映画「ドリーム」感想|ダサいタイトルで判断してはいけない!

映画「ドリーム」

(C) 2016Twentieth Century Fox

どうも、夏蜜柑です。
映画「ドリーム」を見てきました。

見応えのある、いい映画でした。
派手さはないけどしっかり心を掴むストーリーと、ノリのいいファンキーな音楽で、深刻なテーマを扱いながらも誰もが楽しめるエンターテインメント作品になっています。

3人の女性たちがとにかくキュート!
頭が良くて実直で努力家で、応援せずにはいられなくなります!

以下、ネタバレを含みますのでご注意下さい。

基本情報

  • 製作国:アメリカ合衆国
  • 上映時間:127分
  • 公開日:2016年12月25日(アメリカ)、2017年9月(日本)
  • 原題:Hidden Figures
  • 監督: セオドア・メルフィ
  • 脚本:セオドア・メルフィ、アリソン・シュローダー
  • 音楽:ファレル・ウィリアムス、ハンス・ジマー、ベンジャミン・ウォルフィッシュ
  • 原作:マーゴット・リー・シェタリー「Hidden Figures」

あらすじ

東西冷戦下、アメリカとソ連が熾烈な宇宙開発競争を繰り広げている1961年。ヴァージニア州ハンプトンのNASAラングレー研究所では、優秀な頭脳を持つ黒人女性たちが“西計算グループ”に集い、計算手として働いていた。
リーダー格のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)は管理職への昇進を希望しているが、上司ミッチェル(キルスティン・ダンスト)に「黒人グループには管理職を置かない」とすげなく却下されてしまう。技術部への転属が決まったメアリー(ジャネール・モネイ)はエンジニアを志しているが、黒人である自分には叶わぬ夢だと半ば諦めている。
幼い頃から数学の天才少女と見なされてきたキャサリン(タラジ・P・ヘンソン)は、黒人女性として初めてハリソン(ケビン・コスナー)率いる宇宙特別研究本部に配属されるが、オール白人男性である職場の雰囲気はとげとげしく、そのビルには有色人種用のトイレすらない。
それでも、それぞれ家庭を持つ3人は公私共に毎日をひたむきに生き、国家の威信をかけたNASAのマーキュリー計画に貢献しようと奮闘していた。

1961年4月12日、ユーリ・ガガーリンを乗せたソ連のボストーク1号が、史上初めて有人で地球を一周する宇宙飛行を成功させた。ソ連に先を越されたNASAへの猛烈なプレッシャーが高まるなか、劣悪なオフィス環境にじっと耐え、ロケットの打ち上げに欠かせない複雑な計算や解析に取り組んでいたキャサリンは、その類い希な実力をハリソンに認められ、宇宙特別研究本部で中心的な役割を担うようになる。
ドロシーは新たに導入されたIBMのコンピュータによるデータ処理の担当に指名された。メアリーも裁判所への誓願が実り、これまで白人専用だった学校で技術者養成プログラムを受けるチャンスを掴む。さらに夫に先立たれ、女手ひとつで3人の子を育ててきたキャサリンは、教会で出会ったジム・ジョンソン中佐(マハーシャラ・アリ)からの誠実なプロポーズを受け入れるのだった。

そして1962年2月20日、宇宙飛行士ジョン・グレンがアメリカ初の地球周回軌道飛行に挑む日がやってきた。ところがその歴史的偉業に全米の注目が集まるなか、打ち上げ直前に想定外のトラブルが発生。コンピュータには任せられないある重大な“計算”を託されたのは、すでに職務を終えて宇宙特別研究本部を離れていたキャサリンだった……。(公式サイトより)

登場人物(キャスト)

  • キャサリン・ジョンソン……タラジ・P・ヘンソン
  • メアリー・ジャクソン……ジャネール・モネイ
  • ドロシー・ヴォーン……オクタヴィア・スペンサー
  • アル・ハリソン……ケビン・コスナー
  • ヴィヴィアン・ミッチェル……キルスティン・ダンスト
  • ポール・スタフォード……ジム・パーソンズ
  • ジョン・ハーシェル・グレン……グレン・パウエル
  • ジム・ジョンソン……マハーシャラ・アリ
  • ジョイレット・コールマン……ドナ・ビスコー

感想(ネタバレあり)

冒頭のポスタービジュアルにもあるように、当初発表されたこの映画の正式タイトルは「ドリーム 私たちのアポロ計画」でした。

発表後、SNSなどで「アポロ計画じゃないのにおかしくない?」という声が高まり、ただの「ドリーム」というタイトルに訂正されたという経緯があります。
なので、妙にぼんやりした、平凡というかダサいというか、インパクトに欠ける微妙なタイトルに……(-_-;)

ちなみに、この映画で描かれているのは「マーキュリー計画」で、1959年から1963年にかけて実施されたアメリカ初の有人宇宙飛行計画です。

原題の「Hidden Figures」は、隠れた数字、隠れた人たち、という意味だそうです。

物語の舞台は、1961年

1961年、バージニア州ハンプトン。
アメリカ南部では、まだ白人と有色人種の分離政策が行われていました。

リンカーン大統領の奴隷解放宣言が行われたのが、1862年。
奴隷制が廃止されてから100年経っても、権利の制限は続いていたんですね。

キング牧師が「I Have a Dream」(私には夢がある)で知られる有名な演説を行ったのが1963年。人種差別の撤廃を訴える声が高まっていた時代でもありました。
主人公たち3人も、そんな大きなうねりの中で、懸命に夢を実現させようとしていました。

映画の中にも登場しますが、学校、図書館、職場のトイレや休憩室、バスの座席、街頭に設置されたウォータークーラーなど、どれも“白人用”と“非白人用”に別れています。

私が特にショックだったのは、職場のコーヒーポット。
主人公のひとり、キャサリンが、新たに配属された宇宙特別研究本部でコーヒーを飲むと、その場が一瞬で静まり返り、白人男性たちが全員キャサリンに冷たい視線を浴びせるんです。

それはもう、凍りつくような視線です。
そして次の日、キャサリンが出社すると、そこには“非白人用”という小さなポットが新たに置かれていました。

この映画に、暴力シーンはありません。
NASAという、特別に頭の良い人たちが集まる場所が舞台ということもあり、みんな表向きは紳士で淑女です。ただ、あからさまに声に出さないだけ。
自分は差別なんてしてない、これが普通で常識なんだ、と思い込んでるだけ。

私は暴力も大嫌いですが、こういう声に出さないイジメが大っっ嫌い。
なので、このコーヒーのシーンがいちばん腹立ちました。

でもキャサリンたちは、街頭で声高に人種差別撤廃を訴える人々を遠目に見ながら、あくまで知性を武器に、頭脳と実力で戦います。
彼女たちの心には、誰も汚すことのできない毅然とした誇りがあり、自信に溢れている。
だから、いつでも堂々としてる。その態度もまたカッコいい!

また、この当時は、いわゆる「冷戦」のまっただ中でした。
第2次世界大戦後、アメリカとソ連の関係が悪化し、厳しい緊張関係に陥っていました。両国を中心とする2大勢力(資本主義と共産主義)の対立は、ほぼ世界の全体に及びました。
実際に撃ち合う戦争(ホット・ウォー)に対し、冷たい戦争(コールド・ウォー)と呼ばれました。

アメリカの宇宙開発

1957年10月、ソ連は人工衛星スプートニク1号を打ち上げ、軌道に乗せることに成功します。
アメリカはソ連に対抗する形で宇宙開発を推し進め、アメリカ航空宇宙局(NASA)を設立します。

キャサリン、ドロシー、メアリーたちが計算士として働いていたのは、ラングレー研究所。
ここはNASAの最古の研究施設と言われ、月面着陸機の飛行シミュレートをはじめ、多くの宇宙機、航空機の計画と設計が行われました。

まだコンピュータがなかった時代、計算は人の手でやるしかなかったので、忙しい男性たちは手が回らず、女性を雇って計算をやらせるようになった……という背景があるようです。
そのおかげで、黒人女性たちも計算士という仕事を得ることができたんですね。

1961年の4月、「地球は青かった」の名言で知られる宇宙飛行士・ガガーリンを乗せたソ連の宇宙船ボストーク1号が、ついに地球一周に成功します。

アメリカはソ連に大きく遅れを取ってしまい、映画の中でも、ケビン・コスナー演じるハリソン本部長が蒼白な面持ちで「これからは毎日残業してもらう」と、部下たちを鼓舞していました。

そんな状況もあって、とにかくNASAは、優秀な人材、使える人材を、喉から手が出るほど欲しがっていた!と言えます。

夢を見る勇気

白人なら、男性なら、普通にしていれば苦労せず手に入るものでも、黒人女性であるキャサリンたちが手に入れようとすると、いくつもの障害が立ちはだかります。

キャサリンは、仕事中に本部の近くにある白人用のトイレを使えず、片道800mもある前の職場の非白人用トイレまで、往復40分かけて行かなくてはなりません。そのたびに仕事が滞ります。

女性だから、という理由で大事な会議には同席させてもらえず、計算士だから、という理由で重要な項目は見せてもらえず、自分が計算した書類に名前を入れることさえ許されません。

ドロシーは、管理職を代行しているのに管理職には就けず、前例がないからという理由で昇給も認められません。

エンジニアになりたいメアリーは、夫から「叶わない夢を見るな、傷つくだけだ」と言われます。エンジニアになるには、白人専用の学校に編入しなくてはなりませんでした。

でも、彼女たちは夢を見ることを決して諦めません。

キャサリンの上司・ハリソンは、キャサリンから訴えられて初めて、彼女が使えるトイレが近くにないことを知ります。ハリソンは“非白人用”と書かれたトイレの看板をハンマーで叩き割り、これからはどこでも自由に使えと言います。

ケビン・コスナー演じるハリソンという上司、差別心を持たない平等主義者のように見えますが、ただの仕事バカであり数学バカです(笑)

要するに、仕事ができて数学ができる人材なら、黒人だろうが女だろうが関係ない、という考え。もしキャサリンが仕事できず、数学の天才でなかったら、たぶん彼は無視したでしょう。

でも、こういう人が新しいものを作っていくんだろうな。
古いものに囚われず、前例や慣習に縛られない生き方を、なんの抵抗もなく自然にできる人。

久しぶりにケビン・コスナーを見たけど、いい役どころでした。

重く暗くなりがちな、深刻なテーマを扱っているのですが、キャサリンたち3人が常に前向きで明るく、堂々としているので悲壮感はありません。ノリのいい音楽や、当時のファッションもオシャレ。

彼女たちは地道に、ひたむきに努力を重ね、それが実を結んで少しずつ認められていく。ど派手な成功ではないけれど、影の努力が報われるというストーリーは、静かに胸を打ちます。

正直、2017年の今でも、女性だから、という理由で権利を制限されることはよくあります。
派遣社員だから。パートだから。学歴がないから。
いろんな理由で、差別を受けることはたくさんある。

彼女たちのように、自信を持てる何かがあれば、それを頼りに生きていくことができる。
でも、何も持っていなくても、堂々と生きてていいと、私は思うんですけどね。


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