英国ドラマ「WITHOUT SIN 罪なき者」(全4話)についてまとめました。
娘はなぜ殺されたのか。服役中の犯人との面会で被害者の母に明かされた真犯人の存在。複雑に絡み合う事件の先に現われる真相とは?演技派俳優陣による上質なサスペンス。
WOWOW公式サイトより
3年前に娘を殺された母親が、事件の真相を追うサスペンス。IMDbの評価は7.2。
原題の「Without Sin」とは、新約聖書にある言葉「罪なき者」を意味します。罪人に石を投げて殺すモーセの律法について問われたイエス・キリストが、「罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい」と語ったエピソードに基づいています。
製作総指揮はドラマ「ザ・クラウン」のアンディ・ハリースらが務め、主人公のステラをドラマ「ライン・オブ・デューティ」のヴィッキー・マクルアが演じています。
全4話の短いドラマですが容が濃く、サスペンスとしても人間ドラマとしても見応えがありました。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2023年1月2日(月)13:00~一挙放送
- 製作国:英国(2022年)
- 原題:Without Sin
- 製作総指揮:アンディ・ハリースほか
あらすじ
ステラは留守中に娘メイジーを自宅で殺された後、夫ポールと離婚しタクシー運転手として働いていた。ある日、被害者の家族が事件から立ち直るためのプログラムに参加するよう誘われるが、それは犯人として有罪判決を受け服役中であるチャールズと、あえて面会するというもの。なかなか前向きになれなかったステラだったが、チャールズに会うことを決心する。
WOWOW公式サイトより
するとチャールズは“自分はメイジーを殺していない。自分は何者かにはめられた”と主張。しかも現在クレオという女の子が行方不明で、メイジーと同じように殺されるだろうと言われる。チャールズを信用できないステラだが、クレオという女の子のことが気になり調べると……。
登場人物(キャスト)
ステラ・トムリンソン(ヴィッキー・マクルア/声:朴璐美)
タクシー運転手。3年前、留守中に14歳の娘メイジーを自宅で殺された。服役中の犯人チャールズと面会し、真犯人は別にいると聞かされる。チャールズを疑いつつも、真実を知るために調査を開始する。
チャールズ・ストーン(ジョニー・ハリス/声:竹田雅則)
殺人犯。有罪判決を受けて服役中だが、ステラと面会して「自分は何者かにはめられた」と主張する。子供の頃に母親から虐待を受けて育ち、見てみぬフリをしていた父親とは絶縁状態にある。息子のテディと連絡を取り合っている。
ポール(ペリー・フィッツパトリック/声:宮内敦士)
ステラの元夫。事件後に離婚し、現在は恋人のミーラと新しい家庭を築こうとしている。チャールズとの面会を拒み、ステラが彼に会うことにも反対する。
レミー(ヨハン・マイヤーズ/声:さかき孝輔)
ステラの幼なじみ。警察官。ずっと前からステラのことを想っている。事件の真相を追うステラに協力する。
ジェシー(ドロシー・アトキンソン/声:土井美加)
ステラの母。ミルフィールズの厩舎で働いている。孫のメイジーとは乗馬が共通の趣味だった。ステラが真犯人捜しをすることに反対する。
ケルヴィン(Ezra Faroque Khan)
ジェシーの恋人。厩舎のオーナー。
ジャマール(Callum Fuller)
服役中の受刑者。チャールズと同じ房に入る。飲酒運転で交通事故を起こし、妊婦を死なせた。
メイジー・トムリンソン
ステラとポールの娘。3年前、14歳のときに自宅で殺害された。
クレオ・デイル
メイジーの乗馬仲間だった少女。現在は行方不明。母親は薬物依存で、マッケラー家からドラッグを買っていた。姿を消す一週間前、メイジーの件で情報提供すると警察に通報していた。
テディ
チャールズの息子。毎週チャールズと面会している。
ローマン・マッケラー
ミルフィールズを仕切るマッケラー家の当主。警察も手をこまねく危険人物。チャールズが子供の頃から彼を雇い、仕事をさせていた。
リー・マッケラー
ローマンの長男。ドラッグの売人。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
ステラとポールのもとに、服役中の殺人犯チャールズ・ストーンから「会って話がしたい」と音声メッセージが届く。2人は3年前に14歳の娘メイジーを殺され、その後離婚。チャールズはメイジーを殺した犯人だった。
ステラはタクシー運転手として働き、ポールは恋人のミーラと新たな家庭を作ろうとしていた。一度はチャールズとの面会を拒んだ2人だったが、ステラは前に進むために犯人と向き合うプログラムに参加することを決める。
だがステラと面会したチャールズは、「俺は殺してない、嵌められたんだ」と犯行を否定。車を盗もうとして家に忍び込んだときには、メイジーはもう死んでいたと主張する。
さらに、クレオ・デイルというミルフィールズの少女が行方不明であることを告げ、このままでは彼女も殺される、とステラに助けを求める。
チャールズは強制的に監房に戻され、プログラムは中止される。ステラは突然の訴えに混乱しつつも、「クレオ」について調べ始める。すると、クレオの写真を見たステラの母ジェシーは、「彼女はメイジーの乗馬仲間で、仲が良かった」と話す。
3年前の事件の夜、ステラは外出先でパーティーを楽しんでいた。そこへメイジーからメールが届き、帰宅するとチャールズがメイジーの遺体のそばに佇んでいたのだった。
ステラは再びチャールズと面会するため、刑務所を訪れる。
面会に訪れたステラに、チャールズはマッケラー家に雇われていたことや、クレオの母エレインがマッケラーからドラッグを買っていることを話す。
ステラはそのことをポールに伝えるが、ポールは「君はチャールズに操られてる」と反発し、チャールズと関わるのをやめるよう諭す。
諦めきれないステラは、チャールズの父エリックを訪ねる。彼によるとチャールズは幼い頃から怒ると手が付けられないモンスターで、10歳のときに母親が自殺してさらに酷くなったという。
ポールがコカインを買っていると知ったステラは、彼が以前からマッケラー家と取引をしており、事件に関わっているのではないかと疑い始める。だがミーラは事件の夜にポールと一緒にいたことを打ち明け、事件への関与を否定する。ポールが離婚前からミーラと付き合っていたことを知ったステラは、ショックを受ける。
チャールズは息子のテディと面会し、絶縁状態の父エリックが余命数週間であることを聞かされる。エリックと面会したチャールズだったが、メイジー殺害を認めろと言われて傷つき、ジャマールに八つ当たりしてしまう。
ステラは幼なじみで警察官のレミーに協力を頼み、クレオについて調べてもらう。彼女は姿を消す前、メイジーの殺害について情報を提供したいと警察に通報していた。ステラはクレオの母エレインに会い、クレオが使用していたタブレットを預かる。
タブレットを調べたステラは、メイジーとクレオが映っている動画を発見する。2人は夜間トレーラーハウスに忍び込んで、隠してあったドラッグを勝手に使用していた。
動画に映っていたトレーラーハウスは、ケルヴィンが経営する厩舎内にあった。ステラはケルヴィンに動画を見せて問い詰めるが、彼は「知らなかった」と言い逃れをする。ケルヴィンを疑うステラはジェシーと口論になり、見かねたケルヴィンは2人の前で真実を明かす。
ケルヴィンは数年前から若者たちがトレーラーハウスでドラッグの売買をしていることに気づいていたという。だがローマン・マッケラーから“口止め料”として寄付金が送られてきたため、黙っていたのだ。それはメイジーが死ぬ前のことだった。
ステラはメイジーの部屋を調べ、彼女が“ミスティ”と名乗っていたことや、日常的にドラッグとセックスをしていたことを知ってショックを受ける。ポールはメイジーが自分の不倫に気づいていたのではないかと話し、ステラは自分を責める。
ステラはメイジーの友人アーシュナに会い、メイジーがドラッグの売人と付き合っていたことを聞き出す。ローマン・マッケラーに会いに行ったステラは、彼の息子リーを怪しむ。彼はクレオが最後に確認された防犯カメラの映像に映っていた赤い車の持ち主で、“ミスティ”のことも知っていた。
チャールズのもとにはローマンが面会に現れ、今すぐ詮索をやめろと脅される。命の危険を感じたチャールズは父エリックの葬儀に参列し、息子のテディに街を出るよう伝える。
ステラはリーがメイジーを殺した真犯人だと考え、チャールズに「あなたを信じる」と伝える。だがチャールズはこの件から手を引くと言い、ステラにも調査をやめるよう告げる。そしてステラが「ミスティ」の名前を出すと、チャールズは2度と連絡するなと言って立ち去ってしまう。
監房へ戻ったチャールズはジャマールに刺され、重傷を負って病院へ運ばれる。意識が朦朧とする中、かつてテディの携帯電話に“ミスティ”からの着信があったことを思い出すチャールズ。連絡を受けて駆けつけたテディは、泣きながらチャールズに許しを乞う。
ステラはリーを尾行して携帯電話を盗み出し、クレオを誘拐した証拠となるメールから監禁場所を突き止める。ひとりで監禁場所へ向かったステラは、部屋に閉じ込められていたクレオを見つけ出し、救出する。
だが連れ帰ったクレオがステラとポールに打ち明けたのは、思いもよらない真実だった。
事件の夜、トレーラーハウスで合流したメイジーとクレオ、テディとリーの4人は、メイジーの家へ行くことに。そこでクレオは、メイジーの恋人テディと隠れて付き合っていることをメイジーに知られてしまい、口論になったという。
激怒したメイジーはテディとクレオを罵り、母親の悪口を言われたクレオは衝動的にメイジーを殴り殺したのだった。そしてその場にいたリーが父親のローマンに連絡し、ローマンは事件を隠蔽するためにチャールズを利用して殺人犯に仕立て上げたのだ。
事件の夜、ステラの携帯に届いた「外に誰かいる」というメールは、クレオがメイジーになりすまして送ったものだった。そのメールを無視したことをずっと後悔し、自分を責め続けてきたステラは、クレオに怒りをぶつけて号泣する。
その後。ステラとポールはプログラムに参加し、収監中のクレオと面会する。釈放されたチャールズはステラと再会し、街を出て遠くへ行くことを告げる。チャールズはテディが罪を償い終えるまでに、ちゃんとした父親になりたいと話す。
「俺は間違った生き方をたくさんした」と語るチャールズに、ステラは「私もよ。みんなそう」と答える。
感想(ネタバレ有)
最後に明かされた真実は、ステラとチャールズにとって残酷なものでした。
事件の真相を追う過程で、罪を犯したのはチャールズだけではないことを知るステラ。元夫ポールも、亡くなった娘メイジーも、そしてステラ自身も罪を犯し、それぞれの罪が3年前の事件を招いていたことに気づきます。
チャールズもまた、真実を明らかにしようとする一方で、自分を見捨てた父エリックと向き合うことを余儀なくされます。余命わずかなエリックが面会に来て、チャールズに「メイジー殺害を認めろ」と告げるシーンは本当に悲しかった。
そして息子のテディが事件に関与していながら、ずっと隠し続けていたことを知ってしまったチャールズ。愛する息子にとって、自分は刑務所にいるほうがいいと思われるほど、疎ましい父親だったと気付かされる。
罪を犯したことのない者は、この世界には1人も存在しない。誰かが犯した罪は、必ずどこかで自分と繋がっている。タイトル「罪なき者」にはそんなメッセージが込められているのかなと思いました。
ラストシーンで、ステラとチャールズの穏やかな表情が見られたことが救いです。
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