「昭和元禄落語心中」第9回・最終回|信之助の父親と幽霊の正体

ドラマ「昭和元禄落語心中」あらすじ感想

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どうも、夏蜜柑です。
NHK金曜夜10時「昭和元禄落語心中」第9回と最終回の感想です。

あぁ~……なんとも複雑ですね。

全体としては面白かったです、とても。
さすがNHKだなぁと思わせる完璧な作り込みでした。

でも、見終わった後に「これじゃない」という感覚が残ってしまいました。
わたしが特に見たかった後半のミステリ要素がなくなり、見どころがほとんど省略or改変されていたのです。

八雲が背負う業の深さ、その身に抱え込んでいる誰にも言えない昏い闇。
それを暗示しているのが助六とみよ吉の幽霊だったのですが……(詳しくは後述します)

八雲が死に向かっていく孤独と、熾烈なまでの生への執着を、もっと生々しく見せてほしかった。

ドラマの後半部分を「家族愛」に振ってしまったために、それらを見る機会が失われたことが、もったいなくてもったいなくて……。

これはこれでうまくまとまっていたと思いますし、テレビドラマとしてはこっちのほうが万人受けするんだろうな……とは思うんですけど、楽しみにしていただけに残念です。

以下、ネタバレを含みます。

第9回・最終回のあらすじ

  • 歳月が流れ、与太郎(竜星涼)と小夏(成海璃子)の子・信之助は幼いながらも落語を好み、寄席に入り浸るようになる。70代になった八雲(岡田将生)は人知れず老いと戦う。
  • 小夏は寄席で出囃子を務めるようになるが、三味線を弾くたびに昔の記憶を取り戻しそうになり、松田(篠井英介)に「本当のことを教えてほしい」と訴えるが松田は知らないふりをする。
  • 寄席に戻ってきた萬月(川久保拓司)は、昭和の落語の記録を集め始める。その中で、かつて助六(山崎育三郎)とみよ吉(大政絢)が事故死した亀屋旅館での落語会のフィルムが見つかる。
  • 八雲は与太郎との親子会で「たちきり」を披露する。そこに現れたみよ吉の霊は、八雲だけでなく小夏にも見えていた。その直後、八雲は高座で倒れ込んでしまう。
  • 与太郎(竜星涼)と小夏(成海璃子)は、かつて四国の亀屋旅館で行われた落語会のフィルムを見る。若かりし頃の八雲(岡田将生)と助六(山崎育三郎)の落語を見た小夏は、その夜のことを思い出す。
  • 退院した八雲は、取り壊しが決まった昔の寄席にひとり足を運ぶ。誰もいない客席に向かって「死神」をやる八雲。そこへ死んだはずの助六が現れ、「未練を断ち切れ」と言う。助六は死神へと変貌し、寄席に火をつける。
  • 与太郎は火災の中から八雲を救い出し、家に連れて帰る。小夏は、助六とみよ吉(大政絢)が事故死した夜の真相を八雲に語る。みよ吉は八雲と2人で生きることを望み、助六を包丁で刺した。幼い小夏はみよ吉を窓から突き落とし、みよ吉を助けようとした助六と共に窓の外に投げ出されたのだった。
  • 八雲は、助六とみよ吉が最後まで小夏を助けようとしていたことを話す。八雲は3人を救うことができず、小夏だけが助かることになった。初めて母の思いを知った小夏は涙ぐむ。
  • 八雲は縁側でラジオから流れてくる与太郎の落語を聞きながら、天寿を全うする。再び目を覚ますと寄席にいて、助六が「ようこそ冥土へ」と言う。そこにみよ吉も現れ、八雲は自分が死んだことを知る。
  • 16年後。与太郎は九代目八雲を襲名。長男の信之助は二ツ目に昇進する。小夏は押しも押されぬ女性真打になっていた。与太郎と小夏の娘・小雪や松田(篠井英介)が見守る中、与太郎は「死神」を披露する。

第9回・最終回の感想

先に書いたように、わたしはかなりこのドラマを高く評価しています。
胸を打つシーンが山盛りでしたし、八雲と助六(岡田さんと山崎さん)のやりとりはずーっと見ていたいほどでした。

このドラマの「いいところ」は、ほかの皆さんがたくさん書いてくださっています。
なので、ここではわたしが残念だと思ったところを中心に書くことにします。

山ほどある「いいところ」に比べると、些細なことなのですが。

中途半端な幽霊

まず、助六とみよ吉の幽霊が、ドラマ版では中途半端になってしまったこと。
これなら登場させないほうがよかったんじゃないかなぁ。

アニメを見ているとき、わたしはなぜ幽霊が出てくるのかさっぱりわかりませんでした。
ただただ不気味で怖かった(アニメ版の幽霊の不気味さはドラマ版の比ではありません)

彼らは黙って八雲を見つめていたかと思うと、時には八雲を死の淵へ誘い、時には死神に姿を変えて命を奪おうとします。

なぜ、彼らは八雲を死に誘うのか。

それがずっとわからなかった。
真相が明らかになったとき、初めて「あぁそうだったのか」と、腑に落ちたのです。

八雲が抱える秘密

助六とみよ吉、小夏の3人は、幸せな暮らしを送っていました。
八雲さえ現れなければ。

結果的に2人の命を奪い、小夏から幸せな家族を奪ったのは、八雲です。

八雲が宣言どおり孤独を貫いていれば、他者を求めなければ、この不幸は防げたのです。

だけど、八雲はその真実(罪)を告白することができません。
すべてを告白すれば、小夏が事件に絡んでいることが明らかになるからです。

八雲がその秘密(罪)を胸の内に抱えて死ぬ(心中)ことは、懺悔であり贖罪だったのでしょう。

しかし同時に、それとは矛盾する「生きたい」「落語を続けたい」「人と深く繋がりたい」という思いもあったのだと思います。

2人の幽霊は、そういう八雲の心の葛藤を暗示しているのだと解釈し、心の底からゾクゾクしました。

ところがドラマ版では怖くもなんともない「ただの幽霊」になってしまい、さらに「小夏にも見える」設定に変わったため、暗示でもなんでもなくなってしまったんですよね……。

夏蜜柑
もったいなかったなぁ……。

そして八雲が抱える秘密(罪)は、実はもうひとつあります。
それについては後述します。

アニメ版との違い

ドラマ版では小夏が事故の真相を思い出し、八雲に確認するという流れになっていましたが、アニメでは小夏は最後まで思い出しませんし、与太郎に真相を語ったのは松田さんです。

八雲は秘密を抱えたまま逝きました。
わたしも小夏には真相を思い出してほしくなかったかな……。

それが八雲の願いだったのだし。
自分の命と共に真実を葬る八雲の覚悟に、胸を打たれたので。

ドラマ版では、助六とみよ吉が死ぬ場面もかなり改変されていました。

アニメでは小夏がみよ吉に体当たりし、手すりが壊れてみよ吉が投げ出され、みよ吉を助けようとした助六がみよ吉と一緒にそのまま転落するという、一瞬のできごとです。

八雲がとっさに助けたのは小夏だけ。
助六の手をつかんで引き上げようとしたり、みよ吉が「小夏だけは助けて」と言う場面はありません。

みよ吉がどんな思いで小夏を育てていたかは、八雲が死んで、あの世でみよ吉と出会ったときに、みよ吉の口から語られます(ここも好き)。

ドラマ版は「家族愛」を優先させる演出になっていたので、小夏にみよ吉の愛がはっきりと伝わる形にしたのでしょうね。

信之助の父親は誰?

小夏がひた隠しにしている、信之助の父親。
第8話で、組長が父親だと思い込んだ与太郎が殴り込みに行く場面がありましたが、組長ではありません。

おそらく、八雲と小夏が「否定しないでほしい」と組長に頼んだのだと思います。

最終回で酒井美紀さん演じるお栄さんが本当の父親をほのめかすようなことを語っていましたが、アニメでは別の人(ドラマ版には登場しない)が語っています。

はっきりと、八雲の名を出しています。
小夏は最後まで口を割りませんでしたけどね。

夏蜜柑
この場面も衝撃的でした。

そう言われて見ると、成長した信之助は助六そっくりの見た目でありながら、繊細で神経質そうな中身は八雲そっくりなんですよね。

この秘密もまた、八雲は誰にも明かさずに逝きました。

冥土へ行った八雲

ドラマではまるまるカットされていた「死出の旅路」も、わたしの好きなところ。

八雲と助六が若い頃の姿に戻って、三途の川へ向かう道中が面白おかしく描かれていました。助六が成仏できない理由、助六とみよ吉が一緒にいない理由も、語られています(笑えます)。

まるで落語で語られる物語の世界に入り込んだように、楽しい場面でした。
再び八雲と助六コンビが見られたのもうれしかったし。

ほかにも、信之助と小雪の後日譚などが割とたっぷり描かれているのですが、ここもドラマ版ではほぼ省略されてしましたね。

時間的に難しかったのだと思いますが、やはりダダダッと駆け足で終わったような印象で、少し残念でした。

最後に

最後はアニメと比較する感想になってしまって申し訳ないです。
ドラマの完成度が高いだけに、後半の失速感が気になってしまいました。

キャストの皆さんには、これ以上ないものを見せていただきました。

ドラマが始まる前はまったく想像できなかった岡田将生さんの八雲も、今では八雲そのもの。年齢によって変化する演技は、見応えがありました(最後はおじいさんにしか見えなかった)

助六役の山崎育三郎さん、与太郎役の竜星涼さんも意外な配役だったのですが、フタを開けてみるといい意味で予想を裏切ってくれて、毎回彼らの落語を聞くのが楽しみになりました。

伝統にはいいところも悪いところもあるけれど、芸術はいつの世も美しいですねぇ。

今、こういう時代がかったものを連続ドラマで見せてくれる局は少ないので、それだけでありがたいなーと思っています。

このドラマは、U-NEXTで視聴可能です。※最新の配信状況と料金はU-NEXTサイトにてご確認ください

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