海外ドラマ「警視グレイス」(全2話)についてまとめました。
2021年3月に英ITVで第1話が放送され、700万人以上の視聴者数を獲得したミステリードラマ。第2話の放送前にシーズン2の制作が決定しました。IMDbの評価は7.3。
原作は、世界で約2000万部以上を売り上げているピーター・ジェイムズの「ロイ・グレイス」シリーズ。脚本は「ルイス警部」「刑事モース」のラッセル・ルイスが担当し、「ホワイト・ドラゴン」など数々のヒット作に主演する英国の名優ジョン・シムが主人公ロイ・グレイスを演じています。
Contents
作品概要
- 放送局:AXNミステリー
- 放送時間:2021年7月17日(土)16:00~ ※一挙放送
- 製作国:英国(2021年)
- 原題:Grace
- 原作:ピーター・ジェイムズ「ロイ・グレイス」シリーズ
- 脚本:ラッセル・ルイス
- 監督:ジュリア・フォードほか
予告動画
原作について
このドラマの原作は、ピーター・ジェイムズの「ロイ・グレイス」シリーズです。37の言語で出版され、世界で約2000万部以上を売り上げている正統派の英国ミステリー。
今回のドラマは、日本でも翻訳本が出版された『1/2の埋葬』と『会員制殺人サイト』が原作になっています。
登場人物(キャスト)
主要人物
ロイ・グレイス(ジョン・シム)
仕事を愛する孤独な中年警視。霊能力者に頼った “特殊な捜査方法” が問題となり、現場から外されそうになっている。昔なじみのブランソンから奇妙な失踪事件について助言を求められ、捜査に協力することに。6年前に妻サンディが失踪しており、未だに心を煩わせている。唯一の心の支えは金魚。
グレン・ブランソン(リッチー・キャンベル)
グレイスの昔なじみの巡査部長。妻と2人の娘がいる。問題を起こしてデスクワークに回されたグレイスに、花婿が失踪した事件について相談。グレイスと協力して捜査を行うことに。霊能力については全く信じておらず、ことあるごとに霊能力者を頼るグレイスを理解できない。
アリソン・ヴォスパー(ラキー・アヨラ)
本部長補。グレイスのお目付役。グレイスが霊能力者のもとへ通うのをやめさせようとするが、まるで効果がない。グレイスの精神面を心配し、ハンプシャーへの異動を勧める。
ハリー・フレイム(エイドリアン・ローリンズ)
グレイスが信頼を寄せる霊能力者。犯人の手がかりを得るため、グレイスはたびたび被害者の遺品を預かっては彼のところへ持ち込み、相談している。
第1話
マイケル・ニュワード(トム・ウェストン=ジョーンズ)
やり手の不動産開発業者。翌日にアシュリーとの結婚を控え、独身最後の夜を友人4人と楽しむ。冗談で友人たちに棺ごと地中に埋められてしまう。
マーク・ウォーデン(マット・ストーキー)
マイケルの学生時代からの親友で、不動産会社の共同経営者。花婿マイケルの付き添い人。事故の夜はジャージー島に出張中で、濃霧のため空港で足止めされていた。
アシュリー・ヘインズ(アリーシャ・ベイリー)
マイケルの婚約者。3歳のときに両親が事故で他界し、施設で育った。マイケルを見つけて欲しいとグレイスに頼む。
デイヴィ・マーシュブルック(Cian Binchy)
事故現場に駆けつけた自動車回収業者の息子。現場に落ちていたトランシーバーを拾い、無断で持ち帰る。
第2話
クラウディオ・フリゼッリ
被害者。アパートの一室で宙吊り遺体となって発見される。テーブルの上にセックスドラッグが散乱していたことから、性行為中の不運な事故死と思われたが…。
ジェニー・ストレットン(クリスティ・フィリップス)
研修中の事務弁護士。牧草地でバラバラ遺体となって発見される。学生ローン完済のため、デリヘルのほかにアダルトサイトにも出演していた。遺体の食道にはスカラベが入っていた。
ザック・ブライス(アミット・シャー)
会社経営者。通勤電車で偶然落とし物のUSBを拾ったことから、恐ろしい事件に巻き込まれる。
ソフィ・ブライス(クリスティーナ・チョン)
ザックの妻。酒好きで浪費癖がある。ザックとともに事件に巻き込まれる。
レジナルド・M・ディアス(オーウェン・ロバーツ)
ザックが通勤電車で拾ったUSBの持ち主。性犯罪で前科がある。昨年出所し、現在は暴力的なポルノ作品のプロデューサー業を営んでいる。
アンディ・ギルニー(ジェームズ・タルピー)
デジタル鑑識で働いている青年。ジョンの部下。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
警視ロイ・グレイスは殺人事件の捜査で霊能力者ハリー・フレイムに助言を求めたことを裁判で追及され、“霊能力にすがる刑事”として有名になってしまう。グレイスは警察の信用を傷つけたとして上司から叱責され、デスクワークを命じられる。
昔なじみの巡査部長グレン・ブランソンはそれまでと変わらない態度で彼に接し、結婚式の前夜に花婿のマイケル・ニュワードが失踪した事件について相談を持ちかける。デスクワークに飽き飽きしていたグレイスは、非公式でブランソンのチームの捜査に協力することに。
失踪したマイケルは友人たち4人とスタッグパーティーを楽しんでいる最中に失踪し、友人のうち3人は交通事故で死亡、1人も意識不明の重体に陥っていた。調べるとマイケルが経営する不動産会社はケイマン諸島に別口座を持っており、グレイスは金絡みではないかと共同経営者で親友のマークを怪しむ。
事故車の中から埋葬用の平紐が見つかり、事故死した友人が勤務する会社から棺が紛失していることが判明。友人たちが悪ふざけをしてマイケルを棺に閉じ込めた後、事故に遭ったものと思われた。
一方、事故現場に駆けつけた自動車回収業者の息子デイヴィは、現場に落ちていたトランシーバーを拾い、無断で持ち帰っていた。トランシーバーで棺の中のマイケルと交信していたデイヴィは、何者かに殺害されて森の中で発見される。デイヴィが残したメモから棺の場所を特定したグレイスだったが、掘り起こした棺の中は空だった。
マークはマイケルの婚約者アシュリーと密通していた。この状況を利用してマイケルを殺そうとしたが、何者かが棺の中からマイケルを運び出していたのだ。さらにその男にケイマン諸島の口座にある金を送金するよう脅迫され、指示に従ったあと自宅のベランダから突き落とされて殺されてしまう。
グレイスはアシュリーが不動産開発業者と結婚しては夫を殺害し、金を手に入れるという犯行を繰り返していたことを突き止める。マイケルを棺から出して監禁し、マークを殺害したのはアシュリーの共犯者ヴィックだった。
金を手に入れた2人は船で逃げようとするが、グレイスに見つかってしまう。アシュリーはヴィックを殺して被害者を装うが、グレイスに正体を突き付けられ観念する。
ヴィックの車のカーナビの履歴から監禁場所を割り出したグレイスは、地下室に閉じ込められていた瀕死のマイケルを発見し、救出する。
アパートの一室で宙吊りの遺体が発見される。被害者の名はクラウディオ・フリゼッリ。テーブルの上にセックスドラッグが散乱していたことから性行為中の不運な事故死と思われたが、グレイスは違和感を覚える。
販促会社を経営するザック・ブライスは、通勤電車で隣の席の男が落としたUSBを拾う。USBをパソコンに接続すると“スカラベ・コーポレーション・インターナショナル”のサイトが現れ、覆面の男がベッドルームで若い女性を殺害する様子が映し出される。
やがて殺された女性は牧草地でバラバラ遺体となって発見され、研修中の事務弁護士ジェニー・ストレットンと判明。遺体の食道からは犯人が入れたと思われるスカラベが見つかる。フリゼッリのアパートからもスカラベが見つかったことから、グレイスは同一犯による犯行と考え始める。
“スカラベ・コーポレーション”から脅迫を受けたザックは警察に通報し、ジェニー殺害の一部始終を目撃したことを話す。ザックが拾ったUSBの持ち主は性犯罪の前科があるレジナルド・M・ディアスと判明するが、ディアスは自宅のバスルームで硫酸漬けにされて殺されていた。
ザックの妻ソフィが拉致され、犯人たちの指示に従ったザックも拘束されてしまう。犯人の車を突き止めたEJははねられて頭を打ち、昏睡状態に陥る。犯人が持っていたパソコンにはディアス殺害時の動画が保存されており、明日の21時15分に夫婦殺害を生配信するという予告があった。
“スカラベ・コーポレーション”は1000人以上の会員を持つ、会員制殺人サイトだった。運営者は元軍人カール・ナッシュや南アフリカの特殊部隊員アントン・コーフらで、デジタル鑑識のジョンの部下アンディ・ギルニーも彼らの仲間だったことがわかる。
グレイスたちはナッシュの倉庫に踏み込み、殺害直前のブライス夫妻を救出する。ナッシュは逮捕されるが、銃撃戦でブランソンが負傷する。
グレイスはヴォスパー本部長補からハンプシャーへの異動を勧められる。自分がこの街を去れば、失踪した妻の帰る家がなくなってしまう、と決めかねていたグレイスだったが、裁判で有罪が確定し、転地療養も悪くないと思い始める。
感想(ネタバレ有)
刺激的なシチュエーション
2話とも設定が刺激的でした。第1話の事件の始まり方が強烈でしたね。結婚式前夜に友人たちがふざけて花婿を棺桶に閉じ込めて埋めて、その友人たちが全員交通事故死(ひとりは昏睡状態)って…そんなことある? どちらにとっても不運としか言い様がない。
個人的にはそのシチュエーションがいちばん刺激的でした。トランシーバーを拾ったデイヴィとの要領を得ないやりとりにもハラハラさせられたし、どうなるかわからない、先が読めない展開にドキドキしました。
が…その後がいまいち。犯人がわかりはじめたあたりから盛り下がってしまった感じがします。なんだろう。「不慮の出来事」のほうが断然面白くて、計画された殺人のほうがつまらなく感じてしまったんですよね。
物足りない人物描写
ひとつひとつの要素が駆け足で、物足りなさも感じました。アシュリーはマイケルに対して特別な思いを持っていたみたいだけど、画面からはほとんど伝わらない。マークがマイケルを裏切った背景も。
説明不足な部分もあって、「?」と思うところも多かったです。棺桶に閉じ込めるイタズラはマークの入れ知恵だったみたいだけど、アシュリーは知らなかったのかなぁ?
第2話のほうも同様。登場人物ひとりひとりの描写が薄いので、衝撃的な事件の印象ばかり残って、心があんまり動かなかったというのが正直なところ。もう少し被害者や加害者の人生を見せてほしかった。
なんとなく総集編を見せられているような感じがしたのは、文庫本で上下巻ある原作のストーリーを2時間弱に詰め込んだからでしょうね。たぶんドラマの脚本はかなり端折ってあるのではないかと思います。
有罪判決を受けたグレイス、ハンプシャーへの異動に前向きな発言をしていたけど、シーズン2はどうなるんだろう。失踪した妻サンディの行方も気になります。
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