NHKドラマ「スローな武士にしてくれ」感想|最高に楽しい超ハイテク時代劇

NHKドラマ「スローな武士にしてくれ」

「スローな武士にしてくれ」

どうも、夏蜜柑です。
NHKドラマ「スローな武士にしてくれ」

最っっ高に楽しいドラマ。

「活動屋」と呼ばれる絶滅危惧種の職人たちがハイテク機器を使って時代劇を撮る、というストーリーなのですが、映像へのこだわりにあふれ、時代劇への愛にあふれ、ものづくりへの情熱にあふれ、遊び心にあふれるチャレンジングな作品でした。

アナログおじさんたちの挑戦が面白おかしく描かれていて、とにかく楽しかった。
アメリカ育ちで時代劇オタクの田所や、元時代劇女優の主人公の妻など、登場人物の設定もユニーク。

最先端の撮影技術をどのように使うのか、その裏側をドラマ仕立てで見せられるため、完成した映像を見るときは登場人物たちと同じ気持ちになって感無量でした。

どの映像も想像以上に素晴らしくて、カッコよかったです。

夏蜜柑

昔の時代劇を思わせる効果音もよかった。

あらすじ

  • 京都の撮影所「京映」の所長・八村良造(伊武雅刀)は、NHKから最新技術を使ったパイロット番組の制作を依頼される。監督には国重(石橋蓮司)が指名され、武藤(本田博太郎)ら国重組の面々が集められる。
  • NHKから派遣されてきた田所(柄本佑)は、MIT出身でハイテク機器に通ずる男だが、人並み外れた時代劇マニアでもあった。田所は幕末の「新撰組」を題材にした時代劇にしたいと提案する。
  • 慣れない最新機器を使うとあって、トラブルになることを恐れた国重たちは切られ役専門の大部屋俳優・村田茂雄(内野聖陽)を主役に抜擢する。殺陣は超一流の村田だが、緊張してセリフがうまく言えないという欠点があった。国重に「セリフはない」と言われ、村田は戸惑いつつも引き受ける。
  • ドローンカメラを使った「空陸一体カット」では、時代劇スター・里見浩太朗(本人)が斬られ役となり、村田は見事な殺陣を披露する。「ハイスピードカメラによるワンカット13人斬り」では、武藤の代わりにラオウ(藤本隆宏)がカメラマンとなり、撮影を成功させる。
  • 国重は「池田屋事件」ワイヤーアクションを使い、村田演じる近藤勇が階段の上からダイブするというかつてない“階段落ち”を思いつく。村田が斬り合う相手には、大部屋仲間の朽木城太郎(中村獅童)が選ばれる。
  • 朽木は村田を応援すると同時に、かつて自分が惚れていた富士子(水野美紀)を妻にし、時代劇スターの里見に可愛がられ、主役にまで抜擢された村田に苛立ちを覚えていた。朽木は自分の幸運に気づかない村田に悔しさをぶつける。
  • 階段落ちの撮影当日。朽木は予定にはない殺陣とセリフで村田を追い込む。追い詰められた村田は渾身の力をふりしぼってセリフを吐く。階段落ちは成功し、撮影は無事終了する。後日、村田と朽木は所長の八村に呼ばれ、ハリウッド映画の準主役とその相手役に指名されたと聞かされる。
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スーパープレミアムドラマ「スローな武士にしてくれ」NHKドラマ「スローな武士にしてくれ」登場人物(キャスト)・あらすじ

感想

NHKからの依頼は「最新技術の時代劇」

舞台は京都の撮影所、東映――もとい「京映」。

所長の八村(伊武雅刀さん)は、NHKから「新技術を使ったパイロット番組を撮ってほしい」という依頼を受け、国重組に声をかけます。

監督の国重(石橋蓮司さん)以下、集められたメンバーは「活動屋」と呼ばれる絶滅危惧種の職人たち。

夏蜜柑

このおじさんたちがめっちゃイイ味出してます。

撮影技師の武藤(本田博太郎さん)
照明技師の町田(浜田晃さん)
録音技師の玉村(佐川満男さん)

撮影所内は全面禁煙なのに、全員タバコ吸ってます。
禁煙を命じた所長の八村さんまでも、しれっと吸ってます。

セリフが喋れないシゲちゃん

なぜか「時代劇」という注文をつけてくるNHK。

大スターを呼ぶお金はないし、使い慣れない最新機器を扱うので現場優先にしたい。
ということで、斬られ役専門の大部屋俳優・シゲちゃん(内野聖陽さん)が主役に抜擢されます。

このシゲちゃん、殺陣は超一流で文句なしなのですが、セリフが入ると極度に緊張してしまい、声が裏返るという欠点がありました。その欠点のせいで、50歳を過ぎても芽が出ない。

けど、超スローのハイスピード撮影ならセリフは必要ないわけで。

「映像の力だけで押しまくる究極のチャンバラ」。これで行こう、めっちゃ安上がりだし!と、喜ぶ八村所長。「そこか」とツッコむ国重さん。いいわー。

里見浩太朗のお気に入り

その頃シゲちゃんは、里見浩太朗さん主演「左馬介 一刀両断」の撮影に臨んでいました。

里見さんとの殺陣は完璧。
でもたった一言の「天誅~~!」が裏返って使い物にならず、後日アフレコに。

里見さん、御年82歳だそうです。
美しい殺陣は年齢を感じさせず、やはり目を奪われてしまいますね。

夏蜜柑

斬られ役が福本清三さんなのも粋でした。

シゲちゃんは里見さんのお気に入りで、毎回指名されているそうな。
そんなシゲちゃんを羨ましく眺める大部屋仲間の城ちゃん(中村獅童さん)

シゲちゃんは主役の話を聞いてもピンと来ない。

家族は大喜びで万歳三唱し、妻の富士子(水野美紀さん)「2万回死んだウチの人にもやっと春が来た」と涙ぐむけれど、シゲちゃんのテンションは低い。

セリフがない主役なんて……チャンバラの腕を買われただけやろう。
どうやら、後ろ向きに捉えているようです。

NHKから来た男は時代劇オタク

最新機器を積んだ大型トラックと共に、NHKから派遣された田所(柄本佑さん)が撮影所にやってきます。

田所はDIT(デジタル・イメージ・テクニシャン)で、MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の帰国子女だそうです。そんなヤツに京映の水が合うのか、と喫茶店でミックスジュースを飲みながらぼやくおじさんたち。

夏蜜柑

ミックスジュース飲みたくなるわ。

その頃田所は、撮影所の美術倉庫を見て狂喜乱舞していました。
時代劇オタクだそうです。

「こ、これは!大河内伝次郎が丹下左膳をやったときの、『相模大進坊・濡れ燕』!」

そんな田所を見て「また、えらいアホが来よったなぁ」とつぶやく国重さん。
このシーンめっちゃ好き。

「スローな武士にしてくれ」

つぎつぎとスタジオに運び込まれる最新機器の数々。
見たことない機械を前にして、おっかなびっくりのおじさんたち。

もちろんわたしも見たことないので、ワクワクしました。
「これのどこがカメラ?」って思うようなモノがずらり。

題材も脚本も決まっていないのに、タイトルは「スローな武士にしてくれ」に決定。さらに、田所は「新撰組」を題材にした時代劇を提案し、あっさり通ります。

シゲちゃんが演じるのは、新撰組局長の近藤勇。

この打ち合わせシーンで、タイトルの元ネタである映画「スローなブギにしてくれ」の説明がしれっと入りました。

「スローなブギにしてくれ」

  • 1981年の日本映画
  • 監督:藤田敏八
  • 原作:片岡義男
  • 主演:浅野温子
  • 音楽:南佳孝
  • 主題歌:南佳孝「スローなブギにしてくれ (I want you)」

ドローンによる空陸一体カット

京都・嵯峨野にある「時代劇でおなじみの竹林」で、ドローンによる空陸一体カットの撮影に挑む一同。

清河八郎役は、なんと里見浩太朗先生です。
シゲちゃんの晴れ舞台だからと、初めての斬られ役を引き受けてくれました。

本番の前にカメラマンの武藤さんが練習してたんですが、何をやっているのかサッパリわからなかったんですよね。実際の撮影風景を見て、「なるほど~」と思いました。

夏蜜柑

ドローンってこんなふうに使うんですねぇ。

ドローンを使ったことで、なんでもない竹林が迫力のある舞台に変化。
その中で繰り広げられる内野聖陽さんと里見浩太朗さんの気迫みなぎる殺陣も見事でした。

初めての斬られ役でいつまで死んでればいいかわからず、「あ~しんど」と感想を漏らす里見先生がお茶目。

元時代劇女優・如月小雪

シゲちゃんの妻・富士子は、元くノ一女優の如月小雪
今は引退して和菓子屋のおかみさんになっていますが、アクションは今でもキレッキレです。

撮影所に差し入れ持ってきて、ふざけて大立ち回りを演じるところ最高でした。

そんでもって城ちゃんは、大部屋俳優のマドンナだった富士子に恋心を抱いている様子。憧れの富士子を射止めたシゲちゃんを、面白くなさそうな顔で睨んでいました。

ハイスピードカメラによるワンカット十三人斬り

13人斬りのシーンをスローで撮影することになり、武藤さんの代わりに呼ばれたのが「ラオウ」と呼ばれる屈強な男・田中真理夫(藤本隆宏さん)

ラオウは20キロ以上もある機材をたやすく扱える、日本一のオペレーターなのだそうです。

ラオウを演じた藤本さんについては、テクニカルプロデューサーの伊達さんがこんな裏話を語っていました。

一番驚いたのは、“日本で一番のオペレーターで、海外からも引っ張りだこ”という役どころの藤本隆宏さんが、スタビライザーをすぐに扱えるようになったことです。この機材は、カメラを安定させるものでもあるので、元々の重量が20キロ以上あるんです。やはり水泳の元オリンピック選手だった方ですから、体幹がしっかりしていて、ものすごい速さで動きや扱い方を身に付けていらっしゃいました。(NHK公式サイトより)

一方、演じるほうのシゲちゃんや城ちゃんたち剣心会の面々は、カメラの都合上21秒以内に13人斬りを収めるという荒技に挑んでいました。

劇中の本番では一発OKでしたが、すごかったですねぇこれ。
超スローだから、下手な人だとアラがバレちゃうと思うのですが、全く違和感なかったです。

ちなみに内野聖陽さんもこんなコメントを残しています。

普段の立ち回りというのは、うそをついている。刀が体に当っているようで、実は当たっていない。刀がぶつかり合っているようでぶつかっていないのが熟練の殺陣。しかし、スローで撮ると当たってないことばバレバレになって、普段やっている立ちまわりでは通用しないってことがわかった。NGを重ねて大変でした。(NHK公式サイトより)

ワイヤーアクションに挑戦したい

撮影は、いよいよ最大の見せ場である「池田屋」での階段落ちシーンへ。

国重はいつもと同じじゃつまらないと、ワイヤーアクションを使って近藤勇が階段からダイブするシーンを撮りたいと言い出します。

夏蜜柑

普通、階段から落ちるのは新撰組に斬られる浪士のほうなんだけどね。

近藤が斬り合う浪士・望月役には、城ちゃんが選ばれました。
最終的には、シゲちゃん、城ちゃん、そしてカメラマンの武藤さんがワイヤーで飛ぶことに。

嫌がっていた武藤さんが、国重さんに「活動屋、ここに死せりやな」と言われて啖呵を切るシーンがカッコよかった。

「そこまで言われたら、この武藤幸四郎45年のカメラマン人生に、傷がつくっちゅうもんやぁっ!」

茶目っ気と凄味の切り替えがすごいスムーズ。痺れるわ。

城ちゃんの嫉妬

城ちゃんは何か思うところがあるようで、監督に相談。

その後、大部屋で愛妻弁当を食べるシゲちゃんと明日の撮影の話なんかしてましたが、シゲちゃんがグチばかりこぼすので、キレてしまいました。

「あんたほど分不相応な幸せ者はいてへん。わしが惚れてた女優女房にして。あんな可愛らしい子供2人もつくって。愛妻弁当を毎日持たされて。それのどこが不幸じゃ!」

「この道で飯食うてて近藤勇をやれるやなんて、どんだけの幸せかわかっとんのか!」

このチャンスを生かそうともせず、「ひとときの夢の時間」のように捉えていることに腹を立てていた城ちゃん。ずっとモヤモヤしてたんだろうねぇ。

シゲちゃんの相手役に中村獅童さんをキャスティングした意味がこのシーンでわかったような。このシーンがあってこその階段落ちでしたね。クライマックスがグッと盛り上がりました。

池田屋階段落ち

撮影当日。ついに池田屋のシーンです。
スタジオの緊張感がこちらにも伝わってきます。

夏蜜柑

池田屋の場面はいつ見ても胸躍るねぇ。

城ちゃんの殺陣が予定と違い、戸惑うシゲちゃん。
城ちゃんは脚本にないセリフまで口にします。

「土佐藩脱藩、望月亀弥太だ。名を名乗れ」

シゲちゃんがセリフを言えば、すべて台無し。
黙り込むシゲちゃんを、城ちゃんは「貴様、それでも武士か。名乗れ!」と追い詰めます。

シゲちゃんはついにセリフを口にします。

「新撰組局長、近藤勇である! 役目により……斬る!」

決まったーー!
裏返らずに、ちゃんとセリフが言えた!

城ちゃんのアドリブは、シゲちゃんにセリフを言わせるためだったのか。泣ける。

そのまま階段落ちに流れ、ダイブするシゲちゃん。
シゲちゃんを追って飛ぶカメラマンの武藤さん。

さらに、刀を上段に構えた城ちゃんが階段の上から飛び、シゲちゃんに襲いかかる。それを迎え撃つシゲちゃん。

「シゲちゃん……かっこいい~」

斬られて転がった城ちゃんのセリフは完全に「蒲田行進曲」でしたが……マジでカッコよかったです。2人とも。いや全員。

ハリウッドからの依頼に…

撮影は無事に終了。
NHKのスタッフも機材と共に撤収しました。

八村所長は傷だらけのシゲちゃんと城ちゃんを部屋に呼んで、「さっきハリウッドのプロデューサーからサムライ映画を撮りたいという依頼があった」と話します。

なんでもラオウが話を取り次いだらしい。すごいなラオウ。
シゲちゃんが準主役。城ちゃんがその敵役に抜擢されたとか。

主役はベテランアクション女優だと聞いて、ユマ・サーマンやチャン・ツィイーを想像し、ほくそ笑む2人。が、如月小雪だと聞いてひっくり返ります。

そこから階段落ちのセットが現れてクランクアップ→記念撮影というラストシーン。
最後まで本当に楽しかった。

時代劇の裏側を見られるだけでも大満足なのですが、最新機器を使うというおまけ付き。

出演する役者さんたちは超一流ぞろい。
新しいものへの挑戦でありながら、古き良きものへのオマージュでもある。

いいものを見せていただきました。
みなさん、本当にお疲れさまでした。

ふぐ丸

再放送は5月12日(日) 午後1時から。

おまけ:劇中に登場した名言の数々

「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」チャールズ・チャップリン

オープニングで掲げられた言葉。
イギリスの喜劇俳優チャールズ・チャップリンの名言。

個々の出来事に注目すれば不幸なことが多いけれど、人生全体を俯瞰してみれば笑い話のように感じられる……という意味。

「1スジ、2ヌケ、3ドウサ」牧野省三

劇中で国重と田所が食事をしていた撮影所近くの店の中に飾られていた書。

牧野省三は「日本映画の父」と呼ばれる日本映画黎明期の映画監督。
映画製作のモットーとしてこの三大原則を掲げていたそうです。

「スジ」は脚本のこと、「ヌケ」は撮影・現像の技術のこと、「ドウサ」は俳優の演技のこと。

「エンターテインメントの前には史実も道を譲る」国重五郎

劇中で、近藤勇が望月亀弥太を斬ることに対して、田所が「史実と違う」と言ったことへの反論。

「二人の男と二本の刀さえあれば映画は撮れる」国重五郎

エンディングで掲げられた言葉。

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