ネタバレ有｢ロッカビー:パンナム103便爆破事件｣全話あらすじ･登場人物(キャスト)一覧｜真実を追い求めた父の物語

1988年12月21日。英国の医師ジム・スワイアと妻のジェーンは、ニューヨークで彼氏とクリスマスを過ごすという娘フローラの出発を見送る。
だがフローラが搭乗したパンナム航空103便は、スコットランド国境地域の小さな町ロッカビーの上空で爆発、機体は空中分解する。機体の残骸は広い範囲に飛散し、胴体部分はロッカビーの住宅地に墜落。民家を巻き込んで大爆発する。
ラジオで墜落の報道を聞いた記者ガスリーは現場へ直行し、過去に類を見ない大惨事をまのあたりにして言葉を失う。ジムとジェーンは、墜落した103便にフローラが乗っていたことを知らされる。
1989年1月4日。遺族の集会に出席したジムは、記者のガスリーと出会う。墜落から14日経っても遺体との面会を許されず、不満を抱くジムに、ガスリーは「あなたは医師だから潜り込める」と助言する。ジムは遺体が安置されているスケート場へ行き、変わり果てたフローラと再会する。
1989年2月。ジムはガスリーから墜落事故に関する重要な情報を得る。去年の10月、ドイツ警察はPFLP-GC（パレスチナ解放人民戦線総司令部派）を対象とする捜査で、民間機に仕掛ける目的で作られた爆発物を発見。運輸省に情報を提供し、イギリスの全空港に警告が出されていた。
さらに事故前の１２月５日には、アメリカ大使館に「クリスマスにフランクフルト発のパンナム機が狙われる」という匿名の電話が入っていたという。
ジムは運輸相のポール・チャノンと面会し、警告を無視して市民を危険にさらした責任を問うが、まもなくチャノンは解任されてしまう。ジムは遺族会の代表となり、ほかの遺族たちとともに独自の調査を要求する。
1989年11月。英国政府は数か月にわたる審議の結果、103便の特別調査を行わないことを決定。打ちひしがれるジェーンに、ジムは「答えを知るまで諦めない」と言う。

1990年。103便の墜落から1年5か月が経った。一向に調査が行われない現状に苛立ったジムは、偽のラジカセ爆弾を作ってスーツケースに入れ、ボストン行きの飛行機に乗る。
空港のセキュリティーの脆弱さを世に知らしめるためだったが、ジムの行き過ぎた行為は世間から批判を浴び、ジェーンたち家族もマスコミに追及される。
ジェーンに諭されたジムは一度事件から離れ、家族とともにスカイ島を訪れて穏やかな時間を過ごす。だがそこに、容疑者が特定されたというニュースが飛び込んでくる。リビア国籍のメグラヒとフイマだった。
起訴状に目を通したジムは2人が爆破事件を起こした犯人だと確信するが、欧米との対立を深めるリビアの最高実力者カダフィ大佐は2人の容疑者の引き渡しを拒む。
ジムはカイロの新聞記者ナビルの手引きでリビアを訪問し、カダフィと面会を果たすものの、説得は失敗に終わる。
ジムは法律の専門家であるロバート・ブラック教授と会い、彼とともに再びリビアを訪れカダフィと面会する。カダフィは「中立な国で裁判を実施する」というブラック教授の提案を受け入れ、容疑者2人を差し出すことに同意する。
裁判は中立国であるオランダのファルケンブルグ空軍基地で行われることになり、メグラヒとフイマはオランダへ連行される。
ジムは、裁判が終わったら判決を受け入れ、父親に戻るとジェーンに約束する。

2000年5月3日。ロッカビー事件から11年を経て、ついにメグラヒとフイマの裁判が始まる。場所はオランダ、ユトレヒト郊外のザイスト基地。ジムはユトレヒトに部屋を借り、長期間に及ぶ裁判を傍聴し続ける。
証人尋問には、事故を目撃したロッカビーの住人たちのほか、がれきの中から爆弾のタイマーの破片を見つけた王立兵器研究所の法科学者、リビアの諜報機関に起爆装置のタイマーを売った武器商人、爆弾と同じスーツケースに入っていたと思われる衣服の販売店店主などが召喚される。
ジェーンは裁判で証言をしたロッカビーの住人たちを見て、フローラの死と向き合う決意をする。ロッカビーを訪れたジェーンは地元の住人エレンの案内で、フローラの遺体が発見された場所へ行く。
裁判が始まって144日目。リビアの元航空職員で、現在は情報源としてアメリカCIAに所属するマジッド・ジアカが証言台に立つ。ジアカは事故当時、メグラヒとフイマの部下だった。
ジアカはメグラヒが持ち込んだ爆薬や、103便の墜落前夜にメグラヒとフイマが荷物を運んでいる姿を目撃したと証言する。
ところが弁護人により、ジアカがアメリカ司法省のマータフと通じていることが判明。アメリカ政府はジアカに高額報酬を提示し、メグラヒとフイマを有罪に追い込む証言をさせていたことが明らかになる。
150日目。ヒースロー空港の荷物係ジョン・ベッドフォードは、103便に積んだスーツケースは、フランクフルトからの便が到着する前にすでにあったと証言。ジムは爆弾入りのスーツケースがフランクフルトから運ばれてきたのではない可能性を考え始める。
171日目。検察側はドイツの爆薬専門家で、PFLP-GC（パレスチナ解放人民戦線総司令部派）が作った爆発装置を分析したライナー・ゲーベルを召喚。ゲーベルは「彼らが使っていたタイマーでは、爆弾をヒースロー空港で仕掛けない限り、103便を爆破するのは不可能だ」と証言し、PFLP-GCの関与を否定する。
しかし、ジムは集めたすべての資料を見なおした結果、メグラヒとフイマは無実であり、嵌められたのだという結論に達する。

2001年1月、フイマには無罪、メグラヒには有罪の判決が下される。終身刑を言い渡されたメグラヒはスコットランドに移送され、グラスゴー郊外のバーリニー刑務所に収監される。
2002年、2度目の控訴が受理され、ジムはメグラヒの弁護を引き受けたマッギル法律事務所を訪れる。そしてメグラヒ本人と面会し、逆転無罪への協力を申し出る。
ジムは元CIA工作員のロバート・ベアに会い、「CIAは当初から真相を知っていた」と知らされる。103便の爆破を企てたのはイランで、実行犯はPFLP-GC（パレスチナ解放人民戦線総司令部派）だった。
事件の2日後にイランがPFLP-GCに報酬を支払った送金記録もあるという。だが当時の政治情勢により、アメリカ政府はイランとシリアを抱き込む必要があった。リビアは、イランの罪を背負わされる国として選ばれたのだという。
2007年6月。ついにメグラヒの控訴が認められる。記者のガスリーは元警察官のブライアンから、警察に保管されている機密文書に関する情報を得る。それはヨルダン国王がメージャー首相に宛てた手紙で、リビアは無関係だと示唆する内容だという。
ガスリーは検察の隠蔽を暴く記事を新聞に載せようとするが、イギリス政府から「掲載すれば法的措置を執る」と通告を受け、手を引かざるをえなくなる。
そんな折、収監中のメグラヒが前立腺がんを宣告される。ジムとマッギルは「控訴を諦めたくない」というメグラヒの意向を汲み、温情措置による釈放をスコットランド政府に求め、同時に控訴を維持しようとする。
2008年12月21日。爆破事件から20年が経ち、ジムとジェーンは慰霊式に出席するためロッカビーを訪れる。だが犯人とされるメグラヒの無実を信じるジムは、ほかの遺族たちから非難の目を向けられる。
ジェーンはいつまでも事故の真相にこだわり前を向こうとしないジムに苛立ち、「悲しみから逃げてる」と指摘するが、ジムはメグラヒとの約束を守ると言い張る。
その頃、メグラヒは「控訴を取り下げないとここからは出られない」と告げられ、選択を迫られていた。

2009年8月。メグラヒは控訴を取り下げ、有罪のままリビアに帰国する。メグラヒが突然帰国したことにショックを受けたジムは彼と連絡を取ろうとするが、電話も手紙も返信はなかった。
2010年7月。ガスリーは告発サイト「ウィキリークス」の中からメグラヒに関する機密情報を見つけ出す。それはリビアが石油の見返りにメグラヒを釈放するよう、イギリス政府を脅していたというものだった。
２０１１年2月。“アラブの春”がリビアにも飛び火し、リビアは無政府状態に陥る。リビアの元外相は、パンナム103便の墜落事故について、カダフィ大佐がメグラヒに指示したと発言。ジムは何が真実かわからなくなる。
ジェーンに背中を押されたジムは、メグラヒに会うためリビアを訪れる。メグラヒはジムを裏切ってしまった罪悪感から返信ができなかったと詫び、有罪でいることが帰国する唯一の条件だったと打ち明ける。
さらに、彼は無実を証明するための新たな証拠を見つけ出していた。それは起訴の根拠となったタイマーの破片が、MEBO社の製品ではないことを示す資料だった。
ジムは資料を持って帰国し、ガスリーに会う。ガスリーは、アメリカとイギリスの諜報機関が共謀して証拠をでっちあげ、イランの罪をリビアになすりつけた、というジムの考えに一定の理解は示すものの、やはりリビアの関与は否定できないと語る。
2012年5月。家族でスカイ島を訪れていたジムは、テレビのニュースでメグラヒの死を知る。ジェーンは「真相は永遠にわからない」と言い、それを受け入れて前に進むと告げる。
ジムとジェーンは長年暮らした家を売り、引っ越すことを決める。これまでの長く苦しかった日々を振り返りながら、ジムはこれからも闘い続けることを決意する。
メグラヒの家族は無実を訴え続けているが、イギリス政府は控訴に際して機密文書の開示を拒否し、2020年にも再び“公益を理由とする秘匿特権”を適用した。
2022年、爆破に関与した疑いのあるリビア人のマスードが、アメリカへ引き渡された。裁判は2025年5月12日に始まる。
ロッカビー事件に関して、第三者による特別調査はいまだに行われていない。