どうも、夏蜜柑です。
塩田武士さんの小説「盤上のアルファ」を読みました。
著者の塩田武士さんは、元神戸新聞社の将棋担当記者。
そのときの取材経験を活かして書かれた作品です。
塩田さんはこの作品で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、2011年に作家デビューされました。
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この記事の目次
あらすじ
左遷されて将棋担当になった嫌われ者の新聞記者・秋葉と、家も職も失ったタンクトップの元三段棋士・真田。2人は同じ33歳で、人生の岐路に立たされています。
7年前にプロ棋士になる夢を諦め、将棋界を去った真田は、もう一度プロ棋士を目指そうと「三段リーグ編入試験」という超難関に挑みます。
わがままな性格が災いして社会部から文化部に左遷された秋葉は、しぶしぶ将棋担当になり、なぜか真田と同居して彼の挑戦に付き合わされることになります。
感想
わたし将棋はまったく知りません。
この作品の主人公のひとり、秋葉と同じくらい知識ゼロです。
なので、勝負の場面で盤上の駒のイメージができないのが辛かった。
ストーリーは面白いので、将棋を知らなくても問題なく読破できるんですけどね。
わたしは文章をすべて絵に置き換えて読む人間なので、肝心なところで何が起こっているか具体的にイメージできない……というのが残念すぎました。
関西弁の楽しさ
舞台は関西。
勝負の場は、大阪・福島にある「関西将棋会館」。
実際に将棋担当記者だった著者によるリアリティあふれる描写と、関西のドタバタ喜劇を彷彿とさせるコメディ部分の描写の書き分けが絶妙で、爽快なエンターテインメント作品になっています。
関西弁のセリフのやりとりが、すごく楽しいんですよね。
「どうしてもあかんか?」
「あかんな」
「何でや。困ってる人助けるんが新聞記者ちゃうんかっ」
「困ってる人助けるのはおまわりさんや。新聞記者は困ってる人いますよって知らせる係や」
「何の役にも立たへんやないか」
「おまえに言われたないんじゃっ」
こういう掛け合いが随所に登場します。
リズムがいいので、地の文まで関西弁のイントネーションで読んでしまうようになりました(笑)
関西棋界のざっくばらんな気風も伝わってきます。
ただ、わたしは将棋界のことをまったく知らないので、「関西は谷川浩司が独りで関東勢に立ち向かっていたと言っても過言ではない。」という文章を読んでも「そうなのか」という感想しか抱けない自分が残念極まりない。
真田の孤独な戦い
タイトルにもなっている「アルファ」は、オオカミのボスのこと。
天涯孤独の真田が、人生をかけて大逆転に挑む姿を例えています。
前半、真田が登場するまでが長くて、物語に入り込みにくい部分はありました。
真田が登場してからは一気に引き込まれ、クライマックスは手に汗握る展開に。
最後はちょっとした驚きもあって、読後感のいい作品でした。
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