「宮沢賢治の食卓」第2話に登場した「赤いしゃっぽ」とは?

連続ドラマW 宮沢賢治の食卓

(C)WOWOW

ドラマ「宮沢賢治の食卓」第2話が放送されました。
第2話でも、賢治の作品が登場しました!
さりげなく登場するので見逃しそうになりますが、気づきましたか?

今回は、ドラマ第2話の中に盛り込まれていた賢治の作品と、当時まだ珍しい野菜だったトマトについて考察します。

第2話「夢のシチュウビーフ」に登場した作品は?

春と修羅

鈴木亮平さん演じる賢治が、嘉藤治先生と初めて会った場面。
賢治は「よかったら、読んでいただけませんか。僕の心象スケッチ」と言って、自分が書いた詩の一節を嘉藤治先生に見せていました。

それが「春と修羅」です。
賢治の生前に、唯一刊行された詩集のタイトル(※)でもあります。

この本は、専門家の間では評価が高かったものの、当時の世間一般には受け入れられず、大半が売れ残ってしまったそうです。
※賢治が「詩集」と呼ばれることを嫌ったため、正式なタイトルは「心象スケッチ 春と修羅」となっています

まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ

ドラマに出てきたのは、「春と修羅」の一部にすぎません。
長いので全文は割愛しますが、興味が湧いた方は読んでみてください。

青空文庫↓で読めます。
参考 春と修羅|宮沢賢治青空文庫

かしわばやしの夜

賢治が稗貫農学校の教師となり、トマトを作るために裏の畑を耕す場面。
「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン」と言いながら、鍬を振るっていました。

これは、童話「かしわばやしの夜」の中に出てくる台詞です。

日暮れ時、農夫の清作が稗の根もとにせっせと土をかけていると、柏ばやしのほうから調子はずれの変な声で「欝金しゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなるのが聞こえてきます。
声のほうへ行ってみると、赤いトルコ帽子をかぶった奇妙な画(え)かきがぷんぷん怒っていました。清作は「赤いしゃっぽのカンカラカンのカアン。」とどなり返します。
画かきは清作を気に入り、林の奥の「柏の木大王」のところに連れていきます。

こちらも青空文庫↓で読めますので、続きが気になる方は読んでみてください。
参考 かしわばやしの夜|宮沢賢治青空文庫

「赤いしゃっぽ」とは?

賢治の作品には、「しゃっぽ」がよく登場します。
「しゃっぽ」とは、つばのある帽子のこと。
フランス語の「chapeau(シャポー)」が語源のようですね。
今ではほとんど聞かない言葉ですが……。

ドラマでは、トマトのことを「赤いしゃっぽ」と言っていました。
トマトを赤い帽子に例えたのでしょう。
なんだか可愛らしい比喩ですよね。

トマトは珍しい野菜だった?

原作では、「トマトを作ってみませんか?」と言う賢治に、生徒たちは戸惑います。当時、日本では、まだトマトは一般的な野菜ではありませんでした。

そのため、稗貫農学校の生徒たちも「トマトって花巻で作れるんだが?」「そったらもん買ってくれる人いねんでねか」「遊びで西洋野菜作る余裕はありません」と冷たい反応……。

トマトが日本に伝わったのは江戸時代ですが、青臭いのと、真っ赤な色が敬遠され、食用として利用されるようになったのは明治以降だそうです。
日本人の好みに合うような品種が育成されるようになったのは、昭和以降なんですね。

賢治は、冷害に苦しむ農家の現状を思い、「天候に左右されやすい米だけでなく、ほかの野菜にも目を向ける必要がある」と考えていたようです。

ひとこと

第2話では、賢治がトマトを作ろう、と生徒たちに呼びかけます。
冷ややかな反応の生徒たちに、賢治はシチュウビーフをご馳走していました。
当時、まだ馴染みのない西洋野菜だったトマトの良さを、なんとかわかってもらおうと、賢治なりに考えたんですね。

賢治の思いが伝わって、生徒たちはトマト作りに参加します。
はたして赤いしゃっぽのトマトは、無事に実るのでしょうか?
生徒たちの反応が楽しみです。


ほかの記事を読む?

連続ドラマW「宮沢賢治の食卓」 「宮沢賢治の食卓」第2話感想|今までにない新しい賢治 連続ドラマW「宮沢賢治の食卓」 「宮沢賢治の食卓」第3話感想|恋を彩る花巻の春の景色