映画「コーヒーが冷めないうちに」を観ました。
わたしの好物〝タイムトラベル系〟の作品ということで。
〝4回泣けます〟という謳い文句がポスターに書かれていますが、わたしは3回だったな~。
原作同様に4つの話で構成されているのですが、最後の4話目の話が原作とはだいぶ違う、ほぼ映画オリジナルのストーリーになっています。
これが、意外と、かなり面白かったです!
過去に戻るというファンタジックな部分の演出もよくできていて、わたしは文章で読んだときより何倍もワクワクしました。
監督の塚原あゆ子さんは、「重版出来!」「Nのために」「アンナチュラル」で演出を手がけた方。今作が映画監督デビュー作となります。期待大ですね。
Contents
作品概要
- 製作国:日本
- 上映時間:116分
- 公開日:2018年9月21日(日本)
- 原作:川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』
- 監督:塚原あゆ子
- 脚本:奥寺佐渡子(「八日目の蝉」「マエストロ!」)
- 音楽:横山克
- 主題歌:YUKI「トロイメライ」
あらすじ
時田数が従兄の流と切り盛りする喫茶店には、店内のある席に座ると望み通りの時間に戻れるという都市伝説があった。戻れるのはコーヒーが冷めるまでの時間、現実は変えられないなどのルールがあるが、今日も噂を耳にしたさまざまな客が訪れる。(U-NEXTより)
予告動画
https://youtu.be/ekipOg9jkTI
登場人物(キャスト)
時田数(有村架純)
従兄の流と一緒に喫茶「フニクリフニクラ」を切り盛りしている。過去に戻るためのコーヒーをいれることができる唯一の人物。
新谷亮介(伊藤健太郎)
大学生。過去に戻れるという噂を聞いて、喫茶店を訪れる。店に通ううちに数に惹かれていく。
清川二美子(波瑠)
三十路直前の独身キャリアウーマン。喧嘩別れしてしまった幼なじみの五郎に会うため、過去に戻る。
賀田多五郎(林遣都)
二美子の幼なじみ。転勤でアメリカへ行ってしまう。
時田流(深水元基)
数の従兄で、喫茶〈フニクリフニクラ〉の店主。
高竹佳代(薬師丸ひろ子)
喫茶店の常連客。若年性アルツハイマーに侵されている。
房木康徳(松重豊)
佳代の夫。看護師。自分を忘れてしまう前の妻に会うため、過去に戻る。
平井八絵子(吉田羊)
喫茶店の常連客。近所でスナックを経営している。妹に会うため過去に戻る。
平井久美(松本若菜)
八絵子の妹。八絵子が実家を出て行ったため、代わりに旅館を継いだ。
夏服の女(石田ゆり子)
喫茶〈フニクリフニクラ〉に住み着いている幽霊。
未来(山田望叶)
数を助けるために未来からやってきた少女。
原作について
この映画の原作は、川口俊和さんの小説『コーヒーが冷めないうちに』(2015年刊)と『この嘘がばれないうちに』(2017年刊)です。
わたしは1冊目の『コーヒーが冷めないうちに』だけ読みました。
もともとは演劇ワークショップ用に書き起こされた舞台作品だったようです。
小説としては文章が単調で、あまり巧くないなぁと感じました(スミマセン)。
こういう設定のお話自体は好きなのですが、ルールが多すぎてワケがわからなくなります。
ストーリーは単純なんですけどね~。
感想(ネタバレ有)
過去に移動するルール
舞台はとある町のとある喫茶店〈フニクリフニクラ〉。
その喫茶店の〝ある席〟に座ると、望んだ時間に戻れるという。
ただし、そこには非常にめんどくさいルールが存在する。
- 過去に戻ってどんな事をしても、現実は変わらない。
- 過去に戻っても、この喫茶店を出ることはできない。
- 過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければならない。
- 過去に戻れる席には先客がいる。席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ。
- 過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない人には会う事ができない。
ちなみにこれは映画用のルール。原作にはさらにもうひとつ、「過去に戻っても、席を立って移動することはできない」というルールが加わってます。
「あの席」に座る幽霊
過去に戻るためには、喫茶店の〝あの席〟に座らなければなりません。
ところがその席にはすでに先客がいます。
彼女は幽霊で、この席に棲み着いているのです。
噂では、かつて死んだ夫に会うため過去に戻り、コーヒーが冷めないうちに飲み干さなかったために、幽霊になってしまったと言われています。
コーヒーが冷めないうちに飲み干さないと、行った先の時間の中に閉じ込められてしまい、二度ともとの時間には戻ってこられなくなるのです。
幽霊の彼女は、1日に1回だけ、トイレに行きます。
〝あの席〟に座るためには、その瞬間を待つしかありません。
物語を構成する4つの話
物語は、4つの話で構成されています。
- 清川二美子の話(恋人)
- 房木夫婦の話(夫婦)
- 平井姉妹の話(姉妹)
- 時田親子の話(親子)
わたしが最初に書いた「3回しか泣けなかった」っていうのは、②③④のこと。
①はほっこりする話で、悲しくはなかったですね。
つまり、②③④は悲しい話だということ。
①~③については、少し人物設定が変わってはいるものの、ほぼ原作どおりのストーリーでした。
わたしのお気に入りは③かな。
吉田羊さんが役のイメージにぴったりで、すごくよかったんですよね。
原作に登場する「時田計」
さて、問題は4番目の話。
まずは原作のストーリーから説明します。
原作は、時田数(有村架純さん)の義理のいとこ・時田計の話です。
計は、喫茶店の店主・時田流(深水元基さん)の妻で、心臓が悪いという設定。
彼女は妊娠しているのですが、心臓に負担がかかるため、出産は無理だと言われています。にもかかわらず、彼女は出産することを選びます。
おそらく、自分は産まれてくる子どもに会うことはできない。
そう確信した彼女は、数がいれたコーヒーを飲んで未来へ行き、自分の娘・ミキに会いに行くという話です。
映画オリジナルの「新谷亮介」
映画では「時田計」は登場しません。
その代わり、新谷亮介(伊藤健太郎さん)が映画オリジナルのキャラクターとして加わりました。
数は、亮介と恋人になり、彼の子どもを妊娠します。
喜ぶ亮介に対し、浮かない表情の数。
彼女には、母親にまつわる悲しい過去がありました。
過去へ行きたくても、コーヒーをいれられるのは時田家の女だけ。
数が過去に戻るには、〝数にコーヒーをいれる時田家の女〟が必要でした。
亮介は問題を解決するため、ある計画を打ち出します。
それは、未来の娘を現在に呼んでコーヒーをいれさせるという策でした。
タイムトラベル好きにはたまらない展開!
幽霊の正体は「時田要」
〝あの席〟に座る幽霊の正体は、「時田要」。
数が6歳のときに〝あの席〟に座ったきり戻ってこなかった、数の母親でした。
数は母親が過去に戻って死んだ父親と会い、戻ってこなかったと思い込んでいました。自分のことなど、どうでもよかったのだと。そして母親にコーヒーをいれて送り出したのは、数自身でした。
そのことが、ずっと数の中で大きなわだかまりになっていたのです。
でも、真実は違いました。
数は過去にもどり、母親に会って真実を知らされます。
彼女は体が弱く、余命宣告を受けていました。
幼い数をひとり残して死ぬことに不安を覚えた彼女は、自分がいなくなった後も数が元気にやっているかどうかを確かめるため、過去ではなく〝未来〟へ移動したのです。
そして移動した先で数に引き留められ、もとの時間に戻ることができなくなってしまったのでした。
時系列で整理すると…
亮介の策で数が過去に戻ったところ、ちょっとややこしいので時系列にしてみました。
- 亮介、数、流が計画を立てる
- 未来から数の娘ミキがやってくる
- ミキが数にコーヒーをいれ、数が過去に行く
- 数が過去の母親に会う
- ミキが未来に戻る
- 数が過去から現代に戻ってくる
- 数が子ども(ミキ)を産む
- ミキが成長し、亮介、数、流から計画を教えられる
- 数がミキにコーヒーをいれ、ミキが過去に行く(⇒②へ)
ミキが「クリスマスの日に戻ってください」と数に言ったのは、母親の数から過去に戻ったときの一部始終を聞いていて、既に知っていたからです。
ミキのキャラクターがまた最高なんですよね~。
どんより暗かった画面が、ぱあっと明るくなりました。
彼女の名前のとおり、未来(希望)を感じさせる存在。
ミキが未来からやってくるシーンには大興奮(タイムトラベル好きの血が騒ぐ)!
ミキを演じた山田望叶さんも適役で、めっちゃよかったです。
予想外に楽しめた映画
わたしは原作を読んだときに厳しい評価を下していたので、映画化にもあまり期待していませんでした。
でも、見てみると予想を覆す面白さでした。
改変がみごとに成功していたと思います。
映像ならではのファンタジックな演出も、終盤のスリリングな展開も楽しかったです。
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