NHKドラマ満願第1夜「万灯」|やり手商社マンの誤算

NHKドラマ「満願」ネタバレ感想

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どうも、夏蜜柑です。
NHKミステリースペシャル「満願」の第1夜「万灯」。

ほぼ原作どおりで素晴らしい出来。
ゾクゾクするほど面白かったです。

映像化すると恐怖感が凄いねぇ。

第1夜「万灯」あらすじ

  • ガス油田開発に携わる商社マン・伊丹(西島秀俊)は、開発室長として次の候補地へ向かう。伊丹は早速現地スタッフの高野(窪塚俊介)に調査に向かわせるが、高野が乗った車が崖から落ち、高野は片腕を失う重傷を負う。
  • 帰国した高野の代わりに、斎藤(駒木根隆介)がスタッフに加わる。伊丹は不測の事態に備えて集積拠点を作ることを考え、その候補地であるボンサット村に斎藤を向かわせる。
  • だが斎藤は地元住民との交渉に失敗。村の長老のひとりアラム・アベッドの反感を買い、現地住民から激しい暴行を受け、傷だらけになって戻ってくる。斎藤は「高野の二の舞はごめんです」と辞表を提出する。
  • 伊丹の元にボンサット村から手紙が届く。そこには、重要な協議を行うため指定された日に一人で来いとあった。村で待っていたのは、フランスのライバル会社「OGO」の日本人スタッフ森下(近藤公園)だった。森下もまた、手紙で呼び出され、一人でここへ来たと言う。
  • 長老のアラムは、伊丹と森下に「この国の資源はこの国のものだ」と主張し、交渉は決裂する。だが2人に手紙を送ったのは、アラムではなくアラムと対立する長老たちだった。
  • 長老たちは、伊丹と森下に「アラムを殺してくれれば土地を提供する」と持ちかける。伊丹は仕事を全うするためアラムを殺すことを承諾し、森下と共にジープに乗り、夜道でアラムを轢き殺す。
  • その後、森下が会社を退職したことが判明。不安に駆られた伊丹は、森下に会うため日本に帰国する。森下は罪の意識に苛まれ、ボンサット村で起こったことを世の中に公表すると言う。
  • 伊丹は森下を殺し、山中に死体を埋める。だが、ホテルに戻った伊丹は体調に異変を感じる。ニュースで森下がコレラに感染していたことを知った伊丹は、森下と接触した自分もコレラに感染しているのではと考える。
  • 自分が開発した天然ガスが日本に運ばれ、街の灯りとなる日を夢見ながら、伊丹は裁きを待つ。

第1夜「万灯」感想

とても濃い1時間でした。

映像になると断然リアルですね。
特にこの話は海外が舞台なので、現地の空気感を視覚で味わえるのがキモでした。

原作も、そのあたりは丁寧に描写されているので、想像できないことはないのですが。
緊迫した場面での「暑さ」や「湿度」の視覚効果は、抜群でした。

西島さん演じるドラマ版の伊丹は、割と「普通の人」という設定なのかなぁ。
原作の伊丹は、薄ら寒い狂気をそこはかとなく感じる人物だったので。

ちなみに原作の時代設定は、昭和56年(1981年)。
伊丹は、今から37年前に海外でバリバリ働いていた日本人、という設定です。

資源開発を天命の職ととらえ、人生の全てを捧げても悔いはない、と信じる男の物語です。
ドラマでは、伊丹の汚れた靴がそれを物語っていましたね。

舞台はベトナム、ロケ地はラオス

原作ではバングラデシュだったのですが、ドラマではベトナムでした。
NHK公式サイトによると、ロケはラオスで行われたみたいです。

まぁ、わたしこのへんの地理には弱いので、バングラデシュとベトナムとラオスの違いもようわからんのですが。

伊丹が長老に手紙で呼び出されて、ボンサット村へ向かう道中の映像が圧巻でしたねぇ。

泥まみれになって、沼地にはまった車を必死に脱出させようとするシーンもよかったです。
原作では案内人がいて、さほど苦労せず村に辿り着いているので、ここはドラマオリジナルのシーンでした。

訂正

舞台はラオスでは?というご指摘がありました。劇中でもベトナム語ではなく、ラオス語で会話されているようです。お詫びして訂正します。

高野と斎藤

現地の日本人スタッフ、高野と斎藤。
高野役は窪塚俊介さん、斎藤役は駒木根隆介さんでした。
おふたりともハマってました。

時間的に、高野のくだりは端折るか、斎藤と一緒くたにするか、どっちかだろうなぁと思っていたので、2人とも登場したのは嬉しかったです。

高野が事故で左腕を失うのも、斎藤が地元住民から暴行を受けて逃げ帰ってくるのも、原作どおりでした。

ただ、斎藤が辞めるのは、もっと後。
運悪く強盗に遭い、もうこれ以上酷い目に遭うのはゴメンだと辞表を出したのです。

アラムの言葉

ボンサット村には長老と呼ばれる人が何人もいて、アラムはそのうちのひとり、という立ち位置。

ドラマではだいぶ端折られていましたが、彼はカリスマ性を持った聡明な人物です。
伊丹はすぐにそのことに気づき、プロジェクトに立ちはだかる壁の高さに呆然としてしまいます。

本社は開発の続行を許さないだろう。

そこまで考えたとき、もしかしたら伊丹の心には、アラムを排除したいという気持ちが生まれていたのかもしれません。

アラムと対立する長老たちに「アラムを殺してほしい」と頼まれるよりも前に。

「茅の輪」の話

これからアラムを殺しに行く、という時、森下が妙な話を始めました。
出身地岡山に伝わるという「茅の輪」の話です。

これは「蘇民将来」といって、日本各地に伝わる説話です。
この説話をもとにした民間信仰も広く伝わっています。

茅の輪【ちのわ】
6月30日の六月祓(みなづきはらえ),夏越の祓(なごしのはらえ)に用いるチガヤの輪で,スゲで作ったものは〈すがぬき〉ともいう。チガヤを束ねて輪の形に作り,これを参詣人がくぐれば病災を免れるという。《備後国風土記》逸文に見える武塔神の説話に由来するとされている。(百科事典マイペディアより)

神社で見かけますよね、茅の輪。
わたしも一度だけ、くぐったことがあります。

結末とコレラ

原作を読んだとき、わたしは最後までこの結末を全く予想できなかったんですよね。

村の子どもが病気だとか、森下が茅の輪の話をいきなりしだすとか、伏線はあったんですけどね~。

ドラマでは、冒頭で感染病のニュースを流していましたよね。
これ、聡い人はすぐピンときたんじゃないかなぁ。どうなんだろう。

感染経路がわかりにくかったけど、原作では、村の子ども→森下→森下の彼女、という流れで感染したようです。

ニュースで取り上げられていた「感染源と思われる女性」というのは、森下が帰国してすぐに会った彼女(たぶん)のことですね。

ドラマにはありませんでしたが、伊丹は帰国した際、空港で呼び止められ、検疫を受けています。で、検疫の結果は問題なし。

つまり、伊丹がコレラに感染したとしたら、間違いなく森下から感染したのです。

伊丹の誤算

以下、原作から補足。

伊丹は、森下の死体はまず見つからないだろうと計算していました。

万が一見つかったとしても、森下と自分の関係を知る人間はいない。
警察が森下の周辺を探っても、絶対に自分には捜査の手が及ばないという自信がありました。

しかし、コレラに感染したとなれば話は別。
今や日本中が、感染源である「インドから帰国した男性(=森下)」を探しています。

もしも伊丹の病状が進み、病院へ担ぎ込まれることになれば、当然コレラを疑われ、感染源を調べられ、マスコミからも注目を浴びることになる……。

どこで間違えてしまったのか、と自問自答する伊丹。

村で出されたお茶を自分が飲まなければ、森下も飲まなかったかもしれない。
アラムを殺した後、森下も殺しておくべきだったかもしれない。

あるいは、アラムを殺したことが間違いだったのか。

裁きを待つ伊丹の目に、「万灯」はどんなふうに映っていたのかと、その後の展開も含めて想像をかきたてられる結末でした。

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