Netflixで配信中の韓国ドラマ「あなたが殺した」(全8話)のあらすじと感想です。原作との違いも。
DVに立ち向かう2人の女性の勇気と絆を描いたサスペンスヒューマンドラマで、原作は奥田英朗さんの小説『ナオミとカナコ』。物語の舞台を韓国に置き換え、現代の社会問題に向き合う内容として新しく作り直されています。
夫からの暴力に耐えるヒスと、彼女を救いたいと願うウンス。2人はついに「夫を殺す」という決断を下します。しかし、計画は思い通りには進まず、次々と予期せぬ出来事が2人を追い詰めていきます。
息をのむ展開と、心に残る人間ドラマが魅力。
Contents
作品概要
- 製作国:韓国(2025年)
- 配信開始日:2025年11月7日(Netflix)
- 原題:당신이 죽였다/As You Stood By
- 原作:奥田英朗『ナオミとカナコ』
- 脚本:キム・ヒョジョン
- 監督:イ・ジョンイム
あらすじ(ネタバレ無)
幼少期に家庭内暴力を経験した百貨店勤務のチョ・ウンスと、夫ジンピョからの凄惨なDVに苦しむ元童話作家チョ・ヒス。
ヒスの苦しみに気づいたウンスは、彼女を守るために「夫を殺そう」と提案します。2人は慎重に計画を立て、不法滞在中の中国人青年チャン・ガンにも協力を依頼。
ところが、思いがけないトラブルが次々と起こり、計画は少しずつ崩れていきます。2人はそれでも前に進もうと、必死に行動を続けていきます。
予告動画
原作について
このドラマの原作は、奥田英朗の小説『ナオミとカナコ』(2014年刊行)です。
百貨店に勤めるキャリアウーマンの直美と、DV被害に苦しむ親友・加奈子が、加奈子の夫を殺して自由を手に入れようと“完全犯罪”を企てるサスペンス。
2人は綿密な計画を立てて実行に移しますが、思わぬ綻びが生じ、次第に追い詰められていきます。女性同士のつながりと葛藤、暴力と正義の境界、そして罪を犯す者の心理が緊張感のある描写で描かれています。家庭内暴力という社会問題を背景に、「本当の正しさとは何か?」を問いかける作品。
2016年にフジテレビでドラマ化され、広末涼子さんと内田有紀さんが主演を務めました。
登場人物(キャスト)一覧
チョ・ウンス(チョン・ソニ)
ラビエ百貨店の外商部に勤務する従業員。高校時代からの親友ヒスが夫の暴力に苦しんでいることを知り、彼女を救うために共に殺害計画を立てる。ウンス自身も、幼少期から父親による家庭内暴力を目の当たりにしており、高校生のときには母を助けられなかった罪悪感から自殺を図ろうとした過去を持つ。そのとき彼女を救ったのがヒスだった。
チョ・ヒス(イ・ユミ)
ウンスの高校時代からの親友。美術の才能に恵まれ、絵本作家として活躍していたが、ジンピョとの結婚を機に創作の道を絶たれる。ジンピョから日常的に暴力を受けながらも、誰にも助けを求めることができず苦しみ続けていた。暴力の支配から抜け出すため、ウンスと共に夫を殺すという決断を下す。
ノ・ジンピョ(チャン・スンジョ)
ヒスの夫。アルファ投資証券の副支店長。表面的には真面目で穏やかな印象を与えるが、内面には強い支配欲と暴力性を秘めている。家庭内では優しさとは裏腹の冷酷な本性を露わにする。ヒスの生活を監視し、日常的に暴力を振るうことで彼女を支配している。
チン·ソベク(イ・ムセン)
陳剛商会の社長。ウンスが勤務する百貨店で高級時計を盗み、取り戻しに来たウンスと対峙したことをきっかけに、彼女と奇妙な縁が生まれる。彼の「夫を殺せばよかったのに」という一言が、ウンスを完全犯罪へ踏み出させる引き金となる。陳剛商会の2階は雀荘になっており、壁時計の日付は“8月13日”のまま止まっている。
チャン・ガン(チャン・スンジョ)
陳剛商会で働く中国人の従業員。ジンピョに驚くほどよく似た容姿を持つ。密入国のためパスポートを所持しておらず、不法滞在している。ウンスから思いがけない提案を受け、大金と引き換えにジンピョに成りすまして中国へ帰国することを決意する。
パク・ケスン(キム・ミギョン)
ウンスの母。夫からの暴力に長年苦しんでいる。ウンスが高校生のとき、ベランダから飛び降りようとしたことがある。
チョ・ジョンナム(キム・ウォネ)
ウンスの父。公務員。昔からケスンに暴力を振るっている。
チョ・ウニョク(イ・ヒョンジュン)
ウンスの弟。子どもの頃はウンスに守られていたため、父のDVに気づいていなかった。大人になってからその事実に感づき、実家に戻る決意をする。
コ・ジョンスク(キム・ミスク)
ジンピョの母。有名な講演家。息子のジンピョを溺愛している。ジンピョの失踪後、悲しむ様子を見せないヒスを疑い始め、マンションの警備員にヒスの監視を依頼する。
ノ・ジニョン(イ・ホジョン)
ジンピョの妹。ソチョ警察署に勤務する警察官。大統領室派遣の審査を控えており、家族の問題をどうにか隠そうとする。
キム・デチョル(チェ・ヨンジュン)
ウンスが通う「カンチョル柔術道場」のコーチ。ウンスが抱える鬱屈に気づいており、懸念している。
キム・ミギョン(ソ・ジョンヨン)
ジンピョの顧客で、ラビエ百貨店のVIP顧客。画家として活動しており、還暦までに個展を開くのが夢。
ソニョン(イ・ジニ)
ヒスとジンピョが住むマンションの階下(1401号室)の住人。ヒスがDV被害に遭っていることに気づき、手を差し伸べようとする。
ヒョンジ(キム・ジュア)
ソニョンの娘。たまにエレベーターで会うジンピョのことを「感じ悪いおっさん」と嫌っている。
クォン・ソンチョル(ミン・ソンウク)
ラビエ百貨店のVIP顧客。中堅企業を経営者で、高級住宅地に住んでいる。妻ヒヨンに対して暴力を振るっている。
カン・ヒヨン(ハン・スヨン)
ソンチョルの妻。夫から継続的に暴力を受けている。夫婦で百貨店を訪れた際、ウンスに助けを求める。
チェ・ギョング(チョ・ハンジュン)
警察官。ジニョンの後輩。強行班に移動になり、ヒスのマンションで起きた殺人事件を担当することに。
アン・ミョンホ
アルファ投資証券の社員。ジンピョの同期。ジンピョの失踪に違和感を覚え、ジニョンに調べてほしいと頼む。
ジェマン(ソン・サンギュ)
ウンスの職場の上司。
ウィ・チュンギル(ウ・ジョングク)
陳剛商会の従業員。チャン・ガンの同僚。
マ・ヘリョン(ソ・ソンジョン)
興信所の所長。ソベクが経営する陳剛商会の常連。ウンスの依頼を受け、ある人物を監視する。
ギョンウォン(キム・ロサ)
大統領室の秘書官。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
ラビエ百貨店の外商部に勤めるチョ・ウンスは、売り場から姿を消した高級腕時計の行方を追い、陳剛商会の社長チン・ソベクのもとを訪ねる。ソベクは時計を持ち去ったことを認めながらも、購入の意思は曖昧なままはぐらかす。ウンスは一歩も引かず交渉を重ね、最終的にソベクに代金を支払わせることに成功する。ソベクは彼女の粘り強さに興味を抱き「うちで働かないか」と誘うが、ウンスは即座に断る。
その後、ウンスは母ケスンの誕生日を祝うため実家を訪ねるが、父ジョンナムの支配的な態度と母の様子に不穏な空気を感じ取る。翌朝、両親の寝室で父が母を殴る現場を目撃したウンスは、父を警察署へ連れて行き自首を促すが、父は暴力を否定し開き直る。ウンスの脳裏には、高校時代に母が自殺を図ったあの日の記憶がよみがえっていた。
親友ヒスの様子が気になったウンスは彼女の家を訪ねるが、ヒスは居留守を使い、電話にも出ようとしない。不審に思ったウンスが暗証番号を押してドアを開けると、ヒスの顔には大きなあざがあり、家庭内暴力の被害が明らかとなる。ウンスはヒスの代わりに警察署を訪れるが、告発には至らず、柔術道場での稽古中に感情を爆発させて出入り禁止を言い渡される。
ウンスは、母の自殺未遂を目の当たりにした直後、自責の念から海で入水自殺を図ったことがあった。そのとき彼女を救ったのが、当時まだ親しくなかったクラスメイトのヒスだった。
そんな中、ウンスが勤務する百貨店のVIP顧客であるカン・ヒヨンが、夫クォン・ソンチョルの車の前に飛び出して命を絶つ。ヒヨンの体には継続的な暴力の痕跡があり、ウンスはその事実を知りながら何もできなかった自分を責める。
ウンスが再びヒスの家を訪ねると、ヒスはベランダから飛び降りようとしていた。ウンスは彼女を引き止め、「あなたの夫を殺しましょう」と言い放つ。
ウンスと半年ぶりに会う約束をしたその日、ヒスは「急な会議が入った」と嘘をつき、空港へ向かう。ついに逃げる決心をしたヒスだったが、ジンピョから母が痛めつけられている映像が送られてきたことで、空港から自宅へと引き返す。
帰宅したヒスを待っていたのは、殺された愛猫と、ジンピョによる容赦ない暴力だった。レコードの音量を最大にし、ヒスを床に叩きつけて蹴り続けるジンピョ。翌朝には何事もなかったかのように振る舞い、リビングに監視カメラを設置して出勤する。
ジンピョの母ジョンスクによる1000回目の記念講演が開催され、ヒスはジンピョと共に会場へ赴く。講演後の食事の席で、ヒスは過去にDVを告発しようと病院で診断書を取得し、警察署へ向かったが、義妹で警察官のジニョンに見つかり、通報を断念したことを思い出す。ジンピョはヒスとジニョンの様子に違和感を抱き、疑念を深めていく。
ジンピョに殴られた翌日、ウンスがヒスの家を訪ねてくる。ヒスの顔のあざを見たウンスはすぐに警察へ行こうと提案するが、ヒスは「何をしても無駄だった」と言い、ウンスを帰らせる。
ヒスはジンピョに同行し、彼の顧客であるキム・ミギョンの展覧会に足を運ぶ。かつて童話作家としてボローニャ・ラガッツィ賞を受賞したヒスは、ジンピョの暴力によって夢を諦めていた。精神的に追い詰められたヒスは会場で酒に酔い、ミギョンの絵を酷評して騒動を起こしてしまう。
激怒したジンピョはヒスを家に連れ帰って脅し、自分だけ会場に戻る。絶望したヒスはベランダから飛び降りようとするが、駆けつけたウンスが彼女を引き止め、「あなたの夫を殺しましょう」と告げる。
ヒスがベランダから飛び降りようとした瞬間、ウンスが駆けつけて彼女を抱きとめる。しかしその直後、帰宅したジンピョはヒスを容赦なく殴り、「しつけ直しが必要だ」と言い放つ。ウンスはクローゼットに隠れながら、ジンピョの暴力と冷酷な言動を目の当たりにする。
ヒスは夜中に首を吊って自殺を図るが、ジンピョが心肺蘇生を施し、命を取り留める。ヒスは「監視カメラを外して」と懇願し、ジンピョはしぶしぶそれに応じる。ヒスから「私、できる。やってみる」というメッセージを受け取ったウンスは、「やろう、私たちで」と返信し、ジンピョを殺す計画を本格的に始動させる。
ウンスは陳剛商会を訪ね、ジンピョに瓜二つの従業員チャン・ガンに目をつける。ガンは不法滞在者でパスポートを持たず、祖国にいる息子との再会を願っていた。ウンスは彼に大金と帰国の手配を提示し、「堂々と飛行機で帰れる」と説得する。ガンは協力を承諾し、ジンピョに成りすますため髪を短くし、スーツを仕立てる。ウンスとガンを見かけたジニョンは、兄ジンピョの浮気を疑い、忠告のメッセージを送る。
一方、ジンピョはキム・ミギョンとの関係修復を試みるが連絡がつかず、彼女がラビエ百貨店の顧客であることを知ってウンスに仲介を依頼する。ジンピョは監視カメラの映像から、ウンスがクローゼットに隠れていたことを把握しており、「余計なことをすれば、ヒスがもっと辛い目に遭うぞ」と脅しをかける。ミギョンはウンスの尽力によって謝罪を受け入れる。
ウンスとヒスは、ジンピョが泥酔する支店の会食の日、10月30日木曜日に計画を実行することを決める。ガンには「金曜には出国するように」と指示し、前金を渡す。
そして迎えた10月30日、ウンスとヒスは車で山へ向かい、遺体を埋めるための穴を掘る。ジンピョはウンスのGPSが山中を示していることに不審を抱き、疑念を募らせる。その夜、会食中のジンピョの携帯に「まもなく出国日です」というメッセージが届き、自分の知らぬ間に航空券が手配されていることに気づいたジンピョは、急いで帰宅する。
2人はジンピョの首にロープをかけて殺害する練習をしていたが、予定より早く帰宅したジンピョに見つかり、計画は崩壊する。ジンピョは2人が自分を殺そうとしていたことを知って激昂し、激しい暴力を振るった末にウンスの首にロープをかけて殺そうとする。
絶体絶命の瞬間、ヒスがスノードームでジンピョの頭を殴り、ウンスも加勢してジンピョを殺害する。ヒスは自分ひとりで罪をかぶろうとするが、ウンスは「2人でやった」と言い、計画通りに進めることを宣言する。
その直後、階下の住人ソニョンが訪ねてくる。ヒスは血まみれの顔を洗い、風邪を理由にドア越しで応対する。ソニョンはヒスの服の血や部屋の様子に違和感を覚えつつも、何も言わずに帰っていく。
2人は遺体をスーツケースに詰め、血の跡を拭き取り、部屋を掃除する。一方、ジンピョに成りすます役割を担うチャン・ガンは、ソベクの疑念をかわしながら送別会に出席する。
翌朝、ガンはヒスの家を訪れ、ジンピョそっくりの姿に変身する。ウンスは彼にジンピョの時計を渡し、遺体入りのスーツケースを運ばせる。2人は別々に部屋を出て合流し、空港へ向かう。
その頃、ジニョンが「シャワーを借りたい」と言ってヒスの家を訪ねてくる。ジニョンはスノードームのひびや、壁から消えた写真に気づき、違和感を覚える。
ウンスはガンから遺体の入ったスーツケースを受け取り、代わりに同じデザインのスーツケースを渡す。ガンはジンピョのパスポートで搭乗手続きを済ませ、無事に中国へ出国。ウンスはジンピョのスマホを操作し、ジニョンからのメッセージを削除する。
その夜、ウンスとヒスは車で山へ向かい、掘っておいた穴にスーツケースごと遺体を埋める。ヒスは凶器のスノードームを湖に投げ捨て、号泣する。2人は静かな港町で食事と花火を楽しみ、車中泊をする。翌朝、ウンスが携帯の電源を入れると、ガンから家族と再会した写真が届いており、2人は安堵する。
帰路、事故による渋滞に巻き込まれた2人は、警察官に車のバンパーの血痕を指摘され、「トランクを見せて」と言われる。そこには、遺体を埋めるために使ったシャベルが入っていた。
ウンスとヒスは警官からトランクの開錠を命じられるが、救急車の到着によって警官の注意が逸れ、難を逃れる。ヒスはマンションに戻り、何事もなかったかのように日常を装って過ごす。ウンスは車の洗車と修理を行い、証拠の隠滅に努める。
やがて、ジンピョの失踪に周囲が気づき始め、騒ぎが広がる。ヒスは無関係を装いながら、ジンピョの勤務先と義妹ジニョンに連絡を取り、夫のパスポートとスーツケースが見当たらないと告げる。社内調査の結果、ジンピョが大口顧客キム・ミギョンの資産50億ウォンを横領し、海外へ逃亡した疑いが浮上する。会社は警察への通報を避け、懲戒処分で事態を収める方針を示す。ジニョンはその方針に従うことが最善と判断し、ヒスに慎重な行動を取るよう忠告する。
事件は表向きには計画通りに収束し、ヒスとウンスは街へ出て束の間の安らぎを楽しむ。ウンスは母との過去を思い返し、長年の暴力に苦しんだ記憶と向き合う。ヒスも新たな職を探し始め、ウンスの紹介で陳剛商会の面接を受ける。社長のチン・ソベクはヒスの事情を理解し、試用期間として雇用することを決める。ウンスはヒスに口紅を贈り、再出発を祝福する。
そんな中、ウンスはDVによる自殺とされるカン・ヒヨンの件で警察から証言を求められる。上司のジェマンは、ヒヨンの夫であり百貨店の重要顧客であるクォン・ソンチョルの不利になる証言は控えるよう圧力をかけるが、ウンスは真実を語る決意を固める。
その夜、ウンスは食事のために入った店で偶然ソンチョルと遭遇し、トイレで彼に襲われる。ウンスは柔術で反撃し、ソベクの助けも得てその場を収める。翌日、ウンスは警察で証言を行い、ヒヨンの死が長期的な家庭内暴力によるものである可能性が高いと認定される。しかしその代償として、ウンスは昇進を見送られる。
ヒスは今もなお夫の気配に怯え続け、ウンスもまたジンピョの幻覚に苦しむ。そんなある日、ヒスの家に誰かが暗証番号を使って侵入する。
ヒスの前に現れたのは、中国に帰ったはずのチャン・ガンだった。ガンはジンピョの携帯を復元し、そこに記録されていた動画や写真をもとに、ヒスとウンスが共謀してジンピョを殺害したと推測。ヒスに対し、5日以内に30億ウォンを用意しなければ警察に通報すると脅しをかける。
さらに、マンションの敷地内で警備員キムと遭遇したガンは、口封じのために彼を殺害。ヒスはガンの凶暴さに怯え、母の家や自宅を売却して資金を集めようと奔走する。ウンスはガンへの対抗策を模索し、百貨店のVIP顧客であるワン会長に相談して探偵を紹介してもらう。
陳剛商会の社長ソベクは、偶然ガンと再会したことで、彼がウンスとヒスを脅して大金を巻き上げようとしていることを察知。かつて自分が何気なく口にした「夫を殺せばよかったのに」という言葉が、彼女たちの行動の引き金になったのではと悔い、2人に気づかれぬよう密かに支援を始める。
ガンはジンピョのスマホに残されたGPS履歴から、遺体が襄陽の満月山に埋められていると突き止め、現地を訪れてウンスに映像を送りつける。
一方、警察官のジニョンは、昇進のために兄ジンピョの問題をもみ消そうと必死になる。ヒスのマンションの防犯映像を確認したジニョンは、警備員とガンが一緒に映っている映像を見て兄ジンピョが事件に関与していると思い込み、密かに映像を削除する。
ガンはジンピョになりすまして、彼の母ジョンスクに「追われている。誰にも言わないで」とメッセージを送る。母から連絡を受けたジニョンはメッセージの文面を見て、別人が書いたものだと見抜く。
ウンスはヒスに内緒でガンと接触し、自分の口座から引き出した金を渡す。そして「残りは後で渡す」と嘘をついてガンを車に乗せるが、ウンスの企みに気づいたガンは激昂し、彼女をナイフで切りつけて車を降りる。
そこへ、ウンスを尾行していたジニョンの車が通りかかり、道に飛び出したガンの顔を目撃したジニョンは、兄ジンピョにうりふたつであることに驚愕する。
ジニョンはチャン・ガンの正体を見抜き、彼が兄ジンピョとは別人であることに気づく。ガンを取り押さえたジニョンは、彼の所持していたジンピョの携帯からヒスやウンスとの通話履歴、そして襄陽の満月山で撮影された動画を発見し、兄の失踪に3人が関与している可能性を疑い始める。
一方、ウンスの安否を案じるヒスは、ソベクの呼びかけで陳剛商会を訪れ、マ所長に保護されたウンスと再会。ソベクは自身が息子を殺した犯人を刺し殺した過去を語り、2人に手を引くよう忠告したうえで、自分がガンを国外へ送り返すと約束する。
ジニョンはマンションの防犯映像から、ジンピョになりすましたガンがスーツケースを運び出していたことを確認し、その中に兄の遺体が入っていたと推測。ヒスとウンスが殺害と隠蔽に関与していると確信する。ジニョンはガンに手錠をかけて車のトランクに監禁し、母ジョンスクが暮らす実家のガレージに車ごと放置。さらにジンピョの携帯を川に投げ捨て、兄の罪を隠蔽しようと動き出す。
ソベクはマ所長からの報告で、ジニョンがウンスを尾行していたことを知り、ガンがジニョンと共にいると判断してマ所長にジニョンを監視させる。これを聞いたウンスは独断でジョンスクの家に潜入し、ガンを救出して逃走するが、ソベクに追いつかれ叱責される。ソベクはガンを拘束して監禁し、今度こそ船で国外へ送ると宣言する。
しかしガンは監禁先から逃亡し、ジニョンと共に襄陽の満月山へ向かう。2人はジンピョの遺体を掘り返そうとするが、出てきたのは鹿の死骸だった。失望したジニョンはガンをシャベルで殴って気絶させ、自宅の物置に監禁する。
ジニョンはヒスにすべての罪を着せる筋書きを練り、「あなたが死ねばウンスは見逃す」と脅迫。ヒスはウンスを守るために自ら命を絶つ決意を固め、ジニョンとともに母の家へ向かい、車内で自殺を図る。
ヒスの失踪を知ったウンスは、ソベクとともに彼女を捜索する。ヒスは母の家で自殺を図ろうとしていたが、ウンスとソベクによって救出され、病院へ運ばれる。
一方、ジニョンの不審な動きを察知したギョングは、ジンピョのマンションの防犯映像を復元し、警備員が殺害された夜に彼が現場にいた証拠を掴む。ジニョンはそれを否定し、ギョングの追及をかわそうとするが、次第に追い詰められていく。
病院で目を覚ましたヒスは、ウンスとの再会を果たし、過去の苦しみと今の安らぎを語り合う。だが、ジニョンはウンスに対する報復を企て、彼女を取り調べ室に呼び出して脅迫する。ウンスはソベクの手配した弁護士によって釈放され、ヒスとともに国外脱出の準備を進める。
その頃、ジニョンの母ジョンスクは、ジニョンの部屋の物置に監禁されていたガンを発見。彼を息子のジンピョと誤認して助けようとするが、ガンの挑発によって息子ジンピョの死を知らされることに。ジョンスクは激情の末にガンを殺害し、ジニョンに助けを求める。
母から連絡を受けたジニョンは帰宅し、母とともに遺体を車に積み込んで証拠隠滅を図る。マ所長から報告を受けたソベクは彼女たちを追跡しようとするが、ウンスは「私が終わらせる」と言う。ソベクはウンスの覚悟を見て取り、彼女に託す。
ジニョンとジョンスクが乗る車を見つけたウンスは、彼女たちの車に後ろから突っ込んで衝突する。その衝撃でトランクが開き、ガンの遺体が露出。現場は騒然となり、ジニョンは錯乱状態に陥る。
ヒスは警察に出頭し、ジンピョを殺害したことを自供する。ドライブレコーダーの映像により、ジニョンがヒスを自殺に見せかけて殺そうとしたことが明らかになる。ウンスとヒス、ジニョンとジョンスクは逮捕される。
ソベクはウンスとヒスのために大金を払い、有能な弁護士を雇う。ウンスは裁判で自らの過去と向き合い、暴力を見過ごすことの罪を語り、罪を償う決意を示す。ウンスの苦しみを知った母ケスンは、ウニョクとともに家を出る。ウンスは母と面会し、互いの過去を許し合う。
ヒスは服役中に母を亡くすが、刑期を終えて出所した後、ウンスと再会。2人で墓参りをし、静かに弔う。その後、2人はベトナムで陳剛商会の社員として働きながら、穏やかな日々を送る。
感想(ネタバレ有)
原作との違いが生む悲壮感と“痛み”
原作の『ナオミとカナコ』を読み、日本版のドラマも観ていたので、物語の大まかな流れはわかっていましたが……ハラハラしましたね。特に終盤は原作とは違う展開になっていて、目が離せませんでした。
ストーリーの骨格は原作と大きく変わっていないのですが、全体の雰囲気はまったく違います。原作では、主人公の2人に軽やかさがあって、ある種の爽快感すらありました。
原作の直美と加奈子は最後まで罪を認めず、償うことも拒み、決して殺人を後悔しませんでした。恐ろしい犯罪に手を染めても心を病むことなく、DV夫を殺して得た“自由”を全身で楽しんでいました。
ところが韓国版では、そうした軽さは一切なく、ずっと重く張りつめた空気が続きます。特にDVの描写は目を背けたくなるほどリアルで、夫ジンピョの異常さが強調されていました。
彼を殺す場面も衝撃的。暴れ回る夫をスノードームで撲殺するというシーンは、原作にはありません(原作では、ウンスとヒスが事前に練習していた方法で難なく殺害します)。
解放感が強かった原作に対し、韓国版は罪の重さと心の痛みを徹底的に描き、観る人にもその苦しさを感じさせる作品になっていたと思います。
ウンスが背負う“見て見ぬふり”の罪
特に印象的だったのは、ウンスの背景がとても丁寧に描かれていたことです。彼女は子どもの頃、母親が父親から暴力を受けているのを知りながら、見て見ぬふりをしてしまった。そのときの罪悪感が、大人になった今も彼女を苦しめ続けています。
この視点は原作にはなく、「傍観することも暴力である」という大きなテーマが韓国版の作品全体を通して貫かれていました。原作でも、直美が父親の家庭内暴力で心に傷を負っている描写はありますが、ウンスほど罪悪感に苛まれてはいません。
韓国版では、ウンスの過去が彼女の現在の生き方に直結していて、「なぜ彼女がここまで行動するのか」がリアルに伝わってきます。彼女の葛藤や決意には、正義感だけでなく、もっと複雑で切実な思いが込められている。だからこそ観ているこちらも自然と感情移入してしまうのだと思う。
善意と狂気が交錯するキャラクターたち
ウンスだけでなく、他の登場人物たちも濃厚でした。中でも、DV夫ジンピョとチャン・ガンを一人二役で演じたチャン・スンジョの演技は圧巻。チャン・ガンは物語の前半と後半でまるで別人のように変わってしまうので、実質的には三役を演じているようなもの。
さらに、ウンスとヒスを助ける中国人のソベクも魅力的。原作では女性なのですが(日本版ドラマでは高畑淳子さんが味のある演技を見せていました)、韓国版では男性に変更され、頼れる存在として登場します。物語がどんどん息苦しくなっていく中で、彼の存在が唯一の安心材料になっていました。
そして忘れられないのが、ヒスが夫の容赦ない暴力に苦しみ、何度も自殺を考えた末に「殺すしかない」と決断する場面です。彼女がその選択に至るまでの過程が丁寧に描かれていたことで、彼女の苦しみや覚悟が伝わってきました。
暴走する悪役と韓国ドラマ的“ドタバタ劇”
物語の後半は、変貌したチャン・ガンとノ・ジニョンが暴走し、事件が次々と連鎖していきます。まさに韓国ドラマらしい“ドタバタ劇”が展開され、原作の逃亡劇とはかなり違っていました。
原作では、主人公の2人が逃げ切れるかどうかがクライマックスでしたが、韓国版では悪役がはっきり描かれていて、物語の構造そのものが変わっています。原作を知っていると、後半の雰囲気が変わりすぎて少し戸惑いますが、韓国ドラマとして見ればエンタメとしての完成度が高く、スリルと緊張感を最後まで維持していたと思います。
ただ、わかりやすい悪役が登場して最終的に逮捕され、ウンスとヒスが罪を認めて刑に服す展開になったことで、原作が投げかけていた「彼女たちの行動をどう受け止めるか」という大きな問いが、少しぼやけてしまったようにも感じました。
本来なら、DV加害者を殺した彼女たちの選択を、視聴者がどう受け止めるかが重要なテーマだったはずです。でも後半の展開ではその問いが脇に置かれてしまい、物語の焦点が別の方向に移ってしまった印象があります。
暴力にどう立ち向かえるのか
原作を読んだときも、日本版ドラマを観たときも、わたしの心に澱のように残り続けたのは、「暴力に対して、わたしたちはどう立ち向かえるのか」という問いでした。あれから何年も経ったのに、今もまだ答えは出ていません。
ウンスとヒスが選んだ道は、法律的に見れば間違っています。でも、じゃあ何が正解だったのか。誰にも助けてもらえず、日々暴力にさらされ、いつ殺されるかわからない状況で、“生きる”ために、どうすればよかったのか。
韓国版では、さらに別の問いが投げかけられます。見て見ぬふりをすること、つまり“無関心”や“傍観”もまた暴力の一部なのではないか、という問いです。
ウンスとヒスの行動をどう受け止めるかは、やはり簡単には答えが出せません。だからこそ、暴力にどう向き合うのか、そして誰かが苦しんでいるとき自分はどうするのか――そのことをこれからも考え続けたいと思いました。
タイトルが問いかける“あなた”とは誰か
最後に、このドラマのタイトル「あなたが殺した」について考えてみたいと思います。衝撃的なタイトルですが、ここにはいくつもの意味が込められています。
ひとつは主人公ヒスとウンスに向けられたもの。「あなたが夫を殺した」という直接的な意味です。暴力に耐えかねて、自らの手で終わらせた事実を指しています。
もうひとつはDV加害者の夫ジンピョに向けられたもの。「あなたが彼女の人生を殺した」という視点です。長年の暴力でヒスの心や日常を壊した責任を問う言葉でもあります。
さらに、視聴者や社会全体に向けられた意味もあります。「あなたが彼女たちを追い詰めた」という問いかけです。暴力を見て見ぬふりをした人々、助けを求める声に気づかなかった社会、沈黙していた家族――そうした存在もまた、彼女たちの苦しみを深めていたのではないか。
各話のサブタイトルに登場人物の名前が付けられていることからも、“あなた”が誰なのかは観る人それぞれの解釈に委ねられています。誰かを一方的に責めるのではなく、「あなたはこの物語にどう向き合いますか?」という問いかけです。
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