BBCドラマ「戦争と平和」全話ネタバレ・感想・登場人物(キャスト)

BBCドラマ「戦争と平和」

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海外ドラマ「戦争と平和」(全8話)についてまとめました。

トルストイの名作を、英BBCが2年半の歳月をかけて壮大なスケールで映像化。帝政末期のロシアを舞台に、ナポレオンのロシア侵攻と若者たちの運命を描いた歴史大河ドラマ。

とにかく映像が素晴らしい。

BBCが2年半かけて作っただけあってスケールも美しさも桁違いで、圧巻でした。

当時を忠実に再現した豪華な衣装や調度品は必見。細部まで作り込まれていて、それらを見るだけでも楽しいです。

物語の中心を担うのは、ピエール、アンドレイ、ナターシャの3人の若者たち。アウステルリッツの戦いなど史実を背景に、彼らの恋愛模様と成長を描いています。

ロケ地には、滅多に撮影許可が下りないという世界遺産のエカテリーナ宮殿や、ルンダーレ宮殿、エルミタージュ美術館などが使用されていて、そちらも見どころのひとつです。

  • 製作国:イギリス
  • 原題:War&Peace
  • 原作:トルストイ『戦争と平和』
  • 脚本:アンドリュー・デイビス
  • 監督:トム・ハーパー
  • 制作総指揮:アンドリュー・デイビスほか

あらすじ

1805年ロシア、サンクトペテルブルク。ナポレオン率いるフランス軍がオーストリアに侵攻し、ロシア社会は不安に覆われていた。物語の主人公は、ピエール、アンドレイ、ナターシャ、3人の若者。ベズーホフ伯爵の私生児ピエールは、社交界では変人扱い。親友アンドレイは栄光を求め、身重の妻を残し戦地に赴く。ナターシャの名前の日を祝うロストフ家を訪れたピエールの元に、父危篤の知らせが入る。父の最期を看取ったピエールは、期せずして莫大な遺産を受け継ぐことに…。

AXNミステリー公式サイトより

原作について

このドラマの原作は、ロシアの作家、レフ・トルストイの歴史大作『戦争と平和』(1863~69年発表)です。

ロシアとナポレオン軍との戦争を背景に、19世紀初頭のロシアの社会と人民の姿を描いた壮大な歴史小説。登場人物が559名とすこぶる多いことでも知られています。

わたしは未読です。世界的に有名なロシア文学の名作なので、あらすじだけは知っていました。

物語の中心となるボルコンスキー公爵家とロストフ伯爵家は、作者トルストイの母方、父方の家がモデルになっていると言われています。

さらに、両家を結びつける存在として描かれるピエール・ベズーホフには、苦悩し挫折を繰り返した若き日のトルストイ自身の姿が投影されているそうです。

これまでも何度か映像化されていますが、1956年に映画化されたオードリー・ヘップバーン主演のハリウッド版が有名ですかね。

登場人物(キャスト)

ナターシャ・ロストフ(リリー・ジェームズ)
ロストフ伯爵の娘。天真爛漫な性格で、身を焦がすような心ときめく恋に憧れている。兄のニコライと従妹のソーニャが結ばれることを望んでいる。

ピエール・ベズーホフ(ポール・ダノ)
大富豪ベズーホフ伯爵の私生児。不器用で空気が読めないため上流社会になじめずにいたが、父の莫大な遺産を相続したことで周囲の態度が激変する。ナポレオンを崇拝し、世のために生きることを望んでいる。財産めあてと知りながら、エレーヌと結婚する。

アンドレイ・ボルコンスキイ(ジェームズ・ノートン)
ニコライ・ボルコンスキイ公爵の息子。頭脳明晰で勇敢な青年。ピエールとは親友で、身重の妻リーザがいる。家庭や社交界には興味がなく、ナポレオンのような英雄になるという野心を抱いて戦地へ赴く。

ニコライ・ロストフ(ジャック・ロウデン)
ナターシャの兄。ロストフ家の長男。従妹のソーニャに思わせぶりな態度を取りながら、ほかの女性にも恋をする。従兄弟のボリスと共に出征し、戦場で負傷する。一時帰国中にドーロホフとの賭けに負け、莫大な借金を作って父親を困らせる。

ソーニャ・ロストフ(アシュリング・ロフタスソーニャ)
ニコライ兄妹の従姉妹で、ロストフ伯爵家の居候。ニコライを一途に愛し、ドーロホフからの求婚を断る。

リーザ・ボルコンスキイ(ケイト・フィリップス)
アンドレイの妻。軍人としての名誉を追い求め、家庭に興味を持たない夫を淋しく思っている。アンドレイが戦地から戻った直後に息子ニコールシカを出産し、亡くなる。

マリア・ボルコンスキイ(ジェシー・バックレイ)
アンドレイの妹。信心深く優しい性格。何かにつけて居候のブリエンヌと比較され、父親からは疎まれている。戦地に赴く兄を心配する。

ブリエンヌ
ボルコンスキイ家の居候。フランス人。快活で魅力的な女性で、ボルコンスキイ公爵に気に入られている。

アナトール・クラーギン(カラム・ターナー)
ピエールの放蕩仲間。ワシーリィ伯爵の息子で、エレーヌの兄。享楽的で、数々の浮名を流す。エレーヌを介してナターシャに近づく。

エレーヌ・クラーギン(タペンス・ミドルトン)
アナトールの妹。社交界の花形で、美人だが享楽的な女性。財産めあてでピエールに取り入り妻となるが、結婚後も放蕩生活を続け、戦場から戻ったドーロホフやボリスと密通を繰り返す。兄アナトールとも怪しい関係。

ボリス・ドルベツコイ(アナイリン・バーナード)
ニコライ兄妹の従兄弟で、アンナ・ミハイロヴナの息子。ニコライと共に出征する。ピエールの妻エレーヌから言い寄られ、密通を重ねる。

ドーロホフ(トム・バーク)
ピエールの悪友。戦場で活躍し英雄となって帰国する。ピエールの屋敷に居候していたが、妻エレーヌに手を出してしまい、ピエールに決闘を申し込まれる。

アンナ・パーブロヴナ(ジリアン・アンダーソン)
サンクトペテルブルク社交界の女王で、サロンの女主人。息子ボリスを裕福な家の娘と結婚させようと野心を燃やす。

ミハイル・クトゥーゾフ(ブライアン・コックス)
ロシア軍の元帥。ロシア・オーストリア連合軍の総司令官としてナポレオン率いるフランス軍と戦うが、アウステルリッツの戦いで敗北する。実在の人物。

ナポレオン・ボナパルト(マシュー・カソビッツ)
フランス皇帝。フランス革命後の混乱を収拾し、軍事独裁政権を樹立。1804年に皇帝に即位し、イギリスを除く全ヨーロッパをほぼ制圧した。実在の人物。

アレクサンドル1世
ロシア皇帝。ナポレオンのロシア侵入(モスクワ遠征)を撃破する。実在の人物。

各話のあらすじ(ネタバレ有)

1805年ロシア、サンクトペテルブルク。ナポレオン率いるフランス軍がオーストリアに侵攻し、ロシア社会は不安に覆われていた。ベズーホフ伯爵の私生児ピエールは、社交界では変人扱い。ピエールの親友アンドレイは栄光を求め、身重の妻を残して戦地に赴く。
ピエールの元に父危篤の知らせが入るが、ピエールは途中でロストフ家を訪れ、ナターシャの名前の日を祝う。父の最期を看取ったピエールは、遺言によって莫大な遺産を受け継ぐことに。
ナターシャの兄ニコライと、ニコライの幼なじみボリスも家族に見送られ出征。オーストリア戦線に参加したアンドレイは、自ら志願して前線に赴く。ロシア軍はフランス軍の勢いに押され、本隊を退却せざるを得ない状態に追い込まれる。

1805年11月、ロシア軍はアウステルリッツの戦いでフランス軍に大敗を喫する。アンドレイは旗を掲げて果敢に攻め込むも負傷し、雄大な空の下では人はみな小さな存在だと気づく。ボルコンスキイ家にはアンドレイの死が誤って報じられ、家族は悲嘆に暮れる。妹アンナは妊娠中の妻リーザを思いやり、アンドレイの死を隠す。
一方、莫大な遺産を相続したピエールは、ワシーリイ伯爵のお膳立てで彼の娘エレーヌと愛のない結婚をすることに。エレーヌは戦争から戻ったドーロホフと密通し、その事実を知ったピエールはドーロホフに決闘を申し込む。

ピエールはドローホフとの決闘に勝利するが、自戒する様子のない妻エレーヌに激怒し、家から追い出す。ピエールは偶然出会った男の誘いに乗って、フリーメイソンの結社に入会する。
アンドレイの妻リーザが産気づく中、アンドレイが戦地から生還する。しかしリーザは出産によって命を落としてしまう。アンドレイは名誉欲に囚われたことを後悔し、軍には戻らず人の役に立つことをしようと決める。
ナターシャの兄ニコライは、決闘に負けて負傷したドーロホフを屋敷に住まわせる。ドーロホフはソーニャに求婚して断られたことを逆恨みし、ニコライをカード賭博に誘う。ゲームに負けたニコライは4万3000リーブルもの莫大な借金を作ってしまい、ロストフ家は屋敷を引き払ってモスクワからオトラードノエに移ることに。
休暇を終えて戦線に戻ったニコライだったが、まもなくフランスとの間に平和条約が締結される。

1809年春。アンドレイはボグチャーロヴォに家を建て、世間から孤立するように静かに暮らしていた。外の世界とはかかわらずに生きていこうとするアンドレイに、ピエールは「人生を諦めるな」と諭す。
父の用事でロストフ家を訪ねたアンドレイはナターシャと出会い、彼女が持つ無邪気な明るさに救われる。ナターシャもまたアンドレイに恋心を抱く。アンドレイは再び生きる希望を見いだし、精力的に活動するようになる。互いに好意を持った2人は、その年の冬、サンクトペテルブルクの舞踏会で再会する。
アンドレイの父はナターシャとの結婚に反対し、アンドレイが1年間外国で過ごし、それでも互いの気持ちが変わらなければ結婚を許すと条件を出す。アンドレイはナターシャに愛を誓い、スイスへと旅立っていく。
虚しさを拭えないピエールはエレーヌを許し、もう一度やり直すことを決めるが、エレーヌはボリスとの関係を続けていた。
ニコライはソーニャとの結婚を申し出るが、裕福な娘との結婚を望んでいた母親から猛反対されてしまう。ニコライは再び戦地へと戻っていく。

1811年1月。ロストフ家はモスクワへ移る。ナターシャはアンドレイと再会できることを期待していたが、彼からの手紙でまだ帰国しないことを知り落胆する。父と共にボルコンスキイ家を訪ねるも冷たく対応され、さらに落ち込むナターシャ。
ある夜、ナターシャはオペラ観劇でピエールの妻エレーヌと出会う。エレーヌから兄アナトールを紹介されたナターシャは、アナトールの誘惑に抗えず駆け落ちを図ろうとして失敗。ピエールからアナトールに妻がいることを聞かされ、ショックを受ける。
帰国したアンドレイはナターシャの裏切りを許せず、ピエールの説得を無視して婚約を解消する。

1812年夏。ナポレオン率いるフランス軍は和平を破り、国境を越えてロシアに侵攻する。一連のスキャンダルで心身ともに病んでいたナターシャは、ピエールの励ましと信仰の力で回復する。ナターシャへの想いに苦しむピエールは、彼女と会うのを自制する。
アンドレイは年老いた父が妹マリアに辛くあたるのを見て非難し、父と決裂したまま戦地へ赴く。スモレンスクが陥落し、フランス軍はボルコンスキィ家の領地に迫る。ボルコンスキイ公爵が倒れ、避難先のボグチャーロヴォで亡くなる。マリアは偶然通りかかったニコラスに助けられ、モスクワへ向かう。2人は互いに惹かれ合う。
ピエールは戦地に赴くことを決意。決戦前夜、ピエールはアンドレイと再会する。

1812年8月、ボロジノの戦いが始まる。ピエールは戦場で兵士たちを手伝い、悲惨な光景を目の当たりにして衝撃を受ける。砲弾で負傷したアンドレイは病院に運ばれ、片足を切断したアナトールと再会する。
戦いには勝利するが、クトゥーゾフはモスクワを捨てて退却することを決める。やがてフランス軍がモスクワに侵攻。ピエールは火事の現場で子どもを助け、放火犯と間違われフランス軍に捕まってしまう。
ナターシャは家族と共にモスクワから逃れる途中、負傷したアンドレイと再会。2人は互いに過去の過ちを許し合う。知らせを聞いて駆けつけたマリアだったが、アンドレイはマリアとナターシャに看取られ息を引き取る。

フランス軍の捕虜となったピエールは、同じく捕虜となった農民出身のプラトンと親しくなる。彼の言葉はピエールの心に深く突き刺さる。冬が近づき、物資を調達できなくなったフランス軍はモスクワからの撤退を始める。ピエールたちも厳しい行軍を強いられ、プラトンはその途中で命を落とす。
愛人の子を妊娠したエレーヌは、離婚の同意を得るためにピエールに手紙を送るが返事が届かず、社交界からも疎外される。エレーヌは薬の過剰摂取で誰にも看取られずに死んでいく。
デニーソフとドーロホフは部隊を率いてフランス軍を追撃し、ピエールを救出する。この戦いでロストフ家の末っ子ペーチャが命を落とす。ナターシャはアンドレイの死から立ち直り、父の死を看取る。ニコライはマリアに求婚し、2人は婚約。親友になったナターシャとマリアは、ピエールの帰還を喜ぶ。ピエールはナターシャに愛を告白し、ナターシャもまたそれに応える。

感想(ネタバレ有)

面白くて一気見して、見終わった後しばらく余韻に浸りました。

原作は読んでませんが物語のあらすじは知ってましたし、ピエール、アンドレイ、ナターシャの3人についてもある程度は把握していました。

なので、ドラマは全8話でしたけど、やっぱり少し物足りないなと思う部分はありました。

アンドレイが戦場で負傷して空の美しさに気づいて、己の名誉欲の小ささ(=ナポレオンの小ささ)に気づく場面とか。

空っぽだった心に、ナターシャと出会ったことによって再び生きる希望が吹き込まれる場面とか。

最後のほうの、捕虜になったピエールがプラトンから人生の滋味を教わる場面も、あれではただジャガイモをもらって励まされただけ、みたいで拍子抜け。

後でピエールは「彼のように生きたい」って言ってたけど、見ている側にはプラトンの魅力があまり伝わってこなかった。

ここ大事でしょ!と思う場面がサクサク流れていくから、ものすごく豪華な総集編を見たような印象でした。

でもそれは大作と呼ばれる文学作品を映像化するときの常ですね。そんなこんなを差し引いても、十分見応えのある作品でした。

3人の主要キャラを演じたリリー・ジェームズ、ジェームズ・ノートン、ポール・ダノもよかったです。

リリー・ジェームズ演じるナターシャは、無邪気で屈託のない〝自然児〟。彼女は「生命力」の象徴でもあり、生きる希望を失ったアンドレイやピエールに命を吹き込む女性です。

リリー・ジェームズの愛らしさ、内側から輝くような明るさが、戦争(死)に光をもたらすナターシャそのものでした。

ジェームズ・ノートン演じるアンドレイは、戦地から戻っていわば〝抜け殻〟状態になるわけですが、ナターシャと出会ったことで彼の心に再び生きる活力が芽生えます。

家の前の老木が芽吹くシーンがアンドレイの心を表していて、印象的でした。

ポール・ダノ演じるピエールは、見ているこっちが恥ずかしくなるくらい迷走します。彼には信念があるようでなくて、周りに流されまくるんですよね。見ていて痛い。

ピエールは作者トルストイの自画像だと言われていますが、「自分の若い頃」と重なる人は多いんじゃないかなぁ。私も例外にあらず。だから恥ずかしい。

彼らをとりまく人々も存在感たっぷりでした。

わたしはマリアが好きだったので、彼女が最後に幸福をつかんでくれて嬉しい。その陰でニコライへの愛を諦めたソーニャは可哀想でしたけど…。

〝悪役〟の描き方も巧みでした。

ナターシャを陥れたアナトールが戦場で重症を負い、同じく負傷したアンドレイと野戦病院で再会するとか。

ピエールの妻を奪ったドーロホフが、捕虜になったピエールを助け出すとか。

ピエールを苦しめた悪妻エレーヌは、愛人の子を妊娠して処置に困り、ピエールに離婚を申し入れるも手紙が届かず、薬を過剰摂取して死んでしまう。

あれほど社交界でちやほやされて輝いていた彼女が、最後は誰からも声をかけられず社交界から追い出されるシーンがなんとも哀れでした。

「戦争と平和」というタイトルのとおり、ナポレオン軍との戦争と貴族の生活が平行して描かれていて、そのバランスがちょうどよかったと思う。

戦場のシーンが多すぎるとしんどくなるし、貴族の日常生活が多すぎると退屈ですし。現代から見ればどちらも非日常ではあるのですが。

残酷なシーンはありますが、全体的に文学テイストで覆われていたので、戦争ものが苦手なわたしでも大丈夫でした。

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