「犯罪症候群Season2」と原作「殺人症候群」の相違点

連続ドラマW 犯罪症候群Season2

(C) 東海テレビ/WOWOW

ドラマ「犯罪症候群」がSeason2最終話を迎えるとともに、シリーズが完結しました。

ドラマでは原作の人物設定が大幅に変更されていましたが、大きな矛盾や違和感を感じることがなく、最後までドキドキしながら見ることができました。
見終わった後には重い気持ちにもなりましたが、重厚感溢れる見応えのあるドラマでした。

今回は、Season2における原作との主な相違点についてまとめてみました。

「犯罪症候群:Season2」の原作は?

原作は、貫井徳郎さんの社会派ミステリ小説「殺人症候群」です。
症候群シリーズ3部作の、完結編にあたります。

原作では、人事二課の環敬吾をリーダーとする警視庁の影の特殊工作チーム──私立探偵の原田、托鉢僧の武藤、肉体労働者の倉持の活躍が描かれます。
「殺人症候群」では、倉持の抱える問題を中心に、さまざまな登場人物が入り組む形で物語が進んでいきます。

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連続ドラマW 犯罪症候群Season2 犯罪症候群Season2の原作「殺人症候群」の人物相関図

原作との違いは?

ストーリーの流れはほぼ原作通りですが、原作で鍵を握る人物「倉持」がドラマには登場しないため、その点を補うための変更が随所でなされていました。

また、ドラマは「少年犯罪」に絞っていましたが、原作は「少年犯罪」に限定せず、未成年を含めて何らかの理由で加害者が罪を問われなかった事件を扱っています。

以下、原作のネタバレになりますのでご注意ください。

1.鏑木護

ドラマでは、1年前に婚約者を未成年に殺され、復讐心に苦しむあまり職業殺人者となる刑事、という設定でした。武藤は婚約者の兄であり後輩であり、自分と同じく復讐心に苦しむ被害者遺族でもありました。

原作では、鏑木渉という名前ですが、後半まで下の名前は明かされません。そのため刑事の「鏑木」=殺人者の「渉」ということに途中まで気づきませんでした。

渉は響子の婚約者だった高木の幼なじみで、大学時代に響子と出会います。響子は渉の親友の高木と付き合うようになりますが、渉はずっと響子を想い続けていました。

その後、事件に巻きこまれ死んだも同然だった響子を救うために、加害者を殺します。渉が職業殺人者として殺人を続けるのは、すべて響子に生きる望みを与えるためです。

2.矢吹響子

ドラマでは、「少年犯罪を考える会」で偶然、大学時代にゼミが一緒だった鏑木と再会します。事件から立ち直れない響子のために、鏑木が「代わりに犯人を殺してやろうか」と言ったことから、ふたりの復讐が始まりました。

原作では、事件から1年間、心を閉ざし、病院で生ける屍のような生活を送ります。渉が加害者を殺したことを密かに打ち明けたとき、響子ははじめて涙をこぼし、それを機に回復します。

退院後は、渉と共に復讐代行を行うことで、生きがいを見いだします。渉の存在だけが、ただひとつの心の支えになります。

3.武藤隆

ドラマでは、妹を未成年者に殺され加害者への復讐心を消せず、刑事を辞めて私立探偵をしているときに環から裏の仕事を依頼され、引き受けるようになります。一時、環に反発するも、犯罪を根絶することこそ復讐なのだと思うようになります。鏑木は良き先輩でした。

原作では、鏑木との交流はありません。私立探偵の原田と共に、環からの依頼で職業殺人者を追いますが、捜査の途中で倉持の過去を知ることになります。

誘拐事件の時に環に利用されたことから、環に対して不信感を抱いており、環に殺されそうになった倉持を逃がしてやります。

その後、環から倉持の捜査を依頼されますが「倉持のしていることが間違いだと、自信をもって断言することができない」と依頼を断り、環のもとを離れます。

4.倉持真栄

ドラマでは、登場しません。響子と同伴する後半部分は、牧田が代わりをつとめました。

原作では、武藤や原田と同じ環チームの一員です。環から職業殺人者の捜査を依頼されますが断り、独自で秘密裏に捜査をして響子と鏑木に近づき「仲間にしてほしい」と言います。鏑木から「手を汚すのは俺だけでいい」と断られると、響子と共に市原を拉致して殺害しようとします。

倉持は、かつて鏑木と同期の警察官でした。妻と幼い娘を惨殺され、加害者(精神障害のために罪に問われなかった)を襲って殺そうとしますが失敗し、加害者は後に自殺します。倉持は警察官を辞め、環に拾われたのでした。

市原の殺害に失敗した倉持は、武藤の助けを得て環から逃げ、大阪に行きます。そして、救われない被害者遺族のために復讐代行を行う職業殺人者となります。

5.牧田浩文

ドラマでは、「少年犯罪を考える会」の発起人であり、会をまとめる代表者という位置づけです。加害者を殺害することに何の疑問も抱かず、正義だと信じて実行しています。後半、鏑木のもとを去った響子と共に、復讐を続けようとします。

原作では、牧田は被害者遺族のひとりであり、響子と被害者遺族との窓口のような位置づけです。温厚で優しい人物で、響子によって救われるまでは、生きる意味を見いだせずにいました。

復讐は、被害者遺族に立ち直ってもらうための最後の手段と考えています。そのため、梶原と行き違いがあったときは、ひどく落ち込んでいます。

6.環敬吾

ドラマでは、武藤を使って表では解決できない事件を捜査します。Season1で鏑木と対立し、その後、鏑木の裏の顔に気づいて武藤に追わせます。鏑木を武藤に処理させようとしますが、撃つことができなかった武藤の代わりに最後は自分が鏑木を撃ちます。

原作では、鏑木との接点はありません。倉持を試すために捜査を依頼しますが断られ、倉持が職業殺人者の側につくことを予測して、原田と武藤にそれとなく情報提供します。
最後は、犯罪者に転じた倉持を処理するため倉持を追って広島に行き、倉持と対峙します。

7.物語の結末

ドラマでは、鏑木は響子の死後、環に復讐するために環を呼び出しますが、代わりに武藤が現れます。しかし武藤は鏑木を撃つことができず、鏑木は環に撃たれて死にます。

原作では、鏑木は響子の死を目の当たりにして我を忘れ、警察官がいる前で市原を絞め殺します。響子を抱き締めて名前を呼び続け、「君が誰よりも好きだ」と、今まで言えなかった言葉を初めて声にします。鏑木は殺人の現行犯で逮捕されます。

環は、自分が使っていた工作員(倉持)が犯罪者に転じたことを隠蔽するため、倉持を抹殺しようとしますが、武藤に邪魔をされます。環は原田の協力で広島に潜伏していた倉持を見つけ出し、ふたたび倉持と対峙します。

その後、倉持と環がどうなったか、確かな描写はありません。ある人物が夜の町で倉持らしい人間を見た、という描写があるだけです。

ひとこと

原作とのいちばん大きな違いは、鏑木が職業殺人者になった動機だと思います。
原作の鏑木が愛する響子のために行っていたのに対し、ドラマでは鏑木自身が未成年犯罪の被害者だったため、自身の復讐心を満足させるという理由でした。

そのため、響子と鏑木の絆の深さ、ふたりの心がすれ違い別れる時の辛さ、最後に響子の死を前にしたときの鏑木の慟哭は、原作のほうが激しかったと思います。

逆に、愛する人を失い、復讐から逃れられずに殺人に手を染めたドラマ版鏑木の闇の深さは、原作にはなかったものでした。

それともうひとつ。結末です。
私は、原作のテーマは武藤の台詞「倉持のしていることが間違いだと、自信をもって断言することができない」に集約されているように感じました。

だから、環と倉持のどちらが生き延びたのか、最後まで明らかにしなかったのではないかと……。答えを出さないことが、答えだったのではないかと……。

ドラマでは環が鏑木を殺して終わってしまったので、最後には警察が正義になってしまったような印象を受けました。それが普通なんですけどね。

でも、せっかくWOWOWでやるのだから、普通の答えを出さなくても、曖昧な結末でも、よかったんじゃないのかな……とも思いました。


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