わたしがこれまで見た映画の中で、面白いと思ったミステリー・サスペンス系の映画を紹介します。今回は邦画編。
新作から昭和の名作まで、個人的な好みで揃えました。
映画を見るときの参考にしてもらえると嬉しいです。
ある男
芥川賞作家・平野啓一郎氏の同名小説を映画化した珠玉のヒューマン・ミステリー。事故で亡くなった夫は、何者だったのか。夫の正体を知るため、弁護士に身元調査を頼む妻。調査によって、男が隠したかった“過去”が明らかになっていくというストーリー。ラストが秀逸。映画を見る前に、ネット検索でルネ・マグリットの絵画「複製禁止」を見ておくことをおすすめします。
罪の声
昭和最大の未解決事件「グリコ・森永事件」をモチーフにしたミステリー。30年以上前の事件の真相を求めて取材を重ねる新聞記者。一方、京都でテーラーを営む男性は、当時犯行に使われた脅迫テープの子どもの声が自分だと気づき震撼します。劇中で提示される真相はフィクションですが、説得力がありました。
祈りの幕が下りる時
ドラマ「新参者」シリーズの完結編。ドラマを見ていなくてもわかるよう親切に作られています。昭和の名作「砂の器」を彷彿とさせる古典的なミステリーで、年齢を問わず楽しめる作品。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
砂の器
昭和の名作。松本清張の原作を、情感豊かなヒューマンドラマに変えた作品。今は亡き丹波哲郎さんの名演や、記憶に残る音楽と映像が見どころです。古くて暗い映画ですが見る価値のある1本です。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
スパイの妻 劇場版
夫への疑惑から始まる、夫婦の信頼と疑心暗鬼を描いたラブサスペンス。黒沢清監督が得意な不気味な演出が効いています(といってもホラーではありません)。いくつもの解釈が可能な物語で、ひとつひとつのシーンに引き込まれました。戦時下の夫婦をみごとな再現力で演じた蒼井優さん、高橋一生さんも素晴らしかったです。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
キサラギ
映画館で観てドハマリしました。自殺したアイドルの死の真相を巡る密室会話劇で、コミカルかつハイテンションな5人の会話が思いもよらない展開を引き起こします。次々と伏線が回収されていく後半は見応えあり。
見えない目撃者
韓国映画「ブラインド」のリメイク。自らの過失で弟を事故死させ、視力を失って生きる元警察官を吉岡里帆さんが好演しています。クオリティ、満足度ともに高く、見応えのある作品です。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
望み
雫井脩介氏の同名小説を映画化。高級邸宅での理想的な生活という“望み”を手に入れた家族が、ある事件を境に一変。夫婦の息子が失踪し、「殺人犯か被害者か」という“究極の二者択一”を迫られます。追い詰められた家族の“望み”とは…。
容疑者Xの献身
ドラマ「ガリレオ」シリーズの映画第1弾。孤独な天才数学者を演じた堤真一さんの圧巻の演技に心を揺さぶられ、深い余韻を残す秀作。連続ドラマを見ていなくても問題なく楽しめます。
鍵泥棒のメソッド
内田けんじ監督らしい巧みな脚本に唸らされます。ある偶然から2人の男の人生が逆転し、そこから予測不能な展開に。前半と後半で真逆のキャラクターを演じる香川照之さんに注目。超真面目な堅物キャラを演じた広末涼子さんがキュート。
犬神家の一族
金田一耕助のイメージを定着させた角川映画。有名なあのシーンもこのシーンも、この映画が最初でした。市川崑監督の独特の世界観・映像美が見どころです。耳に残るメインテーマと共に、原作通りの金田一を表現している石坂浩二さんが素晴らしい。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
護られなかった者たちへ
中山七里氏の小説を映画化したヒューマンミステリー。東日本大震災から9年後、宮城県内で連続殺人事件が発生。善人と思われた被害者の共通点は…。震災で家族を亡くし、喪失感に苛まれながら職務を全うする刑事を阿部寛さんが、心を閉ざした謎の男を佐藤健さんが見事に演じきっています。
アフタースクール
30代になった同級生たちの“大人の放課後”を描いた娯楽作。予想外な展開と二転三転するストーリーにまんまと騙されました。何度も見ていますが毎回面白いです。実力派キャストの共演も見どころ。
悪人
出会い系サイトを通じて出会った孤独な男女の愛と逃避行を描いた人間ドラマ。妻夫木聡さんと深津絵里さんの演技に圧倒されます。終始絶望的な暗さに満ちているのですが、見終わった後にかすかな希望が残りました。
彼女がその名を知らない鳥たち
登場人物は全員ダメ人間。その突き抜けっぷりがいいんです。原作は「イヤミス」の女王と称される沼田まほかる氏。蒼井優さん、阿部サダヲさん、松坂桃李さんの演技に魅せられます。これを見てから白石和彌監督が気になるようになりました。R15+指定作品。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
紙の月
銀行勤めの主婦が出来心から顧客の金に手を出し、やがて大金横領という大胆な犯罪事件へと発展します。年下の男性との情事に溺れて暴走する主人公を演じた宮沢りえさんと、主人公と対峙するストイックな銀行員を演じた小林聡美さんが抜群の存在感。
新聞記者
東京新聞記者・望月衣塑子氏の同名ベストセラーを原案に製作された社会派サスペンス。国家権力の闇に迫るべく奮闘する新聞記者と、現政権に不都合なニュースのコントロールを任されたエリート官僚・杉原の葛藤を描いた意欲作。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
怒り
ある殺人事件の犯人をめぐる群像劇。東京、千葉、沖縄に素性のわからない3人の男が出現し、それぞれが犯人ではないかと思わせる言動を見せ始めます。人を信じ抜くこと、愛し続けることの難しさについて考えさせられます。PG12指定作品。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
暗いところで待ち合わせ
事故で視力を失った主人公の家に殺人事件の容疑者が忍び込み、奇妙な共同生活が始まります。丁寧に描かれる2人の静かな日常生活と、田中麗奈さんの繊細な演技が胸を打つ秀作です。原作、映画共に何度も味わっているお気に入りの作品です。
探偵はBARにいる
札幌・ススキノを舞台に繰り広げられる探偵シリーズの第1弾。昭和の探偵ドラマを彷彿とさせる懐かしさがあります。大泉洋さんと松田龍平さんのコンビが絶妙。
八日目の蟬
愛人の子どもを誘拐した女性の4年間におよぶ逃亡劇と、誘拐された少女のその後を描いたヒューマンサスペンス。偽物の親子関係(しかも母親は許しがたい犯罪者)であるにもかかわらず、2人の幸せな時間が続くことを願ってしまいます。タイトルが秀逸。
アヒルと鴨のコインロッカー
伊坂幸太郎氏の人気小説を巧みな演出で描いた青春ミステリー。若者たちが繰り広げる奇妙な友情が、やがて〝ある事件〟へと繋がっていきます。前半に伏線が散りばめられているのでお見逃しなく。ボブ・ディランの名曲「風に吹かれて」が印象的。
去年の冬、きみと別れ
猟奇殺人事件に関わった主人公が、徐々に追い詰められていく様をスリリングに描いたサイコサスペンス。原作の叙述トリックを見事に映像化しています。詳しいことはネタバレになるため言えません。ぜひ騙されてください。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
木曜組曲
女流作家の死の真相を巡って繰り広げられる密室会話劇。大人の女性たちが醸し出す落ち着いた雰囲気を楽しみたい人にオススメ。シリアスになり過ぎないところも好きです。実力派女優陣の演技と美味しそうな食事のシーンが見どころ。
愚行録
貫井徳郎氏の小説を映画化。後味は悪いのですが、見応えのある作品でした。イヤミスが好きな人にはおすすめ。未解決の一家殺人事件を追う雑誌記者を妻夫木聡さんが、その妹を満島ひかりさんが演じています。後半の展開が衝撃的。
※レビューはこちら(ネタバレ有)。
三度目の殺人
是枝裕和監督による法廷サスペンス。一度見ただけでは非常にわかりづらい作品ですが、いたるところに散りばめられた数々の暗示を紐解いていくと、それぞれが抱える“家族への思い”が見えてきます。
※レビューはこちら(ネタバレ有)。
ユリゴコロ
「殺人」を心の拠り所にして生きる女性の宿命と葛藤を、ゾクゾクするほど美しい映像で表現した異色のミステリー。殺人を犯さずにはいられない主人公を演じた吉高由里子さんにクギヅケになりました。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
22年目の告白-私が殺人犯です-
韓国映画「殺人の告白」を現代風にアレンジ。未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件の犯人が告白本を出版し、新たな事件を巻き起こすサスペンス。後半は衝撃の展開が待ち受けています。
12人の優しい日本人
映画「十二人の怒れる男」へのオマージュとして作られた三谷幸喜氏脚本の密室劇。陪審員として集められた12人の市民が、有罪か無罪かをめぐって激論を交わすうちに事件の真相に近づいていきます。ブレイクする前の豊川悦司さんが重要な役で出演。
カラスの親指
原作は道尾秀介氏の推理小説。偶然出会った詐欺師コンビと姉妹&青年が一世一代の大勝負に挑む犯罪コメディ。すべての伏線が回収されるラスト20分はお見事。ブレイク前の能年玲奈さん、古坂大魔王さんなど、キャストも豪華。
人魚の眠る家
東野圭吾の同名小説を映画化。脳死を宣告された娘を前に、究極の選択を迫られた両親の苦悩を描いたヒューマンミステリー。「人の死とは何か」を扱った衝撃的な作品で、心を揺さぶられました。※レビューはこちら(ネタバレ有)。
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