NHKドラマ満願最終夜「満願」|結末に隠されたタイトルの意味

NHKドラマ「満願」ネタバレ感想

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どうも、夏蜜柑です。

NHKミステリースペシャル「満願」の最終夜「満願」。

雰囲気はよかったけど、最後は少しわかりにくかったですね。
殺人の動機や、ダルマの意味、タイトルの意味も。

原作は、昭和の書生さんとおかみさんでした。

最終夜「満願」あらすじ

  • 弁護士の藤井(高良健吾)は、鵜川妙子(市川実日子)と初めて出会った大学生当時を思い出す。火事で焼け出された藤井は、先輩の紹介で鵜川畳店を営む鵜川重治(寺島進)宅に身を寄せることに。
  • 重治には妙子という上品な妻がいた。重治は藤井を邪慳にし酒を飲んでばかりいたが、妙子はことさら親身になって藤井の面倒をみてくれた。「大いに勉強なさいね」が妙子の口癖だった。
  • ある夏の日、妙子は藤井にスイカを振る舞いながら、床の間に飾った古い掛軸について熱心に語る。掛軸は妙子の先祖が藩主から贈られたもので、代々受け継がれてきた家宝だと言う。先祖が私塾を開いて身分の低い武士を助けたことを、妙子は誇らしげに語る。
  • 大学を卒業して弁護士となった藤井は、殺人事件の被告人となった妙子と再会する。妙子は夫・重治の借金返済を強要する矢場英司(井上肇)を殺害、遺棄した罪に問われていた。
  • 藤井は、殺害は妙子が関係を迫る矢場から逃れるためだったと正当防衛を主張。客間に掛軸が飾られていたことから、突発的な出来事だったことを訴える。だが妙子に下った判決は、懲役10年だった。
  • 重治が病死したことを知った妙子は、重治の保険金を借金返済にあててほしいと言う。妙子は「藤井さんが立派になられて本当に誇らしい気持ちでいるんですよ」と言い、控訴を取り下げる。
  • 事件当日、客間には掛軸のほかにダルマが置かれていた。そのダルマは、かつて藤井が勉強に行き詰まっていた際、妙子に誘われて外出した先で一緒に購入したものだった。血痕はなぜかダルマの背面に付着していた。
  • 妙子の家財は差し押さえられ、回田商事への借金返済にあてられた。だが、例の掛軸は証拠品として提出されたため差し押さえを免れていた。そのことに気づいた藤井は、妙子が矢場から守ろうとしたのは掛軸だったのではないかと気づく。
  • 妙子は正当防衛ではなく、最初から矢場を殺すために客間を利用したのではないか。藤井がそのことに気づいた時、妙子から出所したという連絡が入る。

最終夜「満願」感想

3夜連続のこのドラマも今夜が最終日です。

市川実日子さん、おっとりした中にも気品漂う下宿のおかみ役がお似合いでした。
高良健吾さんの若い苦学生役もよかったですねぇ。

雰囲気は原作に近いのですが、時代設定を現代に置き換えた分、少し違和感があるかなぁ。

原作よりも後味が軽いのは、時代設定によるところが大きいかもしれない。それも狙いかもしれないけど。

昭和世代のわたしとしては、おふたりに昭和の書生さんと下宿のおかみさんを演じてほしかった、見てみたかった、というのが正直な気持ち。

原作を読んでない人は、どう感じたんだろう。

ともあれ、第1夜から第3夜まで、どの作品も楽しませていただきました。
見応えのあるストーリーや映像はもちろん、実力派の俳優さんたちの熱演をたっぷり堪能できたのも嬉しかった。

こういう名作をドラマ化する短編ドラマの枠が、レギュラー枠であってもいいのになぁ。

昭和から平成へ

今回の原作の時代設定は、以下のとおり。

藤井が鵜川家に下宿したのは昭和46年。
妙子が矢場を殺害したのは昭和52年。
妙子が出所したのは昭和61年。

ドラマでは、

藤井が鵜川家に下宿したのは平成15年。
妙子が矢場を殺害したのは平成20年。
妙子が出所したのは平成29年(もしくは30年)

原作の登場人物のセリフもかなり昭和を意識した言葉遣いになっています。
ドラマでは、妙子のセリフはほとんどそのままでしたが、藤井のセリフは完全に現代っ子になってましたね。

原作だと、藤井は「いけませんな」とか「ははあ、綺麗なもんですな」とか言いますから^^;
昭和46年設定でも古臭いんじゃなかろうかと思うほど(知らないけど)

でもね!
これがいいんだよね!!

このセリフから匂い立つ昭和臭さがたまらんのですよ。
あ~高良さんの口から聞きたかったわ~。それだけが残念。

殺人の動機

事件の鍵を握るのは、掛け軸でした。
妙子が「わが家の家宝です」と言っていた、達磨大師が描かれた禅画です。

もちろん、鵜川家ではなく、妙子の実家の家宝です。
原作によると、妙子の先祖が「島津の殿さま」からいただいたものだそうで。

物語の終盤、妙子が矢場を殺した本当の理由が明らかになります。
矢場は骨董が趣味で、おそらくこの掛軸を狙っていたものと思われます。

妙子は、この掛軸を守るために、計画的に矢場を殺害したのでした。

掛軸にわざと血を飛ばし、証拠品として検察が預かることになれば、差し押さえを免れる。そしてたとえ長い年月がかかったとしても、いずれは自分の手に戻ってくる。

そこまで計算したうえでの凶行でした。

ダルマの意味

殺害現場となった客間には、掛軸のほかにダルマも置かれていました。

これは、かつて藤井と外出した際に一緒に買ったダルマです。
原作では、藤井が鵜川家にやってきて2度目の春(大学四年になる前)という設定です。

法律の勉強に行き詰まり腐っていた藤井を、妙子は深大寺の大祭に連れ出します。

そこで達磨市に並ぶまだ目の入っていないダルマと、供養所に投げ込まれる両目の入った大量のダルマを見た藤井は、「これほど多くの願いが叶っているのだから、自分にも道はあるはずだ」と開き直ります。

そして自分もダルマを買って、司法試験の合格を願掛けするのです。

この時、妙子もダルマを買っています。
ただ、彼女が何を願掛けしたのかは、最後まで語られませんでした。

殺害現場に置かれていたダルマ。
なぜか、血が付着していたのは背面でした。

つまり、事件当日、ダルマは後ろ向きに置かれていた、ということ。
そして妙子は、以前にも、ダルマを後ろ向きにしたことがありました。

後ろ暗いことをする時に。

控訴を取り下げた理由

ドラマでは触れていませんでしたが、妙子は当初、裁判を戦う意志を見せ、控訴にも前向きでした。

それなのに、夫が死んだと聞いたとたん豹変、控訴を取り下げると言い出します。
裁判がどうでもよくなったのです。

妙子が戦う意志を見せていたのは、裁判を長引かせるため。
掛軸を証拠品として保管させておくためでした。

でも、夫が死んで、保険金で借金を返すめどがついた。
もう掛軸を奪われる心配はなくなり、裁判を長引かせる必要もなくなったのです。

タイトル「満願」の意味

「満願」という言葉には、2つの意味があります。

  1. 願望が満たされること。
  2. 期限を定めた神仏への祈願の日数が満ちること。

あの日、藤井と妙子はそれぞれダルマを買い、願掛けをしました。

藤井は司法試験の合格を願い、その願いは叶えられました。満願成就です。
一方、妙子の願望とは、はたして何だったのか?

彼女は先祖を敬い、家宝の掛軸を誇りに思っていました。

彼女が法律家をめざす藤井にことさら親切にしていたのは、自分もまた、先祖と同じように学問を目指す貧しい若者を助けたかったからです。

そしてそれだけが、ままならない人生の中で、自分を誇らしく思える唯一の救いだったのです。

殺人を犯してまでも、家宝の掛軸を手放すまいとした妙子。
数年間の服役を経て、今ようやく、その願いが叶えられようとしています。

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