WOWOW連続ドラマW「夜の道標-ある容疑者を巡る記録-」(全5話)についてまとめました。
芦沢央さんの第76回日本推理作家協会賞受賞作を連続ドラマ化。
1996年に起きた殺人事件を追う刑事・平良が、2年間逃亡を続ける容疑者・阿久津の足取りと動機を探る中で、事件の奥に潜む社会の闇に迫っていく本格社会派ミステリーです。
主演は、WOWOWドラマでは11年ぶりとなる吉岡秀隆さん。家庭に問題を抱える刑事・平良を、温かみのあるまなざしで演じます。逃亡犯・阿久津役には、RADWIMPSの野田洋次郎さん。ほかにも瀧内公美さん、高杉真宙さんらが出演し、重厚な人間ドラマを彩ります。
※この記事は随時更新中です。各話視聴後、加筆修正します
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2025年9月14日(日)から毎週日曜22:00~ほか
- 原作:芦沢央『夜の道標』
- 脚本:倉光泰子 森淳一
- 監督:森淳一
- 音楽:Jun Futamata
あらすじ
1996年、横浜市内で学習塾を経営する講師・戸川勝弘が殺害された。被害者の元教え子で軽度の精神障害を抱える阿久津弦(野田洋次郎)が容疑者として捜査線上に浮かぶが、事件発生から2年たった今も足取りはつかめない。捜査が縮小する中、窓際刑事の平良正太郎(吉岡秀隆)が刑事課長・井筒勲の指示で、若手刑事・大矢啓吾(高杉真宙)とともに戸川殺しの再捜査をすることに。悪い噂一つない人格者・戸川がなぜ殺されたのか――。戸川を知る塾関係者、容疑者・阿久津の母親や元妻に知人……。平良らは日々聞き込みを続けるが、謎は深まるばかり。
WOWOW公式サイトより
一方、殺人容疑者をかくまうことになる阿久津の同級生・長尾豊子(瀧内公美)や、阿久津と“あるきっかけ”で出会う小学生・橋本波留をはじめ、関係ないように見えた者たちまでもが、阿久津という逃亡中の容疑者を中心に動き出した時、バラバラに思えた点と点がつながり、やがて思いも寄らぬ展開を見せていく。
予告動画
原作について
このドラマの原作は、芦沢央さんの小説『夜の道標』(2022年刊行)です。
1996年に横浜市内で起きた塾経営者殺人事件を軸に展開する、本格的な社会派ミステリーです。
事件から2年経っても行方不明のままの容疑者・阿久津。その足取りを追う刑事や、彼を匿う女性、そして彼から食料を受け取りながら生き延びる少年――それぞれが「守りたいもの」を胸に抱えています。
物語は、真相を探る過程で、人間の心の闇や社会のひずみが少しずつ浮かび上がっていく構成。単なる善悪では割り切れない人間模様と、緻密に張り巡らされた伏線が読者を引き込みます。
読み進める間ずっと「どうして舞台が1990年代なんだろう」と思っていましたが、終盤でその理由が腑に落ちました。
2022年には日本推理作家協会賞を受賞し、その完成度の高さと深い余韻が高く評価されました。「守る」ということの意味を考えたくなる一冊です。
▼原作についてはこちらで詳しく書きました

1990年代の主な出来事
1990年 | 株式市場が暴落し、バブル経済が崩壊へと向かう。 『ちびまる子ちゃん』放送開始。 スーパーファミコン発売。 |
1991年 | ディスコ「ジュリアナ東京」オープン。 |
1992年 | きんさん・ぎんさんブーム。 |
1993年 | 皇太子(現天皇陛下)が小和田雅子さんとご結婚。 Jリーグが開幕し、サッカーブームが巻き起こる。 |
1994年 | 松本サリン事件が発生。 関西国際空港が開港。 日本で初のインターネットプロバイダーがサービスを開始。 |
1995年 | 阪神・淡路大震災が発生。 地下鉄サリン事件が発生。 Windows 95が発売され、パソコンとインターネットが急速に普及する。 |
1996年 | たまごっちが発売され、大ブームとなる。 O-157による集団食中毒事件が全国で発生。 |
1997年 | 神戸連続児童殺傷事件が発生。 |
1998年 | 長野オリンピック開催。 和歌山毒物カレー事件が発生。 |
登場人物(キャスト)一覧
※第2話までのネタバレを含みます
平良正太郎(吉岡秀隆)
旭西署の刑事課に所属する巡査部長。上層部の不正な指示を無視したことにより左遷され、窓際に追いやられている。2年前に起きた殺人事件「戸川事件」の追跡捜査を命じられ、姿をくらました容疑者・阿久津を追う。家庭でも問題を抱え、思い悩む。
阿久津弦(野田洋次郎)
1996年に起きた殺人事件「戸川事件」の容疑者。軽度の精神障害がある。小学校から高校まで、被害者・戸川勝弘が講師を務める「戸川塾」に通っていた。中学時代に傷害事件を起こして補導されているが、動機は不明。
戸川勝弘(宇野祥平)
障害のある子どもたちが通う「戸川塾」の講師。子どもたちの個性を尊重し、それぞれの問題に真摯に対応する講師として、母親たちから信頼を得ていた。1996年に教室内で殺害された。
長尾豊子(瀧内公美)
阿久津の元同級生。両親を交通事故で亡くし、夫とも離婚し、地元のスーパーで働きながら実家で独り暮らしをしている。穏やかな物腰と気配りのある態度で、近隣住民との交流や職場での人間関係を円滑に築いているが、自宅の地下室では逃亡中の阿久津を密かに匿い続けている。
大矢啓吾(高杉真宙)
旭西署の刑事課に所属する巡査。念願叶って刑事課に配属されるも、平良と組んだことで上司の井筒から冷遇されることに。平良とともに、1996年に起きた殺人事件「戸川事件」の真相を追う。
井筒勲(和田正人)
旭西署の刑事課長。厳格な性格。上層部の指示を無視して左遷された平良と、バディを組む大矢に対して冷たく接する。
阿久津栄子(キムラ緑子)
阿久津弦の母親。幼少期の阿久津を「戸川塾」に通わせていた。事件後にマスコミの報道などで追い詰められ、心を病んでいる。
橋本波留(小谷興会)
バスケットボールが得意な小学6年生。父親の太洋とふたり暮らし。父親から「当たり屋」を強要され、ネグレクトを受けている。阿久津弦と出会ったことにより、事件に巻き込まれていく。
橋本太洋(吉岡睦雄)
波留の父親。失業してからは一切働かず、波留を利用した詐欺行為で金を稼ぎ、酒浸りの生活を送っている。
仲村桜介(小林優仁)
波留のクラスメイトでバスケ仲間。転校してきた波留と一番仲の良い友達になる。波留の交通事故を自分のせいだと思い込み、罪悪感に苛まれる。
岡野謙二郎(柾木玲弥)
波留・桜介のクラス担任。林間学校に参加できない波留の家の事情を察し、力になろうとする。
平良澄子(映美くらら)
平良正太郎の妻。引きこもりの息子・孝則のことで思い悩み、辛い日々を過ごす。
平良孝則(坂元愛登)
平良正太郎の息子。いじめをきっかけに登校を拒み、部屋に閉じこもる日々が続いている。
真木実和(朝倉あき)
阿久津弦の元妻。阿久津との間に子どもができないことに責任を感じ、4年前に離婚を切り出した。現在は再婚して一児の母になっている。
杉浦達男(柏原収史)
豊子の元夫。現在は再婚して1歳の娘がいる。
少年時代の阿久津弦(原田琥之佑)
中学3年時、校内で同級生に対して暴力を振るい、補導された。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1996年、横浜市の塾講師・戸川勝弘(宇野祥平)が、かつての教え子で軽度の精神障害を抱える阿久津弦(野田洋次郎)に殺害される。現場に残された指紋から阿久津が容疑者として特定されるも、彼は逃亡し、行方不明のまま2年が経過する。
1998年、旭西署の刑事課では連続強盗事件の捜査が進む中、窓際刑事の平良正太郎(吉岡秀隆)と新人刑事・大矢啓吾(高杉真宙)が、戸川事件の追跡捜査を命じられる。平良はかつて、上層部からの不正な指示に背を向けたことで旭西署への異動を余儀なくされた過去を、大矢に語る。それを聞いた大矢は、「必ず見返してやりましょう」と事件の真相解明に向けて闘志を燃やす。
平良と大矢は阿久津の過去を辿る中で、彼が戸川塾に通っていた頃の同級生や保護者に聞き込みを行う。戸川は障害を持つ子どもたちに対して献身的に接していた人物であり、悪評は一切見られない。平良は、阿久津が戸川に対して復讐心を抱いていた可能性を考えるが、証言からはその動機を裏付けるものは見つからない。
一方、小学生の橋本波留(小谷興会)は、親友の仲村桜介(小林優仁)との会話の最中に交通事故に遭い、左腕を骨折する。波留の父・太洋(吉岡睦雄)は事故の加害者である高齢女性に対し、息子の将来を盾に金銭を要求し、涙ながらに語る演技で大金を手にする。
スーパーで働く長尾豊子(瀧内公美)は、周囲に家族がいるように装っているが、実際には孤独な生活を送っている。夜、彼女は職場から売れ残りの総菜を持ち帰ると、2人分の食事を用意して地下室へ降りる。そこには逃亡中の阿久津弦が潜んでいた。
平良と大矢は、戸川殺害の背景を探るべく、阿久津が中学時代に起こした傷害事件に着目する。元担任の古屋は、阿久津が特に関係のない男子生徒に突然暴力を振るい、肋骨を折る重傷を負わせたことを証言するが、動機については不明だと語る。その事件以降、阿久津は周囲の生徒から恐れられ、次第に孤立を深めていったという。
一方、波留は父・太洋から林間学校への参加を許されず、誰にも助けを求められないまま、空腹をかかえて街をさまよう。偶然迷い込んだ長尾家の敷地で、地下室の窓越しに阿久津と出会う。阿久津は総菜を差し出し、波留は感謝の言葉を添えてその場で食事をとる。2人の間には奇妙な信頼が芽生える。
平良と大矢は、阿久津が事件直前に参加していた職場のバーベキューを調査する。参加者の森川は、阿久津が元妻との思い出を語っていたこと、そして子どもたちと楽しげに遊んでいた様子を語り、彼が子どもを強く望んでいた可能性が浮かび上がる。
元妻・実和(朝倉あき)は、阿久津との間に子どもができないことに責任を感じて離婚し、その後再婚して妊娠していた。この事実が阿久津にとって大きな衝撃となり、事件の動機に繋がったのではないかと平良は推察する。
平良自身の家庭では、息子・孝則(坂元愛登)がいじめを理由に登校を拒み、部屋に閉じこもる日々が続いていた。平良は何とか息子と向き合おうとするが、言葉は届かず、家族の間に深い溝が生まれていく。
阿久津を匿う豊子は、元夫・杉浦達男(柏原収史)と再会する。杉浦は財産分与を申し出るが、豊子はそれを断り、彼の再婚と子どもの誕生を祝福する。
夜、豊子は阿久津と夕食を共にしながら、中学時代の記憶を辿る。彼女は阿久津の傷害事件の現場を目撃しており、表面的にはいじめを止めるための暴力に見えたが、実際には「痛いか?」と問いかけていた男子生徒に“痛み”を教えるために殴ったのだと理解していた。豊子の目には、阿久津は何にも縛られず、自由に進む存在として映っており、その印象は今も彼女の中に強く残っている。
豊子が阿久津と再会したのは、両親の一周忌の帰り道だった。街灯の下に立ち尽くす阿久津に声をかけた豊子は、彼の「センセイを殺しちゃったから、警察署に行かなきゃ」という告白を受け止め、自宅に連れ帰ったのだった。今、地下室で共に過ごす時間の中で、豊子は阿久津に「ありがとう。うちに来てくれて」と静かに語りかける。
平良と大矢は、阿久津の元妻・真木実和(朝倉あき)から話を聞き、阿久津が父親から虐げられ、結婚や家庭を持つことを否定され続けてきたことを知る。そんな阿久津が結婚に踏み切ったのは、戸川の存在があったからだった。
阿久津にとって戸川は、向かうべき方向を照らす人生の道しるべのような存在だった。しかし、なぜその戸川を殺害するに至ったのか、その動機は依然として掴めない。平良たちは、事件当日の阿久津の行動を知るため、聴取を拒んでいる母・栄子(キムラ緑子)のもとを訪ねる決意を固める。
一方その頃、阿久津を匿う豊子の家では、少年・波留が阿久津に心を開き始め、彼のもとを頻繁に訪れるようになっていた。阿久津の人柄に触れた波留は、やがて地下室にまで足を踏み入れるが、その姿を友達の桜介に目撃されてしまう。
桜介は、以前テレビで見た「逃亡中の殺人犯・阿久津弦」の顔を思い出し、地下室に潜む男がその本人であると確信する。
豊子は阿久津が誰かに見つかることを恐れ、彼を匿い続ける日々に神経をすり減らしていく。その一方で、阿久津との関係を深め、彼が罪を犯していなければ普通の恋人同士として生きられたのに、と儚い願望を吐露する。
平良と大矢は栄子の家を訪ね、事件当日に阿久津が「実和が妊娠して再婚する」と語ったことを聞き出すが、栄子の証言には不自然な点が多く、彼女が何かを隠していることが明らかになる。
さらに「みんなやってるって言うから」という謎の言葉や、「平山」という人物の名前を口にし、事件の背後に新たな影が見え隠れする。大矢は焦りから栄子を追及しすぎて失敗し、二人は手がかりを失いかけるが、平良は粘り強く調べる決意を固める。
そんな矢先、平良の妻・澄子から「孝則が!」という切迫した電話が入り、電話の向こうで救急車のサイレンが鳴り響く。
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