映画「見えない目撃者」のあらすじと感想です。
2011年の韓国映画「ブラインド」をリメイクした作品。プロデューサーが「通常の日本映画では避ける表現にあえて挑戦した」と語る“日本映画の限界”に挑んだサスペンス・スリラーです。R15+指定。
自らの過失で弟を事故死させてしまい、自らも視力を失って生きる希望をなくした元警察官を吉岡里帆さんが好演しています。
クオリティ、満足度ともに高く、見応えのある作品でした。
Contents
作品概要
- 製作国:日本
- 上映時間:128分
- 公開日:2019年9月20日
- 原作:韓国映画『ブラインド』
- 監督:森淳一(「重力ピエロ」「リトル・フォレスト))
- 脚本:藤井清美/森淳一
- 音楽:大間々昂
予告動画
登場人物(キャスト)
浜中なつめ(吉岡里帆)
国崎春馬(高杉真宙)
木村友一(田口トモロヲ)
吉野直樹(大倉孝二)
日下部翔(浅香航大)
高橋修作(酒向芳)
平山隆(國村隼)
横山司(渡辺大知)
桐野圭一(栁俊太郎)
浜中満代(松田美由紀)
浜中大樹(松大航也)
あらすじ(ネタバレ有)
浜中なつめ(吉岡里帆)は警察学校の卒業式の夜、夜遊びに高じる弟・大樹を連れ帰るため、大樹を助手席に乗せて自宅へ向かっていました。
その途中、大樹はティアベルのキーホルダーを運転席の足元に落としてしまい、なつめに「取って」と頼みます。運転中のなつめは手探りでキーホルダーを探しますが、届きません。
一瞬、足元に目をやってキーホルダーを掴みます。なつめが顔を上げたとき、目の前にはトラックが。
2人を乗せた車は横転し、なつめはトラックの運転手によって車中から引きずり出されますが、視界がはっきりしません。助手席にいる大樹は足が抜けず、車に取り残されたまま。
何も見えないなつめの耳に、大樹の「助けて」という叫び声が聞こえます。しかし、なつめはどうすることもできず、車は爆発して炎上してしまいます。
3年後。視力を失ったなつめは、警察官を依願退職。弟を死なせた罪悪感から自分を責め、生きる希望をなくして精神科に通う日々を送っていました。
なつめを心配する母・満代(松田美由紀)は、なつめを大樹の墓参りに連れ出します。しかし、なつめは墓の前へ行くことがどうしてもできず、盲導犬のパルとスマホの音声案内を頼りに、ひとりで先に帰ることに。
帰り道、なつめは接触事故の現場に遭遇します。
なつめの横を通り過ぎるスケートボードの音と、車と接触するような音を聞き、「大丈夫ですか?」と現場へ駆け寄るなつめ。ところが、人の気配はありません。
停まっている車の中から若い女性の「助けて。連れて行かれる」という逼迫した声が聞こえ、なつめは「レイサ」と名乗る彼女を助け出そうとしますが、戻ってきた運転手が車を発進させ、立ち去ります。
翌日、なつめは強行犯係の刑事、警察官の木村(田口トモロヲ)と吉野(大倉孝二)に状況を詳しく説明しますが、2人はなつめが精神科に通っていることを理由に幻聴だと判断し、捜査しないことを決めます。
納得がいかないなつめは、接触事故の当事者で、もうひとりの目撃者でもある国崎春馬(高杉真宙)に会いに行きます。
春馬は事故当日、スケートボードに乗っていて車と接触したと言いますが、後部座席には誰もいなかったと証言。運転手から口止め料の2万円を渡され、事故を警察に届け出ないことを約束したと言います。
なつめは、犯人が乗っていた車がハッチバック式だったのではと推測します。春馬が見た時、女性は後部座席の後ろに寝かされていたため、見えなかったのではないかと。
なつめは春馬から2万円札を預かり、警察に提出して指紋を調べてもらうことにしました。
なつめが元警察官だと知った木村は、なつめの言葉に耳を傾けるようになります。吉野もまた、なつめに身長、年齢、昼食の内容までズバリ言い当てられ、彼女の人並み外れた感覚に一目置くようになります。
事件に関心のなかった春馬も、いつしかなつめを助ける“相棒”的な存在になっていきます。
春馬の先輩・横山(横山)の協力で、連れ去られた女性が叫んだ「レイサ」という名前は源氏名であることが判明。
なつめと春馬は彼女が働く風俗店を訪ね、「レイサ」を知る女性から話を聞きます。彼女の本名は「レイ」で、無関心な親のもとから飛び出した家出少女でした。
風俗で働く女性たちの間では、「救様」と呼ばれる救済者がいると噂になっていました。レイも「救様」に出会い、姿を消したことがわかります。
春馬は「救様」の正体を確かめるため、Twitterに投稿して情報を集める作戦に出ます。
木村は生活安全課の日下部翔(浅香航大)にレイが補導された記録が残っていないか確認させますが、書類はありませんでした。
なつめと別れ、夜道でスケートボードを走らせていた春馬は、いきなり後方から来た車に追突されます。車の運転手は、逃げる春馬を何度も追いかけ、轢き殺そうとしていました。
対向車が現れ難を逃れた春馬でしたが、怪我を負って入院することに。なつめは心配するあまり、これ以上事件に関わらないよう春馬に忠告します。春馬は、木村からなつめが失明した理由を聞かされます。
春馬が覚えていた車のナンバーから、新井という前科のある男が浮上します。木村と吉野は新井の自宅を訪ね、薬の過剰摂取で死んだと思われる新井の遺体を発見。
さらに、自宅の裏に棄てられていた4人の女性の遺体を見つけます。遺体はそれぞれ耳、鼻、口、手を切断されていました。
なつめが提出した2万円札からも新井の指紋が検出され、警察は新井を容疑者と断定します。
一方、犯人によって拉致されたレイは、狭い小屋のような場所に監禁されていました。わずかな隙間から隣の部屋にいる少女が見え、彼女が「キョウコ」という名前だと知ります。
キョウコはかつてレイがいた部屋に別の少女がいたと言い、自分と入れ替わりに殺されたのだと語ります。そしてキョウコもまた、レイが来たことで犯人に連れ出されてしまいます。
なつめはネットを検索し、「六根清浄」という言葉を見つけます。「六根清浄」とは、人間にそなわった六根(目、耳、鼻、舌、体、心)を清らかな状態にすることを指す言葉でした。
犯人は「六根清浄」に基づく儀式殺人を行っていると考えたなつめは、すぐに木村に連絡します。儀式通りならば、まだ目と心が残っているからです。
なつめから話を聞いた木村は、15年前のある事件に類似していることに気づき、当時事件を担当した平山隆(國村隼)を訪ねます。
平山は、事件を目撃した高校生がいたこと、その高校生が“儀式”の一部始終を撮影した映像が手がかりとなり、事件が解決したことを語ります。
春馬のTwitter投稿に反応した少女から、「キョウコという友達が行方不明になっている」と聞いたなつめは、木村に連絡します。4人の遺体のうちの1人は、キョウコでした。
なつめは木村を呼び出し、人のいないところで2人きりで会います。犯人が狙うのは捜索願が出ていない家出少女だと気づいたなつめは、それができるのは警察関係者しかいないと言います。
木村は動揺しつつも、署に戻って生活安全課に保管されているはずのキョウコの書類を探します。書類は見つからず、書類を管理している日下部もいませんでした。
そこへ平山から連絡が入り、15年前に事件を目撃した高校生が日下部であることを知らされます。
木村が駐車場に停めてある日下部の車を確認すると、こすったようなキズがついていました。木村は日下部を問い詰め、拉致した少女の居場所を聞き出そうとしますが、日下部に刺されて殺されます。
木村のスマホになつめからのメッセージが入り、日下部は「木村に頼まれた」と嘘をついて署にいたなつめを連れ出し、車に乗せます。
日下部に注射を打たれる寸前、気配を察知したなつめは車から逃げ出します。春馬に連絡し、スマホのビデオ通話機能を使って逃げ道を誘導してもらうなつめ。
日下部は地下鉄に逃げ込んだなつめを執拗に追いますが、駅員が駆けつけたため途中で諦めて立ち去りました。
パルは日下部に刺されて怪我を負い、なつめも病院に運ばれます。春馬に画像を見せられた吉野は、なつめを襲った犯人が日下部だと知って言葉をなくします。
自分には何もできないと自信を失うなつめでしたが、春馬に励まされ、吉野と共に15年前の事件で儀式が行われた空き家へ向かいます。
屋敷には明かりがついており、入り口には日下部の車が停まっていました。吉野は応援が来るのを待たずに、ひとりで屋敷に乗り込みます。
吉野は屋敷内で木村の遺体を発見しますが、日下部に襲われて命を落とします。銃声を聞いたなつめと春馬は屋敷に踏み込み、吉野と木村の遺体を見つけます。
なつめは元警察官であることを春馬に明かし、床に落ちていた吉野の拳銃を受け取って鞄の中にしまいます。
スマホを使って日下部を部屋の一室に閉じ込め、その隙に監禁されている少女を助け出す春馬となつめ。しかし逃げる途中、部屋を出た日下部に襲われ、春馬が刺されてしまいます。
なつめは少女を逃がし、バスルームに監禁されているレイを見つけます。大樹の形見のティアベルのキーホルダーを床に置き、鞄の中の銃を握りしめ、近づいてくる日下部を待ち受けるなつめ。
日下部は靴を脱いで気配を消しながら、徐々になつめに近づいてきます。
日下部の足が床のティアベルに触れて音が鳴った瞬間、なつめは拳銃を立て続けに発砲しました。撃たれた日下部は床に崩れ落ち、息絶えます。
救急車の中で、レイと再会するなつめ。レイは「助けてくれてありがとう」と礼を言い、なつめは「会えてよかった」と答えます。
なつめは母・満代と春馬と3人で大樹の墓を訪れ、手を合わせます。春馬は「俺、警察官になれるかな」と照れくさそうに言い、なつめは「あなたなら大丈夫」と笑顔で答えます。
解説と感想
いやはや、怖かったです。
そしてすごく面白かった。
別の作品を見に映画館へ足を運んだとき予告を見たのですが、そのときは主人公を演じている女性が吉岡里帆さんだとはまったく気づかなかったんですよね。新人の子?なんて思ってました。
笑顔を封印して目力を強調すると、まったく別人に見えるんですね。
印象がガラッと変わって、よかったです。
主人公のなつめは、事故で視力と弟を失い、生きる希望を失っています。
それでも、彼女は助けを求める人に応えようと必死になる。
なつめが抱える弱さと強さ、過去と向き合う葛藤が伝わってきました。
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中盤以降は息をつく暇もなく、怖い展開が続きます(それが文句なしに面白いです)。
刃物を持った犯人が歩きながら追ってくるシーンなどは、ホラー映画のよう。
同時に胸を熱くさせるシーンも盛り込まれていて、怖いけど泣けてくるんですよ。
盲導犬のパルと一緒に逃げるシーンとかね……たまらないです。
残酷描写は多くはありませんが、かなりどぎついので、苦手な人は要注意です。
わたしは思わず目をそらしてしまいました(スミマセン)。
恐怖を煽る不気味な音楽、目が見えない主人公の感覚を表現する映像も秀逸でした。
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難点をあげるとすれば、後半の脚本かな。
展開が読めてしまった分、少し残念でした。
犯人も、かなり早い段階で予想がついてしまいますしね。
それでも(先が読めても)充分楽しめましたし、満足度はかなり高いです。
暗闇の中、犯人と対峙したなつめを救ったのが「ティアベル」という展開も胸熱でした。3年前、事故のきっかけを作った弟のキーホルダーが、今度はなつめの命を救う……切ない。
ツッコミどころもありますが、エンタメとして本当によくできていたと思います。
生半可じゃないスリルとサスペンスを堪能させてもらいました。