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各話のあらすじ(ネタバレ有)
ファビアンは拉致された王太子を見つけ出し、ローハンを逮捕する。ローハンの正体はオランダのスパイだった。有能な内通者を失ったオラニエ公は、新たなスパイを手配する。
ヴェルサイユ宮殿の建設は順調に進み、外装はほぼ完成。居住する貴族も増えていた。そんな中、大法官のレイノー卿が毒を盛られて死亡する事件が発生。ファビアンは捜査を開始するが、証拠は見つからない。
ルイは劇作家トマ・ボーモントを宮廷史官に任命し、宮殿に迎えて歴史書を書かせることに。一方で、弟フィリップの新たな結婚相手を王妃マリー・テレーズと愛妾モンテスパン夫人に選ばせる。
モンテスパン夫人は友人である占い師アガット夫人を宮廷に呼び、ルイを占わせる。不吉な結果は口にしない約束だったが、アガット夫人は「地獄が現れて陛下の楽園を破壊する」と告げてルイを怒らせる。
レイノー夫人の部屋から薬の入った容器が見つかる。ファビアンが問い詰めると、性生活のために夫に飲ませていた薬だという。だが薬を含んだネズミは中毒死し、ファビアンは夫人を逮捕する。
ルイはオランダ侵攻を早めると宣言。戦争に反対する者は反逆者と見なして大法官に委ねると告げ、新たな大法官にカッセル公爵を任命する。
ファビアンは鏡で太陽光を集めてローハンの両目を焼き、日食とともに処刑する。
宮殿のシャンデリアが落下し、ルイは暗殺者の仕業だと疑う。ボシュエ司教は神の警告だと主張し、ルイに不倫をやめるよう忠告する。
宮廷内では性行為の能力を高める白い粉が流行していた。レイノー卿の薬が何者かによってすり替えられた可能性があると考えたファビアンは、粉が持ち込まれた経緯を捜査する。
大法官の有力候補だったガストン・ド・フォアは、カッセル公爵にその座を奪われ失意を味わう。彼の母親に頼まれてガストンを推薦したモンテスパン夫人は、自分の意見が通らず不機嫌になる。
ルイの寵愛を得られないマリー・テレーズ王妃はパリからパスカル神父を呼び、ボシュエ司教の代わりに説教させる。パスカル神父を気に入らないルイは、「今すぐ追い返せ」と王妃に命じる。
宮殿を離れていた王弟フィリップのもとに、追放処分を解かれたシュバリエが戻ってくる。フィリップは兄ルイの命令に従い、プファルツの侯女リーゼロッテと結婚してヴェルサイユに戻ることを決める。
オランダ総攻撃を前にして、国内の修道院が軍の駐屯を拒否しているという報告が届く。激怒したルイはボシュエ司教を問い詰めるが、司教は「私ではなくローマの決定です」という。
ファビアンはレイノー夫人から白い粉の入手経路を聞き出そうとするが、彼女もまた毒殺される。庭師のジャックは夜の庭でトマ・ボーモントの怪しい行動を目撃し、彼に殺されてしまう。
モンテスパン夫人は女の子を出産するが、彼女の心を占めるのはルイの寵愛を失う不安だけだった。彼女を疎ましく思う王妃は、パスカル神父に彼女を孤立させるよう頼む。
ファビアンの手下となっていたソフィーは、ルイにカッセル公爵との結婚を命じられ、彼の怪しい行動を報告するよう頼まれる。
ファビアンはレイノー夫人に食事を運んだ小間使いのオディルを取り調べ、恋人のガストンが毒を盛ったという証言を得る。だが逮捕されたガストンは無実を主張する。
フィリップとリーゼロッテの結婚を祝う祝賀会が催され、フィリップは女装して出席。床入りの儀では新妻に触れようとせず、背を向けて寝てしまう。
クロディーヌは白い粉の成分を調べ、あらゆる麻薬や媚薬を集めたものだと報告する。ファビアンは「女は子供を産み、痛みにも耐えられる」というクロディーヌの言葉を聞いてあることに気づき、ガストンの母ド・フォワ夫人の部屋を物色。背後から彼女に襲われ、胸を刺される。
ド・フォア夫人に刺されたファビアンは、またもやクロディーヌに救われる。逮捕されたド・フォア夫人は「すべて私がやった」と毒殺を認め、息子のガストンが無関係であることを訴える。ガストンは釈放されるが、宮殿から追放される。
モンテスパン夫人が産んだ赤ん坊が天然痘にかかり、危篤状態に。モンテスパン夫人は別の医師をパリから呼び寄せると言うが、ルイはクロディーヌに治療を任せる。赤ん坊は亡くなり、責任を問われたクロディーヌは侍医を罷免される。
ソフィーは心ならずもカッセル公爵との結婚を受け入れ、初夜で無理やり体を奪われる。ソフィーに惹かれる宮廷史官のトマは、カッセルを脅迫してオランダ侵攻の軍事戦略を聞き出そうとする。
シュバリエは嫉妬するあまり、フィリップの財産の半分にあたる40万フランを賭け事につぎ込み、フィリップを激怒させる。つかみ合いの喧嘩をする2人を止めたのは新妻リーゼロッテだった。
拘束中のド・フォア夫人は息子のガストンと面会し、ある人物に会うよう告げて服毒自殺を図る。ガストンは占い師のアガット夫人を訪ね、ルイへの復讐を焚きつけられる。
ルイは毒殺の主犯を見つけ出せないことに苛立ち、ファビアンを解任する。クロディーヌは「独自に捜査を続ければいい」と助言し、自身も毒の研究を続けていた。
追放されたガストンは再びルイに仕える許しを乞い、モンテスパン夫人の口添えで宮廷入りを認められる。ボンタンは王が愛人の言葉にしか耳を貸さないことに苦悩し、王弟のフィリップに相談。2人はルイに意見するが、聞き入れられない。
ルイはフィリップに軍の指揮を任せるつもりでいたが、臣下たちの「王は身近なところで対決するのを好まれる」という陰口を耳にし、自ら戦場へ赴き軍を率いることを決意する。
ガストンはモンテスパン夫人と協力関係を結び、王妃の友人であるパスカル神父を自殺に見せかけて毒殺。悲嘆に暮れる王妃だったが、ルイから留守中の摂政を頼まれ、役目を果たすことを約束する。王妃と敵対するモンテスパン夫人は報復を恐れる。
カッセル公爵との結婚生活に苦しむソフィーは、ガストンからアガット夫人を紹介される。夫人は時間をかけて夫を苦しませる薬をソフィーに渡す。
礼拝堂でのミサの最中、年老いた貴族が悶え死ぬ。またしても毒殺だった。ファビアンの捜査復帰を望むボンタンだったが、彼はクロディーヌとの新しい生活を望んでいた。
王妃は貴族たちの私生活を規制するため宮殿での飲酒を禁止し、サロンを閉鎖する。活動の場を失ったガストンは、貴族たちの秘密をネタに脅迫文を送って金を強請り始める。
フィリップは王妃と大臣たちに頼まれ、ルイのふりをしてインド王との通商交渉に臨み、大きな成果を得る。フィリップとシュバリエは王妃の目を盗んで祝宴を開き、乱痴気騒ぎをする。
コルベールの姪イザベルに嫉妬したモンテスパン夫人は、彼女の酒に毒を盛るが、直前で思い直す。代わりに媚薬を与えて宴会を楽しむよう助言するが、翌朝イザベルは水死体で発見される。
クロディーヌはついに毒の原料を突き止めるが、何者かに殺されてしまう。怒りに駆られたファビアンは独自に犯人探しを始める。
ルイが率いるフランス軍は各地で勝利を収め、アムステルダムへ侵攻。だがオラニエ公の策の前に後退を余儀なくされる。ルイが逃げ込んだ修道院には、オラニエ公が待ち受けていた。
修道院でルイを待ち伏せていたオラニエ公は、同盟を提案する。フランスにとっては無益だと渋るルイに対し、オラニエ公はスパイによって知り得た情報を武器に、ルイを精神的に揺さぶる。
修道院にはかつてルイの子供を流産し、捨てられたロングレ公爵夫人がいた。ルイに復讐しようとする彼女だったが、不安により眠れない夜を過ごす王の姿を見て考えを改め、彼のために祈りを捧げると誓う。悪夢から目覚めたルイは同盟を断り、軍を部下に託してヴェルサイユに戻る決意をする。
ヴェルサイユでは、パスカル神父の自殺に疑念を抱いた王妃がファビアンを呼び戻し、捜査を命じていた。モンテスパン夫人は王妃と近しい関係になった友人スカロン夫人の裏切りを疑う。
フィリップの妻リーゼロッテは、子を産む務めを果たすためフィリップを説得し、なんとか夫婦生活を続ける。さらに夫の愛人シュバリエに相互理解を求め、彼らの関係を認める代わりに夫が共寝することを許してほしい、と頼む。
戦地から戻ったルイは、本来の目的を見失わせたモンテスパン夫人との決別を決意する。ルイは不倫をやめる見返りに、オランダ侵攻を支援してほしいとボシュエ司教に頼む。
リーゼロッテは体調を崩し、医師から「毒を盛られた」と診断を受ける。動揺したフィリップはシュバリエを疑うが、懐妊していることが判明。夫婦は喜びを分かち合う。
カッセル公爵はソフィーに毒を盛られ、日に日に衰弱していく。職務が果たせなくなり辞職を決意したカッセルは、ルイに陰謀への加担を告白し、トマがスパイであることを明かす。
ガストンに脅迫されたマテ夫妻が毒を飲んで自殺する。ルイはファビアンに謝罪し、捜査の続行を依頼する。
マリー・テレーズ王妃はルイが再び不倫に走らないよう、敬虔なスカロン夫人を側につかせる。ルイはスカロン夫人に心を許すようになり、彼女にマントノンの所領を贈呈する。
焦ったモンテスパン夫人はルイの心を取り戻そうとするが裏目に出てしまい、「愛していない」と告げられる。進退窮まった彼女は占い師アガットにすがり、“ギボー”という人物に会いに行くよう助言を受ける。“ギボー”の正体はエティエンヌ神父だった。
テュレンヌ率いるフランス軍がプファルツで暴走し、非武装の平民数百人を虐殺したという知らせが入る。同盟国だったプファルツ選帝領はオランダに寝返り、故郷を破壊されたリーゼロッテは深い悲しみに打ちのめされる。
マリー・テレーズ王妃はモンテスパン夫人と決別した侍女のソランジュを引き入れ、夫人を見張るよう命じる。
モンテスパン夫人はアガット夫人から、魔術に使う“王の新鮮な汗”を調達するよう頼まれる。夫人はルイの寝室に忍び込んで部屋着を盗むところをソランジュに見られ、やむなく彼女を殺害する。
ファビアンはギボーことエティエンヌ神父を逮捕する。彼は赤子を生けにえにする悪魔崇拝の儀式で信奉者を集め、宮廷を毒殺で混乱させる元凶だった。モンテスパン夫人とガストンは彼の口から自分の名前が漏れることを恐れるが、アガット夫人は正義を貫くよう命じる。
ファビアンはエティエンヌ神父を拷問にかけ、悪事に荷担した者の名前を吐かせようとする。だが彼が語ったのは、自分が殺したクロディーヌの最期についてだった。怒りに駆られたファビアンはエティエンヌ神父を殺害する。
ファビアンはアガット夫人を宮廷に毒殺の恐怖をまき散らした魔女として逮捕する。彼女の顧客名簿にはソフィーやモンテスパン夫人の名前も記されていた。ルイはモンテスパン夫人の寝室を訪れ、決別を告げる。
ファビアンの捜査によって毒殺に関与した貴族が次々と捕まる。その数は宮廷の半数にのぼった。ガストンはアガットの家に隠してあった毒薬を盗み出すが、小間使いのオディルに裏切られ、逮捕される。
フィリップはトマに「フランス軍は完全撤退する」という偽情報を与えるが、かえって怪しまれてしまう。正体がバレたことを察したトマは、病床のカッセル公爵を殺してソフィーと逃げようとする。
フィリップはトマを捕まえようとして殴られ、彼を取り逃がしてしまう。駆けつけたシュバリエは彼を追い、ソフィーの目の前で銃殺する。ファビアンは顧客名簿からソフィーの名前を消し、彼女を見逃す。
ルイはシュバリエの勇気を称え、報酬と新しい部屋を与える。そしてフィリップと和解し、戦場へ送り出す。
ガストンが盗み出した毒はモンテスパン夫人の手に渡っていた。夫人は復活祭の礼拝でルイを毒殺しようと計画するが、ガストンから情報を聞き出したファビアンによって阻止される。
ルイは彼女への罰として「王の寵愛がない、無名の貴族」として宮廷に残す。アガットは大勢の民衆の前で火刑に処される。
ルイ14世と女性たち
ここからは、鹿島茂さんの『太陽王ルイ14世 ヴェルサイユの発明者』、中野京子さんの『ブルボン王朝12の物語』をもとに、ルイ14世と関わりのあった女性たちについて詳しく見ていきたいと思います。
史実ですがドラマのネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
初恋の人マリー・マンシーニ
ルイの初恋の相手は、宰相マザランの姪で遊び仲間でもあったマリー・マンシーニ(ドラマには登場しません)。
外見は当時の美人の基準からは外れていたらしいのですが、ルイは彼女の見た目よりも、圧倒的な文学的教養に惹かれたようです。マリーの存在は、ルイが「恋人に嫌われないように」猛勉強するきっかけにもなりました。
ルイが彼女に愛されていると気づいたのは、高熱で危篤状態に陥ったとき。医者がサジを投げ、側近たちが王の死を覚悟して後継者に関心を向ける中、最後までルイのそばを離れず看病したのがマリーだったのです。
ルイは彼女との結婚を強く望みましたが、戦後処理の和解条項でもあったスペイン王女マリー・テレーズとの政略結婚を望む母后アンヌ・ドートリッシュとマザランによって、2人は引き裂かれます。
ルイのマリーへの愛情はその後も簡単には冷めず、王妃マリー・テレーズとの夫婦関係はいたって形式的なものになり、ルイは傷心を癒やすかのように愛人たちとの恋を楽しむようになります。
王妃マリー・テレーズ
このドラマに登場するマリー・テレーズは、勝ち気で美しく聡明な女性というイメージを持ちますが、史実ではフランス語もたどたどしい、内気で垢抜けない女性だったようです。
政治にも社交にも芸術にも関心が薄く、外見も内面も子供っぽい「お姫様」の彼女に、ルイは退屈を感じてしまったのかもしれません。
ちなみに彼女の父親スペイン王フェリペ4世は、ルイ14世の母アンヌ・ドートリッシュの弟。さらに彼女の母親イサベルはルイ13世の妹でした。つまり彼女は父方・母方双方でルイ14世の「いとこ」にあたります。
この婚姻はフランス・スペイン戦争(1635年~1659年)の終戦条約である「ピレネー条約」に含まれていたもので、マリー・テレーズがスペイン王家の相続権を放棄する代わりに、持参金を出すことを約束していました。
しかし国力が著しく低下していたスペインはその後も持参金を支払わず、ルイ14世がスペイン領の南ネーデルラントの領有を主張して、南ネーデルラント継承戦争(1667~68年)を起こすきっかけとなりました。
弟の妻アンリエット・ダングルテール
ルイは弟フィリップ・ドルレアンの最初の妃アンリエットと恋に落ちます。
彼女の父親はイングランド王チャールズ1世、母親はフランス王アンリ4世の三女でルイ13世の妹。ルイ14世とは「いとこ」の関係にあたります。
夫となったフィリップは、幼い頃から母后アンヌ・ド-トリッシュとマザランの方針によって女の子として扱われていました。王である兄を脅かす危険人物にならないように、という考えです。
ところがフィリップが女装趣味の同性愛者になってしまうと、母后は「跡継ぎ問題」に不安を抱くようになり、フィリップを男に戻すべく美しい妻を選んだと言われています(勝手な話ですねぇ)。
フィリップは彼女に「気まぐれな好奇心」を持ち、夫婦は3人の子供に恵まれます。しかしフィリップにとって彼女はあくまで「友人」だったようです。
夫に愛されない美しい妻アンリエットは宮廷で注目を集め、ルイ14世も彼女のとりこになってしまいます。ルイが1663年に完成させたヴェルサイユ宮殿の第一次改築工事は、アンリエットと一緒に過ごせる時間を作るためでもあったとか。
当時の図面から、意味深な配置を見て取ることができます。左の翼棟に王妃と王太子、母后用の部屋が用意されているのに対し、右の翼棟にはルイ本人の部屋(2階)と、弟夫妻の部屋(1階)が造られているのです。
宮廷で噂になるのを恐れたアンリエットは、偽装工作を提案します。王が会いに来るのは自分にではなく、侍女が目当てなのだと思わせようとしたのです。
ルイもこれに賛成したため、アンリエットは田舎から出てきたばかりの地味でウブな侍女をカムフラージュに選びました。彼女にしてみれば「王が間違いをおかさないように」と、慎重に選んだことでしょう。
ところが、あろうことかルイはこの侍女に恋をしてしまいます。
侍女ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール
アンリエットの侍女ルイーズは、文学的教養と芸術センスを持つ内気な女性でした。ルイは彼女の純情で生真面目なところに惹かれたようです。
2人の関係を知ったアンリエットはショックのあまり寝込んでしまいますが、ルイの気持ちが戻ることはないと諦め、別の男性と浮気します。
ルイは乙女チックなルイーズを喜ばせるため、庭園(およびテラス)の改造に力を入れるようになります。芝生や花壇、オレンジやレモンの温室、小型の動物園など、約3年の歳月をかけた1664年の春に庭園は完成します。
こうして公式な愛妾となったルイーズでしたが、モンテスパン侯爵夫人に敗れ、1674年に宮廷を去ります。
絶世の美女モンテスパン侯爵夫人
彼女の宮廷デビューは、アンリエットの侍女としてでした。
当時の王はルイーズに夢中だったため、彼女は愛妾になるのを諦めてモンテスパン侯爵と結婚。2人の子供をもうけるも夫の借金で悲惨な結果となり、再び宮廷に戻ります。
ドラマ同様、野心家で手管に長けた彼女は、マリー・テレーズ王妃の侍女という地位を得てルイに近づこうとします。ところがあの手この手で仕掛けるものの、どうしても彼の心を捉えることができません。
そこで彼女は女魔術師ラ・ヴォワザンを頼り、ルイの心を奪う媚薬を手に入れます。媚薬の効果なのか、王はルイーズと対照的な魅力を持つモンテスパン夫人の虜となっていったのです。
一方で、ルイーズとの関係も続いていました。業を煮やした彼女は再び魔術師を頼り、背徳司祭ギブールが行う黒ミサを受けます。
黒ミサの様子はドラマにも登場しますが、赤ん坊を犠牲にするシーンも含め、フィクションではないようです。魔術師ラ・ヴォワザンと司祭ギブールら一味が逮捕されたときの審問記録が残っていて、そこにモンテスパン夫人が黒ミサを受けたときの様子が詳しく描写されているのです。
黒ミサが効いたとは思えませんが、その後ルイの心はルイーズから離れていきます。意地悪なモンテスパン夫人は彼女をいじめるよう王をそそのかし、仕打ちに耐えかねたルイーズは宮廷を出て修道院に入ります。
絶世の美女モンテスパン夫人を手に入れ、南ネーデルラント継承戦争にも勝利したルイ14世は、ヴェルサイユをヨーロッパ一の宮殿にしたいという思いを強くします。
もともとあった旧宮殿をそのまま残し、周りを囲むように新宮殿を造営するという計画は、1668年の秋から工事が始まり、1670年に本体が完成しました。これが現在私たちが見ることのできるヴェルサイユ宮殿の原形となっています。
ルイ14世はモンテスパン夫人との間に7人の子供をもうけました。夫人はしだいに宮廷内で王妃のように振る舞うようになり、やがてボシュエ司教を中心とした“反モンテスパン派”が形成されていきます。
ボシュエ司教によって罪悪感を植え付けられたルイは、しだいにモンテスパン夫人を避けるようになりました。
1679年、女魔術師ラ・ヴォワザン一味が逮捕されたことにより、モンテスパン夫人が彼女の顧客だったことが判明します。夫人は宮廷から追い出されることはありませんでしたが、以後、王から声を掛けられることはなくなりました。
その後、モンテスパン夫人は修道院に入り、1707年に66歳で亡くなりました。
モンテスパン夫人の子供たちは養育係のスカロン夫人によって育てられました。やがて彼女はルイの心を捉え、マントノン夫人と名を変えて1884年に王と秘密結婚します。
妻となったマントノン侯爵夫人
モンテスパン夫人にかわってルイの寵愛を得たのは、フランソワーズ・ドービニェ。
孤児だった彼女は養母の方針でカトリックの教育を受け、15歳のとき40歳の人気作家ポール・スカロンに見初められて結婚しました。
夫が亡くなり若くして未亡人となった彼女は、サロンの常連の一人だったモンテスパン夫人から子供の養育係を頼まれます。ドラマでは子供はすぐに亡くなってしまいますが、史実では彼女は何人もの子供を育て上げています。
やがてルイが彼女のもとを(子供の成長ぶりを聞くという口実で)たびたび訪れるようになると、嫉妬したモンテスパン夫人にいじめられるようになり、宮廷を去ろうとします。
王にもらったお金でマントノンの地所を買ったのも、老後の支えになるだろうと考えたためでした。それを知ったルイは彼女を「マントノン夫人」と呼び、マントノン侯爵夫人の称号を与えます。
敬虔なカトリック信者だった彼女はルイとの肉体関係を拒み続けましたが、マリー・テレーズ王妃が亡くなると、ルイは彼女と結婚することを決めます。2人はヴェルサイユ宮殿の礼拝堂で、秘密裏に結婚式を挙げました。
ようやく愛のある結婚を叶えたルイ14世でしたが、マントノン夫人の影響を受けて「信心深い王」に変貌したルイは、この後とんでもない暴挙に出てしまうのです。
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