【原作との違い】この世にたやすい仕事はない第7回&最終回

どうも、夏蜜柑です。
プレミアムドラマ「この世にたやすい仕事はない」が最終回を迎えました。

今回は、第7回と最終回で描かれた「大きな森の小屋での簡単な仕事」の原作との相違点に注目します。

原作について

このドラマの原作は、芥川賞作家・津村記久子さんの連作短編小説です。
主人公は、ドラマよりも少し年上の30代半ばの設定です。

ドラマの面白さが主人公を取り巻く“不思議な人たち”にあるなら、原作の面白さは、主人公のひとり語り──“誰にも言えない心の声”にあると思います。

ドラマの主人公・かすみよりも、ちょっと人生経験を重ねた主人公の小気味いい毒舌心の声には、密かに頷いてしまったり、思わず笑ってしまったり。
小説ならではの、ドラマとは違う面白さを味わえます。機会があればぜひ。

第7回&最終回の原作との違い

この回は、登場人物が原作とは大きく異なっていましたし、ドラマよりも原作のほうが、かなりミステリアスな物語になっていました。

以下、原作のネタバレになりますのでご注意ください。

森林公園

ドラマでは、正式名称は「大林森林公園」でした。初出勤日、かすみは迷うことなく管理事務所に来ていましたし、常駐する小屋にも徒歩で行ける範囲のようです。

原作では、正式名称は「大林大森林公園」です。端から端まで、徒歩で3時間はかかるという広大な公園で、1日に1人は必ず迷子が出ます。

公園の入り口から管理事務所へも徒歩で20分かかるため、職員はゴルフカートのようなものに乗って移動しますし、管理事務所から主人公が常駐することになる小屋までも距離があるため、カートで移動します。

主人公が常駐する小屋

ドラマでは、比較的設備の整った明るいプレハブ小屋という印象でした。管理事務所からも近いので、純や箱田さんが頻繁に立ち寄り、孤独感や不気味さはあまりないようです。

原作では、「よくあるような交番の、さらに半分くらいの広さの三角屋根の建物」とあるため、かなり貧相な建物のようです。周囲は森に囲まれ怖いくらい深閑としていて、管理事務所からも遠いため人はほとんど近寄らず、不気味な雰囲気です。

大林原人の幽霊

ドラマでは、正門さんや江里口さんも知っているくらい、幽霊の噂は出回っていました。主人公は初出勤したその日に、箱田さんと純くんから「公園に幽霊が出る」と聞かされます。

原作では、幽霊の噂は出回っていません。毎日小屋に通ううち、少しずつ不審な出来事が重なり、主人公は不気味に思うようになります。

さらに、「静かすぎておかしくなって辞めた」という前任者と偶然会い、彼女から「あそこには大林原人の幽霊がいる」と聞かされます。

潤布田くん

ドラマでは、公園で迷子になる小学生として登場し、実は失踪した菅井の元生徒で、菅井をかくまうために幽霊の噂を流し、公園に通っていたことがわかります。

原作では、小学生は登場しません。

江里口さん

ドラマでは、かすみが町で小学生から話を聞いているときに偶然出会い、「幽霊に追いかけられた小学生が、最近よく森林公園に迷い込んでいる」という話を聞きます。

原作では、江里口さんのいる「はなばたけアド」が作ったフリーペーパーに、カングレーホ大林のイサギレ選手のインタビュー記事が載っていて、主人公はイサギレ選手について尋ねるため、江里口さんに会いに行きます。

菅井さん

ドラマでは、失踪した梅ノ井小学校の先生です。子供たちには好かれていましたが教師としては問題があるようで、自信をなくして仕事を投げ出し、公園に隠れ住んでいました。サッカーが好きで、カングレーホ大林のファンでした。

原作では、隣の市の老人保健施設に勤務する医療ソーシャルワーカーです。36歳で主任という立場で大きなストレスを抱えていましたが、同僚や部下からは慕われていました。

応援していたカングレーホ大林が降格し、同時に大ファンだったイサギレ選手が帰国したことがきっかけで、森の奥の岩穴に住み着くようになりました。

発見後、警察に引き渡されましたが、箱田さんが被害届を出さなかったためお咎めなしでした。その後、公園の仕事を手伝うようになり、主人公の仕事を引き継ぎます。

カングレーホ大林

ドラマでは、大林地区の人々から愛されていた下部サッカークラブでしたが、経営難で解散。かすみの恋人・百合岡純はチームの創設メンバーで、再結成のために支援者がいる大林森林公園で働いていました。

原作では、大林大森林公園に隣接するスタジアムを本拠地とするサッカークラブ。昨年、下のリーグに降格しましたが、主人公が森林公園で働き始める少し前に昇格を決めました。

エンブレムのタカアシガニは、スタジアム建設時にタカアシガニの化石が大量に発掘されたことが由来です。

昨年の降格時には、タオルやユニフォームなどがスタジアムから森林公園に飛んできたり、ショックで公園に迷い込んだファンが多数いて大量の迷子者が出たりしました。

コルドビカ・イサギレ選手

ドラマでは、カングレーホ大林のエース・ストライカーです。失踪していた菅井先生が「小学生にサッカーを教えに来て、潤布田にシュートを止められてしまうくらい弱い」と語る程度でした。

原作では、主人公が幽霊の正体を突き止めるための鍵となる人物です。スペインのサン・セバスチャン出身のバスク人で、子供っぽい笑顔が印象的な人物。

在籍していたカングレーホ大林が降格したとき、契約更新せずに帰国したことでファンから叩かれましたが、帰国した理由は父親への骨髄移植のためと判明。その後、再びチームに戻ってきて元気にプレーしています。

百合岡純

ドラマでは、主人公・かすみの恋人で、一緒に暮らしています。カングレーホ大林の創設メンバーでしたが、解散後は再結成に向けて活動中。

原作では、カングレーホ大林に在籍するセンターバックの選手です。大林森林公園のスタッフの工藤さんが大ファンで、主人公に話をします。幽霊事件が解決した後、公園で催されたイベントにイサギレ選手と共に駆けつけました。

正門さん

ドラマでは、主人公を導く謎めいた存在で、浅野温子さんがコミカルに演じました。最後は「正門という者はいません」という、よくある結末でした。

原作では、なんだかよくわからない存在のままです。とりたてて怪しくもないし、実在しない人物、という感じでもなかったです。

最後に

ドラマと原作とでは、主人公の職業(ドラマは教師、原作は医療ソーシャルワーカー)が違うため、最終回もずいぶん違う感じになりました。

大きく違っていたのは、ドラマでは、主人公のかすみは菅井先生を反面教師にして、自分の本来の仕事に戻っていった、という点です。

原作の菅井さんは、ドラマとは少し違います。
決してダメな人間ではなく、同僚や部下からも慕われ、仕事もそれなりにできていました。失踪したのも、「仕事がしんどくなったから」という単純な理由ではないんです。

大変だったけれども、難しい仕事をなんとか乗り越えた。
だけど、難しい仕事は、必ずまたやってくる。

乗り越えても乗り越えても、またさらに、高い山が現れる。
自分は、ひたすらそれを受け入れ、どこまでも続けていくしかない。

何をしているんだろう、自分は。
何のために生きているんだろう。

ふっと、そんなふうに考えることは、多かれ少なかれ誰にでもあると思います。立場や環境は違っても。

菅井さんは、「もう、よくわからなくなっちゃって」と言っています。
そうして森に迷い込んだのだと思います。
おそらく主人公も、同じようにバーンアウトして、仕事の森に迷い込んだのでしょう。

これは、なぜ働くのか──あるいは、なぜ生きるのか、という問いでもあると思います。

主人公は、その答えを見いだせないまま、それでも先に進むことを決めます。
ドラマの主人公・かすみも、「やれるだけやってみよう」と言っていました。

こういう結末、私は好きです。


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