英国ドラマ「刑事カレン・ピリー 再捜査ファイル」(全3話)についてまとめました。
スコットランドを舞台に、大胆不敵な刑事カレン・ピリーの活躍を描いた英国ミステリードラマ。IMDbの評価は7.6。
若き女性刑事カレン・ピリーが、男性中心の警察組織の中で息苦しさにもがきながらも、25年前の未解決事件に果敢に立ち向かいます。
主人公カレン・ピリーを演じるのは、「アウトランダー」でマーサリ役を演じたローレン・ライリー。彼女の相棒ミントを「セックス・エデュケーション」で話題のクリス・ジェンクスが演じます。
Contents
作品概要
- 放送局:AXNミステリー
- 放送時間:2023年3月25日(土)16:00~全3話一挙放送
- 製作国:英国(2022年)
- 原題:Karen Pirie
- 原作:ヴァル・マクダーミド「カレン・ピリー警部シリーズ」
- 脚本:エマー・ケニー
- 監督:ガレス・ブリン
あらすじ
ある日、刑事カレン・ピリーは25年前に起きた未解決事件の再捜査を任される。1996年、ロージー・ダフという19歳のバーテンダーが殺害され、彼女の死体を発見した3人の男性に疑いがかけられたが、彼らが起訴されることは無かった。しかし、その3人のうちの一人がひき殺されるという事件が起こり、再捜査チームが始動することになったのだ。
AXNミステリー公式サイトより
カレンが捜査を進めていくと、1996年に行われた最初の捜査に不備があったことが明らかになり、25年前のあの日に何が起きたか?を突き止めようとカレンは決意する。
予告動画
セント・アンドルーズについて
このドラマの舞台になっているセント・アンドルーズ(St Andrews)は、スコットランドのイースト・ノースアンドルーズ州にある、北海に面する町。スコットランド最古の大学であるセント・アンドルーズ大学があるほか、ゴルフ発祥の地としても知られています。
美しいビーチや歴史的建造物、ゴルフコースなどがあり、観光地としても人気があります。
ドラマの中に登場する「大聖堂」は、セント・アンドルーズ大聖堂と呼ばれる14世紀の建造物です。スコットランドにおける宗教の中心地として、かつては数多くの巡礼者が訪れました。
その後、16世紀の宗教改革で破壊・略奪され、廃墟と化しました。現在は聖堂の壁の一部や門のほか、大聖堂の建設以前からあったセントルール教会の塔が残っています。
登場人物(キャスト)
警察
カレン・ピリー(ローレン・ライリー)
スコットランドのセント・アンドルーズ警察署に勤務する刑事。階級は巡査部長。鼻につく女だと周りから疎まれている。25年前の未解決事件の再捜査を命じられる。
ジェイソン・マレー(クリス・ジェンクス)
再捜査チームに加わった若手刑事。通称ミント。カレンとともに25年前の未解決事件を追う。
フィル・パルハトカ(ザック・ワイアット)
カレンの元相棒。昇進を望んでいたが、カレンが再捜査チームの担当に選ばれたと知ってショックを受ける。カレンとは親密な関係になるも、その一件で関係が壊れてしまう。その後、殺人課に異動する。
サイモン・リース(スティーヴ・ジョン・シェパード)
警部補。カレンの直属の上司。ローソン警視正と相談し、カレンに再捜査を任せることに。
ジミー・ローソン(スチュアート・ボウマン)
警視正。セント・アンドルーズ警察署長。ポッドキャストで25年前の未解決事件を蒸し返され、対抗策として女性刑事に再捜査を担当させる。25年前は巡査部長として事件の捜査にあたっていた。
バーニー・マクレナン(ジリー・ギルクリスト)
故人。25年前、ロージーの事件の捜査班を率いた警部補。優秀な刑事で同僚からも愛されていた。ロージーの父親とは親しかったこともあり、ロージーの死に心を痛める。
被害者と家族
ロージー・ダフ(アンナ・ラッセル・マーティン)
25年前の殺人事件の被害者。19歳。〈ラマス・パブ〉でバーテンをしていた。事件の夜、店を抜け出してパーティーに行き、大聖堂で遺体となって発見された。のちに、15歳で子供を出産していたことが判明する。
コリン・ダフ(ダニエル・ポートマン)
ロージーの兄。乱暴者で、飲酒運転や暴行の前科がある。25年前、ロージー殺害の容疑者だったジギーを襲い、半殺しの目に遭わせた。現在は当時警官だったジャニスと結婚している。
ブライアン・ダフ(アンソニー・ストラカン)
ロージーの兄。コリンと同じく乱暴者。25年前の事件後、コリンとともに容疑者だったジギーを襲った。
ジャニス・ダフ(ゲイル・ワトソン)
コリンの妻。元警察官。25年前の事件の夜、パトロール中にジギーから助けを求められ、大聖堂でロージーの遺体を発見した。その後、捜査担当から外されている。
グレース・ギャロウェイ(ボビー・レインズベリー)
ロージーが15歳のときに産んだ娘。生まれてすぐにギャロウェイ家に養子に出された。現在は農場で暮らしている。
事件の関係者
シグムント・マルキェヴィチ(アレック・ニューマン)
通称ジギー。高名な外科医。25年前の事件の容疑者で、遺体の第一発見者。事件の夜、店にいたロージーを誘ってパーティーに呼び出しているが、警察には「彼女とは話してない」と供述した。現在はパートナーのポールと暮らしている。
アレックス・ギルビー(アリヨン・バカーレ)
ジギーの友人。芸術家。出産間近の妻がいる。25年前の事件の夜、友人のジギー、トムと行動をともにしていた。3人で秘密を共有している。
トム・マッキー(ジャック・ヘスケス)
ジギーの友人。通称ウィアード(変人)。大学教員。25年前の事件の夜、友人のジギー、アレックスと行動をともにしていた。学生時代は薬物依存の遊び人で、数回大学を停学になっている。
ドロシー・キャンベル(Clare Waugh)
トムのアリバイを証言した女性。事件当夜、パーティーに参加した後、トムと一緒にいたと証言している。
そのほか
ベル・リッチモンド(ラキー・タクラー)
ポッドキャスター。25年前の未解決事件に興味を持ち、独自に調査を行ったうえ自身の見解をポッドキャストで配信する。警察の初動捜査の怠慢や被害者非難を訴える。
リバー・ワイルド(エマー・ケニー)
カレンのルームメイト。遺伝子系譜のサイトを運営している元彼を紹介するなど、カレンの捜査に協力する。
ポール(ゲイリー・ラモント)
ジギーのパートナー。25年前の事件でトラウマを抱えるジギーを心配する。
ジョン・ストービー(リチャード・コンロン)
ロージーの同級生。25年前の事件当時は大学生で、地元を離れていた。ロージーの子供の父親と思われていたが、本人は否定する。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1996年6月26日。セント・アンドルーズの大聖堂で、19歳のロージー・ダフが遺体で発見される。その夜、彼女は誰かに会うため、働いていたパブを抜け出していた。遺体を発見した3人の学生ジギー、トム、アレックスは、パーティーの帰り道に偶然通りかかったと供述するが、3人が事件に関与していると見た警察は彼らを逮捕する。
25年後。ポッドキャスターのベル・リッチモンドは、未解決のロージー事件に興味を持ち、独自に調査を行ったうえポッドキャストで配信する。警察を非難する彼女を止めるべく、ローソン警視正とリース警部補は対抗策として女性刑事のカレン・ピリーを抜擢。25年前の事件の再捜査を命じる。
カレンが異例の抜擢を受けたことで、そのポストを密かに狙っていた同僚フィルは嫉妬し、2人の仲はこじれてしまう。女性だから選ばれた、とフィルから知らされたカレンもまた、ショックを受ける。
カレンは“ミント”というあだ名の若いマレー巡査と2人で、再捜査チームを始動させる。ロージーは首を絞められて意識を失い、車で墓地に運ばれて腹部を刺されたと推測されたが、凶器は見つかっていなかった。
当時の担当捜査官だったマクレナン警部補とローソン巡査部長は、学生3人がパブでロージーを誘い、パーティー会場で合流したのではないかと考えていたが、それを裏付ける証拠は見つからなかった。
検視結果でロージーに帝王切開の痕があることを知ったカレンは、ダフ家を訪ね、彼女の2人の兄コリンとブライアンに話を聞く。コリンは事件の夜に黒髪の男がパブでロージーに話しかけるのを見たという。
コリンの妻ジャニスは、25年前は警察官として事件に関わっていた。彼女によるとロージーは15歳のときに出産し、赤ん坊は生まれてすぐに亡くなったという。だが出生証明書を取り寄せると、子供は養子に出されて生きていることが判明。カレンはロージーの子供を追跡すべきだと訴えるが、ローソン警視正とリース警部補に猛反対される。
25年前に殺人容疑をかけられた3人の学生たちは、現在それぞれの生活を送っていた。ジギーは高名な医師、トムは大学教授、アレックスは芸術家として。カレンはジギーに会って話を聞くが、彼は当時のまま証言を変えず、パブでロージーを誘ったことを否定する。
しかし事件の再捜査が始まり不安に駆られたジギーは、トムとアレックスに会い、「真実を伝えるべきだ」と話す。だが2人は現在の生活を失うことを恐れて反論し、ジギーを説得する。
ミントはポッドキャスターのベルが集めた証拠の中から、25年前にパーティー会場の外で撮影された1枚の写真を見つける。そこに写っていたのは、ロージーと話すジギーの姿だった。パブでジギーに誘われた彼女は、やはりパーティー会場を訪れていたのだ。
ジギーは25年前のトラウマに苦しんでいた。証拠不十分で釈放された後、ロージーの兄コリンに襲われて古城で殺されかけたのだ。そのときの悪夢に今も悩まされていた。
ランニングに出かけたジギーを1台の車が尾行し、彼を轢き殺して走り去る。
ジギーが殺され、殺人課のフィルが事件の担当者としてカレンのチームに合流することに。カレンはジギーのパートナーから彼がトラウマを抱えていたことを聞き、ダフ兄弟による復讐殺人を疑う。だが兄弟は関与を否定する。
カレンは遺伝子系譜のサイトを頼り、ロージーの遺伝子を持つ子供を追跡する。その結果、グレース・ギャロウェイという女性に辿り着く。グレースは昨年養母を亡くし、養子支援団体に連絡して実の母について聞いたという。カレンは父親を見つけ出すため、DNA検査の協力を依頼する。
当時の捜査でロージーの日記が見つかり、彼女が誰かと密会していたことや、ストーキングを受けていたことがわかる。ロージーの同僚だったアイオナは、ロージーが当時誰かに恋をしていたことや、しつこく言い寄るトムを嫌っていたことを話す。
25年前の事件の夜、トムは教授の車を盗んで乗り回していた。助手席から黒い毛髪が発見されていたが、毛根がなかったため当時のDNA検査は不可だった。当時、警察で毛髪について問われたトムは、「ドロシーのものだ」と証言していた。
ドロシーと会ったカレンは、彼女が偽証していたことを知る。トムにロージー殺害時刻のアリバイはなかった。DNA検査で助手席の毛髪がロージーのものであることも判明し、カレンはトムへの疑いを強める。
25年前、トムは事件の容疑者として警察から疑われ、釈放後も周囲から心ない言葉を浴びせられていた。大学からも休学を勧められ、自棄になったトムは薬物を摂取してハイになり、古城の崖の上で自殺騒ぎを起こす。
当時の捜査班を率いていたマクレナン警部補は、トムを救おうとして崖に登り、トムとともに海に転落。トムはローソンによって救出されるが、マクレナンは亡くなってしまう。
ベルのサイトの掲示板で、ジギー、トム、アレックスの個人情報が掲載されてしまう。カレンは投稿の削除をベルに依頼し、事件当夜の目撃者を呼びかけてほしいと訴える。
精神的な不調に苦しむトムは、死んだマクレナンとロージーの幻覚に怯える。そして複数の抗不安薬や睡眠薬を酒とともに摂取する。朦朧とするトムの前にグレースが現れ、「真実を話して」と告げる。
トムは薬物の過剰摂取で病院に搬送され、昏睡状態に陥る。自宅に侵入者がいたことがわかり、カレンとフィルはトムが直前に電話していたアレックスに疑いを向ける。
証拠品保管庫にあったロージーのカーディガンを鑑識に出した結果、アレックスの精液が付着していたことが判明、カレンはアレックスを殺害容疑で逮捕する。
アレックスは聴取でロージーと付き合っていたことを告白。だがロージーは2人の関係を隠したがり、アレックスはそのことに不満を抱えていた。そして当時アレックスに好意を持っていたジギーは、アレックスのためにロージーを誘い、パーティー会場で彼との関係を認めるよう迫ったのだった。
25年前の事件の夜、アレックスは車中でロージーと性交渉に及んだことを認めるが、その後すぐに言い争いになり、ロージーはひとりで帰ったという。大聖堂でロージーの遺体を発見した後、ジギーは有色人種のアレックスが警察によって殺人犯に仕立て上げられるだろうと推測し、ロージーとの関係を隠すことを決めたのだった。カレンはアレックスの言葉を信じ、彼を釈放する。
ベルの協力で、事件の夜にBMWに乗り込むロージーを見たという人物が現れる。彼は25年前にもそのことを通報していたが、電話に出たマクレナンが事故死したため、調査されないまま放置されていた。
当時捜査チームにいたジャニスは、マクレナンの死後、コリンとの恋愛関係を理由に捜査から外されたことをカレンに話す。だがその真相は、ローソンの好意を拒んだことによる彼の嫌がらせだった。
カレンはロージーのカーディガンに塗料が付着していることに気づく。調べた結果、その塗料は船やトレーラーハウスに使用される特殊なものだった。ミントはBMWの持ち主を探し当て、その女性がローソン警視正の母親だと知る。
25年前、ローソンはトレーラーハウスに住んでいた。カレンはミントとともにローソンの別邸があるリーヴェン湖へ向かい、放置されたトレーラーハウスを発見する。その扉の内側には、例の塗料が塗られていた。
一方、アレックスの前にはグレースが現れ、母を殺したのかと迫る。アレックスは彼女から銃を奪おうとして撃たれ、生まれたばかりの赤ん坊を奪われてしまう。
グレースの農場を訪れたカレンは、彼女を説得して赤ん坊を取り戻し、彼女の目の前で真犯人であるローソン警視正を逮捕する。黙秘を続けるローソンに、自分の見解を話すカレン。
1992年当時、21歳だったローソンは15歳のロージーと関係を持ち、彼女を妊娠させた。ロージーはローソンや家族に隠れておばの家で密かに出産し、死産と偽って娘を養子に出した。
ローソンはロージーとよりを戻そうと、3年にわたって執拗につけ回したが、ロージーは拒絶し続けた。そしてアレックスと恋に落ちた。
1996年6月26日の夜、パブで働くロージーを見張っていたローソンは、密かに店を抜け出した彼女を捜しにいき、午前2時15分にプレンティス通りで彼女を発見。話したくないというロージーにしつこく食い下がり、車に乗せた。そして自宅のトレーラーハウスに連れ込み、セックスを強要して拒まれ、激高して彼女の意識がなくなるまで首を絞めた。
その時点でロージーはまだ生きていたが、ローソンは確かめもせず自己保身に走り、過去の未解決殺人事件になぞらえて大聖堂で腹部を刺して偽装を行ったのだった。
カレンは当時捜査チームを率いていたマクレナンの死についてもローソンの関与を疑う。ローソンは「君をみくびっていた」と告げ、カレンを再捜査チームに配属した本当の理由を匂わせる。
グレースはジギーの殺害容疑で逮捕され、アレックスへの暴行罪と誘拐罪にも問われることに。ポッドキャストの掲示板で3人の個人情報を入手し、幸せそうな彼らを見て怒りを抱いたと話す。
カレンはリース警部補から「よくやった」と称賛され、ともに事件を追ったミント、フィル、そしてルームメイトのリバーと4人で祝杯をあげる。
感想(ネタバレ有)
辛辣で、一匹狼で、ワケありのベテラン刑事…という主人公の定型パターンをぶち壊してくれた、清々しいドラマ。
主人公は若き女性刑事カレン・ピリー。25年前のコールドケースに挑むというストーリーはオーソドックスながらも、フレッシュでキュートな彼女の存在が常に新鮮な風を送り込んでいて、さわやかな印象でした。
カレンを演じたローレン・ライリーの魅力でもあるのですが、小柄で童顔な彼女が、男性社会と言われる警察組織の中でも決して諦めず、自棄にもならず、他人を妬んだり羨んだりもせず、まっすぐに自分の能力を信じて突き進む姿が最高にカッコよかった。
ニットベストがまた似合ってていいんですよね~。正直“鼻につく”ところなんか、全然なかったけどなぁ。男性目線で見ると違うのかしら。
対照的に男性陣はちょっとカッコ悪い描き方がされていて、カレンと一夜をともにしたフィルは出世した彼女に嫉妬して拗ねた態度を取り、陰で上司と悪口をたたくという情けなさ。ローソン警視正にいたっては、カレンを見くびった結果、自分の犯罪を彼女に暴かれる始末。
そんな男性陣の中では、カレンとチームを組むことになった相棒のミントだけが自然体で、とても好感が持てました。もし続編があったら、またこの2人でチームを組んでほしいなぁ。
よくある1話完結形式ではなく、全3話でひとつのストーリーが描かれているところも見ごたえがあって、個人的にはうれしかったです。
シーズン2の情報はまだ入ってきていませんが、これは絶対、続編あるよね? ヴァル・マクダーミドの原作「カレン・ピリー警部シリーズ(Inspector Karen Pirie series)」は現在までに6作品発表されているので、ドラマのほうもぜひシリーズ化してほしいです。
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