は(見た目だけで)敬遠してました…全然怖くないのにね。
登場人物(キャスト)一覧
主要人物
ウェンズデー・アダムス(ジェナ・オルテガ)
アダムス家の長女。頭脳明晰で冷静沈着な皮肉屋。趣味は小説の執筆。人か物にふれると幻視能力が発動する。母を模倣する人生を嫌がり、ネヴァーモア学園からの脱走を試みる。だが怪物の連続殺人事件に巻きこまれ、学園に残って真相を追う決意をする。
イーニッド・シンクレア(エマ・マイヤーズ)
ネヴァーモア学園の生徒で、ウェンズデーのルームメイト。カラフルなファッションを好む明るく社交的な性格。人狼族だが変身できない悩みを抱えている。ゴルゴン族のエイジャックスに夢中。ウェンズデーと友達になろうと奮闘する。
タイラー・ガルピン(ハンター・ドゥーハン)
風見鶏カフェの店員。保安官の息子。偶然知り合ったウェンズデーに、脱走計画への協力を頼まれる。しだいに風変わりなウェンズデーに惹かれていく。父との距離感や、母の死にまつわる過去が心に影を落としている。
ドノバン・ガルピン(ジェイミー・マクシェーン)
ジェリコの保安官。タイラーの父親。怪物による連続殺人事件を捜査している。32年前のギャレット・ゲイツ殺害事件の担当者で、今もゴメズを容疑者として疑っている。職務には忠実だが、超自然的な存在や学園の秘密に対しては理解が及ばない。
ラリッサ・ウィームス(グウェンドリン・クリスティー)
ネヴァーモア学園の校長。学園の卒業生で、ウェンズデーの母親モーティシアとはルームメイトだった。学園の秩序を保つために厳格な態度を取るが、ウェンズデーの才能や直感を認めており、彼女の行動に対して複雑な感情を抱いている。
ハンド(ビクター・ドロバントゥ)
“手”だけの存在。残りの体がどこにあるかは永遠の謎。ウェンズデーの学園生活を見守るため、両親により派遣される。
ネヴァーモア学園
マリリン・ソーンヒル(クリスティーナ・リッチ)
植物学の教師。温室で肉食植物を栽培している。生徒たちの生活を支える寮母でもあり、学園内では信頼される存在。ウェンズデーが学園に馴染めるよう、親身になって接する。
ゼイヴィア・ソープ(パーシー・ハインズ・ホワイト)
芸術家肌の男子生徒。自分が描いた絵に命を吹き込む能力を持つ。父親は有名な超能力者ヴィンセント・ソープ。ウェンズデーに想いを寄せるが報われない。
ローワン・ラスロー(カラム・ロス)
ゼイヴィアのルームメイトで、物静かで目立たない生徒。テレキネシス能力を持つ。母は予知能力者で、ウェンズデーが学園を破滅に導くと予言していた。
ビアンカ・バークレー(ジョイ・サンデー)
学園の人気者でカリスマ的な存在。声によって人を操る能力を持つセイレーン族。恋人のゼイヴィアと別れた今も未練があり、恋敵のウェンズデーを敵視する。複雑な家族関係に悩んでいる。
ユージーン・オッティンジャー(ムーサ・モスタファ)
学園の養蜂クラブの唯一の部員。ハチを操る能力を持つ。ウェンズデーと仲良くなり、一緒に事件の調査をする。
エイジャックス・ペトロポラス(ジョージ・ファーマー)
石化能力を持つゴルゴン族の男子生徒。普段はニット帽で蛇の髪の毛を隠している。イーニッドの意中の人。
アダムス家
モーティシア・アダムス(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)
ウェンズデーの母。ウェンズデーと同じく幻視能力を持つ。退学と転校を繰り返す娘ウェンズデーを、自身の母校でもあるネヴァーモア学園に編入させる。反抗的な娘との距離感に戸惑っている。
ゴメズ・アダムス(ルイス・ガスマン)
ウェンズデーの父。愛妻家で、家族愛も深い。32年前にギャレット・ゲイツ殺害事件の容疑者として逮捕されていたことが判明する。
パグズリー・アダムス(アイザック・オルドネス)
ウェンズデーの弟。いじめられっ子で、いつもウェンズデーに助けられている。
ラーチ(ジョージ・バーシア)
アダムス家の執事。
フェスター伯父さん(フレッド・アーミセン)
ゴメズの兄で、ウェンズデーの伯父。アダムス家の中でも特に風変わりでユーモラスな存在。電気を操る能力(エレクトロキネシス)を持つ。ウェンズデーとは強い絆で結ばれており、頼れる助っ人でもある。
そのほか
グッディ・アダムス(ジェナ・オルテガ)
ウェンズデーの直系の先祖で、強い力を持つ魔女。1600年代にピルグリムから迫害を受けた。ウェンズデーの幻視能力を通じて現れ、助言や警告を与える。
ジョセフ・クラックストーン(ウィリアム・ヒューストン)
ジェリコの町の開祖として崇拝される偉人。表向きは信仰心に満ちた指導者だが、実際には“のけ者”たちを異端として迫害し、排除しようとした極端な排他主義者。
ヴァレリー・キンボット博士(リキ・リンドホーム)
ジェリコの町で開業している臨床心理士。ウェンズデーのセラピスト。超自然的な現象や“のけ者”たちの存在に懐疑的で、ウェンズデーの話を心理的な問題として捉えようとする。
ギャレット・ゲイツ(ルイス・ヘイズ)
32年前にゴメズが殺したとされる男。金持ちの息子で、モーティシアに執着していた。
ノーブル・ウォーカー(トミー・アール・ジェンキンス)
ジェリコの町の町長。元保安官。ある疑惑についてひそかに調査中。町の秩序を守るために事実を曲げることもあり、善悪の境界線が曖昧な人物。
ルーカス・ウォーカー(イマン・マーソン)
町長の息子。問題児。ウェンズデーに喧嘩を売るも、毎回負ける。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
アダムス家の長女ウェンズデー・アダムスは、弟パグズリーをいじめた男子生徒たちに復讐するため学校のプールにピラニアを放ち、退学処分となる。これが8校目の退学であり、両親は彼女を自分たちの母校であるネヴァーモア学園へ転校させることを決断する。
ネヴァーモア学園は、狼人間、セイレーン、ゴルゴンなど「のけ者」と呼ばれる特殊能力を持つ生徒たちが集う全寮制の学校だった。母モーティシアと同じ道を歩むことに反発するウェンズデーは、早々に学園からの脱走を宣言。心配した父ゴメズは“ハンズ”を学園に送り込む。
ウェンズデーは、明るく社交的な人狼族の少女イーニッドとルームメイトになるが、性格の違う2人は意見が合わない。
入学初日、ウェンズデーはセイレーン族の優等生ビアンカとフェンシングで対決し敗北。その帰り道、頭上から石像が落下する事故に遭うが、ゼイヴィアという生徒に助けられる。彼は10歳のときウェンズデーに命を救われたことがあり、そのときのお礼だと言う。
校長のウィームスは、ウェンズデーにセラピーを受けさせるため、ジェリコの町の臨床心理士キンボット博士のもとへ連れていく。診療所を抜け出した彼女は、町のカフェで店員のタイラーと出会う。タイラーの父ドノバンは保安官で、不可解な連続殺人事件を捜査中だった。彼は過去に殺人事件の容疑者となったゴメズの娘であるウェンズデーに警戒心を抱く。
収穫祭の夜、ウェンズデーは学園からの脱走を計画するが、同級生ローワンと接触した際に幻視能力が発動し、彼が殺される未来を目撃する。彼を助けようとするが、ローワンはウェンズデーを攻撃し、母親が描いた予言の絵を見せる。その絵には、ウェンズデーに似た少女が学園を破壊する姿が描かれていた。
ローワンがウェンズデーを殺そうとした瞬間、森の中から怪物が現れ、ローワンを襲って殺害する。ウェンズデーはその場に立ち尽くし、怪物が自分には危害を加えず去っていくのを見届ける。
事件後、ウェンズデーは学園に残ることを決意する。
怪物に襲われて死亡したはずのローワンが、何事もなかったかのように学園に現れる。ウェンズデーは自分の幻視が間違っていたのかと疑念を抱くが、ローワンはすぐに退学処分となり、学園を出て駅へと向かう。ハンドが尾行するも、ローワンは途中で姿を消してしまう。実は校長ウィームスがローワンに擬態していたのだった。
ウェンズデーはローワンが残した予言の絵の出典を探るため、“ベラドンナ”のシンボルマークを手掛かりに図書室で本を探すが見つからない。
本を探すため、ローワンとゼイヴィアの部屋に忍び込んだウェンズデーは、ゼイヴィアの元恋人ビアンカが自分を敵視していることを知る。ウェンズデーは学園の伝統行事「ポー・カップ」にイーニッドとチームを組んで出場し、ビアンカ率いるチームを見事打ち破る。
競技中、ウェンズデーは再び幻視を体験し、自分にそっくりな少女に「あなたが鍵よ」と告げられる。競技終了後、エドガー・アラン・ポーの銅像に隠された仕掛けを発見し、地下にある秘密の図書室に辿り着く。そこには、ローワンが持っていた予言の絵が収められた本が保管されていた。
しかし本を手にした瞬間、何者かに袋をかぶせられ捕らえられてしまう。
ウェンズデーを捕らえた犯人は、学園のエリート生徒たちによる秘密結社「ベラドンナ・クラブ」だった。ビアンカやゼイヴィア、かつてはローワンも所属していたという。彼らはウェンズデーがどうやってクラブの存在を知ったのかを問い詰めるが、ウェンズデーは入会を拒否し、あっさり縄をほどいてその場を去る。
ジェリコの町では開祖クラックストーンを称える式典が開催され、学園の生徒たちはボランティアとして町の施設に派遣される。ウェンズデーは「ピルグリム・ワールド」というテーマパークで働くことになり、予言の絵に描かれていたピルグリム(巡礼者)の情報を探るため、集会所に侵入する。
そこでウェンズデーに似た少女が描かれた1625年の絵や、彼女が持っていた黒い本のレプリカを見つける。本物の集会所がある森へ向かったウェンズデーは、クラックストーンが「のけ者」たちを火あぶりにする過去のビジョンを見る。唯一生き延びたのは、ウェンズデーの先祖グッディ・アダムスだった。
ウェンズデーはクラックストーンの銅像に仕掛けを施し、式典の最中に炎で焼き払うという大胆な行動に出る。ウィームス校長は激怒するが、ウェンズデーは「真実を追い求めるためには手段を選ばない」と宣言する。
その夜、森では新たな殺人事件が発生。保安官のドノバンは被害者が持っていたカメラのフィルムを現像する。そこには怪物が写っていた。
ウェンズデーは遺体安置所に忍び込み、怪物に襲われた被害者たちの遺体がそれぞれ異なる部位を切り取られていることに気づく。単なる殺人ではなく、何かの目的のために身体のパーツが集められているのではないか、と推測するウェンズデー。
ゼイヴィアの首にひっかき傷の痕を見つけたウェンズデーは、彼のアトリエに潜入。そこには怪物の絵が大量に描かれており、彼が怪物と何らかの関係を持っているのではないかと疑い始める。
ゼイヴィアは「夢で見た姿を描いているだけ」と否定するが、ウェンズデーは彼の絵から怪物の巣を突き止め、養蜂クラブのユージーンとともに調査に向かう。洞窟の中で怪物の“爪”を見つけたウェンズデーは、保安官のドノバンに“爪”とゼイヴィアの血が付着した布を差し出し、DNA鑑定を依頼する。
一方、ハンドの策略により、ウェンズデーは学園恒例のダンスパーティーにタイラーと出席することに。会場ではウェンズデーの奇妙なダンスが注目を集めるが、町長の息子ルーカスたちが仕掛けた赤いペンキの雨によって会場は大混乱に陥る。ルーカスに裏切られたイーニッドは傷つき、エイジャックスと仲直りする。ゼイヴィアはウェンズデーへの想いを断ち切れず、ビアンカを怒らせてしまう。
その頃、1人で洞窟の見張りに向かったユージーンは、怪物に遭遇し追われる。ウェンズデーは幻視によって彼の危機を察知し、急いで現場に向かうが、すでにユージーンは怪物に襲われて倒れていた。
保護者の日を迎えたネヴァーモア学園に、生徒の親たちが集う。家族と再会したウェンズデーは、父ゴメズが逮捕された32年前の事件について両親を問い詰めるが、2人は真相を語ることを拒む。
検視官のドクター・アンワルが拳銃自殺を図り、彼の遺書から32年前のギャレット・ゲイツ殺害事件の報告書が偽装されていたことが判明。保安官はゴメズを再逮捕する。
母モーティシアは、32年前の嵐の夜にギャレットから身を守るために彼を刺したこと、ゴメズがその罪をかぶって逮捕されたことをウェンズデーに打ち明ける。
ウェンズデーはギャレットの墓を掘り起こし、ベラドンナの毒により変色した指を発見。幻視によって、ギャレットが学園の生徒全員を毒殺しようとし、誤って自ら服毒してしまったことが明らかになる。事件の黒幕はギャレットの父アンセル・ゲイツであり、当時保安官だった町長がその事実を隠蔽していたことも判明する。
一方、ユージーンは怪物に襲われ昏睡状態のまま。母モーティシアは、ウェンズデーの幻視能力が先祖グッディ・アダムスから受け継がれたものであることを告げ、能力を制御するにはグッディの導きが必要だが、彼女は復讐心に取りつかれており警戒が必要だと助言する。
過去の卒業アルバムを見たウェンズデーは、校長ウィームスが擬態能力者であり、ローワンに変身していたことに気づく。校長は正気を失っていたローワンと学園の名誉を守るため、彼の父親と共謀して事件を隠ぺいしたのだった。
ウェンズデーが校長と対峙していたとき、中庭には「FIRE WILL RAIN(炎の雨が降る)」という火文字が現れる。
イーニッドたちが、ウェンズデーの16歳の誕生日を祝うサプライズパーティーを学園の霊廟で開く。お祝いごとに興味のないウェンズデーはケーキに目もくれず、壁に刻まれた「我が蘇る時 炎の雨が降る」というラテン語のメッセージに注目する。
文字に触れたとたん幻視が発動し、グッディが現れる。彼女の「この場所を見つけて探りなさい」という言葉に従い、ゲイツ家の屋敷へ向かうウェンズデー。すると屋敷の中からウォーカー町長が現れ、保安官に電話して「黒幕が分かったかもしれない」と告げる。しかし彼は保安官に会う直前にカフェの前で車に轢かれ、重体となる。
事故現場に居合わせたウェンズデーは、校長から謹慎処分を言い渡される。ウェンズデーはタイラーとイーニッドを巻き込み、再びゲイツ邸に潜入。町長を轢いた車や、最近使用されたと思われる隠し祭壇、ギャレットの妹ローレル・ゲイツの部屋を発見する。
そこへ怪物が現れ、タイラーが負傷。ウェンズデーとイーニッドは昇降機で地下室に逃れ、怪物に襲われた被害者たちの体の一部を発見する。
3人は命からがら逃げ出すが、保安官を連れて屋敷に戻ると、発見したものはすべて消えていた。ウェンズデーは保安官からタイラーと会うことを禁じられ、イーニッドとの友情も壊れてしまう。
ローレル・ゲイツの部屋から持ち帰ったオルゴールには、ウェンズデーを隠し撮りした写真が入っていた。ゲイツ家が復讐を企てていると確信したウェンズデーは、真相を追う決意を新たにする。だがその頃、何者かが町長の病室に侵入し…。
町長の葬儀の場に、ウェンズデーの叔父フェスターが突如現れる。彼は怪物の正体が「ハイド」という存在であることを告げ、学園のベラドンナ図書館に保管された「フォークナーの日記」にその詳細が記されていると助言する。
ウェンズデーは日記を入手し、ハイドが解放者に忠誠を誓う性質を持つこと、つまり犯人は“怪物”と“怪物を操る者”の2人であることを突き止める。
ビアンカとルーカスは、町長がローレル・ゲイツの調査を進めていたことをウェンズデーに伝える。ローレルは過去に海外で溺死したとされていたが、遺体は発見されていなかった。
ウェンズデーは、昨年ゲイツ邸を購入した“テレサ・L・グラウ”こそローレル本人であり、彼女が復讐を果たすべく、偽名を使って町に戻ってきたのだと確信する。そして、ローレルが“怪物を操る者”だと結論づける。
ゼイヴィアがキンボット博士と密会しているところを目撃したウェンズデーは、彼が“怪物”で、キンボット博士が“操る者”だと疑い、博士を問い詰めるが否定される。
その後、博士は怪物に襲われ死亡。ウェンズデーはゼイヴィアのアトリエに証拠を仕込み、保安官に逮捕させる。ゼイヴィアは無実を訴え、ウェンズデーとの関係は決裂する。
一方、タイラーとの関係は進展し、ウェンズデーは初めて感情を見せてキスを交わす。しかしその瞬間、幻視が発動し、タイラーこそが怪物ハイドであることを知ってしまう。
ウェンズデーは幻視によって、タイラーこそが怪物“ハイド”であると確信する。タイラーの亡母フランソワはかつてネヴァーモア学園の生徒であり、同じくハイドであった。ウェンズデーはタイラーを捕らえ、変身させようと拷問を試みるが失敗。保安官に阻止され、校長からは退学処分を言い渡される。
学園を離れたウェンズデーは、回復したユージーンを見舞う。彼の証言により、ローレル・ゲイツの正体が植物学教師マリリン・ソーンヒルであることに気づいたウェンズデーは、真実を確かめるため学園に戻る。
校長ウィームスはタイラーに擬態してウェンズデーに同行し、ソーンヒルこそが怪物を解放した“操る者”、すなわちローレル・ゲイツ本人であることを知る。しかし、彼女にベラドンナの毒を注射され、命を落とす。
ローレルはウェンズデーを霊廟へ連れて行き、先祖クラックストーンを蘇らせる儀式を強行。石棺にはグッディの呪いがかけられており、ブラッドムーンの夜に直系の子孫であるウェンズデーだけが開けることができる。儀式は成功し、クラックストーンは復活を果たす。
ウェンズデーはクラックストーンに胸を刺され、瀕死の状態に陥るが、グッディの力を自身に取り込むことで回復。イーニッドはハンドと共に霊廟へ向かう途中、ついに人狼に変身し、ウェンズデーを襲うタイラー=怪物から彼女を救う。
学園に戻ったウェンズデーは、生徒たちを皆殺しにしようとするクラックストーンに剣で立ち向かう。ゼイヴィアとビアンカの協力を得て、クラックストーンを打倒。ローレルは、ユージーンの操る蜂の大群に襲われる。
怪物を倒したイーニッドは血まみれで帰還し、ウェンズデーと強く抱き合う。校長を失った学園は一時休校となり、生徒たちは家族のもとへ戻る。ウェンズデーはゼイヴィアからスマートフォンを贈られ、学園を去る。
だがその矢先、ウェンズデーのスマホに「お前を見ている」という謎のメッセージが届く。
感想と解説(ネタバレ有)
風変りな少女の自己受容の物語
ティム・バートンらしいダークで幻想的な世界観で、少女の成長物語とミステリー要素を巧みに組み合わせたエンタメ満載の学園ミステリーでした。
特に興味深いのが、主人公のウェンズデー。冷静さと鋭い観察力を持つ一方で、孤独や他者との関係に揺れる繊細な内面を抱えていて、彼女が少しずつ心を開いていく過程が魅力的に描かれます。
ウェンズデーを演じたジェナ・オルテガは、表情に微細な感情を宿らせることで、ウェンズデーの複雑な心理を見事に表現していました。その演技力は、ティム・バートン監督から「彼女自身がウェンズデーそのもの」と評されるほど。
そんな個性的なウェンズデーというキャラクターを通して描かれるのは、「自分とは何者か」「他人とどう関わるべきか」という、誰もが一度は抱える葛藤。
そして、彼女の周囲にいる“のけ者”の仲間たちもまた、それぞれの苦しみや希望を抱えながら、“本当の自分”を模索しています。
「本当の自分」でいることの難しさ
死や恐怖に独特な美意識を持つウェンズデーは、感情をあらわにせず、他人を拒絶する少女として登場します。
彼女は感情を「弱さ」と捉え、孤独でいることに心地よさを見出していました。ところがネヴァーモア学園での生活は、そんなウェンズデーに少しずつ“変化”をもたらしていきます。
社交的でカラフルなものを好むルームメイトのイーニッドは、モノトーンで孤独を好むウェンズデーとは正反対の存在。けれど「違いを認めること」「相手に心を開くこと」の価値に気づく中で、ウェンズデーは少しずつ他者との関係を築いていきます。
また、タイラーに対して彼女が心を許そうとする場面では、普段とは異なる感情の動きが垣間見えます。信じたいけれど信じられない、そうした心の揺れは、彼女のアイデンティティが確立されていく過程そのものです。
また、人狼でありながら変身できない悩みを持つイーニッドが、母親から勧められた矯正合宿への参加をきっぱりと断るシーンも印象的でした。
“普通”に(変身できるように)なってほしいと願う母親に対して、「ありのままの私を受け入れて」と訴える彼女の姿は、現代の多様なアイデンティティに対する肯定のメッセージだと感じました。
ネヴァーモア学園の生徒たちは、みんな何かしら“異なるもの”を持ち、それを隠したり乗り越えたりしながら生きています。そんな彼らの姿は、「本当の自分」でいることの難しさと、それでも自分を受け入れようとする勇気を教えてくれます。
アダムス家の複雑な愛
ウェンズデーの家族“アダムス・ファミリー”も登場。風変わりで少し怖い(けど愛おしい)彼ら、中でも母モーティシアとの関係性は、ウェンズデーが自分自身を見つめなおす上で重要な要素となっていました。
モーティシアはネヴァーモア学園の卒業生で、優雅で完璧な存在。ウェンズデーと同じ幻視能力を持っていますが、娘とは反対に“ポジティブ”な幻視です。
ウェンズデーはそんな母に強く反発し、独自の道を進もうとします。この親子のすれ違いには、“親からの期待”と“自分らしさの追求”という普遍的な葛藤が詰まっているように感じました。
ウェンズデーが母から渡された首飾りを拒む場面は、「家族の伝統に縛られたくない」という彼女の意志の象徴です(しかしその後、その首飾りにウェンズデーは命を救われることになります)。
母を避けるウェンズデーと、そんな娘の冷たい態度に戸惑うモーティシア。物語が進む中で、娘は両親の過去の秘密を知り、母は娘の変化を受け止め、2人の間には少しずつ“言葉にならない理解”が芽生えていきます。
それぞれが自分の価値観を持ちながらも、同じ血を引く家族として、少しずつ距離を縮めていく。
家族の存在はウェンズデーの行動原理の根底にあり、学園での孤独や困難に直面したとき、家族の記憶や支えが彼女を導いていきます。
マイノリティとマジョリティ
「異端者(のけ者)」と「普通の人々」という構図は、現実の社会における“マイノリティとマジョリティ”の関係を象徴しています。
ネヴァーモア学園の生徒たちは、それぞれが特殊な能力を持ち、社会から隔てられた存在です。そんな彼らが「理解されたい」「恐れられたくない」と思っていることは、現代の多様性や包摂の問題にもつながります。
ビアンカは学園の人気者でカリスマ的な存在ですが、その地位はセイレーンとしての能力(人を操る声)によって築かれたものであることが明かされ、彼女自身もその事実に葛藤を抱えています。
さらに、家庭では母親がカルト的な自己啓発団体に傾倒しており、ビアンカはその影響から逃れようと苦しんでいます。表向きは完璧に見える彼女もまた、孤独を抱え、他者との距離感に悩むひとりの少女でした。
ピルグリム・ワールドを巡るエピソードでは、歴史の影に潜む植民地主義への批判が込められていました。支配する者と迫害される者、その関係の再定義が求められる現代、こうしたテーマはとても重みのあるものに感じられます。
誰もが“異なるもの”を持っている
この物語が問い直しているのは、“怪物”という言葉の意味です。怪物とは、人を傷つける存在のことなのか。自分とは違う価値観や姿を持っている者のことなのか。あるいは、自分自身の中にある怒りや孤独のことかもしれない。
ウェンズデーは、自分の力を制御できず、他人を遠ざけてしまう“怪物”のような存在です。ネヴァーモア学園の仲間たちもそれぞれが“異なるもの”や“影”を抱えていて、それでも他者と関わろうとし、自分を受け入れようとする姿が描かれていました。
怪物的な部分を否定せず、向き合い、理解しようとすること。「孤独も葛藤も、私の一部」そう思えたとき、少しだけ世界が優しくなるような気がします。
自分を知り、他者を知り、社会との距離を考える。そんな深い問いが、物語の随所に散りばめられています。そして何より、このドラマに登場する風変わりな“怪物たち”が、どこか私たち自身を映しているようにも思えます。
誰もが何かしら“異なるもの”を持っている。その違いこそが、私たちを面白くしているのかもしれません。
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