ネタバレ有*映画「三度目の殺人」考察・伏線&隠喩解説|器や十字架の意味は?

映画「三度目の殺人」ネタバレ解説・感想

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考察その3/作中に登場する4つの隠喩

この作品には、さまざまな隠喩と思われるものが登場します。

①十字架

劇中で重盛が言っていたように、「裁き」や「罪」を表していると思われます。
十字架を示すシーンは、以下のとおり。

  • 三隅が殺した山中光男の燃え跡
  • 三隅がアパートの窓の下に埋めたカナリアの墓
  • 重盛、三隅、咲江たちが雪遊びをするシーンで寝転がっている三隅と咲江の形
  • 咲江がピーナッツクリームを買おうとしたパン屋「丸十ベーカリー」
  • ラストシーンで重盛が立ち止まっていた十字路

ちなみに、雪遊びのシーンで寝転がっているのは3人ですが、十字の形をとっているのは三隅と咲江だけ。

よく見ると、雪の上に動物の足跡がついていて、その足跡が三隅と咲江だけを囲っている(重盛と間に境界線が引かれている)ようにも見えます。

これは、三隅と咲江が殺人という罪を犯した(裁かれるべき)人間であることを意味していると思われます。

②カナリア

三隅は、アパートで飼っていた5羽のカナリアを、「今さら外に放たれたってどうせ生きていけない」という理由で、事件の直前に殺しています。

そして窓の下に埋めて、十字の石を置いた墓を作っています。

しかし、後に1羽だけ、三隅があえて逃がしたことを告白してるんですね。
そしてその逃がしたカナリアのことを、三隅はとても気に掛けています。

この逃がしたカナリアは、咲江を意味していると思われます。

なぜなら三隅は、死刑判決を受けた後、退廷する時に咲江の前を通り、両掌を上に向けてカナリアを逃がすような仕草をしているからです。

カナリアは、澄んだ美しい声でさえずる小鳥です。
しかし、かつては炭鉱夫たちがガラスの容器に入れて坑道に持ち込み、毒ガス検知用に用いられていました。

そこから「坑道のカナリア」という言葉が生まれ、強者に虐げられる弱者の象徴のように使われています。

そして、もうひとつ。

この言葉には「一般の人々がまだ察知できない危険が迫っている時、それを敏感に感じ取って警鐘を鳴らすのは作家や芸術家」という意味もあるそうです。

③雪のケーキ

三隅は、河川敷で咲江の誕生日を祝った5日後に、重盛の父宛てに葉書を送っています。
それは、こんな内容でした。

重盛裁判長様。ご無沙汰しています。裁判でお世話になった三隅高司です。昨年、仮釈放され、今は川崎の食品加工工場で働いています。
先週、こちらでも大雪が降って、故郷の北海道を思い出しました。娘の誕生日に雪で大きなケーキをつくったんです。娘は手袋をしていなかったので、私のをひとつ渡しました。
娘は手を真っ赤にしながら、自分の背より大きなケーキをつくっていました。冷たくて……温かい思い出です。

ここで書かれている娘とは、もちろん咲江のことです。

雪は、三隅(と重盛)の故郷である北海道を象徴しています。
そして咲江もまた、北海道大学を受験しようとしています。

三隅と咲江は大きなケーキを作り、三隅は自分の手袋をひとつ娘に渡した。
これは、2人(正確には咲江の思いを取り込んだ三隅)がその後に行った凶行を暗示しているようにも思えます。

④ピーナッツクリーム

三隅のアパートに置いてあったピーナッツクリームも、意味深なアイテムでした。

重盛は三隅の好物だと思い込み、ピーナッツクリームを差し入れます。
受け取った三隅も「大好物です」と答えています。

でも、後に、咲江がパン屋でピーナッツクリームを買うシーンが出てきます。
ピーナッツクリームを好きなのは、三隅ではなく、咲江なのではないでしょうか。

そして三隅のアパートの部屋にあったのは、三隅が咲江のために買ったもの、あるいは咲江が買ってきたものなのではないでしょうか。

三隅がピーナッツクリームをパンにつけて、おいしそうに頬張るシーン。
これもまた、三隅が器として咲江を取り込んでいることを示しているように思います。

タイトルの意味

三隅の殺人は、30年前の借金取り殺しが一度目、今回の山中光男殺しが二度目です。

では、「三度目の殺人」とは?

これは、三隅が自らを死刑に導いたことだと思います。
おそらく三隅は最初から死ぬつもりだったのではないでしょうか。

「生まれてこないほうがよかった人間ってのが、世の中にはいるんです」

その言葉には、山中光男のことだけではなく、自分自身も含まれていたのかもしれません。
そしてそんな三隅の思いは、重盛にも間違いなく伝わっていたはずです。

心配なのは、もうひとりの自分を殺してしまった重盛です。
ラストシーンで彼は十字路に立ち止まったまま、動けずにいました。

これからどこへ向かうのか、彼自身にもわかっていないように見えました。

心の深いところにまで余韻を響かせる、秀逸なラストシーンでした。

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