NHKドラマ満願第2夜「夜警」|柳岡の涙の意味

NHKドラマ「満願」ネタバレ感想

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どうも、夏蜜柑です。
NHKミステリースペシャル「満願」の第2夜「夜警」。

1時間、ずっと緊張感が途切れませんでした。
めちゃくちゃ面白かった。

安田顕さん演じる交番勤務の警官・柳岡が、目の前で殉職した新人警官・川藤の死の謎に迫る話。

「満願」3夜の中で、もっともスリリングな展開を見せます。

第2夜「夜警」あらすじ

  • 警察学校を出たばかりの新人・川藤(馬場徹)が殉職する。刃物を振り回す夫から妻を守ったとして、川藤は世間から賞賛される。だが同じ交番勤務だった柳岡(安田顕)は、違和感を拭えない。
  • 川藤は小心者で、警察官には向かない男だった。だが、柳岡は過去に厳しい指導を行った末に部下を自殺に追い込んだことがあり、川藤に対して厳しい態度をとれずにいた。
  • 柳岡は川藤の兄・隆博(吉沢悠)に会い、川藤が警察官になったことよりも銃を持てることに喜びを感じていたことを聞く。隆博もまた川藤の死に疑問を抱いており、「あいつはそんな立派な死に方をするような男じゃない」と言う。
  • 事件のあった日の昼、柳岡たちはパトロールに出かけ、交番にいたのは川藤だけだった。その時、交番の前の工事現場で作業員のヘルメットに小石が当たるというちょっとした事故があり、なぜか川藤はそのことを気にしていた。
  • ちょうどその時刻、隆博の留守電には川藤の声で「大変なことになった」というメッセージが入っていた。それを聞いた柳岡は、工事現場の作業員に当たったのは小石ではなく、川藤がはずみで撃った拳銃弾だったのではないかと思い至る。
  • 川藤は暴発を隠蔽するため、日頃から夫の暴力を訴えていた田原美代子(内田慈)を利用することを思いついたのではないか。そして自ら美代子の夫・田原勝(川瀬陽太)に電話をし、美代子が交番の警官と浮気をしていると告げ口をした。
  • 事件の夜、田原が刃物を持って暴れていると連絡が入り、柳岡たちは田原家へ向かった。川藤は田原を挑発し、向かってくる田原に向かって発砲した。昼間の暴発を隠蔽するために。そこまでは計算どおりだった。
  • だが、田原はこと切れる直前、川藤の頸動脈を短刀で切り裂いた。「こんなはずじゃなかった。うまくいったのに」という言葉を残して、川藤は死んでいった。
  • 交番の前の工事現場に立てかけられていた看板には、弾痕と思われる小さな穴があった。事件の真相にたどり着いた柳岡は、誰にも真実を語ることなく、雨の中に立ち尽くす。

第2夜「夜警」感想

あまりに完成度が高くて痺れました。

後半の盛り上がりは凄かったですね。
画面から一瞬も目が離せなかったです。

ドラマでは、柳岡を真相に導いていく川藤兄の存在がすこぶる大きかった。

吉沢悠さん、全身から退廃的な雰囲気を出しつつ、鋭い視線で真実をあぶり出していくところが見事。原作にはない存在感でした。

馬場徹さんの狂気に駆られた顔もよかったなぁ。

馬場さんは見るたびに印象が違うから、毎回どんな顔を見せてくれるのか楽しみで。
今回も、絶対このままじゃ終わらんぞと思って最後まで見てました。

安田さんの寡黙で怖い雰囲気は、ベテラン警察官そのものという感じ。
雨の中でタバコを吸いながら涙を流すシーンに圧倒されました。

内容はほぼ原作通りで、補足する箇所はあまりないのですが、少しだけ原作にも触れておきたいと思います。

川藤という男

馬場徹さん演じる川藤巡査は、警察学校を出たばかりの新人。
原作では、柳岡は川藤に会った瞬間に「なんとなく虫が好かなかった」と嫌悪感を露わにしています。

そしてすぐに、川藤が警察官には向かない男だということを見抜いてしまう。

柳岡には、過去に気の弱い新人刑事を厳しく指導し、自殺に追い込んだ過去がありました。

厳しい指導に耐えかねて辞めるなら、それはそれで警察のためになる……という考えでしたが、自殺という結果を招いた時、自分が殺したのだと自責の念にかられます。

そしてその責任を問われ、柳岡は刑事課から地域課に左遷されました。

もう二度と部下を殺したくない。
もうこれ以上飛ばされたくない。

その思いが、柳岡の川藤に対する指導を躊躇させたのです。

柳岡の退職

ドラマでは言及されませんでしたが、原作では、柳岡は真相にたどりつく前に退職を決意しています。

かつて新人刑事を自殺に追い込んだのは、自分の独善だった。
そして今度は、「飛ばされたくない」という保身が川藤への態度を曖昧にし、結果、死なせることになった。

自分もまた「警官には向かない男」だったのだと、思い知ったからです。
実際、柳岡は無謀な突入で部下を死なせたとして、退職を迫られていました。

川藤の隠蔽工作

小心者の川藤は、自分のミスを正直に報告することさえできません。
怒られるのが怖くて、なんとかしてミスを隠そうとします。

そしてミスを隠すためなら、どんなことでもしようとする。

田原夫妻の夫婦げんかも、川藤がそうなるように仕向けたものでした。
昼間、誤って撃ってしまった拳銃弾をごまかすために。

短刀を振りかざす田原に向かって発砲すれば、昼間の暴発をごまかすことができ、さらに正当防衛ということで責任を免れると考えました。

田原に銃弾を撃ち込む時の、川藤の顔に浮かび上がる狂気。

普段は人の顔色をうかがう気の弱い青年なのに、銃を手にしたとたん見せる取り憑かれたような表情に、ゾッとさせられました。

柳岡の評価は間違っていませんでした。
川藤は絶対に警察官にしておいてはいけない人物だった。

でも、それを川藤本人に気づかせることができなかった……。

柳岡の涙の意味

雨に濡れた交番と、柳岡の濡れた背中を映したラストシーン。
余韻を残す、素晴らしい終わり方でした。

柳岡が真相にたどりついた時に見せた涙には、どんな意味があったのか。

警察を去らねばならないこと。
自分が警官に向いていないことに、ずっと気づけなかったこと。
気づくまでに、2人の部下の死を要したこと。

もっと早く、自分が警察を辞めていれば。
せめて1人目の時に気づいていれば、川藤を殺さずにすんだかもしれない……。

わたしには、柳岡の後悔と懺悔の涙のように見えました。

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