WOWOW「塀の中の美容室」全話あらすじ・感想・登場人物(キャスト)一覧|刑務所内の美容室が描く再生の物語

WOWOWドラマ「塀の中の美容室」あらすじキャスト一覧

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WOWOWの連続ドラマ「塀の中の美容室」(1話30分/全7話)についてまとめました。

女子刑務所に実在する美容室をモデルに描かれた桜井美奈氏の連作短編集『塀の中の美容室』をドラマ化。

女子刑務所内にある「あおぞら美容室」を舞台に、美容師・小松原葉留がさまざまな事情を抱える人々の心に寄り添いながら髪を切り、彼女自身も過去の罪と向き合っていく“再生”の物語です。

作品概要

  • 放送局:WOWOW
  • 放送時間:2025年8月22日(金)から毎週金曜23:00ほか
  • 原作:桜井美奈『塀の中の美容室』
  • 脚本:狗飼恭子
  • 監督:松本佳奈
  • 音楽:林正樹

あらすじ

女子刑務所の中に、“受刑者が一般客の髪を切る”美容室がある。鏡の前に立つ美容師は重い罪を犯した者。小松原葉留(奈緒)は、美容室担当の刑務官・菅生冬子(小林聡美)に連れられ、今日も刑務所内に存在する“あおぞら美容室”に向かう。葉留は、刑務所長の保坂(光石研)が受刑者たちへのある想いを込めて作ったその美容室の唯一の美容師で、一般客の髪を切っている。
この美容室に立てるのは美容技官・加川実沙(成海璃子)らの指導により刑務所内で美容師免許を取得したごく一部の受刑者。そしてそんな美容室を訪れる、さまざまな事情を抱えた一般のお客様たち。幅広い年代の女性たちはなぜ、そこで髪を切るのか。優しい面持ちで物静かな葉留は、彼女たちの想いに寄り添うように話に耳を傾けながら丁寧に髪を切っていく。そんなある日、自身が犯した事件により、加害者家族になってしまった姉の小松原奈津(夏帆)が客として美容室を訪れ……。

原作について

このドラマの原作は、桜井美奈氏の連作短編集『塀の中の美容室』(2018年刊行)です。

女子刑務所内にある架空の美容室を舞台にした連作短編集。モデルとなったのは、実在する岐阜県の笠松刑務所にある美容室で、受刑者が美容師として一般客の髪を切るという実際の制度に着想を得ています。

物語の軸となるのは美容師資格を持つ受刑者・小松原葉留。しかし、彼女自身の視点では語られません。代わりに、髪を切りに訪れる女性たちが各話の主人公となり、それぞれの人生の迷いや悩み、孤独や再生の物語が描かれます。

息子夫婦との同居に失敗した高齢女性、抗がん剤治療を控えたパーツモデル、興味本位で訪れた女子中学生など、多様な背景を持つ女性たちが登場します。

加害者と被害者、社会と個人、偏見と理解といったテーマを、繊細かつ温かな筆致で描いており、読後には静かな希望が残ります。

登場人物(キャスト)一覧

※第4話までのネタバレを含みます

刑務所

小松原葉留(奈緒)
刑務所内の美容室「あおぞら美容室」の美容師。ある事件を起こして服役中。2年前に美容師免許を取得し、「あおぞら美容室」で一般客の髪を切っている。自身は5年前から一度も髪を切っていない。

菅生冬子(小林聡美)
あおぞら美容室担当の刑務官。明るく気さくな性格。葉留をそばで見守っている。

加川実沙(成海璃子)
刑務所職業訓練美容科の美容技官。美容師免許取得を目指す受刑者たちを指導する。葉留の姉・奈津とは友人関係。思うようにならない現実に、刑務所という場の限界を感じ始める。

保坂一路(光石研)
刑務所所長。「あおぞら美容室」に特段の思い入れを持っている。

佐藤望(長井短)
受刑者。美容師免許の取得を目指す美容科訓練生。いつも独りでいる葉留を気にかけ、仲良くなろうとする。

二村(広岡由里子)
葉留の向かいの単独室の受刑者。声を出さないと本を読むことができず、ほかの受刑者から迷惑がられている。

葉留の周辺人物

小松原奈津(夏帆)
葉留の姉。美容師。かつて実沙と同じ美容室で働いていた。葉留が罪を犯して以来、加害者家族としての苦悩を抱えて生きている。

小松原亜希(朝加真由美)
葉留と奈津の母親。「小松原美容室」を経営する美容師。女手一つで2人の娘を育ててきた。葉留が事件を起こした後も、2人の娘に寄り添い続けている。

津田翔太(上川周作)
葉留の姉・奈津の恋人。葉留との面会を求めて刑務所にやってくる。

波沼弘樹(中島歩)
葉留の元交際相手。

美容室を訪れる人々と、周辺人物

芦原志穂(祷キララ)
文化部の新聞記者。取材のため、素性を隠したまま「あおぞら美容室」を訪れる。恋人に別れを告げられ、過去と決別するために彼と付き合った2年2か月分、26センチ髪を切る。

鈴木公子(由紀さおり)
近所に住むおしゃべり好きの高齢女性。葉留を気に入り、「あおぞら美容室」初の常連客となる。夫を亡くした後、名古屋に住む息子家族と同居をしていたが、うまくいかず別居することになり、現在は独り暮らしをしている。

一井彩(中島セナ)
ヘアモデル。抗がん剤治療を前に髪を切る決意を固め、「あおぞら美容室」を訪れる。前科のある母に対して複雑な思いを抱えている。

一井典子(西田尚美)
彩の母親。彩が高校生のころ、会社の金を横領して逮捕され、1年4か月の実刑判決を受けている。彩の病気を知り、彼女に寄り添おうとする。

曽根(伊勢志摩)
公民館の世話役。何かと葉留を気遣っている。

久志(木梨憲武)
公民館での活動を通じて葉留と知り合う。認知症の母親の世話をしている。

各話のあらすじ(ネタバレ有)

ある事件で服役することになった小松原葉留(奈緒)は、刑務所内で美容師免許を取得する。女子刑務所の「塀の中」にありながら、「塀の外」の一般客を迎える〈あおぞら美容室〉の唯一の美容師である葉留は、担当刑務官の菅生(小林聡美)や、美容技官の実沙(成海璃子)が見守る中、日々鏡の前に立つ。
ある日、新聞記者の芦原志穂(祷キララ)が素性を伏せたまま、取材目的で美容室を訪れる。受刑者である葉留に対し、志穂は最初こそ緊張を隠せないが、葉留の真摯な仕事ぶりに触れるうち、少しずつ心を開いていく。
美容室を訪れる直前、志穂は2年2か月付き合った恋人から「別れよう」というメッセージを受け取っていた。葉留との会話の中で、志穂はその年月を手離すことを思い立ち、「2年2か月分、26センチ切ってください」と告げる。
短くなった髪を見つめながら、付き合い始めた頃の記憶がよみがえり、志穂は思わず涙をこぼす。そんな彼女に葉留はそっと寄り添い、「涙なんて、ただの生理現象です」と静かに言葉をかける。
刑務所を後にした志穂に、通りすがりの見知らぬ女性(由紀さおり)が「どうだった?」と声をかける。志穂は少し笑って、「いい美容室でしたよ」と答える。

刑務所に収監されたばかりの葉留は、4人部屋で他の受刑者たちと過ごしていた。刑務所内で美容師の資格が取れることを知った葉留は、美容科の訓練生となる。やがて美容師免許を取得し、優等生のみが許される単独室へと移るが、そのことが周囲との距離を生んでいた。
現在、葉留は刑務所内の「あおぞら美容室」で唯一の美容師として働いている。ある日、近所に住むおしゃべり好きの高齢女性・鈴木公子(由紀さおり)が来店し、葉留のカット技術に辛口ながらも満足の意を示す。
公子は次回の予約を入れて帰り、葉留にとって初めてのリピーター客となる。葉留はその喜びを隠しきれず、菅生とともに小さな達成感を分かち合う。
一方、美容科の教室では、美容技官の加川実沙が受刑者たちに授業を行っていた。実沙は美容師として6年間働いた後、専門学校講師としての経験を経て、刑務所での職業訓練に携わるようになった。
生徒たちの真剣な姿勢に教えがいを感じつつも、彼女たちは本当に美容師になりたいのだろうか、と疑問を抱く実沙。そんな中、受講生の2人が菓子の取り合いによる喧嘩で授業から除外され、実沙は落胆する。
葉留は、居室でヘアスタイルのスケッチを描きながら、美容師の姉・奈津(夏帆)に想いを馳せる。かつて奈津は結婚式の髪を葉留に結ってほしいと願い、幼い頃に交わした「いつか二人で美容室をやろう」という夢を語っていた。
だが葉留は「向いていない」とその夢を遠ざけていた。

美容科の訓練生である高梨と森田が、居室内での些細な喧嘩を理由に懲罰処分を受け、美容科を退学になる。美容技官の実沙はその厳しい対応に疑問を抱き、所長の保坂に直談判するが、「ここは外の学校とは違う」と諭され、無力感に苛まれる。菅生に心情を打ち明けるも、「秩序がなければ守れない場所だ」と返され、刑務所という場の限界を痛感する。
一方、葉留は美容室で客の無理な要望に応えられず、対応に苦慮する。黒染めした髪を短期間でピンクに染めたいという注文に対し、髪のダメージを理由に断ると、客は怒りを露わにし、「二度と来ない」と言い残して去っていく。
その一件に落ち込んだ葉留は、翌日、同様の状況に備えてマネキンを使った染色の練習を始める。「一度でも経験していれば、もっと説得力のある説明ができたはず」と語る葉留に、実沙は「どうしたらいいか、一緒に考えよう」と寄り添う。
実沙は教室で訓練生たちに向けて、「努力の先に何があるかはわからない。でも、わからないからこそ頑張るしかない」と語り、誰一人欠けることなく卒業へ導く決意を新たにする。
葉留は母・亜希(朝加真由美)への手紙を書きながら、かつて進路について語り合った日の記憶を辿る。姉・奈津が美容師試験に合格した日、母に「あなたも美容師になりたかったんじゃないの?」と尋ねられた葉留は、「それはもう子供の頃の話」と言って、気持ちをはぐらかしたのだった。

ヘアモデルとして活躍していた一井彩(中島セナ)は、抗がん剤治療を前に髪を切る決意を固め、刑務所内にある「あおぞら美容室」を訪れる。
美しく手入れされたロングヘアを、「ばっさり切ってほしい」と葉留に告げる彩。彼女の事情を知った葉留は、切った髪をウィッグにしてはどうかと提案。彩はその提案を受け入れる。
彩が「あおぞら美容室」を選んだのは、誰にも病気のことを知られたくなかったのと、母・典子(西田尚美)がかつて服役していた“刑務所”という場所に足を踏み入れてみたかった、という理由からだった。
彩の母・典子は、祖父の工場を救うために会社の金を横領し、1年4か月の実刑判決を受けていた。当時高校生だった彩は、母の逮捕によって芸能活動を断念し、世間からのバッシングに晒されることになった。その苦い記憶が、母への複雑な感情を生み続けていた。
葉留は、自分自身の思いを重ね、彩の母もまた深い悔恨の中にいるはずだと彩に伝える。彩はそれを理解しつつも、「許すかどうかは別」と冷静に言い放つ。
帰宅後、自分で髪を切った典子を見て驚いた彩は、反発しつつも母の不揃いな髪を整える。典子は「嫌われたと思っていた」と告げ、彩は「今も嫌い」と言いながらも、髪を通じて母との関係を見つめ直す。
葉留のもとには、津田翔太からの手紙が届いていた。度重なる手紙には、「どうしても聞きたいことがあります。会っていただけないでしょうか?」と綴られていた。

あおぞら美容室に新聞記者・芦原志穂が取材に訪れる。葉留は、子どもの頃から髪型で人が変わる様子に魅了されていたが、自分には向いていないと一度は夢を諦めた過去を語る。
志穂が家族に美容師がいるかと尋ねると、葉留は姉・奈津が立派な美容師であることを明かし、家族に迷惑がかからないよう記事には書かないでほしいと懇願する。志穂はその願いを受け入れ、取材後に「いつかまた美容室で会いましょう」と告げて去っていく。
一方、常連客の鈴木公子は、息子との同居のため名古屋へ引っ越すことになり、もう美容室には通えないと葉留に別れを告げる。公子は葉留に連絡先を渡すが、規則により受け取ることができず、葉留は涙ながらに別れを惜しむ。公子は所長に「あの場所が大好きだった」と伝えてほしいと刑務官に頼み、美容室での思い出を胸に去っていく。
その頃、葉留の実家である小松原美容室では、母・亜希がウィッグ作りに取り組んでいた。葉留が提案した受刑者・一井彩のウィッグは、実沙を通じて亜希に依頼されたのだ。実沙は美容室を訪れ、かつての同僚である奈津と久しぶりに再会する。
実沙が現在、刑務所の美容科で働いていることを知った奈津は驚きと戸惑いを隠せない。妹・葉留が逮捕されたことで、婚約を破棄され、職場にも行けなくなり、部屋に閉じこもっていた辛い過去を思い出す奈津。
葉留に対して複雑な感情を抱える奈津に対し、実沙は刑務所内の美容室で葉留が真剣に努力していることを伝える。母・亜希は、葉留が美容師としての道を歩むことを肯定しながらも、奈津の気持ちを何よりも大切にしたいと語る。
その後、葉留のもとに奈津の現在の恋人・津田翔太(上川周作)が面会に訪れる。翔太は、かつて近所に住んでいたことがあると自己紹介し、葉留に対して「あの事件」について話を聞きたいと切り出す。

葉留は姉・奈津の恋人である翔太と面会する。奈津との結婚を望む翔太は、葉留の過去を理解したいと語るが、葉留は「人が人を理解することなどできるのか」と静かに問い返す。
葉留の記憶は、かつての恋人・波沼(中島歩)との日々へと遡る。幸せだった時間は、妊娠を告げた瞬間から一変。波沼の態度は冷たくなり、葉留は流産を経験する。さらに波沼が既婚者であり、関係を一方的に終わらせようとしていることを知り、深く傷つく。涙ながらにすがる葉留に、波沼は「どうせ産めなかったんだから、これでよかったんだ」と言い放つ。
その夜、葉留は合鍵で波沼の部屋に入り、眠っている彼を刺してしまう。葉留は殺人未遂で起訴され、裁判で懲役7年の判決を受ける。
翔太は「葉留もまた被害者ではないか」と語り、なぜ何の釈明もせず重い刑を受け入れたのかを問う。葉留は「罪は許されてはいけない」と答え、翔太に「姉と結婚しても、私と家族になる必要はない」と告げる。
葉留は刑務官の菅生に、美容師になるのが夢だったこと、幼い頃に姉を傷つけて以来その夢を諦めたこと、そして結局また人を傷つけてしまったことを語り、多くの人を苦しめた自分の罪は決して償えないと胸の内を明かす。
翔太は奈津に葉留との面会を報告し、結婚を申し込む。しかし奈津は「誰とも結婚しない」と拒絶。「犯罪者の家族になるには翔太はいい人すぎる」と言い、距離を置こうとする。
葉留に仮釈放の話が持ち上がるが、「ここを出たくない、満期まで務めたい」と固く答える葉留。そして、あおぞら美容室には新たな客として奈津が現れる。

葉留の姉・奈津が刑務所内の「あおぞら美容室」に客として現れる。葉留は美容師として冷静に振る舞おうとするが、奈津への複雑な思いがあふれ、ミスを重ねてしまう。そんな葉留に奈津は優しく声をかけ、落ち着かせる。
帰り際、奈津は「一人でよく頑張ったね」と葉留を抱きしめる。葉留は堰を切ったように涙を流す。奈津は「もう切っていいよ、髪。私あのときより幸せだから。葉留、いつか一緒にお店やろう」と笑顔で語り、美容室を後にする。
その後、葉留は満期まで刑期を務める意思を示すが、所長の保坂は美容室の名前の由来「井の中の蛙、大海を知らず。されど空の青さを知る」を伝え、「君は十分その青さを知ってると思うよ」と語る。その言葉に心を動かされた葉留は、母・亜希に仮釈放の身元引受人になってほしいと手紙を書く。
仮釈放の日、葉留は5年半の刑務所生活を終えて外に出る。刑務官の菅生は「二度と戻ってくるな」と厳しく告げ、葉留は涙ながらにうなずく。迎えに来た母・亜希とともに実家へ戻った葉留は、誰もいない美容室の鏡の前で、罪を忘れないために伸ばし続けた髪に自らはさみを入れる。
4年後、「あおぞら美容室」では佐藤が美容師として働いており、公子が再び常連客として通っている。同居生活がうまくいかず一人に戻った公子は、「生きるってすばらしい」と語り、佐藤と楽しそうに会話を交わす。その様子を、菅生と実沙が温かく見守っている。
一方、葉留は田舎の一軒家で暮らしながら訪問美容師として活動している。公民館には地元の高齢者たちが集まり、葉留の手で髪を整えてもらっている。みんなが帰った後、認知症の母チズを連れた久志(木梨憲武)が駆け込んでくる。葉留はチズを外へ連れ出し、満開の桜の下で髪を切る。

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