ネタバレ有「薔薇の名前」全話あらすじ・感想・キャスト

海外ドラマ「薔薇の名前」ネタバレ感想

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

海外ドラマ「薔薇の名前」(全8話)についてまとめました。

今年3月にイタリアで初放送され、650万人の視聴者と27.5%のシェアを獲得。プライムタイム最高視聴率を記録し、各メディアからも高い評価を得ました。原作は、20世紀最大の問題作といわれるウンベルト・エーコの歴史推理小説『薔薇の名前』。

物語の舞台は14世紀の北イタリア。豊富な知識を持つ修道士ウィリアムと若き弟子アドソが、人里離れた修道院で起こる奇妙な連続怪死事件に挑みます。

主人公ウィリアムには「ナイト・オブ・キリング」のジョン・タートゥーロ、見習修道士のアドソにはドイツ出身の新人俳優ダミアン・ハードンが抜擢されています。

作品概要

  • 放送局:AXNミステリー
  • 放送時間:2019年10月12日 (土) 16:00から一挙放送
  • 製作国:イタリア/ドイツ(2019年)
  • 原題:Il Nome della Rosa
  • 原作:ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
  • 脚本:ジャコモ・バティアートほか
  • 監督:ジャコモ・バティアート

あらすじ

ホームズのような観察眼と洞察力、そして豊富な知識を持つフランチェスコ会修道士のウィリアムと、元戦士でありながら心優しく繊細な見習修道士のアドソが、北イタリアの人里離れた修道院で発生する奇妙な連続怪死事件に巻き込まれる。殺人事件の真相を解明する二人に待ち受ける結末とは…!?

AXNミステリー公式サイトより

原作について

このドラマの原作は、ウンベルト・エーコのベストセラー小説『薔薇の名前』(1980年発表)です。

14世紀の北イタリア、ベネディクト会修道院を舞台にした歴史推理小説。
著者ウンベルト・エーコ(1932~2016)が48歳のときに発表した最初の小説です。

全世界で5500万部を超える世界的なベストセラーで、1986年には映画化もされて話題になりました。

小説は未読ですが、映画は公開された時に観ました。ただ、当時10代だったわたしには難解で、実はあまりよくわかりませんでした。

ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターという当時大人気だった俳優が共演していた、ということくらいしか記憶に残ってないです。

著者は世界的な“記号学者”でもあり、全編にわたって手の込んだ仕掛けを施しています。複雑な語りの構造によって時間軸が錯綜するように仕組まれていたり、教会の祈りの時間を定める「時課」にそって章が構成されていたり。

さまざまな作品へのオマージュも散りばめられていて、修道士ウィリアムと見習いのアドソの関係は、シャーロック・ホームズと助手のワトソンを思わせます(ウィリアムの出身地“バスカヴィル”は『バスカヴィル家の犬』を、アドソの名前は“ワトソン”を想像させる)。

もうちょっと知識があれば小説を読んでみたいと思うのですが、たぶん今読んでもわからないことだらけのような気がするので、先にドラマを楽しむつもりです。

登場人物(キャスト)

※第7話までのネタバレを含みます

主要人物

バスカヴィルのウィリアム(ジョン・タトゥーロ)
フランチェスコ会修道士で、元異端審問官。イングランド人。神聖ローマ皇帝の命を受け、教皇派使節団との会談の場であるベネディクト会修道院へ赴く。修道院でアデルモの死因を調査するうちに、文書館に隠された秘密を知ることとなる。

メルクのアドソ(ダミアン・ハルドン)
ウィリアムの弟子。ドイツ人。皇帝軍の将軍の息子。戦いの日々に疑問を抱き、助手としてウィリアムの旅に同行する。ウィリアムと共に連続怪死事件の真相を追いながら、森で出会ったオクシタンの娘にも惹かれていく。

ベルナール・ギー(ルパート・エヴェレット)
ドミニコ会修道士。フランス人。異端審問官。教皇から使節団長に任命され、護衛兵と共に会談の場であるベネディクト会修道院へと向かう。これまでに数多くの異端者を処刑しており、ドルチーノ派教祖の娘アナにも命を狙われている。

ベネディクト会修道院

アッボーネ(マイケル・エマーソン)
ベネディクト会修道院の修道院長。アデルモの死を他殺ととらえ、事件の真相解明をウィリアムに依頼する。殺人と文書館とは無関係だと主張し、ウィリアムが文書館に立ち入ることを禁じる。

アデルモ(レオナルド・パッツァーリ)
修道士。細密画家。聖書の挿絵に奇怪な絵を描き、ホルヘの怒りを買っていた。ウィリアムたちが到着する前の晩、東塔の下で変死体となって発見される(1人目の被害者)。

ヴェナンツィオ(グリエルモ・ファヴィラ)
修道士。ギリシャ文学が専門。アデルモの絵についてホルヘと議論を交わした2日後、豚小屋で遺体となって発見される(2人目の被害者)。“アフリカの果て”へと導く暗号を残す。

ベレンガーリオ(マウリツィオ・ロンバルディ)
修道士。文書館長補佐。アデルモの亡霊を見たと告白する。アデルモと取引をして男色関係を結んでいた。沐浴所で遺体となって発見される(3人目の被害者)。

セヴェリーノ(ピョートル・アダムチク)
修道士。薬草係。世界中の薬草を集めた薬倉庫を管理している。ウィリアムと共にヴェナンツィオの遺体を解剖し、毒殺を疑う。ベレンガーリオが隠した本を見つけた直後、遺体で発見される(4人目の被害者)。

マラキーア(リチャード・サンメル)
修道士。文書館長。“アフリカの果て”と表示された書物の貸し出しを禁じている。伝書バトを使ってアドソの素性を調べ、密かにベルナールに情報を伝える。レミージョから預かった手紙を“アフリカの果て”に保管した。ベンチョを新しい文書館補佐に任命した直後、礼拝の途中に亡くなる(5人目の被害者)。

レミージョ(ファブリツィオ・ベンティヴォーリオ)
修道士。厨房係。かつて異端派の教祖ドルチーノに命を救われ、行動を共にしていた。そのとき、ドルチーノの恋人マルゲリータから「何かあったら娘を頼む」と言われ、アナを守ると約束している。現在は生きるためにドルチーノ派であることを隠しているが、酒と姦淫におぼれている。

サルヴァトーレ(ステファノ・フレシ)
助修士。森の中の製紙場で紙を作っている。かつて貴族に虐げられていたところをドルチーノとレミージョに救われた。以来レミージョを師と仰ぎ、行動を共にしている。

ベンチョ(ベンジャミン・スタンダー)
修道士。修辞学と飾り文字の研究家。同じ学僧のヴェナンツィオがホルヘと議論を交わしていたことや、アデルモがベレンガーリオと取引をして男色関係を結んでいたことを証言する。

ホルヘ(ジェームズ・コスモ)
盲目の老僧。アデルモの描いた奇怪な挿絵を見て激怒する。“笑い”を醜いものと考え、喜劇を論じたアリストテレスの『詩学』第2部を否定する。

アリナルド(ロベルト・ヘルリッカ)
最長老の修道士。一連の出来事はヨハネの黙示録に沿ったものだと主張する。

そのほか

オクシタンの娘(アントニア・フォタラス)
アドソが修道院へ向かう旅の途中で出会ったオクシタン地方の娘。戦争で家と家族を失い、森の中で暮らしている。アドソとは言葉が通じないながらも心を寄せ合うようになる。

ドルチーノ(アレッシオ・ボニ)
キリスト教異端派“ドルチーノ派”の教祖。教皇軍に襲われていたレミージョと逃亡民を助けた。1305年に教皇軍と衝突し敗北。恋人マルゲリータと共に捕らえられ、市中引き回しののち火刑にされた。婚姻を認めず、愛の前には誰もが平等だと説いた。

マルゲリータ(グレタ・スカラノ)
貴族の娘。ドルチーノの恋人で、アナの母。審問官ベルナールに改宗を迫られるが拒み、ドルチーノと共に処刑された。レミージョに「娘のアナを守ってほしい」と言い残す。

アナ(グレタ・スカラノ)
ドルチーノとマルゲリータの娘。ピエトラネーラで平和に暮らしていたが、修道院へ向かう異端審問官ベルナール・ギーに夫と子どもを殺される。復讐のためベルナールを襲撃するが失敗、護衛兵との戦いで負傷する。森で倒れているところをオクシタンの娘に助けられる。

ミケーレ(コッラード・インヴェルニッツィ)
フランチェスコ会総長。皇帝側使節団の団長として会談に臨み、“清貧論争”を繰り広げる。一切の物質的所有を放棄すべきと主張し、ベルナール率いる教皇使節団と対立する。

教皇ヨハネ22世(チェッキー・カリョ)
フランス人教皇。神聖ローマ皇帝と対立している。皇帝派のフランシスコ会を潰すため、会談の場に審問官ベルナールを派遣する。

各話のあらすじ(ネタバレ有)

14世紀のヨーロッパ。教皇ヨハネス22世と後の神聖ローマ皇帝が権力争いを繰り広げる中、皇帝軍の将軍を父に持つ17歳の青年アドソは、戦士としての生き方に疑問を抱いていた。ある日、アドソはフランチェスコ会のウィリアム修道士と出会い、弟子として彼の旅に同行することを決める。ウィリアムは皇帝の指名を受け、教皇使節団との会談で「神学論争」に決着をつけるべく、会談の場となるベネディクト会修道院を訪れる。
修道院長のアッボーネはウィリアムとアドソを歓迎する一方で、昨夜発見された修道士アデルモの変死体に頭を悩ませており、使節団が到着するまでに真相を突き止めてほしいと頼む。アデルモは東塔から転落したと思われたが、窓が閉まっていたことから他殺が疑われていた。
ウィリアムは修道院内にある写字室を訪れ、文書館長のマラキーアや館長補佐のベレンガーリオ、ギリシャ文学の専門家ヴェナンツィオ、修辞学の専門家ベンチョ、盲目の老僧ホルヘらと対面する。
ベンチョはホルヘとヴェナンツィオがアデルモの絵について議論を交わしていたと証言し、その中で“アフリカ”という言葉を聞いたと話す。それは文書館長だけが知る秘密の項目だった。翌日、豚小屋の樽の中からヴェナンツィオの遺体が発見される。

ウィリアムは薬学僧のセヴェリーノとヴェナンツィオの遺体を検分し、毒殺を疑う。ウィリアムが薬草庫を調べると、ヒ素の鉱石鉱物「雄黄」がなくなっていた。
厨房係のレミージョは、かつて異端のドルチーノ派の教祖ドルチーノに助けられ、行動を共にしていたことを思い出す。ドルチーノの恋人マルゲリータは、「私たちに何かあったら娘のアナを頼む」と言い、レミージョは「必ずアナを守る」と約束していた。成長したアナはピエトラネーラで暮らしていたが、夫と子どもを異端審問官のベルナール・ギーに殺され、復讐を誓う。
文書館長補佐のベレンガーリオはアデルモの亡霊を見たと告白、修辞学の専門家ベンチョはベレンガーリオとアデルモが男色関係にあったことをウィリアムに告げる。ベレンガーリオはアデルモに何かを渡し、それと引き換えに関係を迫ったのだった。
最長老のアリナルドは、一連の出来事はヨハネの黙示録に沿ったものだと主張する。アリナルドから文書館に入る方法を聞き出したウィリアムとアドソは、その夜ついに禁断の文書館へ足を踏み入れる。2人はヴェナンツィオが残した秘密の暗号を見つけるが、文書館に侵入した何者かに奪われてしまう。アドソはウィリアムとはぐれ、ある部屋で煙を吸って幻覚に襲われる。

ウィリアムは、厨房係のレミージョとサルヴァトーレがドルチーノ派に属していたのではないかと疑う。異端者に興味を持ったアドソは文書館で歴史書を読み、ドルチーノが愛欲を認めていたことを知る。
その頃、教皇からの命を受けて修道院に向かっていたベルナールと護衛兵は、アナの襲撃を受けるが辛くも難を逃れる。アナは護衛兵との戦いで負傷してしまう。
アドソは旅の途中で出会ったオクシタン地方の娘とひそかに森で会うようになり、彼女への愛に罪悪感を覚える。ウィリアムは「女性を愛することは異常ではない」と諭す。
レミージョは酒と姦淫におぼれていることをウィリアムに告白し、その事実を隠すために、夜中に厨房でヴェナンツィオの遺体を見つけたことを黙っていたと話す。そんな中、文書館長補佐のベレンガーリオまでもが姿を消し、沐浴所で溺死体となって発見される。

ウィリアムと薬学僧のセヴェリーノは、ベレンガーリオの遺体を検分する。遺体はヴェナンツィオと同様に指先と舌が黒く変色しており、服の中からはウィリアムが紛失した眼鏡が見つかる。
ヴェナンツィオが残した暗号を解読したウィリアムは、アドソと共に再び夜の文書館へ侵入する。2人は各部屋に記された文言の頭文字を組み合わせ、“アフリカの果て”があると思われる場所までたどり着くが、礼拝の時間となったためやむなく引き返す。
教皇使節団が修道院に到着するが、ベルナールと護衛兵が到着するまで会談は開催できないと言う。ウィリアムはベルナールが会談に立ち会うことを知って不安を抱く。修道院長のアッボーネは事件が解決しないことに焦りを感じ、ウィリアムに訴える。
アドソは森でサルヴァトーレが仕掛けた罠に掛かったオクシタンの娘を助ける。アドソは彼女への愛を認め、キスをする。やがてフランチェスコ会士からなる皇帝側使節団と、護衛兵を率いるベルナールが到着する。

使節団を歓迎する食事の席で、ベルナールは見覚えあるレミージョの姿に目を留める。その晩、ウィリアムに秘密を打ち明けるよう促されたレミージョは、過去にドルチーノ派に属していたことを告白する。ベルナールからレミージョについて尋ねられたマラキーアは、彼から託された封筒を“アフリカの果て”に保管したことを話す。
翌日、森にいるオクシタンの娘に食べ物を届けたアドソは、ごく自然に彼女と結ばれる。その後、森で彼女が傷の手当をしたアナとも出会う。
ポッジェット枢機卿が到着し、両使節団による会談が開催される。論争の焦点は“清貧”だった。一切の物質的所有を放棄すべきとするフランチェスコ会に対し、教皇側は聖書の記述と矛盾すると反論。両者の意見は激しく対立し、会談は中断される。
アドソはウィリアムに娘と肉欲の交わりを持ったことを告白し、赦される。娘はサルヴァトーレの罠にかかり、森の中の製紙場に監禁される。

討論が再開される直前、アナが密かにレミージョを訪ねてくる。セヴェリーノは施療院の書物の中にギリシャ語で書かれた奇妙な本を見つけ、ウィリアムに報告する。ウィリアムは後で行くと言って討論に参加するが、その最中にセヴェリーノは施療院で殺されてしまう。現場で逮捕されたのは、室内を荒らして何かを探していたレミージョだった。
ウィリアムとアドソ、ベンチョは本を探すが見つけられない。アドソは密かにアナを逃がし、姿を消したオクシタンの娘を探す。アドソはサルヴァトーレの製紙場に監禁されていた彼女を見つけるが、サルヴァトーレとの格闘で川に流されてしまう。娘とサルヴァトーレは護衛兵に捕らわれ、アナは娘を救うため護衛兵に弓を向ける。
ベルナールは殺人と異端の疑いでレミージョの審問会を開く。

護衛兵に捕まったサルヴァトーレと娘は、修道院の地下牢に収容される。サルヴァトーレは拷問の末にベルナールに懐柔され、レミージョがドルチーノの手紙を持っていることを審理の場で証言してしまう。
追い詰められたレミージョは拷問を恐れ、ドルチーノに傾倒していたことを告白。さらに修道院で起きた連続殺人の犯人であることも明かし、院長のアッボーネが貧しい民を虐げて私服を肥やしていることを暴露する。ウィリアムは暴力で改宗を強要するベルナールのやり方を激しく非難する。
ドルチーノの娘アナは修道院に潜入してレミージョを助けようとするが、レミージョは助けを拒み、ドルチーノを売ったのは自分だと告白する。
ウィリアムとアドソは、セヴェリーノの殺害現場から本を持ち出したベンチョを問い詰める。だがベンチョは文書館補佐に任命され、本はマラキーアの手に渡っていた。マラキーアは礼拝の途中で突然苦しみ始め、命を落とす。

教皇派使節団と皇帝派使節団の会談は不調に終わり、フランチェスコ会総長のミケーレは教皇と直接会って話し合うためアビニョンへ向かう。ウィリアムは修道院に残って事件の捜査を続けるが、文書館の秘密を隠し通そうとする院長はウィリアムに退去を命じる。
アドソの言葉から“アフリカの果て”へ入る方法を見つけたウィリアムは、ようやく秘密の書庫へ踏み込む。そこで待っていたのはホルヘだった。視力を失ったホルヘはアッボーネを院長に擁立し、自分の指示通りに動くマラキーアを文書館長にして陰の支配者として君臨してきたのだった。アッボーネはホルヘによって文書館の通路に閉じ込められ、殺されてしまう。
ホルヘは幻の書と言われる、“笑い”について書かれたアリストテレスの『詩学』第2部をウィリアムの前に差し出す。本のページの角にはホルヘが薬草庫から持ち出した毒が塗られ、ページをめくる指をなめた者は次々と死んでいったのだ。
ホルヘはアリストテレスの本を破って食べ、ウィリアムと揉み合ううちに火が書庫に移り燃え広がってしまう。ホルヘは本と共に炎に焼かれ、アドソとウィリアムは火を消そうとするが間に合わず、文書館から脱出する。
ベルナールは娘に魔女の疑いをかけ、火あぶりにすることを命じる。アナはベルナールを襲って娘を逃がすが、護衛兵に殺されてしまう。ベルナールは「聖書さえあればほかの書物は燃えてもかまわない」と言い残し、修道院から立ち去る。レミージョは文書館の火を消そうとして炎の中に飛び込み、死んでいく。
修道院は三日三晩燃え続け、すべての修道士が修道院から去った。アドソは森を訪れるが、娘の姿は消えていた。アドソはウィリアムを追いかけ、メルクに戻って誓願を立てることを伝える。

感想(ネタバレ有)

圧倒的なビジュアルと壮大なストーリー

難しかったけど、面白かったです。終始ビジュアルに圧倒され、1話見終わるたびに溜息が漏れました。

正直わたしには馴染みの薄い世界で、最初はかなり混乱しました。1話ごとにわからない部分(歴史背景など)をネットで調べ、理解したうえで次の話に進む…という方法で視聴したので、全8話見終わるのにいつもより時間がかかってしまいました。

登場人物が多いうえに、みなさん似たような格好をされているので、見分けがつきにくいんですよね。最初はアナとマルゲリータを同じ女優さんが演じ分けていることに気づかなくて、1人だと思い込んで過去と現在がごっちゃになってしまったり。

「薔薇の名前」については、以前NHKの「100分de名著」で取り上げられたときに見たので、おおまかなあらすじと登場人物は頭に入っているつもりだったのですが。やはり100分では語り尽くせない壮大なストーリーでした。

犯人の正体と殺人の目的

連続殺人事件の犯人は、盲目の老僧ホルヘでした。本当の文書館の主は彼だったんですね。

ホルヘが守ろうとしたのは「文書館」であり、アリストテレスの『詩学』第2部です。

日本では『詩学』というタイトルで浸透していますが、原題は「創作(詩作)について」という意味で、内容は悲劇論(主にソポクレスの『オイディプス王』論)です。

アリストテレスは悲劇(演劇)を文学の最高形式と考えていたので、創作論=演劇論になったんですね。

この本には「第2部」が存在したと考えられていて、そこで「喜劇論」が展開されていることは確実と言われています。

ホルヘが隠していたのは、その幻の『詩学』第2部。ホルヘは“笑い”を否定する人だったので、この本の存在を知られたくなかった。僧たちに読ませたくなかったのです。“笑い”が権威を失墜させる効果があることに、気づいていたのでしょう。

しかし、アリストテレスの幻の書がここにある!と知った修道士たちは、読みたいという誘惑に勝てません。そうして幻の書をめぐって、事件が起こったというわけです。

禁断の書を読むと死ぬ

幻の書であり禁断の書でもある『詩学』第2部を手に入れた者たちは、次々と命を落としていきます。

なぜ、本を読むと死んでしまうのか?

本は羊皮紙ではなく亜麻紙でできており、ページはめくりにくくなっていました。昔の人はページをめくるときに指を舐めるのが普通だったので、ページの端に毒がついているとも知らず指を舐め、結果的に服毒死することになってしまったのでした。

連続殺人事件の真相

アデルモの死

最初に死んだアデルモは、文書館補佐のベレンガーリオに体を差し出す代わりに『詩学』第2部を手に入れましたが、罪悪感から本を読まずに自殺しました。

ヴェナンツィオの死

2番目に死んだヴェナンツィオは、『詩学』第2部を読んでいて気分が悪くなり、厨房で死亡。ベレンガーリオが遺体を発見するも、調べを受けることを恐れて豚小屋に運びました。

ベレンガーリオの死

3番目に死んだベレンガーリオも好奇心に駆られて『詩学』第2部を読み、沐浴所で死亡。

セヴェリーノの死

4番目に死んだセヴェリーノは、マラキーアに殺されました。マラキーアはベレンガーリオと男色関係にありましたが、ベレンガーリオがアデルモと関係を持っていたことに嫉妬していました。

ホルヘはその嫉妬心を利用し、ベレンガーリオがセヴェリーノとも関係を持っていたと偽の情報を吹き込んだのです。

マラキーアの死

5番目に死んだマラキーアは、施療院でセヴェリーノを殺した後、『詩学』第2部を持ち去ったベンチョを文書館補佐に任命して本を受け取りました。

ホルヘからは「開かずに元に戻せ」と言われていましたが、やはり誘惑に勝てず密かに本を読んでしまい、服毒死しました。

「薔薇の名前」というタイトルの意味

1987年に公開された映画を見たとき、なぜタイトルが「薔薇の名前」なのかさっぱりわかりませんでした。今回もやはりわかったようでわからなかったです。

以下、最後にウィリアムがアドソに語ったセリフです。

「薔薇の美しさや色、香りがあせたとき、言葉だけが残る。薔薇の名前が」

最初はアドソが恋に落ちた名前のない娘のことを指しているのかとも思ったのですが…。

アドソは最後まで彼女の名前を知ることはなかったけれど、生涯ただひとりの恋人として記憶に残り続けたわけで、「名前だけが残る」という上記のセリフとは一致しません。

原題はイタリア語で「Il Nome della Rosa」、英語に訳すと「The Name of the Rose」。日本語にすると「その薔薇のその名前」になるそうです(薔薇にも名前にも定冠詞が付いている)。

わたしは記号学や構造主義といったものをよくわかっていないので、このへんはとても難しく感じました。

人は言葉(記号)でしか真理を語れません。けれど言葉によって積み上げられているこの世界では、それが真理とも言えます。

「その薔薇」が何を表しているのか、「その名前」が何を意味しているのか、じっくり考えてみると面白いかもしれない(これが理解できていればもっとこの作品を楽しめたし、原作の小説も面白く読めるんだろうなぁ~と思うと、悔しい)。