海外ドラマ 「刑事カーディナル 悲しみの四十語」(全6話)についてまとめました。
カナダのアカデミー賞にあたる2018年カナディアン・スクリーン・アワードで、最優秀主演男優賞(ビリー・キャンベル)など12部門で受賞・ノミネートを果たしたミステリードラマ。
本作は「刑事カーディナル」シリーズの第1弾にあたり、第2弾「記憶に巣喰う虫」、第3弾「過去からの報せ」、第4弾「凍てつく夜に」と続きます。
主人公カーディナル刑事を演じるのは、「4400 未知からの生還者」のジョーダン役で知られるビリー・キャンベル。相棒のデローム刑事役を、「リベンジ」のカリーヌ・ヴァナッスが演じています。
カナダの雪景色がひたすら美しく、冷酷な猟奇的犯罪を見事に演出しています。終始暗くて重い雰囲気ですが、見応えのある内容でじっくりと楽しめる大人のミステリーでした。
Contents
作品概要
- 製作国:カナダ(2017年)
- 原題:Cardinal
- 原作:ジャイルズ・ブラント『悲しみの四十語』
- 脚本:オーブリー・ニーロン
- 監督:ダニエル・グルー
- 制作総指揮:ジョスリン・ハミルトンほか
あらすじ
惨殺された少女の遺体が見つかった。以前、家出と判断され捜索を打ち切られていた失踪者、ケイティ・パインの遺体だった。当時から「変質者による誘拐事件だ」と主張していたアルゴンキン・ベイ警察の刑事ジョン・カーディナルは、自説をもとに捜査を再開する。
スーパー!ドラマTV公式サイトより
予告動画
原作について
このドラマの原作は、ジャイルズ・ブラントの小説『悲しみの四十語』(2000年刊行)です。
2001年の英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。
物語の舞台であるアルゴンキン・ベイは、著者が育ったオンタリオ州ノースベイがモデル。冬には人間をも凍りつかせるような極寒の地で、その厳しい環境も物語の要素のひとつとして重要視されています。
タイトルは〝子どもを失った悲しみは四十の言葉を連ねても言い尽くせない〟というフレーズから。
登場人物(キャスト)
警察
ジョン・カーディナル(ビリー・キャンベル)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。双極性障害で入退院を繰り返す妻と、トロントの高校に通う17歳の娘がいる。頑固で自信家だが、頭が良く根気強い。数年前、トロントで潜入捜査をしていた際、警察の情報を流したのではないかと疑われている。
リズ・デローム(カリーヌ・ヴァナッス)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。金融犯罪課から異動してきたカーディナルの新しい相棒。想像力に長け、勘が鋭い。水文学者のジョシュと同棲中。実はマスグレイブの指示でカーディナルの内部調査のために送り込まれた。
ノエル・ダイソン(クリステン・トムソン)
カーディナルの上司。リズの内偵捜査を承認しつつ、連続殺人事件の捜査を優先するよう命じる。頑固者で指示に従わないカーディナルに手を焼いているが、カーディナルの潔白が証明されることを望んでいる。
イアン・マクラウド(ジェームス・ダウニング)
カーディナルの同僚。カーディナルの気質を知り尽くしている。
ジェリー・コマンダ
州警察の刑事。リズに頼まれて資金洗浄の仲介人フランシスに接触する。
マルコム・マスグレイブ(デイビット・リッチモンド・ペック)
カナダ騎馬警察隊(RCMP)の曹長。カーディナルの汚職を調査するため、リズを送り込む。カーディナルが麻薬ディーラーのコーベットに買収され、密かに警察の情報を流していると疑っている。
家族
キャサリン・カーディナル(デボラ・ヘイ)
カーディナルの妻。双極性障害で入退院を繰り返している。
ケリー・カーディナル(アラン・ナベール)
カーディナルの娘。トロントの高校に通う17歳。病気の母親を心配している。
ジョシュ(オールデン・アデア)
リズの同棲相手。水文学者。リズに子どもを産んでほしいと思っているが、家族を作ることよりも仕事を優先する彼女に不満を募らせる。
犯罪者
フランシス・ケステジュー(ローレンス・ベイン)
資金洗浄の仲介人。カーディナルが持ち込んだ現金を闇チップと交換する。
ウディ・ボールドウィン(ゴード・ランド)
窃盗犯。仕事につかず、窃盗で生計を立てている。街でギターを持ったエリックの姿を見かけ、ギターを盗もうとイーディの家に忍び込む。
エリック・フレイザー(ブレンダン・フレッチャー)
楽器店の従業員。感情の起伏が激しく、他人を痛めつけたり征服したりすることに快感や楽しみを見出している。相棒のイーディを殺人者に仕立て上げようと、巧みに誘導する。
イーディ・ソームズ(アリー・マクドナルド)
薬局の店員。病気の祖母と暮らしており、顔にある大きな湿疹にコンプレックスを感じている。エリックに存在価値を見いだされ、彼に褒められるために冷酷な犯罪に手を染めてしまう。
そのほか
キース・ロンドン(ロバート・ネイラー)
トロント在住の19歳の青年。旅行中にエリックとイーディに拉致され、イーディの家の地下室に監禁される。
レン・トーレス(アリ・ハッサン)
法医学研究所の検死官。ケイティやトッドの遺体を検死する。カーディナルとは長い付き合い。
タミー・リドストローム(フィオナ・ハイエット)
カーディナルとコーベットを引き合わせた内通者デルロイ・モスの元愛人。カーディナルの秘密を握っており、金を強請っている。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
オンタリオ州北部の廃屋で、惨殺されたケイティ・パインの遺体が見つかる。ケイティは家出と判断され捜索を打ち切られていた失踪者だった。当時から「変質者による誘拐事件だ」と主張していたアルゴンキン・ベイ警察の刑事ジョン・カーディナルは、ほかにも被害者がいると考え、新しい相棒リズ・デロームと共に捜査を再開する。
カーディナルは湖で水死した10歳の少年ビリー・ラベルもまた、連続殺人の被害者だと推測する。ビリーの母親は目を離した隙に溺れたと話していたが、本当はその場にいなかったのではないかとカーディナルは疑う。
リズはカーディナルから窃盗事件の捜査を任される。容疑者としてあがったのは、車両窃盗の前歴があるウディ・ボールドウィンだった。
未成年の失踪者をひとりずつ調べていたジョンは、その中のひとりトッド・カリーが失踪前に「隠れ家を見つけた」と語っていた証言を得る。カーディナルがその空き家に行ってみると、袋に入ったトッドの遺体が放置されていた。
リズは密かにカナダ騎馬警察隊(RCMP)の曹長マスグレイブに会いに行く。マスグレイブはカーディナルが大物麻薬ディーラーのK・コーベットと繋がる内通者だと疑い、内部調査のためにリズを送り込んだのだった。
法医学研究所を訪れたカーディナルとリズは、殺されたトッドが酷い拷問を受けていたことを知る。トッドの頭部に巻き付けられていた録音テープには、犯人と先の被害者・ケイティの声が入っていた。
カーディナルの妻キャサリンが双極性障害を患っていることを知り、戸惑うリズ。トッドの家族に死因を聞かれ、言葉を詰まらせるカーディナルを見て、リズはとっさに代弁する。
リズは事件の捜査を優先して親族の集まりを欠席する。ジョシュが子作りについて家族に語ったことを知ったリズは、彼に怒りをぶつけ、2人の関係はぎくしゃくしてしまう。
カーディナルが夜中に外出するのを偶然見かけたリズは、マスグレイブの指示を無視してカーディナルを尾行し、カーディナルが資金洗浄のために闇チップを使っていることを知る。リズの勝手な行動にマスグレイブは激怒するも、「内偵が成功すれば悪いようにはしない」と約束する。
エリックとイーディは、新たな“獲物”キースに目をつける。
キースを拉致したエリックとイーディは、イーディが祖母と暮らす家の地下室にキースを監禁。エリックはイーディのコンプレックスを巧みに利用し、彼女に殺人を実行させようと誘導する。
カーディナルの過去を調べていたリズは、カーディナルがトロントで潜入捜査をしていたコーベットの麻薬組織への強制捜査を、マスグレイブが指揮していたことを知る。マスグレイブは金に困っていたカーディナルがコーベットに買収され、警察の内部情報を流したと主張。強制捜査で踏み込んだ警官のひとりが、仕掛けてあった爆弾で殉職していた。
カーディナルはキースという若者が行方不明になっているという情報を得る。キースが犯人に拉致されたと確信したカーディナルはキースの身を案じるが、犯人の手がかりは掴めない。
イーディはエリックの関心が自分以外の人間に向かうことを恐れ、監禁していたキースの指を切り落とす。
カーディナルとリズはキースがバスに乗って町にやってきたこと、次のバスを待つ間、バーで時間をつぶしていたことなどを突き止める。カーディナルは犯人に家族を苦しめるという新たな楽しみを提供し、キースの殺害を遅らせるために、キースの母親に記者会見をさせる。記者会見を見たエリックは、キースを生かすことを決める。
リズは同僚のコマンダ刑事に頼み、カーディナルが資金洗浄を行ったと思われる仲介人から交換前の紙幣を手に入れる。しかし調査の結果、紙幣は新札で犯罪に使われたものではなかった。リズが帰宅するとカーディナルが酔い潰れたジョシュを介抱していた。ジョシュはリズの車から避妊薬を見つけ、ショックを受けていた。
窃盗犯のウディは、ギターを抱えたエリックとイーディを見かけ、次の標的に定める。2人の留守中に家に押し入ったウディは、地下室に監禁されているキースを発見。救出しようとした矢先、エリックとイーディが帰ってくる。ウディはエリックに殺され、逃亡を図ろうとしたキースもまた失敗してしまう。
ウディの遺体が発見され、カーディナルはウディが犯人宅に侵入して殺されたと推測。ウディがギターの値を調べていたことから、楽器店の従業員エリックに辿り着く。エリックはカーディナルが到着する前に自宅を抜け出し、イーディにキースを運び出すよう指示する。
カーディナルを心配し、娘のケリーがトロントから帰ってくる。ケリーは入院中の母キャサリンを見舞うが、キャサリンは病院を抜け出し行方不明に。ケリーはキャサリンを見つけ出し、彼女の心に寄り添おうとする。
エリックの過去の勤務先から彼の潜伏先を突き止めたカーディナルとリズは、隠れ家の廃校に踏み込む。エリックは罠を仕掛けて2人を待ち受け、狙撃しようとするが失敗。カーディナルに追い詰められ、銃で自らの頭を撃ち抜く。
エリックが死んだことを知ったイーディは、逃がして欲しいと懇願するキースをナイフで刺す。
警察はキースを探すが見つからない。リズはカーディナルが会っていた女性がデルロイ・モスの元愛人であることを突き止める。モスはカーディナルとコーベットを引き合わせた内通者だった。カーディナルは元愛人に脅迫され、口止め料としてカジノで資金洗浄した金を支払っていたことを認める。リズはショックを受けながらも、「報告書を提出する」と断言する。
カーディナルはエリックの勤務先近くにある薬局を調べ、イーディが売り物の薬を持ち出したことを知る。イーディの家に向かったカーディナルは、地下室で彼女の祖母の遺体を発見、物置に隠れていたキースを救出する。
カーディナルが帰宅すると、イーディが娘のケリーを人質に取って待ち構えていた。カーディナルはイーディに撃たれるが、イーディは駆けつけたリズに撃たれ死亡する。
命を取り留めたカーディナルに、リズは確認するように過去の真実を告げる。トロントでの潜入捜査中、躁状態だった妻キャサリンがカーディナルの携帯を使って登録先の番号に連絡したことで、カーディナルの正体が発覚。強制捜査は失敗し、殉職者を出す結果に。カーディナルは妻をかばって不正の罪を被ろうとしていた。
数か月後、カーディナルは自宅に戻り、退院した妻キャサリンと娘ケリーと共に穏やかな時間を過ごす。ジョシュはリズに置き手紙を残して家を出て行く。
感想(ネタバレ有)
暗いし怖いしで何度も見るのを止めようかと思いましたが、最後まで見てよかったです。
前半は雪景色が語るように、音もなく静かに物語が進みます。
連続殺人事件、過去の潜入捜査、家族が抱える問題、内部調査。
新たにバディを組むことになったカーディナルとリズの関係も、手探り状態。
真実がわからないまま、いくつかの物語が同時進行で描かれます。
事件の捜査と共に、人間模様もなかなかの見どころになっていました。
カナダのドラマを見るのはこの作品が初めてですが、自然描写がとても効果的に使われていました。一面雪に覆われた林の中に立ち尽くす主人公の姿が印象的だった。
無口な人はなぜに雪景色が似合うのかしら。
そういえば高倉健さんも雪が似合う人だったなぁ。
連続殺人事件の犯人は、早い段階で明かされます。
サイコパスのエリックと、エリックに依存するイーディ。
エリックは他人を痛めつけることに愉悦を感じる人間なので、何をしでかすかわからなくて怖かった。彼らがキースを拉致監禁するシーンは、おそるおそる見ていました(目を覆うほどの拷問シーンはなかった)。
イーディがエリックに洗脳されて殺人者へと仕立て上げられていく様子も怖い。
でも最後のシーンでイーディがカーディナルを殺そうとしたとき、復讐じゃないと言っていたから、イーディにもエリックと同じような気質があったのかもしれません。
最後までキースがどうなるのかわからなくてハラハラしました。
助かってよかったです、ほんとうに。
リズはカーディナルの不正を調査するために送り込まれたのですが、一緒に捜査するうちにだんだんカーディナルを疑うことに心を痛めるようになっていく。
正直、カーディナルよりもリズに捜査を命じたマスグレイブのほうが信用できなかったわ。
命令無視したリズにキレて暴力ふるった時点で「こりゃダメだ」と思った。
マスグレイブは、自分が指揮した強制捜査の失敗を、どうしてもカーディナルのせいにしたかったんでしょうね。
結果的にはカーディナルは白だったんだけど、最後の最後まで白か黒かわからない状態…というかラスト直前まで黒が濃厚だったので、まんまと騙されました。
カーディナルは妻キャサリンをかばって通話記録を消し、彼女の罪を隠蔽したんですね。
で、そのことを知っている内通者の元愛人に脅されて、資金洗浄した金を渡していた。
真相に辿り着いたのは、リズがカーディナルを信じることを諦めなかったから。
でもそのせいで、リズは恋人のジョシュと別れることに。
シーズン2では数か月後の彼らが描かれるようです。楽しみ。
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