海外ドラマ 「刑事カーディナル 記憶に巣喰う虫」(全6話)についてまとめました。
「刑事カーディナル 悲しみの四十語」に続く、刑事カーディナルシリーズ第2弾。2018年にカナダのCTVで放送されました。
シーズン1から数か月後。カーディナルは妻キャサリンと穏やかな生活を取り戻します。前回は凍てつくような冬の雪原が印象的でしたが、今回は初夏。緑映える木々、深い森の中の湖、光を反射する水面。
しかし心癒やされる穏やかな時間は序盤の数分だけで、すぐに不穏な空気が…。惨たらしい事件がカーディナルを仕事に駆り立てさせ、夫婦の間に生じたすれ違いがキャサリンの心を疲弊させていきます。
前回同様、凄惨な殺人事件と美しい自然描写の対比が絶妙な緊張感を生んでいます。
繊細な心理描写にも心を打たれました。
Contents
作品概要
- 製作国:カナダ(2018年)
- 原題:CARDINAL: BLACKFLY SEASON
- 原作:ジャイルズ・ブラント『BLACKFLY SEASON』
- 脚本:サラ・ドッド
- 監督:ジェフ・レンフロー
- 製作総指揮:ジェニファー・カワハ
あらすじ
アルゴンキン・ベイのバーで赤毛の若い女性が保護された。貴重品すら持っていない彼女は、撃たれた頭に弾が残っており、その影響からか、あらゆる記憶を失っていた。保護したのが州警察の刑事ジェリー・コマンダだったため、カーディナルやデロームが捜査を引き継ぐことになる。
スーパー!ドラマTV公式サイトより
予告動画
登場人物(キャスト)
主要人物
ジョン・カーディナル(ビリー・キャンベル)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。双極性障害で入退院を繰り返す妻と、トロントの高校に通う17歳の娘がいる。妻キャサリンを愛し、過剰に心配する。トロントでの潜入捜査が失敗した理由を隠している。
リズ・デローム(カリーヌ・ヴァナッス)
アルゴンキン・ベイ警察の刑事。金融犯罪課から異動し、カーディナルの相棒となった。想像力に長け、勘が鋭い。キャリアアップのため、NIS(安全情報局)の面接を受ける。
レッド(アレックス・パクストン=ビーズリー)
頭に銃弾を抱え、記憶を失くした女性。バーにいたところをレッドに保護される。後にバンクーバーから来た学生で、テリー・テイトという名前であることがわかる。記憶の一部が戻った直後、病室から姿を消す。
キャサリン・カーディナル(デボラ・ヘイ)
カーディナルの妻。双極性障害で入退院を繰り返している。現在は自宅に戻り、セラピーに通っている。
警察
ノエル・ダイソン(クリステン・トムソン)
カーディナルの上司。リズとイアンにNIS(安全情報局)への推薦状を頼まれ、最終的にリズを選ぶ。入院中の妹の病状を気にかけており、職務に集中できない様子も。
イアン・マクラウド(ジェームス・ダウニング)
カーディナルの同僚。NIS(安全情報局)の面接を受けるため上司のダイソンに推薦状を頼んでいたが、後から申し出たリズが推薦されることになり、不満を抱く。
ジェリー・コマンダ(グレン・グールド)
州警察の刑事。バーで男たちに絡まれているレッドを保護する。先住民のジョーダンを更生させようと、リズが通うボクシングジムに連れて行く。
アラン・クレッグ(ケヴィン・ハンチャード)
州警察の刑事。バイカー族に詳しい。元バイカー族のレイチェルを情報屋として利用している。
マルコム・マスグレイブ(デイビット・リッチモンド・ペック)
カナダ騎馬警察隊(RCMP)の曹長。カーディナルの汚職を調査している。カーディナルが麻薬ディーラーのコーベットと繋がっていると考え、カーディナルを強請っていたタミーから情報を聞き出そうとする。
バイカー族
デイヴ・エルハースト
マリーナ経営者。友人宅から拳銃を盗んだあと姿を消していたが、ビューフォート・ヒルの洞穴で遺体となって発見される。地元のバイカー族〈ノーザン・レイダーズ〉の資金洗浄係をしていた。
ラサール(クリス・ホールデン=リード)
地元のバイカー族〈ノーザン・レイダーズ〉のリーダー。麻薬売買を取り仕切っている。レイが縄張りを乗っ取ろうとしていることを知り、手下たちにレイを捜させる。
ウォンバット(ジョン・アンブローズ)
地元のバイカー族〈ノーザン・レイダーズ〉の幹部。マリーナの従業員マーシを脅してデイヴの居所を聞き出そうとする。デイヴを殺した犯人を探そうとした矢先、レイたちに殺される。
ザック(グレッグ・ホバネシアン)
ラサールの手下。レイチェルの恋人。
レイチェル・ウェルズ(ニコレット・パース)
リズが目を掛けている元バイカー族の少女。リズと同じボクシングジムに通っている。実はクレッグの情報屋。薬物絡みで逮捕歴があり、情報提供に同意して服役を免れた。情報を入手するため、バイカー族のザックとよりを戻す。
犯罪者
レイ・ノースウィンド(ブルース・ラムゼイ)
先住民“ノースウィンド”の名前を持つ青年。ラサール率いる〈ノーザン・レイダーズ〉の縄張りを乗っ取ろうと企む。アフリカ系カリブ人の民間信仰を思わせる秘密めいた儀式を行う。
レオン(ダン・ペトロニエヴィッチ)
レイの手下。レッドを撃った犯人。サディスティックな連続殺人を繰り返す。レッドを殺し損ねたことをレイに知られ、レッドを生きたまま連れてくるよう命じられる。
ケヴィン(ジョナサン・ケルツ)
麻薬の売人。家族のために手っ取り早く犯罪で金を稼ごうと考え、レイとレオンの仲間に加わる。
トゥーフ(ブロック・モーガン)
マリファナの売人。ケヴィンと共にレイの仲間に加わるが、レオンに殺される。
各話のあらすじ
アルゴンキン・ベイのバーで飲んでいた州警察の刑事コマンダは、若い男たちに絡まれている赤毛の女性を保護する。彼女は自分の名前や住所を言えず、貴重品すら持っていなかった。その後、彼女の頭の海馬に銃弾が残っており、あらゆる記憶を失っていることが判明。カーディナルとリズは彼女を「レッド」と呼び、捜査を引き継ぐことに。
頭部から銃弾を取り除く手術は成功するものの、レッドの記憶が戻る気配はない。カーディナルは彼女の頭から取り出した銃弾から、使用された銃を特定しようとする。やがてデイヴという男が友人宅から銃を持ち出したらしいことがわかり、カーディナルはレッドにデイヴの写真を見せることに。だがレッドが反応を示したのは、彼女がトラックに拾われた場所に近いビューフォート・ヒルの写真だった。
カーディナルはビューフォート・ヒルを訪れ、川の近くの洞穴の中で遺体を発見する。
ビューフォート・ヒルの洞穴で見つかった変死体は、行方不明のマリーナ経営者デイヴと判明。カーディナルは2つの事件に関連があると見て捜査を進める。やがて、デイヴは地元バイカー族〈ノーザン・レイダーズ〉の資金洗浄係だったことがわかる。
レイとレオンは、ケヴィンとトゥーフに手伝わせ、バイカー族の隠れ家を襲って麻薬を横取りする。ケヴィンはバイカー族を敵に回すことを恐れるが、レイとレオンはバイカー族の幹部ウォンバットを襲って監禁する。
バイカー族の隠れ家を突き止めたカーディナルとリズだったが、ウォンバットが連れ去られた後だった。隠れ家を見張っていたのはリズが目を掛けているレイチェルで、彼女は州警察に情報提供することを条件に服役を免れていた。
レッドは徐々に記憶を取り戻し、ケヴィンと言い争ったことや、誰かに追われて森の中を逃げていたことを思い出し始める。
ケヴィンは徐々にレイへの不信を募らせるが、逃れるに逃れられない。一方、カーディナルとリズはガソリンスタンドの防犯映像にレッドが映っているのを見つけ、彼女がテリー・テイトというバンクーバー在住の大学生であることを突き止める。
ケヴィンのことを思い出したテリーは、監視の目をすり抜けて病院を抜け出すが、街で見覚えのある黒い車に遭遇し恐怖に立ちすくむ。レオンはテリーを殺し損ねたことをレイに知られ、街で車を走らせテリーを探していた。
テリーが弟のケヴィンに会うために逃げ出したことを知ったカーディナルとリズは、ケヴィンを知るバイカー族の男ゴーディを探す。だがゴーディは姿をくらまし、部屋にはウォンバットの首が吊されていた。
カーディナルはテリーがかつて住んでいた空軍基地に向かい、家の中に隠れていたテリーを見つけ保護する。リズに「レイチェルを解放してほしい」と懇願されたクレッグ刑事は、レイチェルを呼び出して任務を解くことを告げ、バイカー族と距離を置くよう命じる。
テリーは思い出した記憶の一部をカーディナルに語る。カーディナルは弟のケヴィンがバイカー族を脅かす新興勢力に関わっていると考え、ケヴィンの捜索を始める。洞穴を訪れたテリーは、そこで自分を撃った犯人が黒いブーツを履いた首の太い金髪の男であることを思い出す。
カーディナルは儀式の専門家に会い、洞穴に残されていた痕跡がアフリカ系カリブ人の民間信仰パロ・マヨンベだと知る。しかし人間を供え物にする習慣はなく、正統な儀式ではないと専門家は語る。
クレッグの情報屋としての任務を解かれたレイチェルだったが、よりを戻したバイカー族のザックから逃れられずにいた。レイチェルは薬物の過剰摂取で亡くなり、彼女の更生を望んでいたリズはショックを受ける。
レオンはケヴィンとトゥーフを連れだし、ケヴィンの目の前でトゥーフを殺害。ケヴィンはますますレイとレオンに逆らえなくなる。
妻キャサリンからの連絡が途絶え、不吉な予感に駆られたカーディナルはキャサリンを探す。キャサリンは過剰に心配するカーディナルに息苦しさを覚える。
トゥーフの遺体が発見される。その近くで見つかったブーツの足跡などから、犯人はデイヴが殺害された洞穴にいた人物で、凶器はテリーを撃った銃だとわかる。密かにレイと協力関係を続けてきたクレッグ刑事は、この件から手を引こうとするが、レイにテリーの居場所を突き止めるよう脅される。
カーディナルはトゥーフの母親を訪ね、彼がレオンと“ノースウィンド”と名乗る男たちと同居していたことを知る。だが“ノースウィンド”という名はレイが先住民を脅して手に入れた名前だった。レオンの写真を確認したテリーは、洞穴にいた男だと断言する。
ケヴィンは薬で朦朧とした状態でトラックを運転し、事故を起こす。警察は横転したトラックを発見し、持ち主がレイであることを突き止める。警察の保護施設に匿われているテリーを見つけたレオンは、夜間に火事を起こし、家の外に出てきたテリーを拉致する。
キャサリンはカーディナルを強請っていたタミーの訪問を受け、カーディナルがトロントで任務に就いていた際、自分の電話がもとで潜入捜査がばれ、捜査員が亡くなったことを聞かされる。
レオンが保護施設に火をつけテリーを拉致したことがわかり、カーディナルは内部に情報を漏らした者がいると考える。
レイを知る保護観察官によると、レイは幼い頃から死に異常な興味を抱き、動物実験を繰り返していたという。レイが以前住んでいたマイアミでは複数の未解決事件が発生しており、地元の捜査官は犯人を“魔術師(エルブルホ)”と呼んでいると語る。
拉致されたテリーはケヴィンと共に監禁され、かつてその場所に足を踏み入れたためにレオンに追いかけられ、銃で撃たれた記憶を蘇らせる。レイは2人を生贄にする新月の儀式に向けて準備を進める。
クレッグはカーディナルに銃を突き付け、レイの隠れ家へ連れて行く。カーディナルを殺すよう命じられたクレッグはとっさにレイに銃口を向けるが、レイにナイフで切りつけられる。現場に駆けつけたリズはレオンを逮捕し、ケヴィンを救出。レイはテリーを連れて逃亡を図るが、カーディナルに撃たれる。
キャサリンを心配するカーディナルはリズに車を借りて帰宅するが、キャサリンは「夕日を撮影してくる」という書き置きを残して外出し、飛び降り自殺を図っていた。
感想(ネタバレ有)
今回もなかなかの不気味さでありました。わたし虫がね…特に幼虫系が、大の苦手なんですよね。めっちゃアップで映されますんで、虫嫌いの方は要注意です。
シーズン1からの問題(キャサリンの病気とマスグレイブの調査)が引き継がれていて、これが最悪の形で幕を閉じます。
タミーはなんだってキャサリンに真実をぶっちゃけちゃったのかなぁ。わざわざ本人に言わなくてもよくない? カーディナルがキャサリンをかばってたこと、知ってただろうに。だから強請ってたんだよね?
自分のことでいっぱいいっぱいだったのかもしれないけど(そういう意味ではマスグレイブにも罪はある)、これは言わなくていい言葉だった。
キャサリンの自殺の理由がそれだけだったとは思わないけど、残酷な結末でした。
犯人が先住民の名前を騙っているところが興味深かったです。神秘的な存在になりたかったのでしょうね。やっていることは、本来の民間信仰を邪にゆがめた〝まがい物〟でしたが。
登場人物の造形という部分では、レオンとの差別化がいまいちうまくできていなかったような気も。
よくわからないんだけど、結局、レイはあくまで儀式を執り行うだけで、殺害したりバラバラにしたりするのはレオンの係だったということでしょうか? 幼少時の話を聞くと、レイのほうがサディスティックな人間のように思えるのですが…。
ケヴィンとトゥーフとは、刑務所の中で知り合って意気投合したんでしょうか。あまり気が合いそうにない2対2の組み合わせだったけどなぁ。
あとすごく気になったのが、レイチェルの死。
わたしはてっきりザック(よりを戻したバイカー族)に殺されたんだとばかり思ってました。ジョーダンも何か隠しているように見えたし。
でも最後までそこには触れられなかったので、やっぱり薬物の過剰摂取で亡くなったんでしょうね。情報屋の任務を解かれても、薬物からは逃げられなかったのか…。
クレイグがレイと繋がっていたのには驚きました。
「後悔している」という言葉には、個人的な利益のためにレイチェルを利用してしまった自責の念も含まれていたと思いたいです。
後半のたたみかけるような展開はシーズン1のほうが面白かったかな。次作「過去からの報せ」は今回のラストシーンから始まり、カーディナルが妻の死に隠された真相を追う展開になるようです。
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