Netflixで配信中のドラマ「ウェンズデー」シーズン2(パート2)についてまとめました。
タイラーとの激しい戦いの末、昏睡状態に陥ったウェンズデー。夢の中で、彼女は“新たな魂の導き手”と出会います。前半で描かれた謎と葛藤がさらに深まり、物語は予想を超える展開へと突き進みます。
今回は、シーズン2の後半にあたる第5話~第8話(最終話)について書きました。家族、友情、孤独、怪物性といったさまざまな要素が絡み合う濃密なエピソードを振り返り、キャラクターの変化や物語の構造について考えてみたいと思います。
▼シーズン2(パート1)の記事はこちら

Contents
作品概要
- 配信:Netflix
- 配信開始日:2025年9月3日
- 製作国:アメリカ
- 原題:Wednesday
- 原作:チャールズ・アダムス『アダムス・ファミリー』
- 脚本:アルフレッド・ガフ/マイルズ・ミラー
- 監督:ティム・バートン
- 製作総指揮:ティム・バートン
予告動画
登場人物(キャスト)一覧
※シーズン2第4話までのネタバレを含みます
主要人物
ウェンズデー・アダムス(ジェナ・オルテガ)
冷静で頭脳明晰なアダムス家の長女。毒舌家で、小説執筆が趣味。触れた人や物から幻視を得る能力を持つ。先祖グッディが残した本を手引きに能力を磨くが、乱用によりその力を失ってしまう。幻視で親友イーニッドの死を予知し、運命を変えるため奔走する。
イーニッド・シンクレア(エマ・マイヤーズ)
ネヴァーモア学園の生徒で、ウェンズデーのルームメイト。カラフルなファッションを好む明るく社交的な性格。人狼族。ゴルゴン族のエイジャックスに別れを告げ、同じ群れの仲間であるブルーノと付き合い始めた。透明人間のアグネスとは犬猿の仲。
パグズリー・アダムス(アイザック・オルドネス)
ウェンズデーの弟。今学期からネヴァーモア学園に入学したが、友達ができずにいる。伯父のフェスターと同じ電気を操る能力(エレクトロキネシス)に目覚め、“ドクロの木”の下に埋められていた少年を生き返らせてしまう。
ハンド(ビクター・ドロバントゥ)
“手”だけの存在。残りの体がどこにあるかは本人も知らない。ウェンズデーの学園生活を見守るため、両親により派遣された。孤独な道を突き進むウェンズデーを心配し、時々おせっかいを焼く。イーニッドとは大の仲良し。
ネヴァーモア学園
バリー・ドート(スティーヴ・ブシェミ)
新任の校長。“のけ者”としての誇りを掲げ、学園を再構築しようとする。資金難を解決するため、裕福な母を持つモーティシアに資金調達の委員長を依頼。奨学生のビアンカを脅して渉外役を命じる。発火能力(パイロキネシス)を使う。
ラリッサ・ウィームス(グウェンドリン・クリスティー)
ネヴァーモア学園の前校長。学園の卒業生で、ウェンズデーの母親モーティシアとはルームメイトだった。シーズン1でソーンヒルによって殺されたが、ウェンズデーの“新しい魂の導き手”となり、亡霊となって現れる。
オルロフ教授(クリストファー・ロイド)
ネヴァーモア学園で最も長く勤務する教師。首だけの存在で、かつての教え子アイザックが作った生命維持装置の中に入っている。
イサドラ・カプリ(ビリー・パイパー)
新任の音楽教師。ネヴァーモア学園の卒業生で、母校への恩返しとして教師に復帰した。孤立しがちなウェンズデーや、変化に不安を抱えるイーニッドに寄り添い、優しく声をかける。過去にハイドに襲われた経験を持つ。
ビアンカ・バークレー(ジョイ・サンデー)
学園の人気者で、圧倒的な存在感を放つセイレーン族の女子生徒。声で人を操る能力を持つ。奨学生であることを理由に校長から脅され、資金調達の渉外役を担うことに。母ガブリエルをカルト集団〈モーニング・ソング〉と義父ギデオンの支配から救うため、FBIに情報を提供し、母を学園内に匿うという危険な選択を下す。
エイジャックス・ペトロポラス(ジョージ・ファーマー)
石化能力を持つゴルゴン族の男子生徒。普段はニット帽で蛇の髪の毛を隠している。恋人のイーニッドに一方的に別れを告げられ、納得がいかずにいる。ビアンカの母ガブリエルを匿うために手を貸した。
ユージーン・オッティンジャー(ムーサ・モスタファ)
虫を操る能力を持つ男子生徒。学園の養蜂クラブの唯一の部員。シーズン1でウェンズデーと仲良くなり、一緒に事件を解決した。シーズン2ではパグズリーと同室になり、彼が起こす騒動に巻き込まれる。
アグネス・デミル(イーヴィー・テンプルトン)
ウェンズデーを熱狂的に慕う女子生徒。ウェンズデーの気を引こうとして脅迫状を送り付けたり、透明人間の能力を使って“ストーカー”化したりする。ウェンズデーに絶対服従で、捜査を手伝っている。
ブルーノ(Noah B. Taylor)
イーニッドの新しい恋人となる男子生徒。人狼族。
スラープ(オーウェン・ペインター)
パグズリーが生き返らせたゾンビ。カリバン寮に伝わる「ドクロの木の話」に登場する、機械仕掛けの心臓を持つ少年。人間の脳を食べて復活する。本名はアイザックで、元ネヴァーモア学園の男子生徒。
ロザリン・ロットウッド(レディー・ガガ)
卓越した霊視能力を持つ伝説的な教授。ウェンズデーの祖母へスター・フランプのかつての恩師でもある。現在はネヴァーモア学園の墓地に眠っている。
アダムス家
モーティシア・アダムス(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)
ウェンズデーの母。ウェンズデーと同じく幻視能力を持つ。母校であるネヴァーモア学園のために資金調達の委員長になり、ロットウッド・コテージに滞在する。不仲な母親へスターとの関係や、反抗的な娘との距離感に悩んでいる。
ゴメズ・アダムス(ルイス・ガスマン)
ウェンズデーの父。弁護士。愛妻家で、家族愛も深い。“のけ者”であるにも関わらず、特別な能力を持たない。
ラーチ(ジョージ・バーシア)
アダムス家の執事。
フェスター・アダムス(フレッド・アーミセン)
ゴメズの兄で、ウェンズデーの伯父。アダムス家の中でも特に風変わりでユーモラスな存在。電気を操る能力(エレクトロキネシス)を持つ。ウェンズデーとは強い絆で結ばれており、頼れる助っ人でもある。
オフィーリア
モーティシアの姉で、ウェンズデーの伯母。ウェンズデーと同じネガティブな幻視能力の持ち主だったが、超能力を使いすぎて錯乱した。母へスターによってウィローヒルに入れられ、その後、行方不明になった。
へスター・フランプ(ジョアンナ・ラムレイ)
モーティシアの母。フランプ葬儀場を経営する冷徹な実業家。ネヴァーモア学園の卒業生でもある。モーティシアとは不仲で、孫のウェンズデーを後継者にしようと考えている。
グッディ・アダムス(ジェナ・オルテガ)
ウェンズデーの直系の先祖で、強い力を持つ魔女。1600年代にジェリコの町の開祖クラックストーンから迫害を受けるも生き残り、のちに彼を殺害した。彼女が残した「影の本」はウェンズデーの教科書となっていたが、モーティシアによって燃やされてしまう。
ガルピン家
タイラー・ガルピン(ハンター・ドゥーハン)
元保安官ガルピンの息子。シーズン1でウェンズデーと惹かれ合うも、実は連続殺人鬼と判明。“のけ者”だった母親から“ハイド”の血を受け継いでおり、復讐を企てるソーンヒルに“解放”されて怪物に変身していた。ウィローヒルに収監されていたが、“主人”であるソーンヒルを殺して脱走した。
ドノバン・ガルピン(ジェイミー・マクシェーン)
元保安官。シーズン1で怪物による連続殺人事件を捜査していたが、その犯人は息子のタイラーだった。保安官の職を辞任し、ひそかにウィローヒルを調査していたが、ジュディが操るカラスに襲われて命を落とした。
フランソワーズ・ガルピン(フランセス・オコナー)
タイラーの母で、ドノバンの妻。タイラーと同じく怪物に変身する“ハイド”。死亡したとされていたが、実はウィローヒルの地下室に監禁されており、第4話でウェンズデーによって解放された。
そのほか
ジュディ・ストーンハースト(ヘザー・マタラッツォ)
閉鎖されたウィローヒルの臨時院長。“のけ者”の能力を一般人に移植する「長期のけ者統合研究(ロイス)」の後継者。自らも鳥を操る“エイヴィアン”の能力を得ている。
オーガスタス・ストーンハースト(フィリップ・フィルマー)
ジュディの父。かつてネヴァーモア学園で科学教師をしていた。ウィローヒルの地下室で秘密プロジェクト「長期のけ者統合研究(ロイス)」を進めていたが、精神を病んで患者となった。第4話でスラープに襲われて命を落とした。
マリリン・ソーンヒル(クリスティーナ・リッチ)
元ネヴァーモア学園の教師。本名はローレル・ゲイツ。グッディに殺されたクラックストーンの子孫で、アダムス家と“のけ者”に強い復讐心を抱いている。タイラーの中の怪物を解き放った“主人”でもある。第4話でタイラーに殺された。
ガブリエル・バークレー(グレーシー・ゴールドマン)
ビアンカの母。カルト集団〈モーニング・ソング〉の創立メンバーの1人。カルト集団の指導者で再婚相手でもあるギデオンの支配から逃れるため、ビアンカの手引きで逃亡し、ネヴァーモア学園に身を隠している。
リッチー・サンティアゴ(Luyanda Unati Lewis-Nyawo)
新任の保安官。シーズン1では副保安官だった。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
昏睡状態に陥ったウェンズデーは、夢の中で亡き前校長ラリッサ・ウィームスと再会する。ウィームスは彼女の「新しい魂の導き手」として現れ、ウェンズデーの行動を厳しく批判する。目覚めたウェンズデーは、「おまえとイーニッドは今夜死ぬ」と書かれたタイラーからのメッセージを受け取る。
同じ頃、ウィローヒルでは臨時院長となったジュディが記者会見を開き、電力障害による患者の大量脱走と院長フェアバーンの死亡を公表する。ジュディは脱走者の抹殺を目的に殺し屋を雇うが、1938番と呼ばれる謎の人物だけは行方がつかめない。
ネヴァーモア学園では、ビアンカがカルト集団〈モーニング・ソング〉から逃げてきた母ガブリエルを匿っていた。彼女は協力してくれたエイジャックスに、母が〈モーニング・ソング〉の創立メンバーの1人であることを打ち明ける。
学園に戻ったウェンズデーは、イーニッドに危険が迫っていることを告げ、荷造りして家に帰るよう説得するが、イーニッドはウェンズデーの独善的な態度に反発する。
負傷したタイラーは下水道に潜伏していた。ジュディが雇った殺し屋は怪物化したタイラーに襲われ、殺害される。その死体を食べたゾンビ・スラープは知性を取り戻す。パグズリーは〈ピルグリム・ワールド〉でスラープを発見するが、父ゴメズにウソをついて彼を逃がしてしまう。
ウェンズデーはマリリン・ソーンヒルが残した資料をもとに、タイラーを操る薬の調合を試みるが、ウィームスはそれが支配欲に基づく危険な行為だと警告する。イーニッドはベラドンナ・クラブの仲間たちを招集し、タイラーとの対決に備える。
その頃、モーティシアのもとには1938番――タイラーの母フランソワーズが現れ、ウィローヒルから逃げてきたことを告げる。彼女は息子を救うため、ネヴァーモアへ向かう決意を語る。
“死者の日”の追悼パレードの夜、イーニッドは囮となり、学園に侵入したタイラーを誘い出す。ウェンズデーは調合した薬を使ってタイラーを制御しようとするが、そこへもう一体の怪物――フランソワーズが乱入し、タイラーを連れて逃走する。
モーティシアはウェンズデーの危険な計画に激怒し、母親としての信念から「二度とジェリコには戻らない」と誓ったフランソワーズの言葉を信じると語る。
スラープは“アイザック”と名乗り、ジュディの前に姿を現す。音楽室でダンスの練習をしていたイーニッドは、満月ではない夜にもかかわらず狼化してしまう。
ウェンズデーは亡霊となったウィームスから、能力の喪失は母との関係の緊張によるもので、家族との絆が力の源であると諭されるが、その言葉に耳を貸さず、孤独な探求を続ける。
オルロフ教授は、タイラーの母フランソワーズにアイザックという弟がいたことを語る。アイザックはかつてストーンハースト博士の優秀な弟子であり、イアーゴの塔に研究室を構えていたが、ある夜の爆発事故を境に行方不明となっていた。
その頃、タイラーとフランソワーズはガルピン家の地下室に身を潜めていた。そこへアイザックが現れ、姉弟は再会を果たす。だがフランソワーズはハイド特有の病に侵されており、アイザックはストーンハーストが遺した装置で彼女を救おうと決意する。
イーニッドは満月でない夜に狼化したことで、音楽教師カプリから「アルファ」の可能性を指摘され、戸惑いを覚える。
ウェンズデーは祖母へスターから、ネヴァーモア学園の元教授ロザリン・ロットウッドの墓石に刻まれた碑文を読むことで予知能力が得られると聞き、墓地へ向かう。碑文を読み上げるとロットウッドの亡霊が現れ、「炎に手をかざせば力が戻る」と告げるが、儀式の最中にイーニッドが乱入し、2人の身体が入れ替わってしまう。
学園に戻ったウェンズデーはイーニッドとして振る舞い、イーニッドはウェンズデーとして行動することを余儀なくされる。ウェンズデーはイーニッドが「アルファ」の素質を持つことや、恋人ブルーノの裏切りを知り、イーニッドはウェンズデーが幻視で自分の死を予知していたこと、そして母モーティシアとの確執を知る。
モーティシアはウィームスの助言により入れ替わりに気づき、呪いを解くには夜明けまでに「心の奥底に隠している秘密」を打ち明ける必要があると告げ、2人に解決を託す。
その頃、アイザックはオルロフ教授の前に姿を現し、かつて自ら設計した生命維持装置の動力源を奪って教授を殺害し、その脳を喰らう。アグネスはその場面を目撃し、タイラーとアイザックがウィローヒルへ向かったことをウェンズデーに知らせる。
ウェンズデーとイーニッドは地下研究室に潜入し、捕らえられたアグネスの救出を試みる。ウェンズデーはイーニッドの姿のまま狼に変身し、タイラーと対峙する。
アイザックは装置を作動させ、フランソワーズの中の“ハイド”を取り除こうとするが、ウェンズデーたちの介入によって装置は暴走し、研究室は爆発する。
夜明け前、ウェンズデーとイーニッドは再びロットウッドの墓を訪れ、それぞれ相手への思いを告白する。告白によって呪いは解け、2人の身体は元に戻る。
ウィームスはイーニッドの死の予兆が消えたことをウェンズデーに告げるが、代わりにアダムス家の誰かが命を落とすという新たな予知が現れたことを教える。
15年前、ギデオンことアーノルドとガブリエルは、“モーニング・ソング”という店で働いていた。そこへ現れたバリー・ドートがアーノルドに接触し、カルト的な“ムーブメント”の創設を持ちかける。これが後に〈モーニング・ソング〉として暗躍する集団の始まりとなる。
現在。ドート校長はビアンカに匿われていたガブリエルを発見し、2人を脅迫する。ドートこそ、カルト集団〈モーニング・ソング〉を生み出し、陰で操っていた黒幕だった。ドートはオルロフ教授の死を隠蔽しつつ、寄付金集めのパーティーの準備を進める。
ウェンズデーはアイザックの過去を探る中で、彼がかつて父ゴメズの親友であり、姉フランソワーズの中に潜む“ハイド”を取り除くためにイアーゴの塔で研究していたことを知る。一方、イーニッドはカプリ先生から「アルファ」が満月の夜に変身すると、元の姿に戻れず、他の人狼に命を狙われるという衝撃的な事実を告げられる。
ドートはビアンカのセイレーン能力を利用して、資産家へスター・フランプを操り、全財産をネヴァーモア学園へ寄付させようと画策する。そしてその金を独占するため、ビアンカの目の前でギデオンを焼き殺す。
パーティー当日、仮装した客たちが学園に集まり、へスターが主賓として迎えられる。ウェンズデーは祖母が操られていることに気づき、仲間たちと協力してガブリエルを救出する。イーニッドはブルーノとの関係に終止符を打ち、アグネスとの友情を深める。アグネスは透明化能力を駆使し、ドートが持つ「セイレーンの能力を無効化する懐中時計」を盗み出す。
ビアンカの能力によって、ドートは自らの悪事をステージ上ですべて告白する。ビアンカを人質に取って逃亡しようとするが、エイジャックスの能力によって石化され、シャンデリアの下敷きとなって粉々に砕け散る。
へスターはウェンズデーを後継者に指名し、夏を共に過ごすよう誘うが、ウェンズデーは父ゴメズへの侮辱を理由にこれを拒否し、代わりに学園への寄付を要求する。
アイザックは仮装してネヴァーモアに潜入し、ウェンズデーの弟パグズリーを誘拐する。
ウェンズデーは弟パグズリーを誘拐したアイザックの目的を探るが、幻視能力を失っているため手がかりを得られない。モーティシアとへスターの協力を得て降霊術を行ったウェンズデーは、若き日の両親がアイザックの遺体をドクロの木の下に埋めた過去を目撃する。かつてアイザックは、姉フランソワーズの中に潜む“ハイド”を取り除くため、ゴメズの電気操作能力を利用しようとしたが、モーティシアの介入によって実験装置が暴走し、爆発に巻き込まれて死亡した。ゴメズはそれによって能力を失い、夫婦はこの事実をストーンハーストの脅迫によって隠していた。
一方、アイザックはフランソワーズとタイラーとともに、パグズリーを囚えて山小屋に潜伏していた。彼らはアダムス家への復讐を企て、パグズリーを電源として再び実験を行おうとしていた。
ウェンズデーはユージーンからアイザックのメッセージを受け取り、真夜中にドクロの木へ向かう。そこでアイザックは、ハンドが自分の切り落とされた右手であることを明かし、それを自らの体に縫い付けて完全体となり、念力を取り戻す。
ウェンズデーは墓穴に落とされ生き埋めにされるが、イーニッドとアグネスによって救出される。イーニッドはウェンズデーを助けるために満月の夜に変身してしまい、狼化したまま森へと姿を消す。
アイザックはイアーゴの塔に残された装置を念力で再構築し、パグズリーを動力源として固定する。フランソワーズは自らの代わりに息子タイラーを“ハイド”から解放しようとするが、タイラーはそれを拒絶。そこへウェンズデーが現れ、彼を救出する。
タイラーは怪物に変身し、同じく怪物化した母フランソワーズと激しく争う。戦いの末、フランソワーズは屋根から落下して死亡する。
ウェンズデーによって装置は破壊され、爆発する。アイザックは念力でウェンズデーを絞め殺そうとするが、モーティシアとゴメズの呼びかけに応じたハンドが反旗を翻す。ハンドはアイザックの胸から機械の心臓を引き抜き、アイザックは死亡。ハンドは再び身体を離れ、アダムス家に戻る。
波乱の一年が終わり、生徒たちはそれぞれ帰郷する。ウェンズデーは家に戻ることを拒み、バイクで迎えに来た叔父フェスターとともに、北へ向かったイーニッドを追う決意を固める。タイラーは両親の墓前でカプリと再会し、“ハイド”たちの新たな群れへの参加を促される。その頃、へスターの家の地下室に監禁されているオフィーリアは、「ウェンズデーは死なねばならない」と壁に書きつけていた。
感想(ネタバレ有)
「家族」というテーマの描かれ方
シーズン1では、ウェンズデーが探偵のような役割を果たしながら、テンポよく進む学園ミステリーが展開されていました。謎解きの面白さとキャラクターの個性が光る、わかりやすく楽しめる内容でした。
それに対してシーズン2では、物語の雰囲気が少し変わり、家族の秘密や“怪物としての自分”といった、より重たく深いテーマが中心になっていました。
特に印象的だったのが「家族」というテーマの描かれ方。アダムス家の過去や、タイラー、ビアンカの葛藤を通して、家族という存在が“支え”にもなり、時には“葛藤”の源にもなることが描かれていました。
また、血のつながりがなくても、絆を育むことはできるというメッセージも込められていました。ウェンズデー、イーニッド、アグネスの三人の関係は、友情や信頼、そして時には裏切りや許しを経て、家族的なつながりへと変化していきます。
特に印象的だったのは、ウェンズデーとイーニッドの体が入れ替わるエピソードです。お互いの立場になってみることで、相手への理解が深まり、ふたりの絆がより強まるきっかけとなりました。ジェナ・オルテガとエマ・マイヤーズの「なりきる」演技が素晴らしかったです。
ただ、テーマや登場人物が増えたことで、物語が少し複雑になったのも確か。複数のストーリーが同時に進む中で、一部のキャラクターの心情があまり描かれず、物足りなさを感じる場面もありました。
アダムス家の過去が現在を侵食する
ウェンズデーは幻視を通して、両親が昔、親友アイザックの死に関わっていたことを知ります。両親の過去が現在の事件と繋がるという展開は、シーズン1と同じです。
アイザックは姉のフランソワーズを救うために、ゴメズを実験に利用して殺そうとしました。しかしそれを知ったモーティシアが実験を阻止し、アイザックは暴走した装置の爆発に巻き込まれて死亡。夫婦はひそかにアイザックの遺体を埋め、この事実を長年隠していたのです。
両親の過去の罪が明らかになり、ウェンズデーは家族への信頼と怒りのあいだで揺れ動きます。アダムス家は一見すると仲の良い奇妙な家族なのですが、その絆の裏にあるウソや秘密がまたもや浮き彫りになります。
驚きだったのは、最終話で明かされたハンドの正体。彼は(本人すらも知りませんでしたが)、実はアイザックが爆死したときにちぎれた彼の右手でした。これまで家族の一員として親しまれていた存在が、実は過去の罪の証だったという衝撃の事実。
それでもウェンズデーは、ハンドを“自分の家族”として受け入れ、最終的には彼の行動によってアイザックを倒すことになります。この選択は、過去を否定するのではなく、受け入れたうえで乗り越えるというウェンズデーの成長を象徴しています。
ただ、家族の描写には物足りなさもありました。ウェンズデーの怒りに対して、両親がどう向き合ったのかが見えにくく、祖母へスターとの関係や、モーティシアの心の葛藤などもあまり深く描かれませんでした(おそらくシーズン3に持ち越されるのでしょう)。
自分の中の“怪物”をどうするか
タイラーの家族は、シーズン2の中でも特に複雑でした。母フランソワーズは、自分の中に潜む“ハイド”という怪物を呪いのように感じていて、それを息子に受け継がせてしまったことに強い罪悪感を持っています。
彼女はその罪を償うかのように、弟アイザックの装置を使ってタイラーを“普通”に戻そうとしますが、その行動はタイラーの本質を否定することにもなっていました。
一方、アイザックは、フランソワーズの“ハイド”を取り除くために人生をかけて研究を続けてきた人です。彼にとって“怪物性”は治すべき病のようなもので、科学の力でそれを消すことが家族を救う唯一の道だと、ゾンビとして生き返った今もそう信じています。
タイラーは、そんな親たちの期待や恐れをすべて拒絶します。彼は“ハイド”である自分を受け入れ、誰かの理想のために変わることを拒みます。それはシーズン1で苦しんでいた彼からの大きな成長でもあり、他人に決められるのではなく、自分自身を選び取るという強い意志の表れです。
最終話でウェンズデーがタイラーを逃がしたのも、彼の選択を尊重する行動だったのだと思います。彼女はタイラーを“救う”のではなく、“自由にする”ことを選びました。これは、ウェンズデー自身が家族の“呪縛”から抜け出そうとしている姿とも重なります。
〈モーニング・ソング〉をめぐる真実
ビアンカのエピソードでは、「家族とは何か」という問いが現代的なアプローチで、より切実に描かれます。
シーズン1で触れられたビアンカの家庭の問題は、未解決のままシーズン2へと引き継がれました。彼女の母・ガブリエルは〈モーニング・ソング〉というカルト的な団体にのめり込み、精神的にも経済的にもその支配下に置かれていました。
ビアンカは母を救いたいという一心で、団体の内部情報をFBIに提供するという勇気ある行動に出ます。その結果、団体の表向きの指導者であり義父でもあるギデオンは指名手配され、組織は崩壊の危機に陥ります。
ところが、物語はここで終わりません。終盤、〈モーニング・ソング〉の本当の創設者が若き日のバリー・ドート校長だったことが明かされます。ドートはギデオンを表の顔として操り、自らは裏で詐欺行為を繰り返していた黒幕でした。
さらに彼は、校長という立場を利用してビアンカの能力に目をつけ、彼女を脅してウェンズデーの祖母へスター・フランプの財産を奪う計画に巻き込もうとします。
母を支配していたのが信頼していた大人(校長)だったという事実は、「家族を守るために誰を信じるべきか」という問いを突きつけてきます。
最終的にウェンズデーと仲間たちはドートの陰謀を阻止し、ビアンカも母との関係を修復します。この過程は、彼女が単に“強いキャラクター”として描かれるだけでなく、内面の葛藤と成長をしっかりと感じさせるものになっていました。
ビアンカの物語は、「家族は生まれながらに与えられるものだけでなく、自分自身で守り、問い直し、時には距離を取ることで築き直すものでもある」というメッセージを静かに伝えてくれます。
音楽教師カプリの孤独と寄り添う力
シーズン2から登場した音楽教師カプリは、ネヴァーモア学園の卒業生でもあり、かつては“神童”と呼ばれた存在でした。母校への恩返しとして教師に戻ってきたように見えますが、その背景にはもっと深い思いが隠されていたようです。
物語の終盤で明かされるのは、彼女が人狼でありながらハイドの父を持つという、複雑な血筋を抱えていること。その出自は、彼女自身が長く孤独の中にいたことを物語っています。誰にも理解されなかった過去──それが、彼女の優しさの源なのかもしれません。
カプリは、孤独を抱える生徒たちに何度も「あなたは独りじゃない」と語りかけます。イーニッドが“アルファ”としての自分に不安を感じていたときも、家族を失い心を閉ざしていたタイラーにも、彼女はそっと寄り添い続けました。その言葉には、自分自身が孤独を知っているからこそ伝えられる重みがありました。
最終話では、カプリは学校を去る決断をし、タイラーに「誰にも見つからないハイドたちの隠れ場所がある」と告げます。タイラーは彼女とともにその場所へ向かうようですが、カプリの正体や目的はまだ明かされていません。
シーズン3では、彼女がどんな役割を果たすのか。孤独と向き合う物語の中で、さらに深い意味を持つ存在になるのかもしれません。
シーズン3への期待
アイザックとの戦いを終えたウェンズデーは、家族と一緒に帰ることを選ばず、北へ向かったイーニッドを追って、叔父フェスターとともに旅立ちます。その選択は、血のつながりよりも、自分自身が築いてきた友情を大切にするという彼女の意思を感じさせるものでした。
一方タイラーも、家族を失った悲しみの中で、自分の“ハイド”としての本質を受け入れ、新たな仲間のもとへと歩み出します。両親の墓前でカプリと再会する場面は、孤独の中でも誰かとつながろうとする希望が静かに描かれていて、胸に残ります。
そして物語のラストでは、ウェンズデーの伯母・オフィーリアの衝撃的な現状が明かされます。行方不明になっていたはずの彼女が、へスターの家の地下室に監禁されていたのです。
壁に刻まれた「ウェンズデーは死なねばならない」という言葉は、次なる脅威の予兆として強烈な印象を残し、物語がまだ終わっていないことを告げます。
シーズン3への更新は、2025年7月に正式に発表されました。次はどんな物語が展開されるのか、期待が膨らみます。
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