どうも、夏蜜柑です。
NHK・BS時代劇「小吉の女房」最終話。
いいドラマでしたねぇ。
時代劇だけどユーモラスでほのぼのとしていて。
江戸の風物詩や当時の政治的背景を織り交ぜ、毎回意外な展開を見せてくれる脚本が秀逸でした。
ホームドラマ時代劇というジャンル、今後開拓していってほしいです。
最終話「小吉、隠居して夢酔となる」のあらすじ
- 後年「天保の改革」と呼ばれる時代が訪れる。老中・水野忠邦は触書を出して贅沢禁止や風俗の引き締めを命じ、腹心の目付・鳥居耀蔵(橋爪淳)に綱紀粛正の旗振り役を任せる。「町人と交わり風紀を乱すものは厳しく取り締まる」という鳥居の言葉を聞き、石川(高橋和也)は小吉(古田新太)を陥れようと画策する。
- 麟太郎(鈴木福)は引き締めが過ぎると金の流れが止まり、庶民の暮らしはますます苦しくなると憂慮するが、小吉の兄・彦四郎(升毅)に「ご政道に口を挟むな」と諫められる。
- 改革の名のもとに、定町廻り同心の青木(稲田龍雄)と岡っ引きの喜八(本山力)が強請まがいの庶民イジメを行っていると知り、見かねた小吉はお信(沢口靖子)の助力を得て2人を罠に掛け、懲らしめる。
- 小吉の行き過ぎた振る舞いに激怒した彦四郎は、小吉を庭の檻に閉じ込めると言い出す。お信は「旦那さまの代わりに自分が入る」と言い、檻に入ってしまう。小吉は彦四郎の怒りを鎮めるため、隠居して麟太郎に家督を譲ると宣言する。
- 麟太郎が勝家の家督を継ぎ、小吉は隠居名を「夢酔」と決める。登勢(江波杏子)は「そなたが惚れ込んだ小吉は筋金入りの武士。本物の男でした」とお信に告げ、家族に見守られながら静かにこの世を去る。

最終話の感想
暴れん坊の小吉と、おっとり朗らかなお信。
古田新太さんと沢口靖子さんの夫婦役が、これ以上ないほどしっくりきてました。
前半のドタバタ劇も面白かったけど、個人的には後半のしっとりした話が好みです。
江波杏子さんは、この作品が連続ドラマとしての遺作となりました。
小吉の悪口ばかり言っていたおばば様が、最後にお信にだけ本音を漏らすシーンは涙ものでした。ご冥福をお祈りいたします。
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兄・彦四郎の怒りを買い、檻に入れられそうになった小吉。
これも自伝『夢酔独言』からのエピソードですね。
小吉は彦四郎を納得させるため、隠居して麟太郎に家督を譲ると宣言しました。
小吉が隠居したのは天保9年、37歳でした。
隠居するには若いなぁと思うけど、小吉は49歳で亡くなっているんですよね……。

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ドラマでは、小吉が隠居名を「酔生夢死」から取って「夢酔」と決めたと語っています。「酔生夢死」は、
有意義なことを一つもせず、むだに一生を終えること。(大辞林第三版より)
という意味だそうです。
彦四郎の嫁・お遊は、それを聞いて「うちの旦那さまは、そういうところが羨ましいのでしょうね」と言いました。
小吉どのは、子供の頃から無鉄砲でまわりを困らせてばかりいたのに、亡くなった父上のお気に入りでした。うちの人は、昔から四角四面にしか生きられないタチで、こつこつと真面目に勤めている兄としては、面白くないこともあったのでしょう。あのように好き放題に生きたくとも、たいていの人はそうはいきませんものねぇ。
こういうセリフを最終回でさらっとお遊さんに言わせるところがいいです。
教科書みたいに面白みのない彦四郎という人物が、一気に人間臭く感じられました。
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小吉は「俺の真似はするな」という意味も込めて、麟太郎に歌を送りました。
気は長く 心は広く 色薄く 勤めは堅く 身をば持つべし
自伝『夢酔独言』に書かれているそうですが、何の妙味もないところが小吉らしい。
麟太郎に寄せる期待の大きかったこと、小吉なりに将来を思いやっていたことが想像できます。
麟太郎こと勝海舟は、のちに小吉についてこう書き残しているとか。
「父は人となりが大まかで物事にこだわらず、いったん引き受けたことは必ずやり遂げる人だった」
母・お信のことは、
「書をよくし、国家動乱の折にも慌てず騒がず、私のすることを黙って見守っていてくれた」
と。
このドラマを見ていると、古田新太さん演じる小吉が勝海舟に見えたりしました。
麟太郎は成長して小吉にそっくりな大人になるんだろうなぁ、と想像できるドラマでした。
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