「テセウスの船」原作あらすじ|犯人は誰?タイトルの意味は?タイムパラドックスに挑むミステリー

「テセウスの船」原作ネタバレ感想

どうも、夏蜜柑です。
東元俊哉さんの漫画「テセウスの船」のあらすじと感想です。

わたしの大好きなタイムスリップ系ミステリー
2020年1月からはTBS日曜劇場枠でのドラマ化も決定しています。

主人公は大量無差別殺人犯の息子・田村心。事件が発生する前の1989年にタイムスリップし、事件の真相を突き止めるために父親と共に真犯人を探すという物語です。

スリリングな展開が次々と起こり、「犯人は誰なのか?」「主人公は過去を変えられるのか?」が気になって、読み出すと止まらなくなります。

アニメ化・映画化された「僕だけがいない街」と同じ系列ですね。
タイムスリップ系ミステリーが好きな人はハマると思います。

〈テセウスの船〉とは?

テセウスの船(Ship of Theseus)とは、「同一性」とは何か、を考える思考実験のひとつです。〝テセウスのパラドックス〟と呼ばれています。

プルタルコスという古代ギリシャの哲学者が挙げた「ギリシャ神話」がこちら。

アテナイの英雄テセウスがクレタ島から船でアテナイに凱旋した。その船は記念として、その後長い間アテナイにて保存されていた。だんだん船の建材は朽ちていくため、朽ちた部分は少しずつ新しい建材に置き換えられていった。そしてついに、元の建材は一つもなくなり、全て新しい建材に置き換えられた。
テセウスの船は哲学者らにとって恰好の議論の的となった。ある者は「その船はもはや同じものとは言えない」とし、別の者は「まだ同じものだ」と主張したのである。

船のすべての建材が新しいものに取り替えられても、その船は「テセウスの船」と呼べるのか? という問いです。

似たようなケースは、現代においても身近なところにたくさんあります。

たとえばすべての部品が交換されたパソコン、メンバーがすべて入れ替わったグループ、スタッフや出演者がすべて入れ替わったテレビ番組など。

人間にしてもそうですね。

人の体の中では毎日3千億個の細胞が死に、ほぼ同数の細胞が生まれています。成人の細胞の平均寿命は10年以下とされているので、もはやわたしの中に「昔のわたしを構成していた細胞」は存在しないことになります。

それでも「同じ人間」と言えるのか?

本作の主人公は、過去にタイムスリップして事件の関係者と会い、自分が知っている「未来の彼ら」とはまったく別人のような彼らを見て困惑します。

何が彼らを「変えてしまった」のか、あるいは「何も変わっていない」のか。
そのあたりも注目して読んでほしいポイントです。

登場人物

※一部ネタバレを含みます

田村心
主人公。生まれた時から殺人犯の息子という運命を背負わされ、世間から隠れるように生きてきた。教員免許を持っているが、教師になることは諦めている。服役中の父に会いに行く途中、音臼村に立ち寄って1989年にタイムスリップする。佐野家に居候しながら、妻・由紀が残したノートをもとに事件を阻止しようとする。

田村由紀
心の妻。心とは大学で出会い、事情を知った上で両親の反対を押し切って結婚した。佐野の冤罪を疑い、事件についてノートにまとめていた。娘の未来を出産した際に命を落とす。

佐野文吾
心の父親。元警察官。1989年6月24日に北海道音臼村の音臼小学校で生徒ら21人を殺害した犯人として、死刑判決を受ける。無罪を主張し、現在も札幌の拘置所で無実を訴え続けている。心が産まれる前、「正義」と名付けていた。

佐野和子
心の母親。夫が逮捕され殺人犯の家族となった後、女手ひとつで子供たちを守ってきた。「人様の前で笑顔や涙を見せてはいけない」が口癖。心がタイムスリップした1989年では夫と2人の子供を支える豪胆で明るい女性。

佐野鈴
心の12歳上の姉。心がタイムスリップした1989年では屋根の除雪中に転落し、偶然通りかかった心に助けられる。心の同居人かつ教え子となり、心を本当の家族のように慕う。

佐野慎吾
心の6歳上の兄。殺人犯の息子であることから、職場や住居を転々としている。10年前に心に会いに来て以来、連絡を絶っている。心がタイムスリップした1989年では屈託のない少年。

三島千夏
音臼村の三島医院の次女。1989年1月7日夜、自宅倉庫にあった除草剤パラコートを誤って飲み、死亡する。タイムスリップした心が事前に倉庫からパラコートを盗み出すが、事件を防ぐことはできなかった。

三島明音
音臼村の三島医院の長女。1989年3月12日に行方不明になる運命だったが、心がタイムスリップした1989年では2月5日に行方不明となり、数日後に音臼神社で遺体となって発見される。鈴と仲が良く、おそろいのキーホルダーをつけていた。行方不明になる直前、千夏を殺した犯人として心を疑い、鈴と喧嘩別れしてしまう。

長谷川翼
音臼村の新聞配達員。多忙な三島夫婦の代わりに、明音と千夏の面倒を見てきた。音臼小の子供たちからも慕われている。心が除草剤パラコートを盗むところを目撃し、千夏を殺した犯人として疑う。

佐々木紀子
翼の婚約者。木村鍍金工場でパート従業員として働いている。1989年の4月6日に青酸カリを飲んで自殺する運命だったが、心がタイムスリップしたことによって過去が変わり、生き延びる。

木村さつき
音臼小学校の教員。心が臨時職員として働けるよう校長に掛け合う。1989年6月24日の音臼小無差別殺人事件の被害者となる運命だったが、心がタイムスリップしたことによって過去が変わり、生き延びる。

木村敏行
さつきの父。木村鍍金工場の社長。1989年1月12日に音臼岳山道で雪崩に巻き込まれ重体になる運命だったが、タイムスリップした心に助けられて生き延びる。

田中義男
音臼村の住人で、元町議会議員。有名な詩人でもある。心臓に持病があり、1989年2月5日に心筋梗塞で亡くなる運命だったが、心がタイムスリップしたことで過去が変わり生き延びる。目が見えず寝たきりの状態。

金丸
北海道警察捜査一課の刑事。心の言動を怪しみ、千夏を殺した犯人として疑っていたが、明音が殺された現場写真を見て真犯人に気づく。心のタイムスリップによって過去が変わり、1989年2月に崖から転落して不審死を遂げる。

各巻のあらすじ(ネタバレ有)

田村心は、妻・由紀とやがて産まれてくる子供と共に幸せな家族を築こうとしていた。心の父・佐野文吾は、心が生まれる前の1989年6月24日に北海道音臼村の音臼小学校で生徒と教職員21人に青酸カリ入りのジュースを飲ませて殺害し、死刑判決を受けた元警察官だった。
感情を殺し、教師になる夢をあきらめ、素性を隠してひっそりと生きてきた心。自分たち家族の人生を壊した父親に憎悪を抱いていたが、妻の由紀は佐野文吾の冤罪を疑い、密かに事件に関する記事を集めてノートにまとめていた。
由紀は緊急入院の末に出産に臨むが、命を落としてしまう。結婚に反対していた由紀の両親は、残された子供を自分たちが引き取ると言う。由紀が残したノートを見て、父親の冤罪が証明されれば子供を奪われずに済むと考えた心は、札幌の拘置所で無実を訴え続ける父・文吾に会うため北海道へ向かう。そして事件現場となった音臼村小学校跡を訪れた心は、不思議な霧に包まれ、事件が起こる前の1989年1月7日にタイムスリップする。
音臼村で小学生の姉・鈴を偶然助けた心は、警察官の父・佐野文吾と対面する。佐野の人柄が予想とは違うことに戸惑う心。由紀のノートには、無差別殺人事件の前に音臼村で起きた不審な事件や事故の詳細がまとめられていた。心はその日亡くなるはずの三島千夏を救おうと、彼女の死因となる除草剤パラコートを盗み出すが、運命を変えることはできず千夏は亡くなる。さらに、心がパラコートを盗む現場を新聞配達員の長谷川翼に目撃され、犯人と疑われてしまう。
心は鈴を助けた恩人として佐野家に居候することに。佐野は心を怪しみ追い出そうとするが、心を信じる妻・和子と子供たちに反対される。和子のお腹には子供=心がいた。

佐野は心の荷物を探り、平成27年に交付された免許証を見つけてますます怪しむようになる。心は1月12日に雪崩に巻き込まれて重体になる運命だった木村敏行を救うことに成功。佐野は生まれてくる子供に「正義」と名付け、自分にとって正義とは1人の人間を助けること、どこかの悪人を救うことだと語る。心は自分が「正義」のために生まれたのだと確信する。
北海道警察から捜査一課の金丸が訪ねてくる。金丸は千夏を殺した犯人として心を疑い、身分証を見せるよう促すが、佐野が機転をきかせて金丸を追い返す。心は佐野と一緒に温泉に行き、2017年の未来から来たことを打ち明ける。その頃、犯人は千夏を殺したこと、次の“モルモット”を決めたことをカセットテープに吹き込んでいた。
心は音臼村の小学校教員・木村さつきの力添えで、小学校の臨時職員として働くことに。鈴がいる5年生の担任となるが、子供たちが可愛がっていたうさぎが惨殺されるという事件が起こる。心は新聞配達員の長谷川翼を疑い、子供たちから嫌われてしまう。
心は佐野と協力し、2月5日に心筋梗塞で亡くなる田中義男を助けようと頻繁に家を訪ねる。目が見えない田中は見舞いに来た客や子供たちに詩の代筆を頼んでいたが、そのノートには不気味な絵が描かれていた。

子供たちは心が千夏を殺した犯人ではないかと疑い、よそよそしくなる。そのせいで、心を慕う鈴は親友だった千夏の姉・明音と喧嘩してしまう。2月5日当日、心と佐野は田中のもとを訪れるが何事も起こらず、代わりに明音と鈴がいなくなったという知らせが入る。
小屋に閉じ込められた明音は翼に乱暴され、再び小屋に監禁される。吹雪の中、鈴が見つかるが、明音の行方は知らないと言う。
心は自分が過去を変えようとした結果、事態が悪くなっていることに不安を抱く。佐野は心が何かを隠していると気づきノートを見せるよう訴えるが、心は頑なに拒む。
佐野は心が気にしていた木村鍍金工場を訪れ、青酸カリが盗まれていることを知る。その頃、木村鍍金工場にパート勤務している佐々木紀子は、仕事を休んで翼が撮影した明音の写真を処分していた。
心と佐野は音臼岳の小屋を訪れ、明音が監禁されていた痕跡を見つける。小屋を出た心は、待ち伏せていた金丸に逮捕されてしまう。

金丸に逮捕される直前、心はとっさにノートと免許証を湖に投げ捨てる。音臼神社で明音と翼の遺体が見つかり、死因は青酸中毒だと判明する。金丸は千夏、明音、翼を殺したのは心だとして自白を強要するが、殺害現場に落ちていた「S」のキーホルダーを見て何かに気づく。それは鈴が明音からもらったおそろいのキーホルダーだった。
心は釈放されて佐野家に戻り、佐野にこれから起こるはずの音臼小無差別殺人事件について告白する。事件の犯人は佐野であり、自分は佐野の息子だと打ち明ける心。佐野は心の言葉を信じることができず、怒りを露わにする。佐野に村を出て行くよう告げられ佐野家を出た心は、濃い霧に包まれる。その頃、犯人は心が捨てたノートと免許証を手に入れていた。
2017年6月10日に戻ってきた心は、以前の世界と違っていることを知る。母・和子は事件後に一家心中を図り、和子と慎吾が死亡。姉の鈴と心だけが生き残り、2人は児童養護施設に預けられて育った。心は独り暮らしで、由紀とも結婚していなかった。無差別殺人事件の被害者も一部変わっており、姉の鈴は明音の殺害に関わっているという疑いをかけられていたことがわかる。

由紀の実家を訪ねる心。由紀にとって心は初対面の相手だった。さらに、由紀が週刊誌の記者として佐野の息子である自分に興味を持っていることを知った心は、家を訪ねてきた由紀を追い返してしまう。
心の部屋には、犯人から届いたと思われる不気味な絵が何枚も保管されていた。心は1989年の6月に何があったのかを知るため、札幌の拘置所にいる佐野に会いに行く。佐野は心のことを覚えていた。心は初めて佐野を「父さん」と呼び、2人は涙の再会を果たす。
佐野は1989年に心が姿を消した後のことを話す。2月に金丸が音臼山の事件現場近くで崖から落ちて亡くなった。明音の事件が解明されることはなく、三島夫婦と佐々木紀子は村を出て行った。佐野は村を出ようとしたが和子を説得できず、6月24日の学校お泊まり会を中止に持ち込むこともできなかった。事件当日、佐野は鈴と慎吾をお泊まり会には参加させず、警備として現場に行ったが、事件は起こらなかった。翌朝子供たちが次々と倒れ、牛乳に青酸カリが入れられていたことがその後の調べでわかる。佐野の家から青酸カリが押収されたが、佐野本人には身に覚えのないことだった。
心は佐野から姉・鈴の居場所を聞き、鈴に会いに行く。鈴は名前を「村田藍」と変え、顔を整形し、別人のようになっていた。鈴は妊娠中で、家には足の不自由な内縁の夫がいたが、佐野の娘であることは隠していた。
弁護士のもとに、佐々木紀子から佐野の無実を証明する手助けをしたいという連絡が入る。

鈴は佐野が逮捕されてから母・和子が一家心中を図るまでの辛い日々を語る。鈴と心は2人で佐野に会いに行くが、鈴はこれを最後に会うのをやめると心に告げる。
拘置所からの帰り、心は偶然鈴の夫と義母に会い、彼らが事件の被害者である加藤みきおと教師の木村さつきであることを知る。みきおは青酸カリの後遺症で下半身不随となり、さつきは事件後にみきおを養子として引き取っていた。鈴は加害者遺族としてみきおをサポートしたいと語るが愛情は抱いておらず、高圧的なみきおに怯えていた。
心は由紀を北海道に呼び出し、24日に行われる音臼事件の慰霊祭で佐々木紀子から話が聞けるかもしれないと伝える。その会話を盗み聞きした木村さつきは、鈴を脅して佐々木紀子の家へ同行させる。鈴と再会した紀子は、事件が起きることを前から知っていたと告白する。

1989年2月5日。日頃から翼に暴力を振るわれていた紀子は、翼に命じられて職場の「木村鍍金工場」から青酸カリを盗み、翼に渡した。その後、翼は明音を隠しに行くと言い、明音の写真を燃やすよう紀子に命じて家を出て行った。その翌日、翼と明音の遺体が発見されたが、紀子は警察に何を聞かれても知らないふりを通した。
2月26日、紀子は音臼岳で金丸がある人物と話している現場を目撃する。犯人は素人だと言う金丸に対し、その人物は“未来のことが書かれたノート”を見せ、6月24日に21人が殺されること、その犯人が佐野であること、4月6日に佐々木紀子が自殺することを話す。金丸はその人物に影から突き落とされ、命を落とした。紀子は自分が自殺すると言われたことに動揺し、怖くなって音臼村を出たと言う。
さつきは鈴に紀子を殺すよう促すが、紀子から犯人の写真を見せられた鈴はショックのあまり部屋を飛び出し、意識を失ってしまう。心と由紀は鈴を病院に運ぶが、鈴は子供を堕ろしたいと言い出す。
さつきは紀子を殺して犯人の写真を処分し、自分で自分を刺して110番通報する。病院に搬送されたさつきを見舞いに来た人物は、さつきにオレンジジュースを手渡す。
心は犯人に会うため、音臼小学校跡地へ向かう。そこへ現れたのは、みきおだった。

みきおは車いすに乗っておらず、その手には木村さつきのものと思われる2つの目玉が握られていた。みきおは心が1989年に捨ててきた免許証を取り出し、どうやって過去に戻ったのかと聞く。
心はみきおに自首を勧めるが、霧の中でみきおに刺されてしまう。逃げるみきおを追う中で、心は再びタイムスリップする。心が病院で目を覚ますと佐野がそばにいて、1989年6月20日だという。心は佐野に未来で見てきたことを話し、犯人は木村さつきと加藤みきおだと明かす。
祖母と2人暮らしだったみきおは施設に入り、村を出ていた。心と佐野は施設を訪ねるが、みきおは“加藤信也”と名乗る叔父に引き取られた後だった。
佐野家に戻った心は、和子と鈴、慎吾に歓迎される。心は佐野に村から出ることを勧めるが、佐野は悲劇が起こるとわかっていて見て見ぬふりはできないと村に留まる。
みきおは田中義男の家を訪ね、うさぎを殺した時の状況を詳細に語る。みきおの背後にいた男が田中義男に襲いかかる。駐在所に火事の連絡が入り、心と佐野が駆けつけると、田中義男の家は炎に包まれていた。その頃、佐野の家には加藤を名乗る人物が訪れていた。

佐野家を訪れた男は加藤みきおの叔父だと言うが、心のことを知っていた。佐野が間もなく戻ると知ると、男は立ち去る。田中義男は火事が起きた自宅で遺体で発見される。
加藤信也が村に現れたことを知った佐野と心は、和子と子供たちを親戚の家に非難させることに。前夜、心は佐野家のみんなと夕食を楽しみ、“タイムカプセル”として庭にそれぞれの宝物を埋める。心は幸せだった証が残るようにと、結婚指輪を埋める。
佐野は明音の首にわずかな痣が残っているのを見て、青酸カリで思うように死ななかった明音を犯人が首を絞めて殺したのではないかと考える。痣が強く残らなかったのは、子供の握力だったからだと。
その頃、加藤みきおは未来からきた自分=加藤信也と行動を共にしていた。佐野は校長にお泊まり会の延期を訴えるが聞き入れてもらえず、親戚の家に向かったはずの和子と子供たちも消息を絶ってしまう。
ついに1989年6月24日、事件当日の朝がやってくる。心は音臼小学校へ向かい、佐野は加藤みきおを迎えに駅へ向かうが、みきおも信也も電車には乗っていなかった。
その頃、みきおは湖のほとりで加藤信也と楽しげに語り合っていた。自作のパラコートジュースで千夏を殺したこと、自分に乱暴した翼を脅して明音を監禁・乱暴させたこと、その後明音に青酸カリを飲ませて殺したこと。
みきおと信也は木村さつきを小屋に呼び出し、首を絞めて殺害しようとする。さつきはみきおが鈴と同棲する直前に彼の犯行のすべてを知るが、死を望むみきおを説得し、犯行を隠蔽する道を選んだのだった。

音臼小学校で佐野と合流した心は、一人で放送室にいた加藤みきおを発見。加藤信也とさつきの居場所を尋ねるが、みきおは知らないと言う。
心と佐野はお泊まり会の参加者に飲食物を与えないよう、夕食の前に火災報知機を鳴らそうとするが、故障により警報機は鳴らない。心は飲み物に毒が入っていることを参加者に伝え、お泊まり会を中止させようとする。
そこへ村に来る途中で出会った慎吾をおぶった紀子が現れ、慎吾は和子と鈴が知らない男に連れ去られたと証言。慎吾のポケットには加藤が書いた絵が入っており、教室の黒板の絵と合わせると「18:30」になった。
残り時間は15分を切り、心はひとりで風速計がある小屋へ向かい、佐野は小学校に残ることに。心は小屋で2017年からタイムスリップした加藤に襲われ、監禁される。小屋の中には殺されたさつきの遺体があり、加藤は小屋に灯油をまいて火をつける。
加藤みきおの目的は、鈴の理想の男性である佐野を排除し、鈴を手に入れることだった。しかし事件後の鈴は変わってしまい、みきおが本当に手に入れたかった鈴ではなくなったいた。加藤はみきおに鈴を救出させてヒーローに仕立て上げ、自分が犯人として殺されることで、みきおと鈴の未来を変えようとする。
旧体育館に監禁されていた鈴と和子は、彼らのシナリオ通りみきおによって救出される。みきおは加藤信也が書いた犯行を自白する手紙を持っていたが、佐野は2人の計画だと見抜く。
校庭に加藤が現れて佐野をナイフで刺そうとするが、小屋を脱出した心が駆けつけ、佐野をかばって刺される。佐野は加藤を射殺。佐野が泣き叫ぶ中、心は息を引き取る。
2017年6月10日。佐野と和子、鈴、慎吾は、久しぶりに音臼村を訪れる。家の庭に埋めたタイムカプセルを28年ぶりに掘り起こし、思い出話に花を咲かせる4人。心が残した指輪と家系図を見た佐野は、心の妻「岸田由紀」を探そうとする。
小学校教師になっていた心は、同じ学校で働く同僚の由紀を連れて帰り、家族に紹介する。
千夏、明音、金丸を殺した連続殺人犯・加藤みきおは、少年院を出たあと都内で暮らしていると週刊誌の記事で報じられていたが、北海道に姿を見せていた。

感想(ネタバレ有)

犯人の正体と動機

面白かったです~。
タイムスリップ系が大好きなので、かっつり堪能しました。

思っていたよりもサスペンス描写が怖かったですけどね。
(これ映像化どうするんだろう……)

第9巻で犯人を明かしてしまったのがもったいなかった。
そこでスッキリした分、若干最終巻が盛り下がったように思う。

でも最終巻で犯人の動機が明かされてから再度読み返すと、6巻以降のみきおのセリフや行動がぜんぶ腑に落ちますね。

みきおは鈴を手に入れるために佐野を殺人犯に仕立て上げたけれど(鈴の理想の男性が父親だったから)、再会した鈴は事件の影響で別人のようになってしまっていて。

「テセウスの船」のように、同じだけれど同じじゃなかった。
みきおが手に入れたかったのは、事件前の屈託のない鈴だった。

自分でしたことなのに、勝手な言い分ですけれども。それでタイムスリップの方法を心にしつこく聞いていたんですね。

結末について

タイムスリップ系の面白さは「過去を変えることによって未来が変わる」ところだと思っています。

主人公が最終的に「望んだ未来」を手に入れられるかどうか。
主人公の努力が報われて、未来が良い方向に変わるかどうか。

その結末を見たいがために、ハラハラしながら主人公を応援するわけです。
ところがこの作品は、頑張った主人公が未来を見ずに死んでしまう。

〝彼〟が望んだ未来の風景に、〝彼〟は存在しません。
〝彼〟がいたことを知る人も、ほとんどいません。

変わり果てた未来に存在するのは、新たに生まれた、主人公にそっくりなもう一人の〝彼〟です。

物語としてはうまくできていたけれど、カタルシスはないですね。主人公が死んで物語が終わった後に、別の物語が始まったような淋しさを覚えました。

見せられているのは幸せな未来であるはずなのに、もの悲しい結末でした。
それこそが、この作品の主題「テセウスの船」なのでしょうね。

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