海外ドラマ「刑事カーディナル 凍てつく夜に」(全6話)についてまとめました。
「刑事カーディナル」シリーズ最終章となる第4弾。2020年4月~5月にCTVで放送されました。IMDbの評価は7.7。
友人としても相棒としても距離が近づき、絆を深めていくカーディナルとデローム。悪夢のような連続殺人事件を通して、2人は刑事としての限界に挑むと同時に、それぞれの過去と直面することに。
物語の舞台となるのは、架空の町アルゴンキン・ベイ(オンタリオ州ノースベイがモデル)。シーズン1の「悲しみの四十語」では冬、シーズン2「記憶に巣喰う虫」では夏、シーズン3「過去からの報せ」では秋の季節が描かれましたが、最終章となる今作は再び凍てつく冬が舞台となります。
原作は、ジャイルズ・ブラントの“Cardinal Series”全6作のうち、6作目にあたる『Until the Night』。
Contents
作品概要
- 放送局:スーパー!ドラマTV
- 放送時間:2021年7月28日(水)から毎週水曜22:00~ほか
- 製作国:カナダ(2020年)
- 原題:CARDINAL UNTIL THE NIGHT
- 原作:ジャイルズ・ブラント『Until the Night』
- 脚本:パトリック・ター
- 監督:ネイサン・モーランド
あらすじ
政治家のシーラから、検察官の夫ロバートが失踪したのではないかという相談を受けたカーディナルとデローム。シーラが過剰に心配しているだけのように感じながらも、ロバートが過ごしていたというホテルを訪ねてみることに。しかし、部屋には財布やブーツが残されたままでロバートの姿はなかった。
スーパー!ドラマTV
登場人物(キャスト)
※シーズン3までのネタバレを含みます
警察
ジョン・カーディナル(ビリー・キャンベル)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。頑固で自信家だが、頭が良く根気強い。人の痛みに敏感で、家族を心から愛している。妻キャサリンとトロントの高校に通う娘ケリーとの3人家族だったが、双極性障害で入退院を繰り返していたキャサリンが飛び降り自殺を図り、亡くなってしまう。
リズ・デローム(カリーヌ・ヴァナッス)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。カーディナルの相棒。想像力に長け、勘が鋭い。カーディナルの不正疑惑を調査するために異動してきたが、今では唯一無二の相棒となった。シーズン4ではトロントへの異動が決まり、今回の事件を最後にアルゴンキン・ベイを去ることになり…。
ノエル・ダイソン(クリステン・トムソン)
カーディナルとデロームの上司。2人を心から信頼している。
ジェリー・コマンダ(グレン・グールド)
州警察の刑事。友人である検察官ロバート・クィレンが失踪し、カーディナルに相談する。ロバートの妻シーラを支え、彼女の希望により捜査に協力する。
被害者と家族
シーラ・ガニエ(カーメン・ムーア)
失踪したロバートの妻。インディアン居留地出身。MBA取得後、財務顧問事務所を開く。ここ3年はアルゴンキン・ベイ地域の地方議員も務めており、インディアン居留地と商工界の橋渡し役として各方面から一目置かれている。20年前に起こったある出来事に対して罪悪感を抱いている。
ロバート・クィレン(Jorge Molina)
検察官。シーラの夫。浮気相手とモーテルで密会した後、何者かに拉致される。モーテルの部屋にはハヤブサの羽根が残されていた。一人目の被害者となる。
バリー・ルブラン(ダンカン・オルレンショー)
温室で働く男性。母親アデルと2人暮らし。ある日、アデルが教会へ行ったまま姿を消し、警察に通報する。シーラとはかつて同じ学校に通っており、2年間ウォーターシェッド林業で一緒に働いていたことがある。過去の罪に対する罪悪感から依存症やうつ病を患っていた。
アデル(リンダ・ゴランソン)
バリーの母。教会の駐車場で拉致され、廃車場に置き去りにされる。2人目の被害者。
ジョシュ(オールデン・アデア)
デロームの元同棲相手。シーズン1で仕事を優先するデロームに失望し、別れを選んだ。現在はジュリーと結婚して子供をもうけ、幸せな家庭を築いている。父親であるケンの会社で働いている。
ジュリー・マクナイダー(ロビン・ファンフェア)
ジョシュの妻。生まれたばかりの赤ん坊を育てている。
ケン・マクナイダー(トム・ルーニー)
ジュリーの父。20年前にアギマークの森の伐採権を獲得し、資源産業で大成功を収めた。シーラやバリーと過去の秘密を共有している。
タージ・ロイ(キャス・アンバー)
運送会社の経営者。ミーナという娘がいる。軽罪で過去に2回逮捕されている。シーラやバリーと過去の秘密を共有している。
そのほか
スコット・ライリー(ショーン・ドイル)
無実の罪を着せられ、20年間服役していた男。出所後、罪を犯した張本人たちに最大級の苦しみを与えるべく、服役時代のコネを使ってプロの殺し屋ニールを雇い、計画を実行する。
ニール・カスバート(カリー・グレアム)
プロの殺し屋。若い頃から慈悲の心や良心の呵責に欠けており、その欠点を利用して殺し屋になる。ありふれた容姿のため人目を引かず、大胆で計画的な殺人を行う。
ウェイド・クライス(アーロン・プール)
ニールやスコットと同じ刑務所にいた男。半年前に仮釈放された。スコットにニールを紹介するも、途中で裏切ってシーラに取引を持ちかける。警察の取り調べを受ける前にニールに殺されてしまう。
レベッカ・ベイリー(ケアラ・グレイブス)
20年前の事件の被害者。当時26歳の大学院生。鳥類学者で絶滅危惧種の生息地を守る活動をしていた。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
検察官のロバート・クィレンが帰宅せず、妻で政治家のシーラ・ガニエは事件に巻き込まれたのではないかと州警察に相談。カーディナルは州警察のジェリーから相談を受け、デロームとともに捜査に乗り出す。
ロバートが泊まっていたモーテルを訪れると、服や持ち物が部屋に残されており、扉の外には引きずられた痕跡があった。さらにシーラのもとに「拉致犯を知っている」という男から連絡が入り、金を要求される。
シーラは金を入れたバッグに携帯を忍ばせ、それによってウェイド・クライスという前科のある男が逮捕される。しかし連行する途中に何者かの襲撃を受け、取調をする前に殺されてしまう。
再びシーラのもとに犯人から電話が入り、「夫への愛を証明すれば会わせてやる」と要求される。シーラは会見を開いて「償う機会をください」と犯人に訴えるが、シーラのもとに届いたのは夫が夜の雪原に置き去りにされる動画だった。
ロバートは伐採地で丸太に両足を繋がれ、凍死した状態で発見される。遺体を見たカーディナルは、犯人の目的が金ではなく、苦しめることにあると推測。怨恨による殺人と考える。
殺されたウェイドは刑務所仲間を手伝っていたという情報があり、ロバートを拉致するために雇われたが、雇い主を裏切ろうとしたため殺されたのではないかと思われた。
その頃、犯人は次のターゲットに狙いを定めていた。
殺し屋ニールは、温室で働くバリー・ルブランを監視。客としてバリーから花を買う一方で、彼の留守中に自宅に侵入する。
温室の暖房が故障したという知らせを受けたバリーは温室へ急行し、老いた母アデルは一人で教会を訪れる。ニールはバリーの同僚を名乗ってアデルに近づき、家まで送ると言って彼女を拉致する。
カーディナルとデロームはガニエ邸に訪れる弔問客を確認。シーラと密談していた運送会社の経営者タージ・ロイを怪しむが、タージには事件当日のアリバイがあった。
バリーからの通報を受け、失踪したアデルの捜索にあたるカーディナルたち。アデルのスクーターのケーブルが切られ、かごに鳥の羽根が残されていたことから、デロームは同一犯と判断する。
バリーは鳥の羽根に見覚えはなく、シーラとは30年前に同じ学校に通ってただけだと言い、犯人に心当たりはないと主張する。カーディナルは夜になる前にアデルを見つけ出さなければと焦るが、犯人の動機がわからず手がかりも掴めない。アデル失踪のニュースをテレビで見たシーラは、顔色を変える。
ニールはアデルに白い防寒具を着せて廃車場に連れて行く。助けてほしいと懇願する彼女に「あんたは悪くない。全てはバリーのせいだ」と告げ、廃車に繋いで置き去りにする。
拉致されたアデルの遺体が廃車場で発見される。防寒着や拘束の方法がロバート殺害時と同じであることから、カーディナルとデロームは同一犯と推測する。
アデルの息子バリーは教会でシーラと密会し、2つの事件が自分たちへの復讐だと確信する。彼らと過去の罪を共有するタージ・ロイは、バリーの家を訪ねて状況を確認し、「犯人は俺が始末する」と言い放つ。翌朝、バリーは庭で凍死した状態で発見される。
バリーが教会でシーラと会っていたことや、2人がウォーターシェッド林業で同時期に働いていたことを知ったカーディナルとデロームは、シーラを疑い始める。警察の捜査を恐れたシーラはタージに電話し、隠し通すのは無理だと警告する。
殺し屋のニールは雇い主スコットの訪問を受ける。スコットは復讐相手に自分の存在を知らしめるため、自身も犯行に関わりたいと主張するが、ニールは自分に危険が及ぶことを恐れて断る。
ニールが狙う次のターゲットは、デロームの元恋人ジョシュだった。ニールは家族と幸せに暮らしていたジョシュを拉致する。
元恋人のジョシュが拉致され、動揺するデローム。ガレージに残っていた痕跡から、ジョシュの父ケン・マクナイダーも一緒に拉致されていることが判明。ケンは出張の予定を一週間短縮して帰宅しており、カーディナルたちは事件を知ったケンが復讐を恐れて家族を逃がそうとしたのではないかと推測する。
子供部屋に設置されていたカメラに拉致犯の顔が映り込んでいたことから、犯人はウェイドと同時期に服役していたプロの殺し屋ニール・カスバートであることがわかる。
その頃ニールは拉致したジョシュを採石場に連れ出し、ワイヤーで両手を固定して置き去りにする。ニールは一緒に拉致したケンを殺害して逃げることを雇い主のスコットに提案するが、復讐を続けたいスコットはニールを殺してしまう。
スコットは森の片隅にある元製材所へケンを連れていく。スコットに謝り、助けを乞うケン。だがスコットは彼を許さず、ジョシュの死を直接見せると告げる。
自分に対する捜索令状が下りたことを知ったシーラは、タージに連絡して匿ってもらおうとする。
その頃ジョシュは強引にワイヤーから手を引き抜き、近くの小屋を燃やして救援を待つ。火災の連絡を受けたカーディナルとデロームは採石場へ向かい、倒れているジョシュを発見する。
カーディナルとデロームはケンの会社を訪れ、彼が1999年にアギマークの森の伐採権を勝ち取ったことや、シーラとバリーに顧問料と称して多額の報酬を支払っていたことを知る。
当時、公共事業を独占していたのはシーラたちが働いていたウォーターシェッド林業だった。シーラとバリーは不正に会社の情報を売り、ケンは2人に見返りを払う代わりに大儲けをしたのだ。
一方、ジョシュが救出されたことを知ったスコットは、ケンの足を砕いて放置する。その後、カーディナルとデロームは元製材所でケンの遺体を発見。デロームは入院中のジョシュに父親の死を伝える。
1999年にアギマークの森で殺人事件があったことが判明する。被害者は26歳の大学院生レベッカ・ベイリー。暴行殺人で有罪になったのがスコット・ライリーだった。当時の尋問を撮影した映像を見て、冤罪だと確信するカーディナルたち。
事件当日、スコットは鳥類学者のレベッカと絶滅危惧種のハヤブサを守るため、アギマークの森でキャンプをしていた。銃声を聞いた2人が見に行くと、血染めの羽根が落ちており、“パーカー族”の4人がハヤブサを撃っていたという。
スコットが詰め寄ろうとすると中年の男が銃床で殴りかかり、そばにいたレベッカに当たってしまう。出血がひどく歩けない彼女を支えながら野営地に戻ると、スノーモービルの鍵が盗まれていた。助けを呼ぶためにレベッカを残し、森を出たと主張するスコット。たが担当刑事は端から聞く耳を持たず、スコットを環境テロリストだと決めつけていた。
スコットは暴行殺人の罪を着せられ、愛する女性と両親、20年間の人生を失ったのだった。森にいた4人のうちの3人がシーラ、ケン、バリーであり、残る一人がタージ・ロイだと推測したカーディナルたちは、タージの運送会社へ向かう。
その頃、スコットはタージの会社に乗り込み、彼の娘ミーナを人質に取って復讐を完結させようとしていた。ジェリーはタージの会社のトラックに監禁されているシーラを発見し、逮捕する。
ジェリーに逮捕されたシーラは、20年前に森の伐採権に関する情報をケンに流し、見返りに報酬を得ていたことを認める。そして伐採できるようハヤブサを撃っていた最中にスコットたちと遭遇し、ケンが2人を森に置き去りにしたことを明かす。
カーディナルたちは、事件の被害者が放置されていた場所がいずれもかつて“アギマークの森”と呼ばれていた場所だと知り、スコットの恋人レベッカが発見された場所へ向かう。
一方、スコットは復讐を完結させるため、タージと娘のミーナを森へ連れて行き、タージの目の前でミーナを凍死させようとする。
カーディナルとデロームは、スコットがレベッカと最初の夜を過ごした野営地を目指す。2人が近づいてくることに気づいたスコットは、銃で脅して追い払おうとする。カーディナルは復讐を果たしても虚しさは消えないと説得するが、スコットの決意は固く、復讐を遂げたのちに自死しようとしていた。
カーディナルとデロームはスコットに撃たれるも、防弾ベストのおかげで重傷を負わずに済む。支え合う2人の姿を目にしたスコットは一瞬撃つのをためらい、駆けつけたジェリーに撃たれて息を引き取る。デロームは木に縛られていたタージとミーナを発見し、救出する。
事件が解決し、カーディナルはついに新居の建築に本腰を入れる。デロームは家を引き払ってトロントへ旅立ち、カーディナルは訪ねる約束をして別れる。そしてまた捜査の日々が始まる。
感想(ネタバレ有)
衝撃的な復讐手段
ストーリーはこれまでのシーズンの中ではダントツに面白かったです。
今回の事件は犯人による復讐。その残酷で衝撃的な復讐方法によって、犯人の怒りと絶望が伝わってきます。過去に何があったのか。それが次第に紐解かれていく過程も緊張感があって面白かった。
このシリーズは毎回いろんな季節を描いてきて、それぞれ印象的な風景を見せてくれたけど、やっぱりカーディナルには冬がいちばん似合う。そしてその極寒の冬が“凶器”になるという、斬新かつ強烈なストーリーでした。
※ここから先は結末のネタバレに触れていますので、ご注意ください
カーディナルとデロームの関係
面白かったという感想と同時に、少し物足りなさも感じてしまいました。
事件が強烈な印象を植え付けるゆえに、カーディナルとデロームの物語が全然入ってこなかったんですよね…。最終シーズンなのに。
2人が捜査の合間にホテルで結ばれたり、現場へ向かう途中で手を触れあったりするシーンが、なんとなく唐突で、若干の違和感を覚えました。緊迫した展開が続く中で、2人の恋愛模様を描くのは難しかったのかもしれない。
デロームがアルゴンキン・ベイを去るとき、2人は会う約束をしていたけど、明るい予感よりも不安のほうが濃く残った。カーディナルが闇の中に向かってひとりで歩いていく最終シーンも不気味で、最後まで“暗さ”を払拭しなかったところがこのドラマらしかったです。
20年前の罪
スコットに復讐された人物が過去にやったことについて、整理しました。ネタバレ注意です。
20年前、シーラとバリーから不正に情報を得て森の伐採権を勝ち取った。そして伐採するために邪魔だった絶滅危惧種のハヤブサを撃っているところをスコットとレベッカに見つかり、2人を森に置き去りにした。
事件の首謀者。レベッカに怪我を負わせただけでなく、2人のテントを壊してスノーモービルの鍵を盗み(実行犯はタージ)、極寒の森に放置しました。
たぶん死んでくれたら好都合、と思ったんでしょうね。でもスコットが生きて戻ってきたから、レベッカ殺しの犯人に仕立て上げ、刑務所に放り込んだ。取り調べにあたった警官も買収してたのでは?
こんな極悪人が、ジョシュの実の父親とは…。
20年前、ケンに雇われていた運送屋。ハヤブサ殺しにも参加。ケンに命じられてスコットとレベッカのテントを壊し、スノーモービルの鍵を盗んだ。本人いわく、「ケンが誰かに頼んで救出させると言った」。
彼はケンがレベッカを殴るところを見ているので、スコットがレベッカを殺した犯人ではないことを知っていたはず。なのに真実を語らなかった(ケンに口止めされたんだろうけど)。
20年前、シーラとともに勤務先のウォーターシェッド林業の情報をケンに売り、多額の報酬を得た。ハヤブサ殺しにも参加。レベッカがケンに殴られた直後にその場を立ち去っているが、その後ケンとタージが何をしたかは知っていた。
バリーは直接なにかしたわけではなさそうだけど、自分たちのせいでレベッカが死んだことは知っていて、ずっと罪悪感を抱えて生きていました。
20年前、バリーとともに勤務先のウォーターシェッド林業の情報をケンに売り、多額の報酬を得た。ケンに脅され、ハヤブサ殺しにも参加。レベッカがケンに殴られる前にその場を離れており(ハヤブサの死骸を隠すため)、その後なにが起こったのかは知らない。
シーラは今回バリーから真相を聞かされるまで、ケンとタージがスコットたちに何をしたのか本当に知らなかったようです。レベッカを殺したのもスコットだと思っていたらしい。
それでも罪悪感を抱いて、過去の罪を償うために社会貢献してきたのなら、やっぱりどこかでレベッカの死には自分たちが関わっているとうすうす感じていたのかもしれない。
スコットの復讐は、自分と同じように愛する人を失う苦しみを味わわせることでした。彼らが愛する人を、レベッカと同じように凍死させることでした。
20年間そのためだけに生きてきたスコット。最後の言葉は「ごめんよ、レベッカ」でした。
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