英国ドラマ「パズル作家ルートヴィヒ 謎は解くためにある」(全6話)についてまとめました。
孤独なパズル作家ジョンが、失踪した双子の兄になりすまし、殺人事件の捜査に巻き込まれるコージーミステリー。2024年9月にBBCで放送され、視聴者数950万人超という驚異的な数字を記録した話題作です。IMDbの評価は8.1。
コメディ俳優のデヴィッド・ミッチェルが正反対の双子を一人二役で演じ、「連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義」の主役を熱演したアンナ・マックスウェル・マーティンがジョンの義姉ルーシーを演じています。
Contents
あらすじと見どころ
- 主人公ジョン・テイラーは「ルートヴィヒ」のペンネームで活動する引きこもりのパズル作家。ある日、双子の兄で刑事のジェームズが失踪し、兄の妻ルーシーから「ジェームズになりすまして警察署に潜入してほしい」と依頼される。
- しぶしぶ引き受けたジョンは、書類を持ち帰るだけのはずが、主任警部として殺人事件の捜査を担当する羽目に。
- 見どころは、ジョンがパズル的思考で事件を解決していく過程と、双子の性格の違いによる人間関係のズレや葛藤。舞台となるケンブリッジの街並みも美しく描かれています。
作品概要
- 放送局:ミステリーチャンネル
- 放送時間:2025年10月12日(日)16:00~ ※全6話一挙放送
- 製作国:英国(2024年)
- 原題:Ludwig
- 脚本:マーク・ブラザーフッド
- 監督:ロバート・マキロップほか
- 製作総指揮:
予告動画
登場人物(キャスト)一覧
主要人物
ジョン・テイラー(デヴィッド・ミッチェル)
孤独なパズル作家。“ルートヴィヒ”というペンネームでパズル本を出版し、生計を立てている。テレビもパソコンも持たず、めったに家から出ない。一卵性双生児の兄ジェームズが行方不明になり、兄になりすましてケンブリッジ警察に潜入する。
ジェームズ・テイラー(デヴィッド・ミッチェル)
ジョンの双子の兄。ケンブリッジ警察の主任警部。何かの捜査に没頭したあげく、ルーシーに奇妙な手紙を残して失踪する。警察署のデスクから、難解な暗号で書かれた手帳が見つかる。
ルーシー・ベッツ・テイラー(アンナ・マックスウェル・マーティン)
ジェームズの妻。写真家。失踪した夫の行方を捜すため、義弟のジョンに協力を求める。テイラー兄弟とは40年来の付き合いで、ジョンの理解者でもある。
ヘンリー・ベッツ・テイラー(ディラン・ヒューズ)
ジェームズとルーシーの息子。15歳。父親が謎の手紙を残して失踪したことを知り、陰謀に巻き込まれたのではないかと心配する。父親からもらった鳥の本を大切にしている。
ケンブリッジ署
ラッセル・カーター警部(ディポ・オラ)
ジェームズの新しい相棒。
キャロル・ショー警視正(ドロシー・アトキンソン)
ジェームズの上司。
ジーグラー本部長(ラルフ・アイネソン)
ジェームズ失踪に絡んでいると思われる人物。ある理由から、カーター警部を推薦した。
アリス・フィンチ巡査部長(イズカ・ホイル)
野心家で生真面目な性格。
サイモン・エヴァンズ巡査(ジェラン・ハウウェル)
最年少で、実家暮らし。母親は“ルートヴィヒ”のパズル本のファン。
ホリー・ピンダー(ソフィー・ウィラン)
IT担当。ある思惑から、ジョンの行動に目を光らせている。
マット・ネヴィル警部(カール・ピルキントン)
ジェームズの10年来の相棒で、一番の親友だったが、ひと月前に姿を消している。
そのほか
トッド先生(デレク・ジャコビ)
ジョンの恩師。現在は名門校の寮長として勤務している。ジョンをいじめっ子から守り、パズルの魅力を教えた。
ロジャー・シンクレア
ジェームズが担当した殺人事件の被害者。ブロガーで、陰謀論者。
リース・ボーエン
ロジャー・シンクレアを殺害した強盗犯。実家で母親と2人暮らしだった。現在は刑務所に収監されている。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
実家に引きこもり静かに暮らすジョン・テイラーは、“ルートヴィヒ”という名でパズル作家として活動している。ある日、一卵性双生児の兄ジェームズの妻ルーシーから突然の電話を受ける。
ジェームズはケンブリッジ警察の主任警部でありながら、ある捜査に没頭した末に姿を消してしまったという。ルーシーはジョンにジェームズになりすまして警察署へ行き、彼のデスクから捜査用の手帳を探してほしいと頼む。
最初は拒否するジョンだったが、ジェームズが残したルーシー宛の手紙に「愛してる。昔からずっと」という文章が暗号で隠されていることに気づき、協力を決意する。
ジェームズになりすましてケンブリッジ警察署に出勤したジョンは、ジェームズの新しい相棒ラッセル・カーター警部に連れられ、大物弁護士アラン・ハウエルズが刺殺された事件現場に足を踏み入れることに。
ジョンは慣れない人混みや騒音に圧倒されながらも、ホワイトボードに論理パズルの表を描き、容疑者7人の行動を時系列で整理する。そして演繹的推論により殺害が可能な人物を導き出し、サラ・ギルマーシュが犯人だと断定する。サラは泣きながら自白し、逮捕される。
ジョンは事件を解決したことで署内で称賛される。ジェームズのデスクからオレンジ色の手帳を発見したジョンは、ルーシーの家に手帳を持ち帰る。手帳には、ジョンですらも解読できない暗号化された難解なメモが残されていた。
ルーシーはジェームズの携帯のパスコードを突き止め、クラウドの写真を復元する。その中には、ジーグラー本部長の姿が写っている写真があった。ジョンは手帳の暗号を解読するため、再び署へ向かうことを決意する。
ルーシーの息子ヘンリーは、ルーシーの部屋でジェームズが残した手紙を見つけ、父親が失踪したことを知る。
ジョンはジェームズが残した手帳の解読に苦戦する。暗号には“鍵”が必要であり、それが何かの本や資料であると推測するが、決定的な手がかりは見つからない。
ジョンは再びジェームズになりすまして警察署に出勤し、ショー警視正から、ジェームズの元相棒ネヴィル警部が「シンクレア事件」をきっかけに異動させられたことを聞かされる。
署には、ピーター・ウィリアムズが謎めいた電話を残して失踪したという相談が彼の妻によって持ち込まれる。ジョンは「謎めいた電話」という言葉に引かれ、カーター警部とともに捜査に乗り出す。
2人はピーターが会社の合宿で滞在していたブライス邸を訪れ、オーナーのカミラ・ブライスや社員たちから話を聞く。防犯カメラの映像にはピーターが出て行く姿が映っていたが、ジョンはその映像に違和感を覚える。
ジョンはピーターの過去を調べ、彼が詐欺まがいのビジネスを繰り返していたことを突き止める。ピーターの車は自殺の名所で発見され、警察は自殺と判断するが、ジョンは「妻に荷造りを指示しておいて自殺するのは不自然だ」と疑念を抱く。
ジョンはブライス邸の防犯カメラの写真を見比べ、壁紙のズレに気づく。再びブライス邸を訪れたジョンは、壁紙の裏に隠された扉を発見し、封鎖された食品庫からピーターの遺体を見つける。
ジョンはブライス邸に関係者を集め、事件の真相を暴く。ピーターに騙されていたことを知った社員たちは、彼を問い詰め、口論の末に彼を突き飛ばして死亡させたのだった。カミラ・ブライスもまた詐欺の被害者であり、社員たちの犯行を目撃した彼女は、共犯として遺体を隠蔽する手助けをしていた。
ルーシーはジェームズの元相棒ネヴィルの家を訪ねるが、彼と家族はすでに引っ越しており、行方は不明だった。ルーシーは息子のヘンリーと話し合い、必ずジェームズを見つけ出すと約束する。
ジェームズの手帳に破れられた形跡があると気づいたルーシーは、後ろのページを鉛筆でこすって、「シンクレア」「Zieg R(ジーグラー)」という文字を浮かび上がらせる。ジョンはそれをもとにジェームズのパソコンにアクセスし、シンクレア事件の報告書を開くことに成功する。独身男性のロジャー・シンクレアが強盗に殺害されたという内容で、署名はジーグラー本部長だった。
さらに、ルーシーの家にあったファックスから、同じ事件の別バージョンの報告書が出力される。そこにはジェームズが担当刑事として記され、事件は「強盗殺人」ではなく「殺人」とされ、署名はショー警視正だった。2つの報告書の内容と日付の違いは、事件の隠蔽や改ざんの可能性を示唆していた。
事件現場となったシンクレアの自宅は、ジーグラー本部長が写っている写真の背景と一致しており、事件の核心に警察上層部が関与している可能性が浮かび上がる。
教会で若いツアーガイドの女性メーガン・ローランズが殺害される。ジョンはカーター警部とともに現場に赴き、ツアー客の証言を集めながら捜査を開始する。ツアーには地元のテイト夫妻、学生のマイルズとユナ、フランスから来た母娘と孫娘の3人が参加していた。ジョンは、事件の鍵がツアー中に起きた何かにあると推理する。
警察署では、別件として大富豪キャメロン・ハルショーの息子ジョーダンの失踪が報告される。後にジョーダンはケム川で溺死体として発見される。
メーガンの携帯が見つかっていないことから、ジョンは彼女が撮影した写真が殺害の動機につながるのではないかと推理し、カーターとともにツアーを再現して回る。事件の真相に気づいたジョンは、教会に関係者を集めて推理を披露する。
犯人はツアー客のエイドリアン・テイトだった。テイトは警備員として勤務中、空きビルに寝泊まりしていたジョーダンと遭遇。彼に襲いかかられ、身を守ろうとして死なせてしまったのだ。その後、テイトは彼が所持していた金を盗み、遺体を川に遺棄した。そしてメーガンがツアー中に撮影した写真の背景に、空きビルにいる自分が写っている可能性があることに気づいた。
テイトは証拠隠滅のためにツアーに申し込み、メーガンの携帯から写真を消そうとした。しかし彼女が声を上げようとしたため、衝動的に殺害してしまったと自供する。テイトは殺人容疑で逮捕される。
事件解決後、カーターはジョンに、自身の婚約者がジーグラー本部長の娘であり、彼女の死をきっかけに異動を願い出たことを打ち明ける。ジョンはその告白を受け止め、カーターとの信頼関係を深める。
一方、ルーシーはシンクレア事件で逮捕されたリース・ボーエンの母親に接触し、息子にアリバイがあったにもかかわらず自白に至った経緯を聞き出す。母親は警察の対応に不信感を抱いており、ルーシーはその証言に心を痛める。
翌日、再び母親を訪問したルーシーは、リースが刑務所の独房で自殺を図ったことを知らされる。ルーシーは自分の行動が原因ではないかと苦悩し、陰謀の可能性を口にする。ジョンはそれを否定するが、ルーシーの不安は拭えない。
建設現場で1人の作業員が転落死する。労災事故として処理されそうになるが、現場に残された数々の不審点がジョンの直感を刺激する。
被害者のマーティは、人をからかって面白がる性格だった。彼は同僚のギャリーと持ち場を交換していたが、作業員たちは日常的に持ち場を自由に入れ替えており、当番表はほとんど意味をなしていなかった。
現場では、発電機の配線が不自然にいじられており、床は水で濡れていた。ジョンは、ウォーターサーバーのボトルがシュートから捨てられていたことに気づき、それが発電機にかけられた水であると推測する。感電によってマーティがよろめき、故意にボルトが緩められた手すりに倒れ込んで転落した可能性が浮上する。
捜査をすすめるうちに、ジョンは犯人が天才的な頭脳を持つことに気づき、焦り始める。ルーシーとの関係も揺れ動き、2人の間に葛藤が生まれる。そんな中、ヘンリーがジェームズとチェスの対局をしていたことを知ったジョンは、かつて自身が考案した「リバース・チェス」の手法から着想を得て、事件の構造を見抜く。
ジョンは建設現場に関係者を集め、持ち場の入れ替えの連鎖をチェス盤に見立てて再現。犯人は直接的に人を動かしたのではなく、心理的な誘導によって他者同士の交換を促し、マーティが罠にかかるよう仕向けていた。その巧妙な手口の発端はギャリーとザラの持ち場交換であり、ギャリーが犯人であることが明らかになる。
ギャリーはかつてマーティの悪ふざけによって、架空の女性にプロポーズしてしまった過去があり、その屈辱が動機となっていた。ジョンはギャリーのDNAが付着したボトルを証拠として突きつけ、さらに地上からではボトルを捨てられないことを実演して証明する。ギャリーは観念し、罪を認めて逮捕される。
事件解決後、ジョンはIT担当のホリーから、ジーグラー本部長のIDを使って署内のシステムに不正アクセスしたことを指摘される。しかしホリーはその事実を表沙汰にせず、「履歴は消した」とだけ告げて立ち去る。
帰宅したジョンは、暗号解読に再び意欲を燃やし、ルーシーとヘンリーに「諦めない」と宣言する。だがその夜、ジェームズの携帯に謎の男から電話がかかってくる。「新聞を見た。何を考えている?」という言葉を残し、通話は切れる。
名門校の校長イアン・デュローズの遺体が校長室で発見される。部屋は内側から施錠され、遺書も残されていたことから自殺と見なされるが、ジョンは遺書の不自然さや現場の状況に違和感を覚え、殺人事件として捜査を開始する。
捜査の過程で、ジョンは30年前に自分にパズルの魅力を教えてくれた恩師トッドと再会する。かつて聡明だったトッドは記憶が曖昧になり、老いを深めた姿にジョンは衝撃を受ける。トッドは校長と体育教師ビショップの口論を目撃していたが、詳細は覚えていなかった。
一方、校内ではビショップが女生徒サーシャと不適切な関係を持っていた疑惑が浮上する。校長のパソコンには、ビショップに関する未送信の告発文書が残されており、ジョンはビショップが女生徒との関係を隠蔽するために校長を殺害したと確信する。
ジョンは校長室に関係者を集め、事件の謎解きを披露する。ビショップは校長を絞殺した後、遺体を自殺に見せかけて偽装し、月曜までの3日間、校長室に潜伏していたのだ。そして月曜の朝、管理人と副校長がドアを開けた際に部屋を抜け出し、外から来たように装ったのだった。
ビショップは週末にスコットランドへ行っていたとアリバイを主張するが、婚約者で副校長のフレイヤに送ったプロポーズ動画には学園の鐘の音が録音されており、ジョンはビショップが校長室にいた証拠と見なす。ビショップは殺人容疑で逮捕される。
ジョンは、トッドが自分の正体を見抜いていたことに驚き、「気づいたのは先生だけ。あなたは昔と変わらず聡明だ」と感謝を伝えて学園をあとにする。
一方、ルーシーはジェームズの携帯にかかってきた電話番号を調べ、失踪したジェームズの元相棒マットの居場所を突き止める。ウェールズの家を訪れ、マットから事情を聞き出そうとしたルーシーだったが、マットの妻ジリアンは尾行の可能性に怯え、夫妻は何も語らずにルーシーを拒絶する。
ジョンはホリーから「クリスマス・パーティーでキスしたでしょ」と言われ、動揺する。サイモンは偶然2人の会話を盗み聞きしてしまう。
その夜、ルーシーの携帯にホリーから電話が入り、「ジェームズの件で話したい」と告げられる。ルーシーはジョンとヘンリーに黙って家を出る。
ルーシーはホリー・ピンダーの自宅を訪れ、思いがけず殺人事件の容疑者として逮捕される。ホリーはすでに室内で殺害されており、ルーシーは血のついたナイフを手にしていたため、ケンブリッジ署で取り調べを受けることになる。
サイモンは苦悩の末、ジェームズとホリーが不適切な関係にあった可能性をカーターに報告。カーターの追及を受けたジョンは、ウソをつき通せなくなり、自分がジェームズではなく弟のジョンであることを告白する。ルーシーもまた、夫ジェームズが手紙を残して失踪したことを話す。
ホリーの部屋では、彼女が収集していた膨大な資料が発見され、ジョンとジェームズの写真も含まれていたことから、ホリーが双子の入れ替わりに気づいていた可能性が浮上。彼女がジェームズとの不倫を匂わせたのは、ジョンの反応を試すための虚偽だった。
真犯人は、ホリーの恋人を名乗っていた男アダム。実際にはホリーが雇っていた雑用係であり、報酬の不公平に怒り、彼女を殺害した。ルーシーは護身用に自宅のナイフを持参していたが、ホリー宅でそれをイスの上に置いた隙に、アダムが凶器のナイフとすり替えた。ジョンの推理によりアダムは追い詰められ、罪を認めたことでルーシーは無罪となる。
ホリーが情報を売る“副業”をしていたことが判明。情報漏洩の元凶であり、ルーシーを呼び出したのも脅迫目的だった。事件の全容が明らかになった後、ジョンはショー警視正の配慮により、ジェームズ名義で正式な辞表を提出。主任警部としての功績を記録に残し、身分偽装の責任を問われずに済む。
ショー警視正は、シンクレア事件に警察上層部が関与していることを察知し、ジェームズに捜査をやめるよう警告していたことをジョンに説明する。
警察署を後にしたジョンは、ジェームズからの留守電メッセージを聞く。そこには、家庭から心が離れていたこと、ジョンとルーシーの絆を理解していたこと、そして自分を「ニワシドリ」に例えて家庭を捨てたという告白が残されていた。
しかしジョンは、その言葉が誰かに聞かれることを想定したジェームズの偽装だと見抜く。「ニワシドリ」という比喩から、暗号の“鍵”が父からもらった鳥の図鑑にあると気づいたジョンは、ヘンリーが持っていたその本を使って暗号を解読。導き出された「ストーンウェイ 7番倉庫」へ向かうと、そこには警察から消えたシンクレア関連の資料が保管されていた。
ジェームズが何者かから守るために隠したその資料には、陰謀論者のシンクレアが見逃していた重大な真実が眠っている可能性があった。ケンブリッジに残る決意をしたジョンは、相談役として再び捜査に加わり、カーター、サイモン、アリスとともに新たな殺人事件へと挑んでいく。
感想(ネタバレ有)
軽やかで奥深いミステリー
1話完結型のミステリーですが、全体を通して「兄ジェームズの失踪」という大きな謎がずっと続いていて、最後までドキドキしながら観ることができました。
毎回、パズルのような考え方で事件が解き明かされていくので、「今回はどんな仕掛けが?」とワクワクしながら楽しめました(とはいえ、私にはちょっと難しくてついていけないところもありましたが……)。
全体的にはコミカルな場面が多いのですが、ところどころで主人公ジョンの辛い過去や、姿を見せない兄の存在が描かれていて、物語に繊細な影を落としています。そのおかげで、ただの謎解きドラマではなく、心に残る深さも感じられました。イギリスで人気が出たのも納得です。
音楽もとても印象的でした。ベートーヴェンの曲をアレンジしたBGMが使われていて、クラシックの重厚さとドラマの軽快さがうまく合わさり、シーンごとの雰囲気をより引き立てていました。
ジョンの過去とコンプレックス
主人公のジョンは引きこもりのパズル作家で、最初はちょっと風変わりな人物に見えます。けれども話が進むにつれて、彼の過去や内面が少しずつ見えてきます。
父親が突然いなくなったことや、子どもの頃にいじめを受けていたこと、兄に対するコンプレックスなど、つらい経験が今の性格や行動に影響していることがわかってきます。
中でもわたしが一番心に残ったのは第5話。恩師トッドとの再会を通じて、ジョンが過去と向き合う姿が描かれます。かつてのいじめっ子を思わせる犯人と対峙する場面では、ジョンの心情が丁寧に描かれていて、トッドとの絆の深さも感じられ、静かな感動を覚えるエピソードでした。
ルーシーの行動力とジェームズの不在
ジョンと義理の姉ルーシーのやりとりは、ユーモアと温かさがあって、物語の中でもほっこりさせられる時間になっていました。すぐに行動を起こすルーシーは、視聴者からすればどこか危なっかしく、ハラハラする存在。そんな彼女が巻き起こす出来事が、ジョンの捜査と平行して物語を動かします。
そして、失踪した兄ジェームズがほとんど姿を見せないことで、彼の存在がかえって強く感じられるのも面白いところ。ジョンやルーシーとの関係性を想像し、「いったいどういう人なんだろう?」と、ますます謎に引き込まれました。
「ジェームズの失踪」と、それに関わる「シンクレア事件」の謎は、シーズン1ではすべてが明かされるわけではなく、続きが気になる終わり方でした。次のシーズンでどんな展開になるのか、今から楽しみにしています。
笑いの描き方とリアリティへの疑問
少し気になったのは、ジョンのように内向的で繊細な人を「笑いのネタ」として描いているところです。
彼の言動が変わっているからといって、それを面白おかしく見せることで、視聴者が彼を軽く扱ってしまうような雰囲気になっていないか。気にしすぎだと言われるかもしれないけれど、個人的には少し引っかかりを覚えました。
それからもうひとつ、警察の同僚たちがジョンとジェームズの入れ替わりにまったく気づかないのは、さすがに不自然だなとも思いました。性格も話し方も違うはずなのに、誰も疑問を持たないのはちょっと無理があるのでは。
余白を残した結末とシーズン2への期待
シーズン1では、ジェームズの失踪のきっかけとなった「シンクレア事件」が解決しないまま終わります。その点には少しモヤモヤさせられましたが、シーズン2の制作が決定したとのことで、今後の展開に期待しています。
ジョンの過去や兄との関係がさらに掘り下げられることを願いつつ、次のシーズンも楽しみに待ちたいと思います。
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