ネタバレ有「アドレセンス」全話あらすじ・感想・登場人物(キャスト)一覧|SNS時代の悲劇を描いた衝撃作

Netflix「アドレセンス」あらすじキャスト

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Netflixで配信中の英国ドラマ「アドレセンス」(全4話)についてまとめました。

同級生を殺害した容疑で逮捕された13歳の少年と、事件関わる人々の葛藤を描いた緊張感あふれるミニシリーズ。IMDbの評価は8.4。

タイトル「アドレセンス」の意味は、「思春期」。

注目すべき点は、各エピソードがすべてワンテイクで撮影されていること(特に第2話が驚異的)。そして俳優陣の演技が素晴らしいこと。中でも13歳の少年ジェイミーを演じたオーウェン・クーパー(この作品がデビュー作!)の演技は必見です。

父親役のスティーヴン・グレアムとジャック・ソーンが共同執筆したという脚本も素晴らしいです。少年犯罪というありきたりな題材ながら、犯人捜しでも動機の解明でもない悲痛な物語に心を抉られました。

作品概要

  • 製作国:英国(2025年)
  • 原題:Adolescence
  • 脚本:スティーヴン・グレアム/ジャック・ソーン
  • 監督:フィリップ・バランティーニ
  • 配信:Netflix

あらすじ

ある日突然、ミラー家の玄関を押し破り突入してきた警察。逮捕されたのはまだ10代のジェイミーだった。取り調べを受けることになり、ジェイミーは何もしていないと主張するが…。

Netflix公式サイトより

予告動画

登場人物(キャスト)一覧

ミラー家

ジェイミー・ミラー(オーウェン・クーパー)
ミラー家の長男。ブラントウッド中学に通う13歳。ある朝、同級生のケイティを殺害した容疑で逮捕される。犯行を否認し、尋問に立ち会う“適切な大人”に父親のエディを指名する。

エディ・ミラー(スティーブン・グラハム)
ミラー家の父親。自営業で、トイレ修理の仕事をしている。多忙で子どもたちと触れ合う時間は少ない。息子のジェイミーが逮捕され混乱しながらも、無実を信じて“適切な大人”としての役割を果たそうとする。

マンダ・ミラー(クリスティーン・トレマルコ)
ミラー家の母親。ジェイミーが“適切な大人”に父親を選んだことに疑問を抱く。世間からの嫌がらせやトラブルに耐え兼ね、実家があるリバプールに引っ越すことを考えている。

リサ・ミラー(アメリー・ピーズ)
ミラー家の長女。ビリーという恋人がいる。

警察

ルーク・バスコム(アシュリー・ウォルターズ)
ヘイウッド通り署の警部。ケイティ・レナード殺害事件の担当主任。ジェイミーを尋問し、自白を引き出そうとする。息子のアダムはジェイミーと同じ学校に通う中学3年生。

ミシャ・フランク(フェイ・マーセイ)
ヘイウッド通り署の巡査部長。バスコムの相棒。

中学生たち

ケイティ・レナード(エミリア・ホリデイ)
殺害された女の子。ジェイミーが逮捕される前日の夜、クラウザーの駐車場で遺体で発見された。

ジェイド(ファティマ・ボージャン)
ケイティの親友。家に居場所がなく、ケイティと彼女の家に安穏を見出していた。ケイティが殺され、唯一の理解者を失って精神的に不安定になってしまう。

ライアン・コワルスカ(ケイン・デイヴィス)
ジェイミーの友達。ジェイミー、トミーと3人で行動することが多かった。事件の前にもジェイミーと会っており、ジェイミーが逮捕されたことに動揺する。

トミー(Lewis Pemberton)
ジェイミーの友達。ジェイミーやライアンとともに、学校では浮いた存在だった。

アダム・バスコム(Amari Bacchus)
バスコム警視の息子。ジェイミーと同じ中学校に通っている。フレドからいじめられているが親には打ち明けられず、腹痛を理由にときどき学校を休む。捜査で学校に来た父親を見て、協力しようとする。

フレド(オースティン・ヘインズ)
アダムをいじめている男子生徒。

そのほか

フェニモア先生(ジョー・ハートリー)
ジェイミーが通うブラントウッド中学の教師。情報提供を呼び掛けにきたバスコムとフランクを案内する。

ブリオニー・アリストン(エリン・ドハーティ)
心理療法士。判決前報告書を書くため、訓練施設に収容されているジェイミーと面会する。

ポール・バーロウ(マーク・スタンリー)
ジェイミーを担当する弁護士。

各話のあらすじ(ネタバレ有)

早朝の住宅街。バスコム警部と相棒のフランク巡査部長は、特殊部隊とともにミラー家に突入する。彼らが殺人容疑で逮捕したのは、13歳の少年ジェイミーだった。
ジェイミーの父エディと母マンダ、姉のリサは何が起きたかわからず混乱する。ジェイミーは連行され、ヘイウッド通り署の独房に入れられる。
ジェイミーが“適切な大人”に選んだのは父エディだった。エディは「僕はやってない」とと訴える息子を信じ、弁護士のポール・バーロウとともにジェイミーの身体検査や写真撮影、サンプル採取に立ち会う。
ジェイミーは取り調べを受けることになり、エディとポールが付き添う。バスコムとフランクは、ジェイミーがインスタグラムでモデルの女性を複数フォローしていることや、彼女たちの写真に攻撃的な誹謗中傷をコメントしていることを指摘する。
そして、同級生の女の子ケイティ・レナードが昨夜亡くなったことを告げる。彼女は体中を7か所も刺され、駐車場で遺体となって発見されたのだった。自白を求めるバスコムに対し、ジェイミーは「僕を誰かと間違えてる」と主張する。
バスコムは防犯カメラの映像を見せる。昨夜、ジェイミーは友達のライアンとトミーと一緒に遊んでいたが、彼らと別れた後、ケイティをつけた。
2人は駐車場で言い争いになり、ケイティがジェイミーを突き飛ばして立ち去ろうとした。ジェイミーはケイティを追いかけ、彼女を刺した。彼女が倒れた後も、何度もナイフを振りかざした。その様子がはっきりと映し出されていた。
取り調べが終了し、バスコムとフランクとポールが部屋を出て行った後、泣きながら父親にすがるジェイミーの手を払いのけ、泣き崩れるエディ。ジェイミーは「パパ、僕じゃない。僕は何もしてない」と言う。

事件から3日後。バスコム警部とフランク巡査部長は、ジェイミーが通っていたブラントウッド中学を訪れる。凶器はいまだ見つかっておらず、動機も不明だった。
学校では、ジェイミーが事件に関わっているという事実が生徒たちの間で広まっており、教師たちは対応に追われて奔走していた。
情報を得るため、バスコムはケイティの親友ジェイドに会う。しかし親友を失って動揺する彼女は、不機嫌な態度をあらわにして協力を拒む。
ジェイドはジェイミーの友人ライアンに殴りかかり、「よくも私の親友を殺したな!」と叫ぶ。バスコムはライアンから話を聞こうとするが、ライアンは明らかに何かを隠しているそぶりを見せて教室に戻ってしまう。
バスコムの息子アダムは、そんな父親の姿を見て耐えられなくなり、生徒たちがインスタグラムで使っている絵文字に隠された本当の意味を教える。そこから読み取れたのは、ジェイミーがいじめを受けていたこと、ケイティが彼を「インセル」と呼んでバカにしていたことだった。
バスコムは真実を聞き出すためライアンの教室へ。ライアンは教室の窓から逃げ出すが、追いかけてきたバスコムに捕まる。ライアンは、凶器に使われたナイフが自分の物で、ジェイミーに貸したことを明かす。バスコムはライアンを殺人共謀容疑で逮捕する。
息子のアダムが学校で浮いた存在だと知ったバスコムは、帰宅するアダムを校門の外で待ち、「一緒にポテトとコーラを買いに行かないか?」と誘う。
ジェイミーの父エディは殺害現場となった駐車場へ足を運び、花を供える。

事件から7か月後。心理療法士のブリオニー・アリストンは、スタンドリング収容訓練施設を訪れ、ジェイミーと面談する。彼女に与えられた仕事は、客観的な立場で判決前報告書を書くことだった。
ブリオニーは父親や祖父の「男らしさ」についてどう思うかジェイミーに尋ねる。ジェイミーはスポーツが嫌いで、父エディが望む「スポーツが得意な男子」になれなかったと言い、サッカーの練習でミスをすると目をそらされた、と話す。
ジェイミーは「僕は罪を犯してない」と言い張り、ここから出してとブリオニーに迫る。ブリオニーができないと言うと激昂し、「僕を操ろうとするな!」と怒鳴る。
やがてジェイミーは、ケイティの裸の写真を男子たちで回し見ていたこと、そのことで落ち込む彼女の弱みにつけこんでデートに誘ったものの、「そこまで必死じゃない」と断られたことを話す。
ケイティが「インセル」と呼ぶのは自分がブサイクだからで、彼女は性悪女だと罵るジェイミー。
ブリオニーは、面談は今日が最後であることをジェイミーに伝える。動揺したジェイミーは「嫌だ」と抵抗し、「先生は僕のこと好き? 僕は先生が好きだ」と告げる。
ブリオニーは「ありがとう」と言い、職員に連れ出されるジェイミーを見送る。

事件から13か月後。エディは50歳の誕生日を迎える。施設にいるジェイミーからも、誕生日を祝う似顔絵のカードが届く。
平穏な一日を迎えるはずだったが、家の前に停めていた車に「NONSE(小児性犯罪者)」とペンキで落書きされていることがわかり、エディは激昂する。
エディは妻マンダと娘のリサを車に乗せて、近所のホームセンターへ向かう。塗料を買うも、店員から「あなたを知ってる」と事件のことを掘り返され、やりきれない気持ちに。
駐車場で落書きをした少年たちを見つけたエディは怒りを爆発させ、彼らに掴みかかる。そして買ったばかりの塗料をその場で車にぶちまける。
帰り道、施設にいるジェイミーから電話が入る。ジェイミーはエディの誕生日を祝福した後、「パパ、ごめんね。僕は罪を認めるよ」と告げる。
帰宅したエディは、妻マンダと語り合う。防犯カメラの映像を見たエディは目の前の事実をどう受け止めればいいかわからず、一人で苦悩していた。マンダは「一緒に乗り越えなきゃ」と言い、ジェイミーがいつも部屋にこもり深夜遅くまで起きていたことを思い出す。
エディは子どもの頃に父親から暴力を受けて育ち、「自分の子に同じことはしない」と誓っていた。マシな親になろうと努力し、ジェイミーにサッカーやボクシングを習わせた。いつも絵を描いていたジェイミーは、絵を描かなくなった。パソコンを欲しがり、ゲームをするようになった。それでも、部屋の中にいる限り安全だと思っていた。
マンダは「こうなるなんて予測できなかった」と言い、どうすればよかったのか、何ができたのか、考えることがせめてもの償いだと話す。
リサはジェイミーの姉として、これからも続く苦難を受け入れる覚悟を示す。「リサは弟とは違うな」と言うエディに、マンダは「2人とも私たちの子よ」と返す。

感想(ネタバレ有)

静かな早朝、いきなり住宅のドアが叩き壊され、特殊部隊が突入するという衝撃的なオープニング。逮捕されたのは、あどけなさの残る13歳の少年ジェイミーでした。

第1話は、ジェイミーが逮捕されてから警察署で尋問を受けるまでの「約1時間」が、リアルタイムで映し出されます。

第2話では、バスコム警部と相棒のフランク巡査部長がジェイミーの中学校を訪れ、生徒や教師たちから聞き取りを行う様子が。

第3話では、施設に収容されたジェイミーと、心理療法士ブリオニーの不穏で緊迫した心理戦が。

第4話では、ジェイミーが逮捕された後のミラー家の苦難の一日が、いずれもワンテイク撮影で展開します。

合計4時間のあいだ、ずっとライブカメラを見ているような、息がつまるような緊張感があり、ときどき目をそらしたくなるほどでした。

というのも、カメラが常にその場に(登場人物の背後霊のように)ぴったりとくっついているので、まるで自分自身が現場を体験しているような感覚になるのです。

イギリスでは、少年が少女を刺し殺す事件が多発していると言います。ジェイミーの父親エディを演じ、本作の脚本も手掛けているスティーヴン・グレアムは、「なぜ今こんなことが起きているのか、それを問いただしたかった」と語っています。

なぜ、少年たちは怒りを抱え、女性差別に向かうのか。

ドラマでは、いじめ、ネット文化、有害な男らしさ、女性蔑視、ホモソーシャル、世代間ギャップといった社会問題を取り上げ、現代の子どもたちが「思春期」を生き抜くことがいかに難しく危険なことであるかを生々しく提示します。

父親の男らしさは有害か

第1話で、バスコム警部は過去の事件の例を出し、「父親の虐待」を疑います。しかし、エディは子どもに手を出す親ではありませんでした。

心理療法士のブリオニーが問題視したのは、エディの「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」です。

「有害な男らしさ」とは、「男はこうあるべき」という偏った男らしさを設定し、それに背く行動や思想を排斥すること。

近年では、旧来的な男らしさが性差別や暴力につながっているのではないか、男性の感情を抑圧し、助けを求めることを妨げているのではないか、と指摘されています。

ジェイミーはスポーツが嫌いで、絵を描くのが大好きな少年。だけどエディはそんなジェイミーを情けなく思い、サッカーやボクシングを習わせ、彼が「変わる」ことを期待した。

繊細なジェイミーにとっては辛かっただろうと思う。子どもは、親が「恥ずかしい」と思っていることを敏感に感じ取るから。

エディは悪い父親ではありません。息子を守りたい、傷つけたくない、良い父親でありたいと心から思っている。それでも間違えてしまう。親だって完璧じゃない。

ジェイミーが変われなかったように、エディが変わることも、また難しかったんだろうと思う。

暴力的な父親(ジェイミーの祖父)から受け継いだ「有害な男らしさ」に、あるいは無自覚のトラウマに、エディはこれから向き合うことになるのかもしれない。

インターネットは“思春期”を待ってくれない

第2話では、バスコム警部が中学校へ行き、子どもたちの間で何が起きているかを、息子のアダムから知らされます。

アダムは腹痛で学校を休みがちだったけれど、バスコムはその原因がいじめだということに全く気づいていませんでした。

学校以外の場所でも、ネットで常時つながる子どもたち。SNSで繰り広げられる陰湿ないじめ。大人には理解できない絵文字の意味。

世代間ギャップが、アダムの「空回ってる姿がイタすぎて」という痛烈な言葉で表されています。

ケイティがジェイミーに対して使った「インセル」は、involuntary celibateの略で、日本語に直訳すると「非自発的独身者」。もっとわかりやすく言うと「非モテ」。

異性との交際が長期間なく、意に反して独身を強いられる男性のコミュニティを指します。

彼らの言動は女性憎悪、暴力肯定、人種差別などと深く結びついていて、インセルを自称する一部の人々が起こした事件もあり、国際的な社会問題になっています。

アダムがダイナマイトの絵文字の説明で「青い薬は虚構を表し、赤い薬は“真実への覚醒”を意味する」と言ったとき、バスコムはすぐ「マトリックスだ」と指摘したけど、アダムには何のことだかわからない(ここでも世代間ギャップが)。

バスコムの指摘は正しくて、インセルが崇拝する「レッドピル(赤い錠剤)」と呼ばれる理論は、映画『マトリックス』に由来します。

青い錠剤を選ぶ=虚構の人生を生きる決断をすること。
赤い錠剤を選ぶ=真実を受け入れて現実に目覚めること。

インセルは「男女平等」を偽りだとし、「赤い錠剤を選んで過酷な現実に目覚める」ことを呼び掛けているという。

ジェイミー自身は、第3話でインセルのメンバーであることを否定しているけれど、彼が女性蔑視のインフルエンサーから影響を受けていることは明らかに思える。

ジェイミーの歪んだ自己イメージ

第3話は、ジェイミーと心理療法士ブリオニーの会話が延々と続く。息をのむような緊迫したやりとりに、見ている方も力が入ってしまう。

ここでのブリオニーの仕事は、ジェイミーに理解を示すことではなく、客観的な立場で「判決前報告書」を書くこと。

ジェイミーに寄り添うことを徹底的に禁じ、圧倒的な責任感でプロに徹するブリオニーに対し、ジェイミーの態度はめまぐるしく変化する。

素直で従順な態度を見せたり、威張り散らして恫喝したり、見下して嘲弄したり。周囲の大人たちが気づかなかった、ジェイミーの複雑な性格が明らかになっていく。

ジェイミーは父エディに憧れ、自分には価値がないという歪んだ自己イメージを持っていました。学校でのいじめやケイティから受けた侮辱は、それらを悪化させ、追い打ちをかけるものでした。

ジェイミーのトラウマを刺激し、動揺させることをわかっていながら、質問を続けなければならないことに葛藤するブリオニー。

面談のあと、ジェイミーがいなくなった部屋にひとり残されたブリオニーが、必死にこらえていた感情をあふれさせる場面が忘れられない。

彼女が流した涙にはさまざまな感情が滲んでいて、彼女がどれほど魂を削ってこの仕事と向き合っているか、その苦痛の大きさが読み取れます。

大人たちに何ができたのか

同級生の少女を7回も刺して殺してしまったジェイミー。そんな息子を育ててしまった責任と罪悪感に圧し潰されるエディ。

いったい何が間違っていたのか。どうすればよかったのか。自分たちは良い親ではなかったのか。第4話でエディとマンダが涙を流しながら過去を振り返るシーンは痛ましく、やりきれない。

唯一の救いは、ジェイミーの姉リサが、この家族の指針となるような存在だったこと。

車に落書きされた「NONSE(小児性犯罪者)」という言葉を見て、エディが激高して我を忘れる一方で、リサは「13歳の弟が小児性犯罪者のわけないのに。やつらはNONSEの意味も分からないバカよ」と言ってのける。

母マンダの「恋人のビリーを頼ったら?」という助言に対して、彼女は「彼になんか頼らないわ。私は自分の面倒くらい自分で見られる」と力強く言い放つ。

正しい知識と新しい価値観を持ち、自分を信じて進もうとするリサ。そんなリサを育てたのもまたエディとマンダなのだと気づかされる。

ジェイミーの部屋のベッドで号泣し、「ごめんな。パパの力不足だった」とつぶやくエディ。彼を見つめる作り手のまなざしは優しく、慰めに満ちているように感じた。

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