北欧ドラマ「マックス・アンガー 揺るぎない瞳」(全8話)についてまとめました。
ソ連崩壊直後のロシアと第二次世界大戦末期のスウェーデンを舞台に、壮大なスケールで展開するスリリングなサスペンス。IMDbの評価は6.2。
スウェーデンの作家マルティン・エスターダールによるデビュー作「スターリンの息子」を、スウェーデン&イギリスが合作して映像化。失踪した恋人を捜しにロシアへ向かった主人公を待ち受けていたのは…。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOWプライム
- 放送時間:2022年6月6日(月)から毎週月曜23:00~ほか
- 製作国:スウェーデン/イギリス(2021年)
- 原題:Max Anger – With One Eye Open
- 原作:マルティン・エスターダール『スターリンの息子』
あらすじ
1996年。スウェーデンの通信会社テレフォネラはロシアに進出すべく、ロシアの同業大手、サンクトペテルブルクGSM(SPGSM)の買収計画を進める。その仲介役を務めるベクトル社のビジネスアナリスト、マックスは同僚であるロシア人パシーと交際していたが、機密情報を扱う仕事柄、彼女との関係を公にできない。
WOWOW公式サイトより
やがてテレフォネラで情報漏洩事件が発覚する一方、パシーは忽然と消息を絶ってしまう。マックスは彼女を捜そうとサンクトペテルブルクへ。だがそこで非常事態に見舞われてしまう。同じころ、テレフォネラのダーヴィドは、自身がひた隠しにしている秘密をある男が知っていて動揺する。それは彼を悪夢へと引きずり込むことになり……。
予告動画
原作について
このドラマの原作は、スウェーデンの作家マルティン・エスターダールの長編小説「スターリンの息子」です。
登場人物(キャスト)
ベクトル社
マックス・アンガー(アダム・ルンドゲレン)
ベクトル社の有能なビジネスアナリスト。元特殊部隊の兵士でロシアに詳しい。元国営の電話会社テレフォネラが進めるサンクトペテルブルクGSMの買収計画を仲介している最中、恋人のパシーが突然姿を消し、彼女を追ってサンクトペテルブルクへ向かう。幼少期のトラウマが原因で抗不安薬を手放せない。
パシー・コワレンコ(エヴィン・アフマド)
マックスの恋人。ロシア人。ロシアのサンクトペテルブルク大学で選挙分析を行いながら、スウェーデンのベクトル社で外部コンサルタントとして働いている。テレフォネラの情報漏洩事件が発覚した直後に姿を消す。
チャーリー・クヌートソン(ヨハン・レーボリ)
ベクトル社の会長。テレフォネラが進める買収計画を仲介していたが、最終段階にきて情報漏洩事件が発覚。窮地に陥る。カールから目的を知らされぬまま、ヴィクトル・グシンを捜し出すよう命じられている。
サラ(マリン・クレピン)
マックスの直属の上司。マックスがロシア人のパシーと親密な関係にあることに気づき、別れるよう釘を刺す。チャーリーとともにテレフォネラとSPGSMの契約締結に向けて奔走する。
テレフォネラ社
エリーサベト・ストール(アニカ・ハリン)
通信会社テレフォネラの東欧地域統括マネージャー。マックスやチャーリーの取引相手。最終契約の直前に、突然SPGSMの全アクセス権が欲しいと言い出す。
ダーヴィド・ユーリーン(ヨエル・スピラ)
テレフォネラのITセキュリティー部長。金と引き換えに自社の機密情報をリークし、ベクトル社に罪を着せた。その後、秘密を握られたレイに脅迫され、彼に協力を強いられる。
SPGSM関係者
マルセル・ルソー(David Bertrand)
SPGSMの代理人。ラザレフの依頼を受け、テレフォネラとSPGSMの買収取引を進めている。ダーヴィドが密かにテレフォネラの機密情報を売った人物。
マルガリータ・ユシコワ(Milda Noreikaite)
マルセルの愛人。パシーがフェリーの乗車券を渡して亡命させようとしていた女性。マルセルを裏切り、ある重要な書類をパシーとドマショフに渡していた。
ネストル・ラザレフ(アレクサンダー・ラパポート)
ロシアの有力者で、テレフォネラとSPGSMの買収取引を裏で操る謎の人物。B&S社のマルセルに任せる一方で、密かに工作員を送り込んで強引に取引を進めようと画策する。
レイ・マッキンリー(リヌス・ヴァールグレン)
ラザレフが送り込んだロシアの工作員。ダーヴィドの秘密を握り、協力するよう脅迫する。
ロシアでのマックスの協力者
ミラ・チチェロワ(イェヴァ・アンドレイェヴァイテ)
マックスがサンクトペテルブルクで出会った威勢のいいタクシー運転手。心臓病を患う母親と幼い子供と3人で暮らしている。マックスに雇われ、パシーの捜索に協力する。
セルゲイ・ドマショフ(Reimo Sagor)
ロシア人記者。パシーが情報を求めて接触していた人物。警察からはテロリストと見られ、監視されている。
コースチャ(Valentin Novopolskij)
ミラの友人。マックスとミラに協力する。機械いじりが得意。
ロシア警察
ルスラン・マルコフ(Nikolaj Antonov)
刑事。パパノワ大佐の指示でパシーやマックスを追っている。
ユリア・パパノワ大佐(Margarita Ziemelyte)
警察署長。ラザレフと目的を共有する人物。
そのほか
ヴィクトル・グシン
戦時中、ソ連大使館の外交官でスターリンの側近だった男。スパイとして暗躍していた。現在は消息不明で、カールがチャーリーに捜索を命じている。
カール・ボルイェンスティーナ(パー・ラグナル)
元外務省の弁護士。ヴィクトル・グシンが買収取引に関与しているかどうか調べるよう、チャーリーに依頼する。若い頃グシンの妻タチアナと愛し合うようになり、彼女と共謀してグシンを逮捕させた。
ヤーコブ・アンガー(Staffan Kihlbom Thor)
マックスの父。酒浸りで不在がちだった。マックスが子供の頃に納屋で首を吊って自殺した。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1996年、ストックホルム。スウェーデンの通信会社テレフォネラは、ロシア進出を果たすべく同業大手サンクトペテルブルクGSM(SPGSM)の買収計画を進める。マックス・アンガーは、その仲介を担うベクトル社でビジネスアナリストとして働いていた。
取引が最終段階に入った頃、マックスは上司のサラから同僚のパシーとの交際をやめるよう忠告される。パシーは外部コンサルタントで、ロシア人だった。
契約直前になって、テレフォネラのマネージャーであるエリーサベトはITセキュリティー部長のダーヴィドを同席させ、契約の条件としてSPGSMの全システムのアクセス権を要求する。ロシア法に触れる行為だとマックスたちが動揺する中、今度はテレフォネラのサーバーから機密情報が流出する事件が起きる。
ダーヴィドは「流出元はベクトル社しか考えられない」と言い、ロシア人従業員を調べたほうがいいと助言する。マックスがパシーのパソコンを調べると、極秘資料をスキャンした痕跡が見つかる。パシーに連絡するも繋がらず、困惑するマックス。
その頃、パシーはサンクトペテルブルクに到着し、ドマショフと合流。身を隠すため、用意された隠れ家へ向かおうとしていた。
翌朝、マックスはパシーからの留守電のメッセージを聞き、彼女が犯人だと確信する。上司のサラにそのことを伝え、マックスは独断で空港に向かう。
マックスはサンクトペテルブルクにあるパシーの部屋を訪ねる。同じ建物に住む女性の話では、彼女は何日も帰っていないという。マックスが帰った後、女性は警察に電話し、刑事のルスラン・マルコフに男が訪ねてきたことを伝える。
翌朝、マックスはパシーが在籍しているサンクトペテルブルク大学のミーシン教授に会う。パシーは教授に呼び出されてサンクトペテルブルクへ戻ったのだが、教授は身に覚えがないという。さらにここ数週間、パシーが仕事の傍ら何かを調べていたようだったと話す。
その頃スウェーデンでは、チャーリーとサラがロシアから来たSPGSMを迎えていた。契約を締結させるべくテレフォネラのエリーサベトに会いにいったサラは、パシーが機密情報を漏らした犯人だと話してしまう。だがその夜の契約の場にエリーサベトは現れず、SPGSMはテレフォネラが要求するアクセス権を渡す決断をする。
テレフォネラでITセキュリティー部長を務めるダーヴィドは、レイ・マッキンリーという男から、マルセル・ルソーとの密会写真を突き付けられる。ダーヴィドは金と引き換えに自社の機密情報をリークしたのだった。レイは秘密を守る代わりに自分たちに従うようデーヴィドを脅す。
マックスは威勢のいいタクシー運転手ミラを雇い、本格的な捜索に乗り出す。パシーの部屋の鍵を壊して侵入したマックスは、彼女が金髪の男と一緒に写っている写真を見つける。ミラの協力で金髪の男を見つけ出したマックスは、ある場所へ向かう彼を尾行するが、男はマックスに声を掛けられると逃げ出してしまう。
男が入っていった廃屋を調べると、部屋の中には血痕とパシーの携帯が残されていた。そこへロシア警察が現れ、マックスとミラは逮捕される。
ロシア警察に捕まったマックスとミラは、警察署でパシーの家にいた刑事ルスラン・マルコフに会う。ルスランは2人が釈放されたことを知ってすぐに追いかけるが、署を出た2人は既に姿を消していた。ルスランは上司のユリアからマックスを逮捕するよう命じられる。
ダーヴィドからテレフォネラの機密情報を買ったマルセル・ルソーは、マルガリータとともにネストル・ラザレフと面会し、買収取引を進めていることを報告。だが取引が失敗に終わることを見越したラザレフは、工作員を使って進めようと画策する。
ダーヴィドは弱みを握られているレイから、ある不正プログラムをテレフォネラのメインサーバーにインストールするよう指示される。それはスウェーデン中で大規模な通信障害を発生させるプログラムだった。ダーヴィドは断ろうとするが、家族が危険な目に遭うと脅され、やむなく実行する。
釈放されたマックスとミラは、なぜか再び警察に追われるようになる。2人はミラの友人コースチャのもとへ逃げ込み、彼の助けを借りてパシーの携帯電話の電源を入れることに成功。発着信履歴を調べ、ある女性がフェリー乗り場の土産店からパシーに何度も電話していたことがわかる。
サンクトペテルブルク大学の研究室にあるパシーのデスクには、“マルガリータ・ユシコワ”宛のフェリー乗船券が残されていた。マックスとミラはミーシン教授から名簿を借りてマルガリータを捜し出そうとするが、そのとき突如爆発が起こり…。
サンクトペテルブルク大学の研究室が何者かに爆破され、その場にいたマックスとミラはかろうじて脱出。だが重傷を負ったミーシン教授はその後亡くなってしまう。
一方、ベクトル社のサラとチャーリーはついに最終契約にこぎ着けるが、その夜テレフォネラのサーバーに仕込まれた不正プログラムが発動し、大規模な通信障害が起きてしまう。プログラムを止めようとしたダーヴィドは、ロシアの工作員レイに殺されそうになるが、不正がばれないよう協力することを約束して命拾いする。
ミーシン教授の死を知らされたチャーリーは、パシーにSPGSMとヴィクトル・グシンに接点があるか調べるよう頼んでいたことをサラに打ち明ける。それはもともとカールからの依頼で、そのためにテレフォネラの書類コピーをパシーに渡してロシアへ行かせたという。パシーを犯人扱いしたサラは、チャーリーの告白を聞いて動揺する。
パシーのデスクにあったフェリーの乗車券には、マルガリータ・ユシコワという名前とSPGSMの電話番号が記載されていた。マックスとミラはSPGSMを訪れてマルガリータに会い、パシーと一緒に写真に写っている金髪の男セルゲイ・ドマショフが彼女の居場所を知っているはずだと教えられる。
ドマショフを見つけ出したマックスは、彼からパシーが拉致されたことを聞く。ドマショフは記者で、パシーが情報を求めて接触した人物だった。
彼によるとSPGSMの背後には政治的意図を持った権力者たちが存在し、彼とパシーはその証拠書類を握っているという。マルガリータはSPGSM出資者の愛人で、2人に証拠書類を渡して亡命するはずだった。
そのとき覆面の男たちが現れ、突然マックスとドマショフに向かって発砲。ドマショフは撃たれ、レニングラーツキー駅のロッカーの鍵をマックスに渡して息絶える。
その頃、ネストル・ラザレフに監禁されていたパシーは、ドマショフが死んだことを知らされる。
マックスはドマショフから手渡されたキーで、駅のロッカーに保管されていたSPGSMの内部情報を手に入れる。そこにはこれまで隠されてきたSPGSMの株主構成や膨大な資金の流れが記されていた。さらに、パシーがマックスの実家で見つけた写真もあり、そこに写っていた人物がスターリンに仕えていたヴィクトル・グシンだと知らされる。
マックスからFAXで送られてきた書類を受け取ったサラは、エリーサベトに話すべきだとチャーリーに進言。だがチャーリーはダーヴィドに話してしまい、書類の存在がレイに伝わってしまう。その夜、レイはベクトル社に忍び込んで書類を盗み出す。
サラがカールに写真のことを尋ねると、カールは若い頃に出会ったロシア人女性タチアナについて語り始める。1943年の春、外務省に勤めていたカールはストックホルムで「ラ・ボエーム」を観賞したあと、ホテルで開かれた夜会に招かれた。そこでソ連大使館の外交官だったグシンと彼の婚約者タチアナに出会ったという。
後日、タチアナに呼び出されたカールは、グシンがスターリンの側近でスパイだと聞かされる。彼女は自分が“貢ぎ物”だと言い、亡命を手伝ってほしいとカールに助けを求めてきたのだった。やがて二人は愛し合うようになるが、タチアナを亡命させることはできず、彼女はロシアに戻ることになる。
マックスはパシーがグシンの調査をしていたと知り、グシンの過去を調べ始める。彼は愛国的行為でNKVDから勲章を授かっており、1963年の飛行機事故で死亡したとされていた。
ミラはラザレフの部下に捕まり、人質として拘束される。書類を持ってくるよう脅されたマックスは、ミラを助けるため廃工場へ向かう。
マックスは製紙工場に侵入し、ラザレフの部下2人と銃撃戦の末ミラを救出することに成功。だがその過程で書類が燃えてしまう。ベクトル社に保管されていた書類も盗まれ、マックスはマルガリータに書類の原本を入手するよう頼み込む。
マルガリータはマルセルの自宅を訪ねて原本を盗み出そうとするが、既にラザレフから情報を得ていたマルセルは彼女の目的に気付いていた。逃げ出したマルガリータを亡命させようとしたマックスとミラだったが、彼女はラザレフの部下に殺されてしまう。
マックスはマルセルに呼び出され、ネストル・ラザレフという人物がパシーの居場所を知っていることや、彼が会いたがっていると聞かされる。罠を恐れたマックスは、パシーが生きている証拠としてチェスの最後の3手を知らせるよう要求する。
やがてパシーからチェスの最後の3手が届くが、そこには彼女からのメッセージが含まれていた。意味を解読したマックスは、ラザレフの正体がグシンだと気付く。
一方、ダーヴィドはリヴが作成した報告書を差し替え、システム障害の原因を隠蔽しようと画策。だがリヴが報告書をスウェーデン情報局(SAPO)に送ったため、SAPOの取り調べを受けることに。ダーヴィドは不正アクセスの件を報告しないよう、リヴを説得しようとするが…。
カールは手術を受ける前に、マックスの父ヤーコブ・アンガーの墓を訪ねる。かつて、カールはグシンの妻となったタチアナと愛を交わし、彼女と共謀してグシンを逮捕させていた。
マックスはネストル・ラザレフとヴィクトル・グシンが同一人物であることをサラに伝え、グシンの調査を依頼する。ネストルの弟であるアレクサンドルを訪ねる道中、ミラは記者だった父親がKGBに連行され、10年後に獄中死したことをマックスに打ち明ける。マックスもまた、父親が自殺したことを話す。
2人はアレクサンドルに会い、グシンが死亡したネストル・ラザレフの名前と籍を家族から購入し、彼になりすましていたことを知る。アレクサンドルはネストルの死亡証明書をマックスに手渡す。
その頃、ラザレフは幹部たちの集まる会合に出席し、テレフォネラとの契約が終わったことを報告。彼らの狙いはテレフォネラが行うすべての通信を傍受し、スウェーデンの情報を把握することだった。
ダーヴィドは部下リヴの協力を得てSAPOの取り調べを切り抜けるが、その後、リヴから説明を迫られる。殺し屋レイからも脅され、追い詰められたダーヴィドは、自分が犯した罪を告白する手紙をSAPOに送って自ら命を絶つが、手紙はレイによって隠蔽されてしまう。
サラとチャーリーはテレフォネラの幹部に会い、SPGSMに隠し財産があることや、オーナーの多くがロシアの権力者とつながっていることを伝え、取引の中止を訴える。しかしエリーサベトは既に契約書にサインしてFAXしてしまっていた。
B&S社のマルセルは、会社を巻き込まないでいてくれたら証拠の書類を送るとマックスに約束する。だがその直後、マルセルはラザレフの部下たちに殺されてしまう。
マックスはラザレフと会うため待ち合わせ場所へ向かい、ラザレフの部下たちに薬を打たれて拉致される。それを見たミラは追跡を試みるも失敗する。
拉致されたマックスはグシンの館に運ばれ、グシンと対面する。マックスはネストル・ラザレフの死亡証明書を武器にパシーを引き渡すよう要求するが、グシンは応じない。何も知らないマックスに妻タチアナがマックスの祖母であることや、マックスの父ヤーコブを殺したことを告げ、彼を監禁しようとする。
パシーは隠し持っていたチェスの駒を使ってグシンの部下を倒し、マックスとともに監禁部屋から脱出する。銃撃戦になり、マックスは銃を奪われて殺されそうになるが、駆けつけたミラに救われる。マックスはグシンを撃ち、パシーとミラとともにその場から逃げる。
警察署長のパパノワ大佐とマルコフ刑事が現場に駆けつけたとき、グシンはかろうじて生きていた。だがパパノワ大佐はマルコフをその場から遠ざけると、自らの手でグシンの息の根を止める。マックスはミラに感謝と別れを告げ、パシーとともにロシアを脱出する。
3か月後。ロシア大統領選挙の決戦投票が行われ、ボリス・エリツィン現大統領が2期目の当選を果たす。SPGSMを巡る一連の騒動は収束し、テレフォネラとの大型取引が完了。パパノワ大佐はサンクトペテルブルク市長に就任する。
回復したカールはマックスに会い、ヤーコブの出生の秘密について語る。タチアナは出産前にグシンの手の者に暗殺されたが、赤ん坊は奇跡的に生き延び、何も知らないアンガー夫妻の養子となった。カールは1963年にグシンが死んだという知らせを聞いたとき、ヤーコブに真実を話そうとしたが思いとどまったという。
ヤーコブは己のルーツを探し求め、その結果グシンに殺されてしまったのだった。マックスはヤーコブの父親について尋ねるが、カールは知らないと話す。
タチアナはかつて、誰にも言わないと約束させたうえで、カールに真実を打ち明けていた。グシンとの結婚式の夜、グシンからタチアナに“偉大な指導者”スターリンが贈られたことを。
感想(ネタバレ有)
最終話ですべての謎が明かされて、すっきりしました。あーーややこしかった!!
第5話からカールの過去の回想シーンが差し挟まれるようになり、ヴィクトル・グシンと彼の関係がわかり始めて、ようやく物語の背景が見え始めた感じでした。それまでは、誰と誰が繋がっていて、何を目的に動いているのかさっぱりわからなくて、毎回あらすじを書くのに苦労しました(未だにカールがよくわからないんですけど、ベクトル社の出資者だったんでしょうか?)。
私は個人レベルの問題を扱った人間くさいドラマが好きなので、こういう政治や企業が絡んだ作品は苦手なんですけど、ヴィクトル・グシンの謎に迫る後半は一気に加速して面白かったです。あと、ミラといいパシーといいサラといい、このドラマは女性がめちゃくちゃカッコよくて素敵だった。
最後の最後に明かされたマックスの父親ヤーコブの出生の秘密が衝撃的でした。タチアナの子供だということはなんとなく予想できましたが、父親がグシンでもカールでもなく、まさかの“偉大な指導者”にびっくりです。そういえば原作のタイトル「スターリンの息子」だった!(そのまんまじゃん!)
最終話のサブタイトル「瞳の奥に眠るもの」は、マックスが引き継いだ血を示唆しているのでしょうね。
この作品は2021年に作られていて、ドラマの舞台は1996年なんですけど、描いている問題がものすごくタイムリーで怖いくらいです。最終話でグシンが語ったこのセリフとか。
「エリツィンはいい盾だ。完璧な盾だよ。この売国奴の陰で我々はひっそりと新たな指導者を育てる。西側諸国の鼻先で民主主義の名のもとにな。数年待つがいい。強力な指導者の新時代がやってくる。かつてのようにな。それがロシア国民の望みだ」
この「新たな指導者」とは、今世界中を敵に回しているあの人のことですよね。1996年当時、エリツィン氏が「盾」であることに気付いていた人はいたのでしょうか…。
ヴィクトル・グシンが死んだあとも、殺し屋のレイは仕事を続けていました。彼の雇い主がパパノワ大佐に変わっただけで、結局なにも変わっていないということなのでしょうね。