
どうも、夏蜜柑です。
映画「十二人の死にたい子どもたち」のあらすじと感想です。
この作品、内容を誤解していました!
予告やキャッチコピーなどから、密室で「殺人ゲーム」が繰り広げられるホラーサスペンス的なものを想像していましたが、全然違いましたね。
実際に見てみると、「十二人の怒れる男」や「12人の優しい日本人」を彷彿とさせる、会話が中心の古典的な密室劇。面白かったです。
ホラーや殺人ゲームのようなショッキングな内容を期待している人にとっては、物足りないかもしれません。
真相は最後に書いていますが、ところどころ〈ネタバレ〉も付けています。
この記事の目次
作品概要
- 製作国:日本
- 上映時間:118分
- 公開日:2019年1月25日
- 原作:冲方丁『十二人の死にたい子どもたち』
- 監督:堤幸彦(「人魚の眠る家」「イニシエーション・ラブ」)
- 脚本:倉持裕
- 音楽:小林うてな
あらすじ
12人の未成年たちが安楽死を求めて廃病院の密室に集まった。ところが、彼らはそこで13人目のまだ生温かい死体に遭遇する。この12人の中に殺人鬼がいるかもしれないという疑心暗鬼のなか、死体の謎と犯人を探るうちに12人の死にたい理由が明らかになっていく。
U-NEXT公式サイトより
予告動画
原作について
この映画の原作は、冲方丁(うぶかた とう)さんの『十二人の死にたい子どもたち』(2016年刊)です。
第156回(2016年下半期)直木賞候補にもなった問題作。安楽死するために廃病院に集まった12人が、謎の“13人目”の死をめぐって議論を重ねます。
登場人物(キャスト)
※一部ネタバレを含みます
- サトシ(高杉真宙)
15歳、高校1年生。冷静沈着。サイトの管理人で、〈安楽死の集い〉の主催者。ほかの11人をかつて父親が経営していた廃病院に招いた。 - ケンイチ(渕野右登)
16歳、高校2年生。空気が読めず、学校でイジメにあっていた。集いに参加したものの、予期せぬ事態に迷いが生じる。 - ミツエ(古川琴音)
16歳、高校2年生。ゴスロリファッションで参加。あるバンドマンの大ファンで、後追い自殺をするため集いに参加。 - リョウコ(橋本環奈)
17歳、高校2年生。「秋川莉胡」の名前で芸能界で活躍中。帽子とマスクで顔を隠して集いに参加。途中から正体を明かす。喫煙者。 - シンジロウ(新田真剣佑)
17歳、高校3年生。推理が得意。長期療養中でクスリや医療機器に詳しい。 両親は警察官。 - メイコ(黒島結菜)
18歳、高校3年生。自己中心的な「実行」派。母親が何度も変わっており、父親の会社は倒産寸前。自分で自分に保険をかけている。 - アンリ(杉咲花)
17歳、高校3年生。全身黒ずくめ。頭脳明晰で、歯に衣着せぬ物言いをする。幼少時に悲惨な体験をしており、親を恨んでいる。 - タカヒロ(萩原利久)
16歳、高校1年生。吃音があり、母親が用意したさまざまなクスリを常用している。観察力に長けている。 - ノブオ(北村匠海)
18歳、高校3年生。好印象の爽やかな青年。ある秘密を抱えている。ゼロバンを殺した犯人と指摘される。 - セイゴ(坂東龍汰)
15歳、高校1年生。金髪で煙草を吸う不良キャラ。弱者には優しい親分肌。母親に生命保険をかけられている。 - マイ(吉川愛)
17歳、高校3年生。バッチリメイクの金髪ギャル。難しいことはわからず、ときどき会話についていけなくなる。ある病気に罹り悩んでいる。 - ユキ(竹内愛紗)
15歳、高校1年生。地味でおとなしい少女。事故の後遺症で片腕が思うように動かない。 - ゼロバン(とまん)
〈集いの場〉で死んでいた謎の男。
ネタバレ解説
物語のはじまり
安楽死を望む12人の少年少女が、とある廃病院に集まります。
彼らはサトシが管理人をしているサイトから応募し、厳正なるテストの結果〈安楽死の集い〉に招待されたのです。
参加者は、サトシを含む合計12人。
の、はずでしたが……。
彼らが〈集いの場〉に来てみると、謎の13人目が既にベッドで死んでいました。
しかも、どうやら彼は自殺に見せかけて殺されたようなのです。
この13人目の少年はいったい何者なのか? 誰が殺したのか?
12人による議論と推理が始まります。
謎のルールに縛られる
なぜか、彼らは「全員の意見が一致しないと集団自殺できない」という謎のルールを頑なに遵守しようとします。
そのため、なかなか自殺を決行できません。そりゃそうですよねぇ。そんなに簡単に「満場一致」しないことは、この世を生きている者なら誰もが知っている。
しかしこのルールは「十二人の怒れる男」「12人の優しい日本人」における〝投票〟をなぞらえていて、〝12人もの〟では必須なのです。
ケンイチは〝13人目の死〟が引っかかり、このままでは死ねないと言う。
そこで 彼らは13人目を「ゼロバン」と呼ぶことにし、推理が得意なシンジロウを中心に、〝ゼロバンの死〟の真相を突き止めることに。
12人が廃病院を訪れた直後、不審な出来事がいくつかありました。
不審な出来事
【6階エレベーター】椅子二脚
タカヒロ、ノブオ、セイゴの3人は、〈集いの場〉へ行く前に、エレベーターが2台とも6階で椅子をかませて止められているのを見ていました。
エレベーターを止めたのはノブオです。ノブオはゼロバンを6階に隠していたため、誰も来させないようにしたのです。
【花壇】帽子とマスク
マイは、裏口の前の花壇に帽子とマスクが落ちているのを見ていました。その帽子とマスクは、2階のナースステーションに置いてあったのをケンイチが見ています。
帽子とマスクは、ゼロバンを連れてきたユキのものです。ナースステーションに置いてあったのをノブオが見つけ、アンリに捨てさせました。その後、マイに見つかったのは誤算でした。
【1階ロビー】自動ドア
シンジロウは、1階の正面玄関の自動ドアが開いているのを見ました。
ゼロバンは車いすに乗っており、裏口の受付を通れなかったため、誰かが正面玄関の自動ドアを開けてゼロバンを入れたことがわかります。
自動ドアを開けたのはユキ。どうしてもゼロバンを〈集い〉に参加させたかったユキは、定員に達していることを知りながら連れてきました。彼女が自動ドアを開けている間にノブオとアンリがゼロバンを発見し、〈実行〉の妨げになることを恐れて隠したのです。
【1階女子トイレ】片方の靴
ミツエは1階女子トイレにスニーカーが片方だけ落ちているのを見ました。
スニーカーはゼロバンのものと思われ、もう片方は、タカヒロがエレベーターの中で見つけました。
ノブオとアンリが1階の女子トイレにゼロバンを隠した後、ノブオが2階へ移動させようとしたときに片方のスニーカーが脱げました。
もう片方は、ノブオがゼロバンを2脚の椅子で運ぼうとした際に脱げ、上着に隠してノブオがエレベーターの中に置いてきました。
ノブオの告白と失踪
行動をともにする中で、シンジロウが闘病中だということ、セイゴが母親とその恋人から生命保険をかけられていること、ケンイチがいじめに遭っていたこと、タカヒロが母親にいろんな薬を飲まされていること、メイコの母親が何人も代わっていることなどが明らかになります。
タカヒロは、自分が来る前にノブオが屋上にいたことや、上着の下に靴を隠し持っていたことを理由に、ノブオが殺したのではないかと問い詰めます。
ノブオは「俺がやった」とあっさり認めますが、その後、みんなの前から姿を消します。何者かが、ノブオを階段から突き落としたのです。
ノブオが殺したのはゼロバンではなく、同級生です。ノブオは酷いいじめに遭っていて、いじめの主犯格を階段から突き落とし、事故に見せかけて殺した過去がありました。
ノブオを階段から突き落としたのはメイコ。集団自殺を今すぐ〈実行〉させたかった彼女は、ノブオが妨げになると考えたのです。
リョウコの正体
ノブオが戻らないまま、〈集いの場〉で議論を再開する11人。
やがて帽子とマスクで顔を隠しているリョウコの正体が、芸能人の「秋川莉胡」だと判明します。
彼女は子どもの頃から大人たちによって作り上げられた「秋川莉胡」を殺すために〈集い〉に参加したのでした。
すると、〈実行〉派だったミツエが突然〈反対〉派に転身。
彼女は自殺したバンドマンの後追い自殺をするために参加していました。
ミツエは「秋川莉胡」が死ねば多くの人が悲しみ、彼女の後を追って死ぬ若者が出てくると言います。
いつまでたっても「全員一致」しないことに苛立ったメイコは、とりあえず〈実行〉するための準備をしようと提案します。
メイコが自殺する理由
分担して必要な物を〈集いの場〉に運ぶ参加者たち。
メイコはセイゴと4階給湯室へ脚立を取りに行き、なぜ〈集い〉に参加したのか語ります。
彼女はセイゴと違い、自分で自分に生命保険をかけていました。契約から1年経っているため、自殺でも支払われると嬉しそうに語るメイコ。
彼女は父親に対して歪んだ愛情を抱いており、自分が死んで倒産寸前の父親の会社を救うことで、父親の記憶に自分を刻み込もうとしていました。
「死んだ娘に生かされた人だ」と父親(と継母)が周囲から噂されるようになることを望んでいたのです。
呆れたセイゴはノブオを探しに行こうとして、階段で血痕を見つけます。
死に取り憑かれたサトシ
目張り用テープ、練炭、脚立などを〈集いの場〉に持ち込み、集団自殺の準備を進める11人。
〈集いの場〉となった廃病院は、かつてサトシの父親が経営していた病院でした。
サトシの母親と兄は、兄が医大に落ちたことを理由に無理心中を図りました。一命を取り留めた2人は別々の親戚に引き取られ、サトシは父親と二人で暮らしていましたが、父親も長い間うつを患った末に自殺しました。
短期間に身の回りに死が蔓延し、死に取り憑かれたというサトシ。「死にたいとはどういうことなのか、知りたくてたまらない」と言います。
交通事故の後遺症で身体の一部が思うように動かないユキは、「もう十分苦しみましたから。もう楽になっていいはずですから」と、〈実行〉を急き立てます。
そこへ、ノブオが現れます。額から血を流して。
ノブオを階段から突き落としたのは、メイコでした。
ノブオ現る
ノブオは1年前、同じ学校の生徒を殺したと告白します。
いじめを受けていた彼は、主犯格の少年を階段から突き落としました。少年の死は事故として処理され、いじめはなくなりました。
でも、そこからが地獄だったとノブオは言います。これ以上黙ったまま生きていられなくなったノブオは、自殺するために〈集い〉に参加しました。
けれど、かつて自分がやったことをメイコにやり返され、吹っ切れたと言います。
「もう死ぬのはいつでも……ひとりでもできる。けどその前に自首して、全部告白しようってさ」
ノブオはこの場で起きたことの真相をすべて明らかにしてほしい、とシンジロウに託します。
ノブオが自ら語ろうとしなかったのは、協力者であるアンリへの配慮でした。
真相(シンジロウの謎解き)
すべての始まりは屋上でした。
まだサトシが来る前に、アンリとノブオは屋上で出会っていたのです。
何者かがゼロバンを連れてやってくるのを見た2人は、てっきり〈集い〉の参加者だと思い込み、1階へ下りて車いすの手助けをしようとしました。
ところが1階へ下りてみると、車いすを押していた人間がいない。
そして車いすのゼロバンは、息をしていませんでした。
トラブルで〈集い〉が中止になることを恐れた2人は、ひとまずゼロバンを1階の女子トイレに隠すことにしました。
次の参加者リョウコが現れ、女子トイレを使われる可能性があるためゼロバンを引きずって移動、2脚の椅子に乗せてエレベーターで2階へ移動し、ナースステーションの中へ隠しました(この移動の最中に靴が脱げた)。
その後、ケンイチが2階ロビーにやってきたため、再びゼロバンを移動させて6階の売店へ(このときゼロバンが椅子から落ちて音をたてた)。
ノブオはエレベーターに椅子をかませて止めておき、サトシが多目的ホール(集いの場)の扉の鍵を開けて巡回へ行ったのを見て、ゼロバンを〈集いの場〉へ運び込みました。
マイとメイコが来て、人数が1人多いことに気づいた2人は動揺します。
メイコに確認するため正面玄関から出ようとするも、そこにはシンジロウが。ノブオは自販機を使ってシンジロウの注意をひき、その隙にアンリが正面玄関から出て、メイコが部外者かどうか確かめたのです。
参加者全員が中に入ったと思い込んだアンリは、花壇に帽子とマスクを捨てましたが、実はマイがまだ外にいたため、マイが帽子とマスクを発見することに。
そしてメイコがノブオを突き落とした犯人だと確信していたアンリは、メイコを嵌めるためにノブオを呼んで反応を見たのでした。
シンジロウによって全て説明がつき、〈実行〉を妨げるものはなくなったと言うアンリ。
そのとき、死んでいるはずのゼロバンが鼾のような音をたてます。
ゼロバンは生きていました。
まさかの事態に混乱する参加者たち。
生きているゼロバンを、このまま放置しておけません。
けれど、外に出せば人目について集団自殺がバレてしまいます。
参加者たちが言い争うのを聞いていられなくなったユキは、ついに告白を決意します。
真相(ユキの告白)
ゼロバンを〈集い〉に連れてきたのはユキでした。
ユキはゼロバンとともに先に来て薬で眠っているつもりでしたが、車いすが受付を通れなかったため正面玄関を開けに行きました。
ところがその間に、ノブオとアンリがゼロバンを見つけてしまった。
2人が「彼と一緒に実行する」ことを決めたとき、ユキは自分のしたことを認めてもらえたような気がしたと言います。
「本当は不安だったんです。意識がないままここに連れてくること。本人の意志もわからないまま2人で一緒に眠りにつくこと。全部ここで終わりにすること。それは私一人が正しいと思い込んでいるだけなんじゃないかって」
ゼロバンは、ユキの兄でした。
塾の帰り道、ユキは兄の自転車の後ろに乗っていて、ふざけてマフラーを引っ張った。そのとき車が来て、交通事故に遭ったのです。
兄が植物状態になったのは私のせい。そのことを誰にも言えなかったと告白するユキ。
シンジロウは、ユキの言葉「もう楽になっていいはずですから」が自分のことではないと気づいていました。
アンリの主張
たまたま最悪な偶然が起きただけ、たまたま不幸がそこにあって出会ってしまっただけだと話すシンジロウ。
マイはヘルペスに罹ったことを苦にして死のうとしていたことがわかり、全員あ然としてしまいます。
アンリは「生まれてきたことに対する抗議」だと主張。集団自殺で「自分の生には価値がなかった」「生まれてくるべきではなかった」ことを示したいと言います。
彼女は母親から育児放棄されていました。
4歳のとき、母親の煙草の火の不始末で家が火事に。
生まれて一年も経たない弟は火事の炎に巻かれて死に、アンリ自身も身体に大きな火傷を負いました。
「身勝手な大人たちに無価値な生を与えられた私たちが、みんなで抗議するのよ! 生まれてくるべきじゃなかったって!」
シンジロウは治る見込みのない病気に苦しみ、自分の意志で自分の命を終わらせようと思っていたことを告白します。
「でもそれなら、生きるって決めることだってできる。今日ここでみんなに出会えたことで、そう思えるようになったんだ。ちゃんと自分の意志で、いつか死ぬまで生きてやるって」
ここにいる全員に生きてほしい、と訴えるシンジロウ。
シンジロウはこの集いを中止することを提案し、サトシが最後の採決を取ります。
最後の採決
サトシが「集いを中止すること」について決を採ります。
シンジロウに続いて、ノブオ、タカヒロ、ケンイチが手を挙げます。
マイとセイゴが手を挙げ、迷った末にリョウコとユキとミツエが手を挙げます。
みんなが次々と挙手する中、泣き出してしまうメイコ。
最後にメイコとアンリが手を挙げ、〈集い〉は中止されます。
明るい表情でみんなが帰っていった後、アンリは「あなた、もう何度もこういうことしてるでしょう?」とサトシを問い詰めます。
サトシが〈集い〉を開くのは3度目でした。
「もしも〈実行〉に決まっていたら僕も一緒に眠るだけ」と言いつつも、「こうして中止が決まって誰もいなくなると、とても気分がよくなるんです」と。
序盤からときどき挿し込まれていた黒いフードの人たちは、以前の参加者たちのフラッシュバックだったのですね。
アンリは「中止に期待する主催者がいるなら、必ず成功させようとする参加者がいたっていいでしょう?」と、次も必ず参加すると宣言します。
時系列
- ノブオとアンリが廃病院の屋上で出会う
- ユキとゼロバンがやってくる
- ユキが正面玄関の自動ドアを開けに行くが開かない
- ノブオとアンリが1階の受付でゼロバンを発見する
- アンリが電源を入れる(自動ドアが開く)
- アンリとノブオがゼロバンを1階の女子トイレに運ぶ
- アンリが屋上へ行き、リョウコが来るのを見る
- ユキが2階に帽子とマスクを置く
- リョーコがクスノキの下のベンチで煙草を吸う
- ノブオが椅子を使ってゼロバンを2階に運ぶ
- ミツエが女子トイレで靴を発見する
- ノブオがゼロバンを移動する途中、廊下に落とす
- ケンイチとリョーコが2階で物音を聞く
- リョーコが廊下を走っていく人(ユキ)の後ろ姿を見る
- サトシが多目的ホール(集いの場)の鍵を開ける
- ノブオが〈集いの場〉から6階へベッドを運ぶ
- シンジロウがやってくる
- ノブオがエレベーターに椅子をかませる
- タカヒロが階段で屋上へ(ノブオが隠れる)
- マイとメイコがやってくる
- アンリが正面玄関から出ようとするとシンジロウがいた
- シンジロウの注意をひくため、ノブオが自販機を使う
- アンリが正面玄関から外に出る
- ノブオが1階に落ちていた靴を拾い、セイゴと会う
- アンリが花壇に帽子とマスクを捨て、メイコと一緒に中に入る
- ノブオ、セイゴ、タカヒロが一緒にエレベーターに乗る(ノブオがこっそり靴を置いていく)
- マイが花壇で帽子とマスクを見つける
- ユキが1階で黒い上着を脱ぎ、金庫を開ける
- 〈集いの場〉に参加者たちが集まる
感想(ネタバレ有)
視聴前の想像をいい意味で裏切られ、予想以上に楽しめた作品でした。
大人がひとりも登場せず、集団自殺の計画、予期せぬ事態への対応、犯人探しと全容解明、そして最終的に自殺を中止する決断に至るまで、すべて子どもたちだけで行われたという点も興味深かったです。
ただ、やはり2時間内におさめたことで「都合がよすぎる」と思う部分が多々ありました。特にクライマックス。シンジロウが思いを吐露するくだり。
ああ~やっぱりそういうこと言っちゃうのね~~という感じでした。
もう聞き飽きたようなありきたりなセリフと、これまでドラマや映画でさんざん見せられてきた、お手軽なハッピーエンド。
彼ら全員が自殺を思いとどまるには、軽すぎるんですよ……。少なくとも10代のわたしだったら、それくらいのことで生きる希望なんて見いだせなかった。
マイが自殺する理由(ヘルペス)を告白する場面も、受け取り方がわからず戸惑いました。
「他人には些細なことでも、本人にとっては深刻」と伝えたかったのでしょうけども、マイがヘルペスを誤解しているだけとも取れて、一瞬、笑うとこなのかと。
死んだと思っていたゼロバンが実は生きていた、という仕掛けも、首を捻らざるを得ない。気づきそうなものですけどね、体温とか、心音とかで。
そして個人的にいちばん引っかかったのが、登場人物の少年少女たちに死に向かう暗さや危うさ、10代のあやふやで頼りない感じが見られなかったこと。
今をときめく若手の俳優さんたちが出演していることもあって、みんなキラキラしているんですよね。自立した立派な大人に見えてしまうんですよ。
そこは映画だからしょうがないといえばしょうがないんだけど、最後まで違和感が拭えませんでした。
それぞれの背景にもう少し深く立ち入っていたら、また違って見えたかもしれません。
ラストのサトシの告白には、いちばん救われました。
サトシが仕掛け人であることはなんとなく察しがついたけれど、次回(未来)を想像させる終わり方で、優しい気持ちになれました。