Netflixで配信中のドラマ「エテルナウタ」(全6話)についてまとめました。
アルゼンチンのSFコミックの金字塔と言われる「エル・エテルナウタ」を映像化。
突然降り始めた“死の雪”により壊滅状態となったブエノスアイレスで、生き残った人々が見えざる脅威に立ち向かうSFドラマ。IMDbの評価は7.7。
いろいろ既視感はあるけれど、原作が50年代に発表されたコミックなのを考えると「あれよりもこれよりも、こっちのほうが先なのか」と感慨深い。
真夏のブエノスアイレスに雪が降り積もる景色が美しく恐ろしく、圧巻でした。シーズン2の制作も決定しています。
Contents
作品概要
- 製作国:アルゼンチン(2025年)
- 配信開始日:2025年4月30日(Netflix)
- 原題:El Eternauta
- 原作:エクトル・G・オエステルヘル原作/フランシスコ・ソラーノ・ロペス作画『エル・エテルナウタ』
- 脚本:アリエル・スタルタリ
- 監督:ブルーノ・スタグナーロ
- 製作総指揮:レティシア・クリスティ/マティアス・モステイリン
あらすじ
ある日、ブエノスアイレスに致死性の物質が雪のように降り注ぎ、何百万という人々の命が奪われた。生き残ったフアン・サルヴォと仲間たちは、見えざる力が操る脅威に立ち向かう。
Netflix公式サイトより
予告動画
原作について
このドラマの原作は、エクトル・G・オエステルヘル原作/フランシスコ・ソラーノ・ロペス作画のSFコミック『エル・エテルナウタ』です。
1957年から1959年にかけて、アルゼンチンのコミック誌に連載されました。
原作者のオエステルヘルは、本作を単なるSF作品ではなく、アルゼンチンの政治的・社会的状況を反映した寓話として描きました。彼はこの作品を通じて、軍事独裁政権、資本主義、植民地主義、帝国主義の様々な側面を批判していたとされています。
特に、物語の中心にある「集団的英雄主義」は、個人の英雄ではなく、市民が団結して戦うことの重要性を強調しています。これは、アルゼンチンの歴史における市民の抵抗運動と重なる部分があり、読者に対して社会的連帯の価値を訴えかけるものとなっています。
オエステルヘル自身は軍事政権に反対する左翼ゲリラ集団「モントネロス」に加わり、最終的に軍事政権によって誘拐され、1977年に行方不明となるという悲劇的な運命を辿りました。
登場人物(キャスト)一覧
フアン・サルボ(リカルド・ダリン)
主人公。フォークランド紛争の経験者で、銃の扱いが上手い。タノ、ルッソ、ルカスとは古い仲間。タノの家で仲間たちとカード遊びをしているときに有毒な雪が降り始め、家から出られなくなってしまう。地下室にあった古い防塵マスクをかぶり、吹雪の中ひとりで娘のクララを捜しに行く。
エレーナ(カルラ・ペテルソン)
フアンの元妻。医師。タノの家から数キロ離れたマンションに住んでいる。フアンとともにクララを捜しに行く。
クララ(モーラ・フィッツ)
フアンの娘。17歳の高校生。雪が降った夜、同級生のルナの家に行くと言って外出し、行方不明になっている。
タノ(セサル・トロンコーソ)
フアンの幼なじみで友人。電子工学の技師。博識でサバイバルが得意。地下室は友人たちがカード遊びをするために集まる場所になっており、塞がれたドアの向こうには隣接するガレージに繋がる通路がある。
アナ(アンドレア・ピエトラ)
タノの妻。雪の降る夜、タノやフアンたちと一緒に自宅にいて閉じ込められ、サバイバル生活を送ることになる。
ルカス(マルセロ・スビオット)
フアンの友人で、カード仲間。タノの家でサバイバル生活を送ることになる。
ルッソ(クラウディオ・マルティネス・ベル)
フアンの友人。雪が降り始めた直後、取り乱して外に出てしまい、死んでしまう。
オマル(アリエル・スタルタリ)
ルッソの義理の弟。ミシガン州で働いていたが、20年ぶりにアルゼンチンに戻ってきた。フアンたちから“よそ者扱い”され、不満を募らせる。
インガ(オリアンナ・カルデナス)
雪が降った夜、タノの家にウイスキーを届けに来た配達人。自転車を修理するためガレージにいて生き延びた。フアンたちに助けられ、仲間に加わる。軍隊にいたことがあり、銃が使える。
パブロ(アーロン・パークス)
クララと同じ学校に通う高校生。たまたま友人たちと夜の学校に来てトイレに閉じ込められ、生き延びた。
ベニート(Guillermo Jacubowicz)
金物店の店主。ロベルトとともに行動している。タノに協力を求めるが追い返されてしまう。
ロベルト(ガブリエル・フェルナンデス)
憲兵。生き残った者たちをまとめるリーダー。ガレージに迎え入れるようタノに迫る。
ミッキー(Joaquín Acebo)
市街地の教会で避難生活を送っている青年。フアンとタノを助け、教会に迎え入れる。
ぺカス(Paloma Alba)
教会で避難生活を送っている少女。ミッキーたちと行動をともにしている。
レンゴ(Ricardo Federico García)
教会で避難生活を送っている老人。フォークランド紛争で戦った経験があり、フアンとは顔見知り。
リタ(Corina Romero)
教会に住むシスター。みんなのまとめ役。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
ある夜、フアン・サルボは幼馴染のタノの家の地下室で、仲間たちとカードを楽しんでいた。すると停電が発生し、なぜか携帯も使えなくなる。窓から外を見ると、夏だというのに雪が降り始めていた。
フアン、ルカス、タノ、タノの妻アナ、ルッソ、ルッソの義弟オマルの6人は、アスベストによる汚染を疑い、家の中から出られなくなる。取り乱したルッソは制止を振り切って外に飛び出し、その場で死んでしまう。
ウイスキーを届けに来た宅配人のインガは、タノの家に隣接するガレージから通路を通って地下室のドアにたどり着き、フアンたちに救出される。
フアンは別れた妻エレーナのもとにいる17歳の娘クララを助けに行くため、ガレージに停めていた車を動かそうとするが、エンジンがかからない。
「歩いてエレーナの家に行く」というフアンのために、タノたちは家の中にあるもので防水スーツを作る。そして地下室にあった古い防塵マスクをフアンにかぶせ、送り出す。
夜が明け、雪に覆われた街の状況が明らかになる。雪が降り出したとき外に出ていた人々は即死状態で、生きている人は一人もいなかった。フアンは降りしきる吹雪の中、変わり果てたブエノスアイレスの街を歩き続ける。
フアンを送り出したタノたちは、防塵マスクと防水スーツを手に入れるため、近くの消防署へ向かう。仲間に加われないオマルとインガは“よそ者”同士、意気投合する。
フアンはアルゼンチン鉄道の列車の中に閉じ込められている人々と遭遇する。助けを求められるがどうすることもできず、水が入ったペットボトルを1本だけ渡して立ち去る。
フアンはエレーナのマンションに到着。雪は、降るとすぐに威力を失うことに気づく。エレーナと再会を果たすフアンだったが、娘のクララは同級生のルナの家に行っており行方不明だった。2人はルナの住所を調べるため、クララが通う学校へ行くことを決める。
マンションの住人たちは殺気立ち、突然現れたフアンに協力を求め、2人を行かせまいと妨害する。フアンは銃を撃って住人たちを脅し、エレーナに自分のマスクをかぶせて建物から脱出させる。
フアンもビニール袋をかぶって外に出るものの、すぐに息苦しくなり路上に倒れてしまう。意識を失っている間、幻覚めいたビジョンを見るフアン。
目が覚めたとき、フアンは古い車に乗せられていた。消防署でマスクとスーツを手に入れたタノたちが助けに来てくれたのだ。タノは「古いものは動く」ことに気づいたと話す。
フアンたちがガレージに戻ると、べニートがやってくる。べニートは憲兵のロベルトたちと一緒にいると言い、昔なじみのタノに「物資を配るために車を貸してほしい」と頼む。
だがロベルトを嫌うタノは即座に断り、べニートを追い返す。オマルはそのすきに車を盗み、ガレージから出て行ってしまう。インガは兄ホルを捜しに行き、彼の死を確認して戻ってくる。
フアンとエレーナはクララの学校へ行き、トイレに閉じ込められていた男子生徒パブロと出会う。パブロはルナの家を教えるかわりに自分を自宅まで送ってほしい、と言う。
フアンたちはパブロに案内させてルナの家へ向かうが、そこはパブロの家だった。家族が全員亡くなっていること知ったパブロは激しく取り乱し、高熱を出してしまう。
通りすがりのカップルに車を奪われたフアンたちは、歩いてガレージを目指す。途中、フアンはかつて救助を求められたアルゼンチン鉄道の列車に再び出会うが、中にいた人々は全員姿を消していた。
タノはウルグアイの生存者と無線で交信することに成功する。ブラジルとの交信を試みようとするタノだったが、方位磁石が定まらない。
地球に異常事態が発生していると気づいたタノは、街を出て島へ避難することを決意する。パブロを連れてガレージに戻ったフアンは「街に残って娘を捜したい」とタノに訴えるが、聞き入れてもらえない。
フアンは電話帳でルナの住所を調べ、熱が下がらないパブロの世話をエレーナに任せて一人でクララを捜しに行く。それを聞いたタノは車でフアンを追いかけ、捜索に同行する。
タノは雪の正体を、ヴァン・アレン帯(地球を囲む放射線帯)の欠片ではないかと推測していた。それは地球の磁場が機能を失ったことを意味しているという。
フアンとタノは街の中心部へと車を走らせるが、突如現れたバリケードに行く手を阻まれてしまう。軍隊と遭遇した2人は、彼らの後をつけてバリケードの中に侵入し、無数の巨大な虫に遭遇する。
虫たちは街の中に巣を作り、人間を襲って捕食していた。フアンとタノは虫に襲われそうになったところをミッキーに助けられ、教会の中に案内される。そこには雪と虫から逃げてきた人々がシスターのリタとともに隠れ住んでおり、オマルも彼らに合流していた。
フアンは教会の塔の上で、空に現れた赤い光を目撃する。彼らによると、巨大な虫はその光とともに空からやってきたという。タノは「侵略だ」と恐れおののく。
フアンはクララを捜すため教会を出ていこうとするが、地上は虫で埋め尽くされていた。オマルは近くに使われていないトンネルがあることをフアンに話し、「俺たちをここから脱出させてほしい」と頼む。フアンはかつてフォークランド紛争でともに戦ったレンゴに別れを告げ、みんなを連れて教会を脱出する。
教会に残ったリタとレンゴは、虫たちを教会に引き付けるため、塔にのぼって鐘を鳴らす。そして虫たちを十分におびき寄せると、ガソリンをまいて火をつける。
フアンたちは無事にトンネルを抜け、バリケードの向こう側に出る。トラックに乗り込み、集まってくる虫たちから逃げるフアンたち。どうにか虫から逃げ切った彼らは、教会が燃えているのを目にする。
教会を脱出したフアンとタノ、オマルの3人はガレージに戻り、ほかの人々はカンポ・デ・マヨ(軍の基地)へ向かう。
フアンはクララと再会する。クララは自力でガレージまでたどり着き、疲れ果てて眠っていた。フアンとタノはルカスたちに状況を説明し、すぐに全員で島へ向かう準備を始める。
ロベルトから交渉を持ち掛けられたタノは、それに応じてガレージと家を彼に譲り、代わりにキャンピングカーを手に入れる。フアンたちはキャンピングカーと古い車に乗り、ガレージを出て島を目指す。
タノは、クララが身につけていたというマスクを見て、自分のヨットの備品だと気づく。だがクララはヨットには乗っていないと主張し、マスクのことも知らないと言う。
フアンたちは港にたどり着くが、海の水は干上がっていた。高速道路でブエン・アイレを目指す途中、ショッピングモールに立ち寄る。そこでは多くの人々が秩序を守って避難生活を送っており、ミッキーやぺカス、トニーたちもいた。
クララはミッキーに声をかけられたとたん発作を起こし、錯乱状態になる。エレーナはクララの様子がおかしいことに気づき、心配する。
翌朝、とつぜん雪がやみ、人々は死の恐怖から解放されたことを知って喜び合う。タノは方位磁石を確認し、南北が逆になっていることを知る。
そこへ武装した3人組が現れ、人々に向けて無差別に乱射する。ミッキーは撃たれて重傷を負う。フアンは襲撃犯2人を射殺するが、1人は取り逃がしてしまう。
昨夜から行方不明になっていたルカスが、軍隊とともにやってくる。ルカスはブエン・アイレの道にいたところを軍隊に拾ってもらったと話し、そこまでの記憶はないという。
フアンたちは軍隊に救出され、カンポ・デ・マヨへ向かう。
カンポ・デ・マヨ基地に避難したフアンたち。ルカスは軍曹になり、オマルとインガ、パブロの3人は射撃の訓練に打ち込み、エレーナとアナは病院を手伝っていた。
タノは軍の上層部から、ある計画を手伝ってほしいと打診される。市街地に残っている生存者を救うため、車庫にある機関車で街の中心部に突撃し、無線放送を行うというのだ。危険すぎると断るタノだったが、オマルとインガは計画に協力したいと志願する。
服役囚の2人に説得されたフアンとタノは、軍の計画に協力することを決める。基地を出発した一行は、ペルー軍の戦術輸送機が空を飛んでいるのを見て希望を抱く。一行は車庫に眠っていた機関車を動かし、市街地へと向かう。
フアンたちは街の中心部にある高層住宅にたどり着く。なぜか虫の姿は街から消えていた。生存者に団結を呼びかけ、基地の存在を知らせる無線放送は、無事に成功する。
インガは墜落したペルー軍の戦術輸送機を調べに行き、輸送機がリーベル・スタジアムを標的にしていたことを知る。そこへ、何かに取り憑かれたような人々が集まってくる。
フアン、タノ、ルカス、オマルの4人は、高層住宅の一室で久しぶりにカードを楽しむ。だが突然ルカスが激高し、オマルを刺してしまう。ルカスは屋上からスタジアムの青い光を見て笑い、「びしょ濡れだ」と言って自ら飛び降りる。
武装した人々が押し寄せてくるのを見たフアンとタノ、オマル、ルぺルトの4人は、命からがら高層住宅から脱出する。どうにか機関車に戻った4人はそこで生き残った1人と合流し、機関車を発車させて基地へ向かう。
フアンは青い光を放つスタジアムを調べるため、機関車を降りることに。廃墟となった建物に身を隠したフアンは、ビジョンを見て、今と同じ経験をしたと確信する。青い光の中にいたのは「真の敵」だった。集まった人々は敵に操られ、ロボットのように従っていた。
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