「宮沢賢治の食卓」最終回に登場した童話、詩、音楽は?

連続ドラマW 宮沢賢治の食卓

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WOWOWオリジナルドラマ「宮沢賢治の食卓」最終話が放送されました。

最終話「天上のアイスクリーム」には、たくさんの詩や童話、音楽が登場しました。
ひとつずつ紹介してみたいと思います。

最終話「天上のアイスクリーム」に登場した作品は?

雪渡り

ドラマでは、賢治は病床のトシに、初めて自分の作品が掲載された雑誌を見せました。

雑誌「愛国婦人」に掲載されたのは、「雪渡り」という作品です。
これが賢治のデビュー作であり、この作品で賢治が手にした5円の原稿料は、生涯唯一の原稿料だったと伝えられています。

雪の積もった日、兄と妹が野原で遊んでいると、白い狐の子がやってきて狐の幻燈会に招待されるというお話。

青空文庫↓で読めます。
参考 雪渡り|宮沢賢治青空文庫

星めぐりの歌

ドラマでは、賢治は収穫祭で生徒たちと一緒に歌おうと、合唱の練習をしていました。そのとき歌っていたのが「星めぐりの歌」です。
いつ聞いても、心安らぐ不思議な歌ですね。

「星めぐりの歌」については、こちら↓で書いています。

連続ドラマW「宮沢賢治の食卓」「宮沢賢治の食卓」に登場した“星めぐりの歌”とは?

永訣の朝

ドラマでは、最愛の妹・トシを亡くして生きる希望を失った賢治が、トシの手紙によって励まされ、思いをぶつけるように原稿用紙に向かい書き上げていた詩です。

「永訣」は、永遠の別れを意味する言葉です。

永訣の朝

けふのうちに
とほくへいつてしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふつておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゆとてちてけんじや)
うすあかくいつそう陰惨な雲から
みぞれはびちよびちよふつてくる
(あめゆじゆとてちてけんじや)
青い蓴菜のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがつたてつぱうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゆとてちてけんじや)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちよびちよ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになつて
わたくしをいつしやうあかるくするために
こんなさつぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまつすぐにすすんでいくから
(あめゆじゆとてちてけんじや)
はげしいはげしい熱やあへぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽 気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
……ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまつてゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまつしろな二相系にさうけいをたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらつていかう
わたしたちがいつしよにそだつてきたあひだ
みなれたちやわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびやうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまつしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになつて
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ

( )部分はトシの言葉です。一般的には、

(あめゆじとてちてけんじや)……「雨雪とってきてください」
(Ora Orade Shitori egumo)……「私は私で一人で逝くから」
(うまれでくるたてこんどはこたにわりやのごとばかりでくるしまなあよにうまれてくる)……「生まれてくるにしても、今度はこんなに自分のことばかりで苦しまないように生まれてくる」

という意味と解釈されています。
「永訣の朝」は、詩集「春と修羅」に収録されています。

バッハのアリア

ドラマでは、賢治は大音量でレコードをかけて「永訣の朝」を書いていました。
そのとき聞いていた音楽がバッハの「管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1068」の第2曲「アリア」でした。

ヴァイオリン独奏のために編曲された「G線上のアリア」としても有名な曲です。

弓のごとく

ドラマでは、ラストシーンで草原を歩く賢治が、歌を口ずさんでいました。
そのときの歌が「弓のごとく」です。

弓のごとく
鳥のごとく
昧爽(まだき)の風の中より
家に帰り来れり

弓のごとく夜明けの風の中から帰宅する様子を歌っています。

これは、ドラマの第3話にも登場した、ベートーヴェンの交響曲第六番「田園」第二楽章第一主題のメロディーに、賢治が歌詞をつけたものです。
「田園」は、賢治が特に好きだった曲として知られています。

銀河鉄道の夜

ドラマでは、トシが実家にもどる途中、賢治に「何か話して」とお願いをします。
トシはふたりの子供が銀河を旅する話を語ろうとします。

それが、賢治の有名な童話作品「銀河鉄道の夜」です。
母親とふたりで父の帰りを待つ孤独な少年ジョバンニが、親友のカムパネルラと一緒に銀河鉄道に乗って星々を旅する幻想的な物語。

初稿の執筆は1924年頃と言われていますが、晩年まで推敲が重ねられました。賢治の死後、未整理の複雑な草稿の形で遺されたため、謎も多く、現在もさまざまな解釈が存在します。

カムパネルラのモデルは、トシだという説もあります。

青空文庫↓で読めます。

参考 銀河鉄道の夜|宮沢賢治青空文庫

ひとこと

賢治の作品を読み返すたびに、不思議な感覚に陥ります。
私のもっとも深い、根源ともいえる部分が、ざわざわするような奇妙な感覚。
それは嬉しくもあり、楽しくもあり、少し怖くもあります。

なので解説をするのは、とても難しい。
私が友人たちに賢治の作品について語ると、みんな「はいはい」と呆れたように笑って、適当に相槌を打ち始めるので、たぶんうまく伝わっていないのでしょう(笑)

でもしょうがないです。
だって「あの感覚」を伝える言葉が見つからないのだから。

もしかしたら、賢治の作品を好きな人は、同じ感覚を味わっているのかな?
いつか聞いてみたいなぁと思う反面、別に聞かなくってもいいかとも思うんですよね。

このドラマを見ていると、なんとなくどこかで誰かとその感覚を共有できたような気がして、少し嬉しかったです。

このドラマは、U-NEXTで視聴可能です。※最新の配信状況と料金はU-NEXTサイトにてご確認ください

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