映画「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」を見ました。
豪邸を舞台にした“嘘と秘密の密室劇”を、スタイリッシュかつユーモラスに描いた現代版クラシック・ミステリー。IMDbの評価は7.9。
古典ミステリーが好きなら、アガサ・クリスティや横溝正史を思わせる雰囲気に惹かれる方も多いはず。本作はそんな期待に応えながら、現代の空気をしっかり取り込んだユニークな密室劇です。
豪邸、遺言、家族のドロドロ、名探偵。王道の要素に加えて、テンポの良さとユーモア、そして「誰を信じるか」という倫理的な問いまでしっかり描かれていて、ただの謎解きでは終わりません。
今回はこの作品を、7つの視点から読み解いてみようと思います。ストーリーだけでなく、映像や社会性にも注目しながら、いろんな側面に光を当ててみます。
Contents
作品概要
- 製作国:アメリカ
- 公開日:2019年11月27日(アメリカ)/2020年1月31日(日本)
- 原題:Knives Out
- 脚本・監督:ライアン・ジョンソン
- 製作総指揮:トム・カーノウスキー
- 音楽:ネイサン・ジョンソン
予告動画
登場人物(キャスト)一覧
ブノワ・ブラン(ダニエル・クレイグ)
名探偵。南部訛りがある。匿名の人物から依頼を受け、ハーランの死について調べ始める。
ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)
著名なミステリー作家。NY郊外の豪邸に住んでいる。家族の誰も信じられず、看護師のマルタだけを信頼していた。85歳の誕生日パーティーの翌朝、遺体で発見される。自殺と判断されるが…。
マルタ・カブレラ(アナ・デ・アルマス)
ハーランの献身的な看護師。心優しく誠実な女性。嘘をつくと吐いてしまう体質。ハーランの死に関わっているが、不法移民の母親が強制送還されることを恐れ、必死に隠し通そうとする。
ワネッタ・“グレート・ナナ”・スロンビー(K・カラン)
ハーランの母親。年齢不詳。事件の直後に犯人を目撃している。
リンダ・ドライズデール(ジェイミー・リー・カーティス)
ハーランの長女。不動産会社の経営者。父であるハーランとは、独自の方法で通じ合っていた。
リチャード・ドライズデール(ドン・ジョンソン)
リンダの夫。妻に隠れて不倫をしている。誕生日パーティーの日、ハーランに「不倫をばらす」と脅されていた。
ヒュー・ランサム・ドライズデール(クリス・エヴァンス)
リンダとリチャードの息子。ハーランの孫。一度も働いたことがない問題児。誕生日パーティーの日、ハーランに「遺産相続人から外す」と告げられていた。
ウォルター・“ウォルト”・スロンビー(マイケル・シャノン)
ハーランの次男。ハーランが興した出版社を引き継いだが、作品の映像化をめぐってハーランと衝突している。誕生日パーティーの日、出版社の経営から手を引くようハーランから告げられていた。
ドナ・スロンビー(リキ・リンドホーム)
ウォルトの妻。物静かで控えめな女性。移民に反対するなど、保守的な価値観を持っている。
ジェイコブ・スロンビー(ジェイデン・マーテル)
ウォルトとドナの息子。ハーランの孫。16歳。SNSやネット掲示板に夢中。メグいわく「ネトウヨ」。
ジョニ・スロンビー(トニ・コレット)
ハーランの亡き長男ニールの未亡人。インフルエンサー。ハーランから援助を受けている。誕生日パーティーの日、メグの学費を二重取りしていたことがバレてしまい、ハーランに援助を打ち切ると告げられていた。
メーガン・“メグ”・スロンビー(キャサリン・ラングフォード)
ニールとジョニの娘。ハーランの孫。大学生。マルタと仲がいい。
フラン(エディ・パターソン)
ハーランの家政婦。従妹が検視局で働いている。誕生日パーティーの翌朝、屋根裏の書斎でハーランの遺体を発見する。
アラン・スティーヴンス(フランク・オズ)
ハーランの弁護士。ハーランが死亡する前の週に変更した遺言書を開示する。
エリオット警部補(ラキース・スタンフィールド)
地元の刑事。ブランの申し出を受け、協力して事件の捜査にあたる。名探偵が現れたことに、ひそかに胸躍らせる。
ワグナー巡査(ノア・セガン)
捜査に加わった警官。ハーラン作品のファン。
カブレラ夫人(マーリーン・フォルテ)
マルタの母親。不法移民。
あらすじ(ネタバレ有)
ニューヨーク郊外の館で、著名な作家ハーラン・スロンビーが遺体で発見される。ハーランは前日に85歳の誕生日を迎え、家族から祝福を受けたばかりだった。
1週間後、名探偵ブノワ・ブランが匿名の依頼を受けて調査を開始。警察は自殺と判断していたが、他殺を疑う彼は、パーティーに参加していた家族や看護師、家政婦ら全員を再び屋敷に集め、話を聞き出す。
ブランは、家族それぞれの証言に微妙な食い違いがあることに気づき、特にハーランの看護師マルタ・カブレラに注目する。彼女は「嘘をつくと吐いてしまう」という体質を持ち、ブランはその反応を利用して真実を探ろうとする。
やがて、ハーランが死の直前に家族との関係を大きく揺るがす決断をしていたことが明らかになる。出版社を任せていた次男ウォルトを解雇し、長女リンダの夫リチャードの浮気を暴露しようとし、義理の娘ジョニには学費の二重請求を指摘して援助を打ち切っていた。そして孫のランサムとは激しい口論の末、遺産相続から外すと宣言していた。
一方、マルタは事件の夜、ハーランに鎮痛剤を投与する際にラベルを見誤り、致死量のモルヒネを注射してしまうという医療ミスを犯していた。解毒剤が見つからず、パニックに陥る彼女をハーランは制止し、自らの死を“自殺”に見せかけるトリックを考案。マルタにアリバイを作らせ、自ら喉を切って命を絶った。
その後、遺言状が開示され、ハーランの全財産がマルタに相続されることが判明。家族は驚愕し、態度を一変させてマルタを責め立てる。そんな中、ランサムがマルタを連れ出し、彼女の秘密を聞き出す代わりに協力を申し出る。
しかし事態はさらに複雑になる。マルタのもとに脅迫状が届き、ハーランの血液検査の報告書のコピーが同封されていた。彼女が指定された場所に向かうと、家政婦フランがモルヒネを打たれて瀕死の状態で放置されていた。マルタは彼女を救うために救急車を呼び、ブランにすべてを打ち明ける。
マルタは罪を償う覚悟を決め、ハーランの家族に真実を打ち明けようとする。だがフランが隠し持っていた血液の報告書を見たブランは、事件の真相に気づき、彼女の告白を止める。
ブランは推理を展開し、事件の真相を明かす。犯人はランサムだった。誕生日パーティーの日、ハーランからすべての遺産をマルタに譲ると知らされたランサムは、彼女を殺人犯に仕立て上げることを思いついた。そしてひそかに屋敷に戻ると、マルタのバッグに入っていた薬の中身をすり替えた。
だが、マルタは経験から薬の種類を見分けており、実際には正しい薬を投与していた。ハーランは誤解したまま自殺してしまったのだ。
ランサムは証拠隠滅のため検視局を放火し、口封じのためフランを殺そうとしたが、マルタの善意によって阻まれる。ブランの前で自白を引き出されたランサムは、最後にマルタに襲いかかるが、手にしたナイフは偽物で刃が引っ込む仕掛けだった。
ブランはマルタの靴に一滴の血が付いているのを見たときから、彼女がハーランの死に関わっていると気づいていた。ブランは最後に「あなたは自分のルールを守り抜き、ゲームに勝った。その善良さで」とマルタに告げて立ち去る。
マルタは屋敷のバルコニーに立ち、ハーランが使っていた「MY HOUSE, MY RULES, MY COFFEE」と書かれたマグカップを手に、スロンビー家の面々を見下ろす。