映画「GAMBA ガンバと仲間たち」を見ました。
実はあまり期待せずに見たんだけど(というか見るの怖かったんだけど)、予想外に面白かった!!
何より原作へのリスペクトが随所に感じられて、原作ファンとしては胸熱でした。
ポスターの背景絵とか……藪内正幸さんの挿絵そのものじゃん(泣)
作品概要
- 制作国:日本
- 上映時間:92分
- 公開日:2015年10月10日(日本)
- エグゼクティブ・プロデューサー:アヴィ・アラッド
- 監督:河村友宏、小森啓裕
- 脚本:古沢良太(「探偵はBARにいる」「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」)
- 原作: 斎藤惇夫『冒険者たち』
- 音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
- 主題歌:倍賞千恵子「ぼくらが旅に出る理由」
予告動画
あらすじ
都会に住む町ネズミのガンバとマンプクは、港で船乗りネズミの宴に参加する。そこへ島ネズミの忠太が助けを求めてやってくる。
忠太がいる夢見が島に白イタチの「ノロイ」が現れ、次々と仲間を襲っているという。ノロイの名に怯える船乗りネズミたち。
ガンバとマンプク、ボーボ、ヨイショ、ガクシャ、イカサマは、島ネズミを助けるため忠太と共に船に乗って島へ向かう。
島ネズミたちと協力し、ノロイに立ち向かうガンバたち。追い詰められたネズミたちを救ったのは、島に伝わる“歌”に隠された秘密だった。
キャスト(声の出演)
ガンバ……梶裕貴
潮路(シオジ)……神田沙也加
マンプク……高木渉
忠太……矢島晶子
ボーボ……高戸靖広
イカサマ……藤原啓治
ガクシャ……池田秀一
ヨイショ……大塚明夫
ツブリ……野沢雅子
ノロイ……野村萬斎
感想
素直に、面白かったです。
CGアニメっていう時点で、見る前はかなり引いてたんですけど。
私は原作のファンで、旧アニメ(1975年放送)にはそれほど思い入れがありません。なので旧アニメとは似ても似つかないキャラデザも、割とすんなり受け入れられました。
キャラクターは、旧アニメよりこちらのほうが原作に近いです。
原作寄りのキャラクター

(C)SHIROGUMI INC., GAMBA
うれしかったのは、マンプクがいたこと!
旧アニメでは、いなかったんですよねー(これかなり不満だった)。マンプクはガンバの幼なじみで、同じ町ネズミ。食いしん坊キャラで笑わせてくれる、重要な存在です。
イカサマも、原作に近い渋めのキャラになってましたね。
マンプクが現れたことで、旧アニメではガンバの幼なじみ役だったボーボが独立し、互いに孤独だったイカサマとボーボの友情がより深みを増しました。
ガクシャは、声を池田秀一さんがあててくれたのが、素晴らしいの一言。原作だと、もう少し老齢なイメージだけど。スラリとしたイケメンのガクシャも悪くなかったです。
ガンバの仲間は本当は14匹

(C)SHIROGUMI INC., GAMBA
オオミズナギドリのツブリは、原作では男性キャラなのですが、今回は女性キャラに変更。そして声をあてたのが旧アニメでガンバの声を担当した野沢雅子さん!
これは胸熱。旧アニメに思い入れの少ない私でも、やっぱガンバの声は野沢さんだもんなー。
ノロイの中性的なキャラクターは、旧アニメより原作に近いですね。CGがカクカクしてたのが残念。イタチは嫋やかで美しくないとね。
原作では、ガンバと共に島に渡る仲間は忠太を除いて14匹なわけで、それがたった5匹に減らされたのは、やはり寂しい(旧アニメもそうだったけど)。
謎めいた年寄りネズミのオイボレとか、ロマンチストのシジンとか、好きだったなぁ。
長編作品を92分に収めた結果…
全体的に、原作を忠実に映画化したという印象です。
ただ、原作のオイシイ部分だけをつなぎ合わせているため、唐突に感じられる部分も多かった。長編作品の映画化にはよくあることだけど。
たとえばガンバの旅立ち。たとえばイカサマとボーボの友情。
原作は、児童文学と言ってもかなりの長編。
ネズミやイタチ、オオミズナギドリといった動物たちの生き生きとした動き、夢見が島(モデルは八丈島)の力強く美しい自然が、圧倒的な文章で、丁寧に描かれている作品です。
ガンバたちが島に渡ってから、忠太の家族に会うまでの間に、ハラハラドキドキする冒険がたっくさんあります。
仲間たちはそれぞれの思いを抱え、時に落ち込んだり、喧嘩したりします。
ノロイ一族との攻防も、たった一晩ではありません。
物語の後半、島に伝わる歌に隠された真実をガクシャが解き明かしていく場面なんて、ミステリ小説でも読んでいるかのようにゾクゾクします。
ガンバたちの“大冒険”を92分に収めてしまったことで、あっけなく感じてしまったことは確かです。
この映画を見て面白いと思った人は、ぜひ原作を読んでみてください。
最高の”物語”
興行的には失敗したようですが、作品としてはよく出来ていました。
わたしが、こうして感想を書かずにはいられないほど!
この“物語”には、わたしの“好き”が全部詰まってます。
原作『冒険者たち』を初めて読んだのは子供の頃でした。大人になってからも何度も何度も読み返し、20歳の時には作者の斎藤惇夫さんに手紙まで出しています(その後、なんとお返事をいただきました)。
いつ何度読み返しても色褪せることのない、わたしにとって最高の”物語”。
こうして違う形で何度もこの”物語”と出会えるのは、このうえない喜びです。