NHKドラマ「満願」原作ネタバレ解説 感想 登場人物(キャスト)

NHKドラマ「満願」ネタバレ感想

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NHKミステリースペシャル〈満願〉の最終夜「満願」のあらすじと感想です。原作との比較も行っていきます。

雰囲気はよかったけど、最後は少しわかりにくかったですね。
殺人の動機や、ダルマの意味、タイトルの意味も。

原作は、昭和の書生さんとおかみさんでした。

第2夜はこちら

作品概要

  • 放送局:NHK総合
  • 放送時間:2018年8月16日(木)夜10時~
  • 原作:米澤穂信『満願』
  • 脚本:熊切和嘉
  • 演出:熊切和嘉
  • 音楽:ジム・オルーク

あらすじ

鵜川妙子が、殺人事件の裁判の控訴を取り下げる。弁護士の藤井は控訴を主張していたのに。妙子は、藤井が学生時代に世話になった下宿の女将であった。苦学生であった藤井が弁護士になれたのは、優しい妙子の支えがあったからである。しかし夫の借金のため家計は苦しく、ある日妙子は、返済を強要する金貸しを殺害した。いったい、なぜ?

NHK公式サイトより

原作について

このドラマの原作は、米澤穂信氏のミステリー短篇集『満願』(2014年刊行)です。

山本周五郎賞を受賞し、2014年の「このミステリーがすごい!」「週間文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」と3つのランキング(国内部門)で1位を独占。史上初の3冠に輝いた話題作です。

短編6作品を収録していますが、今回ドラマ化されるのは「万灯」「夜警」「満願」の3作品。

どの作品も人が隠し持つ心の奥深さ、不可解さを細やかに描き、巧妙な仕掛けによる最後のどんでん返しが見事です。

登場人物(キャスト)

藤井(高良健吾)
弁護士。学生時代に鵜川妙子の家に下宿をしていたことから、妙子の裁判を担当する。事件を調査するうちに、妙子が殺人を犯した動機に疑問を抱くようになる。

鵜川妙子(市川実日子)
学生時代、藤井が世話になっていた下宿のおかみ。法律家を目指す藤井を心身共に支えた。その後、夫・重治の借金返済を強要する矢場英司を殺害し、弁護士となった藤井と再会する。

鵜川重治(寺島進)
妙子の夫。酒好きで商売が下手な男。藤井のことをよく思っていない。派手な遊興を繰り返すようになり、矢場英司の会社である回田商事から多額の借金をすることに。妙子の裁判中は病気で寝たきりの状態だったが、判決が下った直後に病死する。

矢場英司(井上肇)
妙子が殺害した貸金業者・回田商事の社長。欲しいものを手に入れるために金を貸す卑劣な男。妙子の夫・重治に金を貸しており、連帯保証人である妙子に返済を迫っていた。

最終夜「満願」あらすじ(ネタバレ有)

弁護士の藤井(高良健吾)は、鵜川妙子(市川実日子)と初めて出会った大学生当時を思い出す。火事で焼け出された藤井は、先輩の紹介で鵜川畳店を営む鵜川重治(寺島進)宅に身を寄せることに。

重治には妙子という上品な妻がいた。重治は藤井を邪慳にし酒を飲んでばかりいたが、妙子はことさら親身になって藤井の面倒をみてくれた。「大いに勉強なさいね」が妙子の口癖だった。

ある夏の日、妙子は藤井にスイカを振る舞いながら、床の間に飾った古い掛軸について熱心に語る。掛軸は妙子の先祖が藩主から贈られたもので、代々受け継がれてきた家宝だと言う。先祖が私塾を開いて身分の低い武士を助けたことを、妙子は誇らしげに語る。

大学を卒業して弁護士となった藤井は、殺人事件の被告人となった妙子と再会する。妙子は夫・重治の借金返済を強要する矢場英司(井上肇)を殺害、遺棄した罪に問われていた。

藤井は、殺害は妙子が関係を迫る矢場から逃れるためだったと正当防衛を主張。客間に掛軸が飾られていたことから、突発的な出来事だったことを訴える。だが妙子に下った判決は、懲役10年だった。

重治が病死したことを知った妙子は、重治の保険金を借金返済にあててほしいと言う。妙子は「藤井さんが立派になられて本当に誇らしい気持ちでいるんですよ」と言い、控訴を取り下げる。

事件当日、客間には掛軸のほかにダルマが置かれていた。そのダルマは、かつて藤井が勉強に行き詰まっていた際、妙子に誘われて外出した先で一緒に購入したものだった。血痕はなぜかダルマの背面に付着していた。

妙子の家財は差し押さえられ、回田商事への借金返済にあてられた。だが、例の掛軸は証拠品として提出されたため差し押さえを免れていた。そのことに気づいた藤井は、妙子が矢場から守ろうとしたのは掛軸だったのではないかと気づく。

妙子は正当防衛ではなく、最初から矢場を殺すために客間を利用したのではないか。藤井がそのことに気づいた時、妙子から出所したという連絡が入る。

最終夜「満願」解説と感想

3夜連続で見てきたこのドラマも、今夜が最終日です。

市川実日子さん、おっとりした中にも気品漂う下宿のおかみ役がお似合いでした。高良健吾さんの若い苦学生役もよかったです。

雰囲気は原作に近いのですが、時代設定を現代に置き換えた分、少し違和感があったかも。原作よりも後味が軽いのは、時代設定によるところが大きいかもしれない。それも狙いかもしれないけど。

昭和世代のわたしとしては、おふたりに昭和の書生さんと下宿のおかみさんを演じてほしかったし、見てみたかったな、というのが正直な気持ち。原作を読んでない人は、どう感じたんだろう。

ともあれ、第1夜から第3夜まで、どの作品も楽しませていただきました。
見応えのあるストーリーや映像はもちろん、実力派の俳優さんたちの熱演をたっぷり堪能できたのも嬉しかったです。

昭和から平成へ

まず原作とドラマの時代設定を比較してみます。

原作
  • 昭和46年 藤井が鵜川家に下宿
  • 昭和52年 妙子が矢場を殺害
  • 昭和61年 妙子が出所
ドラマ
  • 平成15年 藤井が鵜川家に下宿
  • 平成20年 妙子が矢場を殺害
  • 平成29年(もしくは30年) 妙子が出所

原作の登場人物のセリフは、かなり昭和を意識した言葉遣いになっていました。ドラマでは、妙子のセリフはほとんどそのままでしたが、藤井のセリフは完全に現代っ子になってましたね。

原作だと、藤井は「いけませんな」とか「ははあ、綺麗なもんですな」といった言い回しで、もろ昭和の書生さん。夏目漱石の小説に出てきそうな感じで、昭和46年設定でも古臭いんじゃないかと思うほどでした。

でもね!
これがいいんだよね!!

このセリフから匂い立つ昭和臭さがたまらんのですよ。あ~高良さんの口から聞きたかったわ~。

殺人の動機

事件の鍵を握るのは、掛け軸でした。

妙子が「わが家の家宝です」と言っていた、達磨大師が描かれた禅画です。もちろん、鵜川家ではなく、妙子の実家の家宝です。原作によると、妙子の先祖が「島津の殿さま」からいただいたものだそうで。

物語の終盤、妙子が矢場を殺した本当の理由が明らかになります。矢場は骨董が趣味で、おそらくこの掛軸を狙っていたものと思われます。妙子は、この掛軸を守るために、計画的に矢場を殺害したのでした。

掛軸にわざと血を飛ばし、証拠品として検察が預かることになれば、差し押さえを免れる。そしてたとえ長い年月がかかったとしても、いずれは自分の手に戻ってくる。

そこまで計算したうえでの凶行でした。

ダルマの意味

殺害現場となった客間には、掛軸のほかにダルマも置かれていました。

これは、かつて藤井と外出した際に一緒に買ったダルマです。原作では、藤井が鵜川家にやってきて2度目の春(大学4年になる前)という設定です。

法律の勉強に行き詰まり、腐っていた藤井を、妙子は深大寺の大祭に連れ出します。

そこで達磨市に並ぶまだ目の入っていないダルマと、供養所に投げ込まれる両目の入った大量のダルマを見た藤井は、「これほど多くの願いが叶っているのだから、自分にも道はあるはずだ」と開き直ります。そして自分もダルマを買って、司法試験の合格を願掛けするのです。

この時、妙子もダルマを買っています。ただ、彼女が何を願掛けしたのかは、最後まで語られませんでした。

殺害現場に置かれていたダルマ。なぜか、血が付着していたのは背面でした。

つまり、事件当日、ダルマは後ろ向きに置かれていた、ということ。そして妙子は、以前にも、ダルマを後ろ向きにしたことがありました。後ろ暗いことをする時に。

控訴を取り下げた理由

ドラマでは触れていませんでしたが、妙子は当初、裁判を戦う意志を見せ、控訴にも前向きでした。

それなのに、夫が死んだと聞いたとたん豹変、控訴を取り下げると言い出します。裁判がどうでもよくなったのです。

妙子が戦う意志を見せていたのは、裁判を長引かせるため。掛軸を証拠品として保管させておくためでした。

でも、夫が死んで、保険金で借金を返すめどがついた。もう掛軸を奪われる心配はなくなり、裁判を長引かせる必要もなくなったのです。

タイトル「満願」の意味

「満願」という言葉には、2つの意味があります。

  • 願望が満たされること
  • 期限を定めた神仏への祈願の日数が満ちること


あの日、藤井と妙子はそれぞれダルマを買い、願掛けをしました。

藤井は司法試験の合格を願い、その願いは叶えられました。満願成就です。一方、妙子の願望とは、はたして何だったのか?

彼女は先祖を敬い、家宝の掛軸を誇りに思っていました。彼女が法律家をめざす藤井にことさら親切にしていたのは、自分もまた、先祖と同じように学問を目指す貧しい若者を助けたかったからです。

そしてそれだけが、ままならない人生の中で、自分を誇らしく思える唯一の救いだったのです。

殺人を犯してまでも、家宝の掛軸を手放すまいとした妙子。
数年間の服役を経て、今ようやく、その願いが叶えられようとしています。

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