1973年の映画「ジャッカルの日」についてまとめました。
冷戦時代のフランスを舞台にしたサスペンス・スリラーの傑作。原作は、フレデリック・フォーサイスの同名小説です。
1963年に実際に起こったフランス大統領シャルル・ド・ゴールの暗殺未遂事件を背景に、孤高の暗殺者「ジャッカル」と彼を阻止しようとする警察の戦いをドキュメンタリータッチで描いた作品です。
ジャッカルの計画の緻密さと狡猾さ、ヨーロッパ各地で展開する緊張感あふれる追跡劇が見どころです。
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Contents
作品概要
- 製作国:イギリス/フランス(1973年)
- 原題:The Day of the Jackal
- 原作:フレデリック・フォーサイス『ジャッカルの日』
- 脚本:ケネス・ロス
- 監督:フレッド・ジンネマン
- 音楽:ジョルジュ・ドルリュー
- 製作:ジョン・ウォルフ
- 動画配信:U-NEXT

原作について
このドラマの原作は、このドラマの原作は、英国の作家フレデリック・フォーサイスの小説「ジャッカルの日」(1971年刊行)です。
1950年代から1960年代にかけて実際に存在した、フランスの極右組織OASの暗殺計画をもとにしたフィクションです。
著者のフォーサイスはジャーナリストとしての経歴を持ち、特に国際問題や政治についての豊富な知識を持っていました。
徹底的なリサーチを行うなかで、「OASがフランス当局に全く知られていないフリーランスの暗殺者を雇えば、ド・ゴールを暗殺できるのではないか」と考えたそうです。
1972年、アメリカ推理作家協会からエドガー賞を受賞。
日本でも人気が高く、1992年10月に発行された『冒険・スパイ小説ハンドブック』の人気投票では、謀略・情報小説部門における第1位を獲得しています。
映像化作品は、1973年にエドワード・フォックス主演の映画「ジャッカルの日」、1998年にブルース・ウィリス主演の映画「ジャッカル」、そして2024年にエディ・レッドメイン主演の連続ドラマ「ジャッカルの日」があります。
登場人物(キャスト)一覧
主要人物
ジャッカル(エドワード・フォックス)
すご腕の暗殺者。イギリス人。本名は不明。フランスの極右組織OASからシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を依頼され、報酬50万ドルで引き受ける。感情を表に出さない冷酷な人物で、淡々と暗殺の準備を進める。
クロード・ルベル(マイケル・ロンズデール)
フランス司法警察のベテラン警視。フランス政府からの任命を受け、ジャッカルを特定する極秘任務を担う。ジャッカルの正体を突き止めるため各国の警察に問い合わせ、次第にジャッカルを追い詰めていく。
フランス政府
シャルル・ド・ゴール(アドリアン・カイラ=ルグラン)
フランスの大統領。1962年8月22日にアルジェリアの独立を認めたことから、過激な地下組織OASに命を狙われる。身を隠すことを嫌い、堂々と公の場に姿をあらわす。
内務大臣(アラン・バデル)
内務大臣。フランス政府の防衛策の中心的な人物。OASによる大統領暗殺計画を阻止するため、作戦の指揮を執る。ド・ゴール大統領の命令により、ジャッカル捜索は秘密裏に行われる。
コルベール将軍(モーリス・デナム)
閣僚の一人。OASによる銀行強盗事件に不穏な気配を感じ取り、組織の目的を探るためローラン大佐に捜査を命じる。
ローラン大佐(ミシェル・オークレール)
フランス情報機関SDECEアクションサービスの責任者。コルベール将軍の命を受け、OASの目的を探る。ロダン大佐らが滞在するホテルを突き止め、彼の用心棒ウォレンスキーを拉致して「ジャッカル」の名前を吐かせる。
サンクレール(バリー・インガム)
ド・ゴール大統領の側近。愛人のデニスがOASのスパイだと気づけず、フランス政府の機密情報を漏らしてしまう。
ベルティエ(ティモシー・ウェスト)
フランス司法警察の刑事局長。ルベルの上司。閣僚会議に出席し、ジャッカルの捜査の指揮官にルベルを推薦する。
ヤング・キャロン(デレク・ジャコビ)
フランス司法警察の警部。ルベル警視の助手。ともに極秘任務にあたり、ジャッカルを追跡する。
OAS
マーク・ロダン大佐(エリック・ポーター)
バスチアン・ティリーが処刑された後のOASの新指導者。元アルジェリア駐留の空挺部隊長。シャルル・ド・ゴール大統領を暗殺するため、フランス当局には名前も顔も知られていない謎の殺し屋「ジャッカル」を雇う。
ヴィクトル・ウォレンスキー(ジャン・マルタン)
ロダン大佐のボディガード。フランス諜報機関に捕まり、尋問中に「ジャッカル」という言葉を残して死亡する。
ヴァルミ(フランソワ・ヴァロルブ)
ジャッカル、デニスの連絡係。
デニス(オルガ・ジョルジュ=ピコ)
OASのスパイとしてサンクレールに近づき、愛人になる。サンクレールから聞き出した情報をOASに流す。アルジェリアで婚約者を亡くしている。
バスチアン・ティリー中佐(ジャン・ソレル)
OASの元指導者で、シャルル・ド・ゴール大統領暗殺計画の首謀者。暗殺に失敗し、1963年3月11日に銃殺刑により処刑された。
ロンドン警視庁
マリンソン(ドナルド・シンデン)
ロンドン警視庁特別局の次長。ルベル警視から「非公式の秘密捜査」への協力を求められ、部下のトーマスに丸投げする。
ブライアン・トーマス(トニー・ブリットン)
ロンドン警視庁特別局のベテラン警視。ルベル警視の秘密捜査に協力し、ジャッカルの正体を暴くため奔走する。秘密情報部の友人から「チャールズ・H・カルスロップ」の情報を得て、ルベル警視に報告する。
そのほか
ガンスミス(シリル・キューザック)
ジェノバの銃製造者。ジャッカルの依頼を受け、金属製の松葉杖に偽装できる狙撃銃と、弾頭内に水銀を詰めた改造弾薬を製作する。
偽造屋(ロナルド・ピックアップ)
ジェノバの偽造屋。ジャッカルの依頼を受け、免許証や傷痍軍人証明書などの偽造を行う。ジャッカルを脅迫し、金をゆすろうとしたため殺される。
コレット・ド・モンペリエ(デルフィーヌ・セイリグ)
男爵夫人。南フランスのホテルでジャッカルに誘惑され、一夜をともにする。
ジュール・ベルナール(アントン・ロジャース)
ジャッカルがパリのサウナで知り合ったゲイの男性。ジャッカルを自宅に招く。
チャールズ・H・カルスロップ(エドワード・ハードウィック)
行方不明のイギリス人。「Charles Calthrop」を縮めた「cha-cal」がフランス語で「ジャッカル」という意味になる。
あらすじ(ネタバレ有)
1962年8月。アルジェリアの独立を認めたシャルル・ド・ゴール大統領に対し、軍人を中心とする右翼過激派が抹殺を宣言。
彼らは地下組織OASを結成して大統領の暗殺を企てるが失敗。指導者バスチアン・ティリーは逮捕され、1963年3月11日に銃殺刑に処される。
OAS幹部たちの一部はオーストリアに逃れるが、組織は壊滅状態となる。
新たな指導者となったマーク・ロダン大佐は、カッソン、モンクールと談合し、最後の手段に打って出る。フランス政府には名前も顔も知られていない謎の殺し屋「ジャッカル」を雇い、大統領暗殺を依頼したのだ。
ロダンたちは、ジャッカルに要求された50万ドルの報酬を用意するため、組織を挙げてフランス各地で銀行などを襲い、資金を集める。
ロンドンに戻ったジャッカルは、図書館でド・ゴールの資料を徹底的に調査し、暗殺決行日を決める。
そして偽の身分を作り上げるため、2歳で死亡した「ポール・ダガン」の出生証明書を使ってパスポートを作成する。
さらに、デンマークからの旅行者「ペール・ルンドクィスト」のパスポートを盗み、彼になりすますための毛染め液を購入する。
ジェノバを訪れたジャッカルは、裏社会で名をはせる銃製造者ガンスミスにスケッチを渡し、暗殺のための特別な銃を注文する。
ジャッカルはフランスで下見を行い、ある建物に目をつける。管理人室に侵入し、最上階の部屋の鍵の型を取る。さらに市場で黒いコートと帽子、古い勲章を購入する。
フランス情報機関SDECEアクションサービスのローラン大佐は、OASの目的を探るようコルベール将軍から命じられる。ローランはロダン大佐の用心棒ウォレンスキーを拉致し、「ジャッカル」という名前を聞き出す。
一方、OASはデニスをスパイとして大統領の側近であるサンクレールに接触させる。デニスはサンクレールの愛人となり、フランス政府の情報を聞き出してOASに流す。
ジャッカルはジェノバの偽造屋にポール・ダガンの運転免許証やいくつかの身分証を作らせるが、脅迫されたため偽造屋を殺害する。
ローラン大佐から報告を受けた内務大臣は、閣僚会議を開き、ジャッカルの捜索を秘密裏に行うことを宣言。フランス司法警察のクロード・ルベル警視にジャッカル特定の極秘任務が与えられる。
ルベル警視は各国の警察に協力を求め、ロンドン警視庁のブライアン・トーマス警視から「チャールズ・H・カルスロップ」が有力だという情報を得る。だがカルスロップの足取りは掴めなかった。
トーマス警視はカルスロップが偽のパスポートを使って出国したと推測し、8000人を超える申請者を洗って「ポール・ダガン」を見つけ出す。
その頃ジャッカルは「ポール・ダガン」のパスポートを使ってイギリスを出国、フランス国内に潜入する。
ジャッカルはOASからフランス政府が暗殺計画に気づいたことを知らされるが、計画を続行。宿泊したホテルでモンペリエ男爵夫人を誘惑し、一夜をともにする。
ルベル警視は「ポール・ダガン」が国境を越え、グラース近くのホテルに宿泊していることを知り、助手のキャロンとともに現場へ向かう。だがダガンはすでに出立していた。
ルベル警視はモンペリエ男爵夫人の屋敷を訪ね、ポール・ダガンの居場所を聞き出そうとするが、彼女は何も知らなかった。
捜査の手が迫っていることを知ったジャッカルは、身を隠すためモンペリエ男爵夫人の屋敷へ。だが「警察が来た」と打ち明けられ、彼女を殺害する。
ジャッカルは髪を染めてデンマーク人のペール・ルンドクィストになりすますと、モンペリエ夫人の車を奪い、夜明けとともに逃亡。駅から電車でパリへ向かい、サウナで知り合ったジュール・ベルナールの家に泊まる。
情報漏洩を疑ったルベル警視は、会議に出席している閣僚たち全員の電話を盗聴し、サンクレールが同居している愛人デニスがOASのスパイであることを突き止める。
サンクレールは自殺し、デニスと連絡係のヴァルミは逮捕される。
ルベル警視は、パリ解放記念式典が行われる8月25日が暗殺決行日だと推測する。また、モンペリエ男爵夫人殺害の容疑者として、ペール・ルンドクィストの顔写真をマスコミに流す。
ベルナールは、テレビの臨時ニュースでルンドクィストが殺人犯だと知る。ジャッカルは彼を殺害する。
8月25日、解放記念式典当日。厳戒態勢が敷かれる中、ジャッカルは松葉杖をつく老いた退役軍人になりすます。
偽造した身分証で非常線をくぐり抜けたジャッカルは、モンパルナス駅前の1940年6月18日広場を見渡せるアパート最上階の部屋へ入る。
そして松葉杖に隠してあった狙撃銃を組み立て、勲章の授与を行うド・ゴール大統領の頭部を狙撃する。だが大統領が身をかがめたために弾丸は外れる。
ジャッカルが次弾を装填したところへ、ルベル警視と機動隊員が部屋に突入してくる。ジャッカルは機動隊員を撃つが、次の弾丸の装填が間に合わず、サブマシンガンを手にしたルベル警視に撃ち殺される。
その頃、イギリスではチャールズ・H・カルスロップが帰宅し、ジャッカルとは別人であることが判明する。
ジャッカルは身元不明のままパリ市内に葬られ、ルベル警視だけがその埋葬を見届ける。
感想(ネタバレ有)
面白かった。ドラマ版の放送に合わせてWOWOWで放送された1973年の映画版。初めて見たけどすっごく面白かった。
これから見る人はぜひ2回見てほしい。わたしは2回目のほうが何倍も面白かった。1回めは登場人物を把握しきれず、誰が誰でどこで何をしているのか、よくわからなかったんですよね。
前半のジャッカルの行動も謎が多く(あえて目的を隠していて)、後半に答え合わせができるようになっています。
でも終盤はそれどころじゃない展開になるので、やはり2回目のほうがゆっくり落ち着いて見ることができました。
- 2つのパスポート
ひとつはメインで使う「ポール・ダガン」、もうひとつの「ペール・ルンドクィスト」は予備? 荷物も2人分用意。 - 毛染め液
ロンドンの店で購入した毛染め液は、パリに入る前、「ペール・ルンドクィスト」の変装に使用。 - ガンスミスに渡したスケッチ
ジャッカルのアイデアスケッチを見た銃器職人ガンスミスは「いいね、これならいける」と感心していました。終盤、それが「松葉杖」だったことが明らかになります。ジャッカルは松葉杖の中に分解した銃を仕込めるよう、ガンスミスに注文していたんですね。 - アパートの鍵
ジャッカルはフランスへ下見に訪れた際、アパートの管理人室に忍び込み、ある部屋の鍵の「型」を取っていました。これは最上階の部屋の鍵で、ジャッカルはこの部屋から大統領を狙撃しました。 - 黒いコートと帽子、古い勲章
フランスの市場で購入したこれらのアイテムは、暗殺当日、ジャッカルが退役軍人に変装した際に身に着けていたもの。 - 偽造屋に作らせた身分証
ジェノバの偽造屋に作らせたのは、ポール・ダガンの運転免許証とフランス人の身分証。偽造屋が「苦労したぜ」と言ってたのは、暗殺当日にジャッカルが機動隊員に見せていた退役軍人の証明書(傷痍軍人証?)のことでしょう。
エドワード・フォックス演じるジャッカルが身なりも仕草も紳士的で、準備の過程も丁寧に描かれていたので、うっかりすると「殺し屋」であることを忘れてしまい、彼がさらっと「殺人」を犯すたびに「えっ…」と驚いてしまいました。
殺し方もスマートなので残酷には見えず、いつのまにかジャッカルが目的を果たすことを望むような気持ちになっていましたね。あかんのやけど。
1回めは結末を知らずに見たので、最後にマシンガンで蜂の巣にされるシーンはショックでした。身元不明のままひっそりと埋葬されるところも切なかった。
でも同じくらいルベル警視のことも好きで、地道なアナログ捜査で少しずつジャッカルに近づいていくのがたまらなく面白くて、捕まえてほしいけど捕まえてほしくないような、複雑な気持ちになりました。
思ったのは、やっぱりアナログって面白いなぁ…と。
現代ならデータベース検索で一瞬でわかるようなことを、人海戦術で何日もかけて調べたり。ネットがあればすぐ手に入る写真も、この時代は郵送なので届くまでに時間がかかる。
国をまたいだ捜査の連絡方法は、主に「電話」。メールなんてないから、夜中に「ジリリリリ」とけたたましくベルが鳴って寝ているところを起こされる。
わたしは過去の不便さも現代の便利さも両方知っているので、「うわぁ~~大変そう。しんどそう」って思うのと同時に、ちょっとワクワクする気持ちにもなりました。
今さら過去の時代になんて絶対戻りたくないけど、アナログ作業の「不便だけど、なんか面白い」は確実にあったなぁと。
これからドラマ版の続きを見ていくのですが、オマージュシーンが楽しみです(すでにいくつかは発見した)。最後まで見終わったら、ドラマ版の記事でそのあたりにも触れたいと思ってます。
制作裏話
監督のこだわり
ユニバーサル・スタジオは、ジャッカル役にアメリカの大物俳優を起用したいと考え、実際にロバート・レッドフォードとジャック・ニコルソンがオーディションを受けていました。
しかし監督のフレッド・ジンネマンがその提案を拒否し、ヨーロッパの俳優のみをキャスティングする契約を取り付けました。
さらに、映画の緊張感とリアリティを最大限に引き出すために、実際の歴史的イベントや場所を再現することにもこだわりました。
彼は撮影中に多くのリサーチを行い、事実に基づいた正確な描写を目指しました。
撮影場所の特別許可
フランス人プロデューサーのジュリアン・デローデの手腕により、通常は映画製作者が立ち入りを拒否される場所での撮影が可能となりました。内務省内などでの撮影が実現したのは彼のおかげです。
パリ解放記念式典のシーンは、7月14日にシャンゼリゼ通りで実際に行われたフランス革命記念日の軍事パレード中に撮影されました。
このときシャルル・ド・ゴールはすでに亡くなっていましたが、パレードのシーンで彼を演じた俳優アドリアン・カイラ=ルグランを本物だと間違えたパリ市民がいたというエピソードがあります。
特注の銃とリアルな狙撃シーン
映画の中で使用される狙撃銃は特注で作られたもので、原作の雰囲気を忠実に再現するために細部までこだわって制作されました。
そのため、ジャッカル役のエドワード・フォックスは高度な技術を駆使してリアルに見せるための演技を求められました(実際に撃つことはありませんでした)。
リメイク版との違い
1997年にリチャード・ギアとブルース・ウィリス主演でリメイクされた映画「ジャッカル」は、オリジナルとは異なる脚色が施され、物語の舞台もアメリカに変更されました。フォーサイスの原作とは無関係の作品となっています。
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