「宮沢賢治の食卓」第1話感想|教師になる前の賢治

連続ドラマW 宮沢賢治の食卓

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ドラマ「宮沢賢治の食卓」第1話が放送されました。
原作にはない、教師になる前の賢治が丁寧に描かれていました。
音楽も映像も役者さんたちの演技もすばらしく、まるで映画のような完成度でした。

こんな質の高いドラマが見られるなんて、本当に嬉しいです。
次の土曜日の夜が待ち遠しいです。

第1話「幸福のコロッケ」ネタバレ

大正10年夏、東京・本郷。岩手・花巻から東京に出てきた宮沢賢治(鈴木亮平)は、クラシック音楽に心を奪われ、揚げたてのコロッケに舌鼓をうちながら、童話や詩を書いていました。

工場をクビになっても「故郷には絶対に帰らない」と意地を張っていた賢治でしたが、妹・トシ(石橋杏奈)が病気という電報を受けとり、急いで花巻に帰郷します。

しかし、電報は父・政次郎(平田満)が賢治を家に帰らせるために、勝手に打ったものでした。トシは、教師として勤めていた花巻高等女学校を辞めることになりましたが、体調が戻り次第、すぐに復職すると元気に話します。

母・イチ(神野三鈴)や弟妹たちのために、東京で食べたじゃがいものコロッケを作り、食べさせる賢治。みんな「おいしい」と喜び、大好評でした。

しかし、長男である賢治に質屋を継がせようとする厳格な父・政次郎(平田満)とは、いつも喧嘩になってしまいます。賢治は貧乏人から金を巻き上げる質屋の仕事を嫌い、別の職業に就きたいと考えていました。

どうしても質屋はできない、と悩む賢治。妹のトシは、「にっちゃは、ご自分が見ている宇宙を、みんなに分けて差し上げたいんでしょ?」と言います。

「ほら。コロッケだって、分け合うとおいしいじゃねえすか。にっちゃの見る宇宙だって、みんなと分け合った方がいいに決まってます。大丈夫。にっちゃの夢を分かち合える人は、どこかに必ずいるはずです」

賢治が花巻に戻ってきてしばらく経ったある日、ふたりの貧しい姉弟が賢治の家の質屋を訪ねてきます。政次郎は、幼い姉弟が持ちこんだ質草を「お金にならない」と追い返します。

ふたりの後をつけた賢治は、腰を痛めた父親・吉盛(柳沢慎吾)の代わりに農家の仕事を手伝い、子供に自作の童話を語って聞かせたり、字を教えたりします。

一家の貧しい暮らしぶりに心を痛めた賢治は、質草を預かり、直に政次郎にかけ合いますが、政次郎は「質屋の仕事は、物の価値だけ見て判断してるわけではない。相手に返済する道筋があるかどうか、その覚悟を見て判断しているんだ」と突っ撥ねます。

そろばんをはじく父の姿に、「お父さんには、心がねえすか!」と憤る賢治。

賢治は密かに自分のチェロを売ってお金を作り、吉盛にお金を渡します。しかし、吉盛は賢治の嘘に気づき、お金を受けとりません。賢治は「僕は、幸せを分かち合いたいだけなんです」と訴えます。

吉盛は、昔、政次郎からお金を借りたときのことを賢治に話します。死にもの狂いで働いてやっと金を返した日、政次郎はお酒を持って吉盛を訪ねてきたと言います。

「おらね、ようやくわかりました。お父さんは、おらと同じで、ただ真剣に仕事と向き合ってるだけなんだなぁって。あん時、男同士で分かち合った一杯の酒の、まあうめかったこと。あれこそが、分かち合いだと、おら思うんです。んでも、あんたがくれたお金、そりゃ分かち合いじゃね。ほどこしです」

落ち込んで帰った賢治の前に、買い戻したチェロを見せる政次郎。「これがおめのやりたかったことか。嘘ついて、人さ情け売るっつうことか」

「人には与えられた道筋があり、その道筋をまっすぐ歩いていくということが、人様のお役に立つことになるんだ。おめの道筋は、この家しかねえんだ」

書きためた原稿が詰まったトランクを持って、賢治は家を出ます。森の中で、トランクに火をつけようとする賢治。追いかけてきたトシが、それを必死に止めます。

「このトランクは、この原稿は、にっちゃそのものなんです。これを燃やしたら、にっちゃが燃えてしまうんです。こんなこと、絶対に私が許しません!」

「本当の僕は、トシさんが思うようなすんごい兄なんかじゃねえすよ。こんな夢物語、いくら書いたって、実際に困ってる人の役にはなんにもたたね」
「違います!」

「いやそうなんです。とっちゃの言うとおり、質屋になることが天が与えた僕の道筋だったんです」
「違います、絶対に違います!」

トランクを抱きかかえるトシ。
「私は知ってます。にっちゃがすごいこと、私が、誰よりも知ってます」

帰り道、大根を売って歩く吉盛の子供たちに会います。少年は、賢治が教えた字で、賢治に宛てて書いた手紙を手渡します。そこには「せんせい ありがとうございます」と書かれていました。それを見て涙を流す賢治。

トシは、開校する稗貫農学校に教師の欠員が出たことを賢治に伝えます。賢治は両親の前で「僕は、コロッケを分かち合うように、僕の見ている世界を、子供たちと分かち合いたいんです。僕は、教師になろうと思います」と言います。

実は、教師の欠員が出たというのはトシがついた嘘でした。医者から「この体ではもう復職するのは難しい」と言われたトシは、賢治に夢を託そうと、教師仲間の藤原嘉藤治(山崎育三郎)に口添えを頼んだのでした。

それは、トシがこの世を去る1年前の出来事でした。

原作では?

原作の賢治は、すでに稗貫農学校の教師になっていて、教師時代のエピソードで構成されています。なので、今回のお話は原作にはありません。

第1話「幸福のコロッケ」感想

泣けました……。
第1話から、こんなに濃い内容になるとは予想外でした。
何か月も前から楽しみにしていたドラマですが、何もかも期待以上です。

賢治が父親との確執に生涯悩んでいたことや、妹・トシがただひとりの理解者だったことは、数多くの文献にも書かれていることなので以前から知っていました。
でも、実際に役者さんが演じると、遠い人だった賢治が身近に感じられて、賢治の熱い想いが胸にせまってきますね。

鈴木亮平さんが素晴らしい役者さんだということはわかっていたので、何も心配していませんでしたが、トシを演じた石橋杏奈さんが予想以上に素晴らしかったです。ただ美しいだけではなく、命を振り絞るような力強い言葉で賢治を励ます場面は、グッときました。

背後に流れる音楽もよかったですね~。
エンドロールは、岩手の写真とともに、ずーっと音楽を聞いていたい気持ちでした。
久々に、清々しい気持ちになれるドラマを見ました。


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