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各話のあらすじ(ネタバレ有)
「カササギ殺人事件」から2年後。人気作家アラン・コンウェイの担当編集者だったスーザンは、ギリシャのクレタ島で恋人アンドレアスとともにホテル経営をしていた。
だが経営はうまくいかず、本の世界を恋しく思い始めていた矢先、イギリスからトレハーン夫妻が訪ねてくる。
夫妻はサフォーク州でホテル「ブランロウ・ホール」を経営しており、失踪した娘セシリーの捜索をスーザンに手伝ってほしいと言う。
セシリーは、8年前に「ブランロウ・ホール」で起きたフランク・パリス殺人事件を題材に書かれたアランの小説『愚行の代償』を読み、「本の中に真犯人が記されている」と告げた直後に姿を消したと言う。
フランク・パリスはホテルの宿泊客だった。部屋が気に入らないと言って交換を希望し、セシリーの婚約者エイデンがヨルガオ棟12号室へ案内していた。
事件が起きたのはセシリーとエイデンの結婚式前夜で、パリスの遺体がホテルの部屋で発見されたのは結婚式の最中だった。
担当刑事のロック警視は、ホテルの用務員ステファン・レオニダを逮捕。夜勤の従業員デレクの目撃証言や、ステファンの部屋から血痕と盗んだ紙幣が見つかったことが決め手となった。ステファン自身も犯行を自白し、殺人罪で終身刑を言い渡されていた。
トレハーン夫妻は『愚行の代償』を編集したスーザンに、「ホテルに来て本を読み直し、セシリーが何に気づいたか解明してほしい」と告げ、1万ポンドの謝礼を提示する。
困惑するスーザンだったが、自分が手がけた本が失踪事件の発端になったことに罪悪感を覚え、イギリスに戻ることを決意。アンドレアスに「ここでの生活は幸せじゃない」と告げてクレタ島を去る。
8年前。アラン・コンウェイは『愚行の代償』を書き進めていた。舞台は1954年の夏、デヴォン州のトーリー村。ハリウッドで活躍した英国人女優メリッサ・ジェイムズが、自宅の寝室で殺害される事件が発生する。
メリッサは事故に遭って女優を引退し、保険金で村の近くのホテルを購入していた。「ヨルガオ館」と名づけたホテルは、ガードナー夫妻が一切の業務を任されていたが、ひどい赤字だった。
不正を疑ったメリッサは、ロンドンから資産アドバイザーのアルジャーノンを呼び寄せた。アルジャーノンはメリッサの自宅へ向かう途中、車で男性をはねてしまうが、放置して立ち去ってしまう。
映画プロデューサーのオスカーは、メリッサのために3年かけて映画の企画を準備してきたが、「気が変わった」という一言であっさり出演を断られ、破滅の危機に陥る。
そしてメリッサの夫ジョンは、彼女の愛が消えてしまったことを知り、約束していたオペラ「フィガロの結婚」をひとりで見に行くことになる。
8年前。アランの担当になったスーザンは、初めてアランと会う。そのとき偶然フランク・パリス事件の新聞記事が目につき、アランは「被害者を知っている」と話す。新作を望むスーザンは、小説の題材になると助言する。
英国に着いたスーザンは、赤い愛車に乗ってサフォーク州のホテル「ブランロウ・ホール」を訪れる。ヨルガオ棟に泊まり、『愚行の代償』を再読しながら関係者に話を聞いて回る。
事件当夜、ステファンを見たという従業員のデレクに話を聞くと、彼はステファンの毛糸帽をかぶり工具バッグを手にした人物を見ただけで、顔を確認してはいなかった。さらに、ホテルで盗みを働いていたのはステファンではなく、客室係のナターシャだったことも判明する。
物語の世界では、名探偵アティカス・ピュントの探偵事務所に依頼人のシュルツ氏が現れる。彼はニューヨークの芸能事務所の社長で、殺害された看板女優メリッサ・ジェイムズの事件を解決してほしいと言う。
気が進まないピュントだったが、助手のマデレンに「解決すればあなたの名声が高まる」と勧められ、依頼を受けることに。
ピュントはマデレンとともにデヴォン州を訪ね、担当刑事のチャブ警部補から事件の経緯を聞く。遺体の第一発見者は主治医のレナード・コリンズ医師だった。メリッサは夜の6時28分にコリンズ医師に電話して助けを求めたが、10分後に医師が到着すると彼女はすでに死んでいたと言う。
チャブ警部補は疑わしい人物として、ホテルの金を横領していた支配人夫妻や、メリッサに裏切られた映画プロデューサー、さらに資産アドバイザーのアルジャーノン・マーシュらの名をあげる。
ピュントはコリンズ家を訪ね、レナードと妻サマンサに会う。家の前にはフェンダーがゆがんだ車が停まっていた。車の持ち主はアルジャーノンで、彼はサマンサの弟だった。レナードは、ホテルの支配人夫妻の横領などで、メリッサが神経を参らせていたと話す。
ピュントらが帰った後、レナードとサマンサは退屈なトーリー村を出ていくことを決める。サマンサの叔母が亡くなり、遺産がすべてサマンサに相続されることになったのだった。義弟のアルジャーノンを信用できないレナードは、彼には遺産のことを黙っておくよう、サマンサに言い聞かせる。
スーザンは、被害者のフランク・パリスが事件直前に会っていた弁護士サジッド・カーンを訪ねる。カーンによると、フランクは実家の相続で妹ジョアンと揉めていたらしい。
フランクはオーストラリアで会社を興すも破綻、相続した実家を売って金を作ろうとしていたが、その実家には妹のジョアンと夫のマーティンが住んでいた。
スーザンは夫妻に会いに行き、事件の前日にフランクが訪ねてきたこと、家の権利をめぐって口論になったことを聞き出す。
トレハーン夫妻は、結婚式の前日に万年筆がなくなったことをスーザンに話す。それはセシリーが“縁起物”として父親から借りた物で、エイデンによると、盗んだのはステファンだと言う。
物語の世界では、ピュントが支配人夫妻から話を聞いていた。夫妻はメリッサが書いたと思われる手紙の下書きを見つけたという。そこには「いとしい人。偽りの生活にはもう耐えられない。私たちの愛を公表しましょう」と書かれていた。
映画プロデューサーのオスカー・ベルリンは、事件当日の6時5分にメリッサの家を訪ね、メリッサと家政婦のフィリスが言い争っているのを聞いたと話す。
ピュントはメリッサの寝室の壁に覗き穴があることに気づいていた。穴をあけたのはエリックで、彼はメリッサを覗き見し、ストッキングとスカーフを盗んだことを打ち明ける。メリッサはそのことに激怒し、親子に解雇を宣告していたのだった。
資産アドバイザーのアルジャーノンは、メリッサにインチキの投資話を持ち掛けて金をだまし取っていた。彼もまた事件当日にメリッサの家を訪ね、彼女からホテル経営の件で相談を持ち掛けられていたが、殺害は否定する。
8年前。セシリーとエイデンがホテルの庭でくつろいでいると、フランクがやってくる。フランクはカードキーが壊れていると言い、エイデンに12号室のキーを渡す。
「今夜はオペラ“フィガロの結婚”を観に行く」とフランクは言うが、セシリーはその夜“フィガロの結婚”が上演されないことを知っていたため、怪訝に思う。
現在。スーザンはロンドンへ行き、知り合いの作家クレイグ・アンドリューズを訪ねる。クレイグのコネを使って、服役中のステファンと面会するためだ。
小さな出版社の面接も受けるが、相手は15年前にスーザンが採用した編集者ネイサンだった。ネイサンはSNSでバズる本を重視しており、スーザンの古い価値観を「時代遅れ」だと否定する。
スーザンはアランの元恋人で、彼の遺産を相続したジェイムズ・テイラーと再会する。ジェイムズは男娼をしていた頃にフランクと出会い、彼にアランを紹介してもらったと話す。
『愚行の代償』の扉ページには、「フランクとレオの思い出に」という献辞が記載されていた。ジェイムズによると、“レオ”は当時のフランクが気に入っていたオーストラリア出身の男娼で、アランも会ったことがあるという。だがその後“レオ”は界隈から姿を消していた。
ジェイムズは『愚行の代償』執筆時のアランのノートや、取材時の録音データをスーザンに渡す。
スーザンはクレイグに関係を迫られ、逃げるように彼の家を出てホテルに駆け込む。だがスマホを彼の家に置き忘れてしまう。
アンドレアスはスーザンのいない日々に耐えられず、ホテルを売ってイギリスに戻ることを考え始める。スーザンのスマホにかけるとクレイグが出て、2人の関係を誤解してしまう。
物語の世界では、レナードとサマンサの隠し事がアルジャーノンにばれてしまう。姉のサマンサが叔母の遺産を相続すると知ったアルジャーノンは、遺産を手に入れるため、レナードを脅迫する。
ピュントは、メリッサの夫ジョンが事件当夜「フィガロの結婚」を見ていないことを知る。主演のオペラ歌手がひき逃げ事故に遭い、公演は中止になっていたのだ。
ピュントたちがジョンを問い詰めると、劇場へは行かず家に戻り、メリッサと口論になったと話す。そしてメリッサに離婚を告げられ、寝室で彼女の首を絞めて殺したと告白する。
ピュントとチャブ警部補は、窓の外の人影に気づき、外に出る。だが逃げられてしまい、家の中に戻るとマデレンの悲鳴が聞こえてくる。駆けつけると、ジョンの胸にナイフが刺さっていた。
スーザンはホテルの従業員デレクと彼の母グウィネスが、8年前の事件後にアランの訪問を受けていたことを知る。2人は無礼なアランに腹を立てて取材を拒んだため、仕返しに作中でひどいキャラクターにされたと話す。
デレクはジョアンの夫マーティンがホテルに出入りしていた洗濯業者で、セシリーと仲たがいして切られたことを話す。
スーザンは更生プログラムの枠で働く従業員が、ステファンのほかにもうひとりいたことを知る。それはジム責任者のリアムだった。
リアムはステファンが1日12時間態勢で酷使されていたことや、リサに肉体関係を強いられていたことを明かす。フランクが殺される2週間前、森の中で抱き合うリサとステファンを見たという。
スーザンは妹ケイティの家が売りに出されていることを知り、彼女を問い詰める。ケイティはゴードンと離婚したことを打ち明ける。ゴードンは20歳年下の秘書と不倫関係に陥り、彼女のために会社の金を使い込んで解雇されたという。
借金を返すために家を売らなくてはならなくなり、ケイティは小さな家に引っ越すことに。娘のデイジーは家庭を壊した父親に激怒し、繊細なジャックは大学を休学することになった。自分がバカみたいで、話せなかったというケイティ。
ケイティの家からの帰り道、スーザンは危険な運転をするシルバーの車とすれ違う。車を運転していたのはマーティンだった。
セシリーの遺体が森の中で発見される。スーザンはリサから契約終了を告げられ、明日ホテルを出ていくよう促される。落胆するスーザンの前に、アンドレアスが現れる。
物語の世界では、ピュントの捜査が続いていた。警察はジョンがメリッサを殺して自殺したと見ていたが、ピュントは他殺だと考えていた。
レナードはアルジャーノンに遺産を分け与えようと、サマンサを説得しようとする。急に態度が変わったレナードを不思議がるサマンサ。そこへピュントたちが訪ねてくる。
ピュントはメリッサが書いた手紙をアルジャーノンに見せる。すると彼は「彼女が僕に送るはずだった手紙だ」と言う。メリッサとは半年ほど前から男女の関係だったと。
ピュントは、アルジャーノンが先週水曜日にオペラ歌手を車でひいて、助けずに逃げたことを指摘する。ゆがんだフェンダーには血が付着しており、現場に落ちていた吸い殻はアルジャーノンが吸うタバコと同じ銘柄だった。
アルジャーノンはひき逃げを認めるが、反省のそぶりすら見せず、レナードに罰金の支払いを頼む。
ピュントはメリッサの家に関係者を集め、事件の真相を語り始める。メリッサの遺体には、2つの索状痕があった。彼女は夫のジョンに首を絞められ失神したあと、息を吹き返したのだ。
メリッサを殺したと思い込んだジョンは恐れおののき、家から逃げ出した。その後、メリッサは目を覚まし、階下の電話を使ってレナードに助けを求めた。メリッサを殺したのはレナードだった。
メリッサが書いた手紙は、アルジャーノンではなくレナードに宛てた手紙だった。レナードはメリッサと不倫関係にあり、その秘密をアルジャーノンに知られて脅迫されたのだ。
信心深い妻のサマンサは姦淫を許さず、もしも知られれば離婚を言い出される。そうなれば、彼女が受け取る遺産の恩恵にはあずかれない。不倫関係を公表するというメリッサの口を塞ぐために、彼女を殺す必要があった。
チャブ警部補は、レナードとアルジャーノンを逮捕する。そして「ジョンを殺した犯人は?」と問う。ピュントは「彼を殺したのは私です」と告白する。
8年前。アランが書いた『愚行の代償』の原稿を読んだスーザンは、いくつかの問題点を指摘する。アランは、登場人物のエリックが子供の漫画を読んでいることも、メリッサの家に実在の俳優バート・ラーのサインが飾ってあることも、真相にたどり着く“手がかり”だと言う。
物語の世界では、ピュントがジョンを殺した犯人について説明していた。彼は今回の依頼人であるシュルツ氏が偽者だと気づいていた。シュルツ氏は、マデレンがピュントに事件を調べさせるために雇った俳優だった。
メリッサの熱烈なファンだったマデレンは、メリッサを殺したジョンを許せず、ピュントとチャブ警部補が怪しい人影(実はエリックだった)を追って外に出た隙に、壁に掛かっていたナイフを手に取り2階から降りてきたジョンを刺したのだった。マデレンはその場でチャブ警部補に逮捕され、連行される。
スーザンは刑務所へ行き、服役中のステファンと面会する。ステファンはフランクを殺していないと主張し、自白したのは「罪を認めれば刑が軽くなる」と警官に強要されたからだと話す。
スーザンは、ステファンがつぶやいた「俺の人生の唯一の輝き…希望の夜明けが奪われた」という言葉の意味がわからず悩む。そして彼が何かを守るために嘘をついているのではないかと疑う。
刑務所からの帰り道、スーザンはパブ「鋤と星亭」に立ち寄る。その店名がヒントになり、事件の真相に気づく。
ジョアンは夫マーティンの思わせぶりな言動から、彼がフランクを殺した犯人だと疑うようになっていた。だがスーザンは、マーティンが妻に虚勢をはるために殺人犯のふりをしていることを見抜き、ジョアンに「彼は殺人犯じゃない」と教える。
ホテルに戻ったスーザンは、関係者を集めて事件の真相を語り始める。結婚式の前日、デレクが2階で見たのはステファンに変装した“レオ”だった。
“レオ”には獅子座という意味もあり、エイデンの肩には獅子座のシンボルマークが彫られていた。アランが“レオ”のことを「メルボルン帰り」だと言ったのは、オーストラリアのことではなく、ダービーシャーのメルボルンのことだった。
ロンドンで男娼の“レオ”だったエイデンは、セシリーと結婚して新たな生活とお金を手に入れた。だが結婚式の前日、かつての客だったフランクがホテルを訪れ、エイデンが“レオ”であることに気づいてしまった。
フランクはオペラ「フィガロの結婚」を持ち出して、物語に登場する伯爵と同じように、初夜権を主張した。部屋のカードキーが壊れたとウソをつき、エイデンに今夜部屋に来るよう匂わせたのだった。
エイデンはフランクを殺して、ステファンに罪を着せようと計画した。ステファンの酒にセシリーの睡眠薬を入れて眠らせ、自分がステファンに変装をしてデレクに目撃されるよう演出した。そして12号室に入り、フランクを撲殺した。
ステファンの部屋で見つかった血痕は、エイデンがセシリーから盗んだ万年筆で細工したものだった。
スーザンはセシリーとステファンが恋仲だったことも暴く。リアムが森で見たのはリサとステファンではなく、セシリーとステファンだった。リサが彼を解雇したのは、その事実を知ったからだ。
そしてセシリーが産んだ娘ロクサーナの父親は、エイデンではなくステファンだった。ロクサーナという名前は、ルーマニアの言葉で“輝き”と“夜明け”を意味するという。
エイデンは森の中でセシリーを殺したことを告白する。セシリーは『愚行の代償』を読んで真相を知り、公表しようとしていた。
事件を解決に導いたスーザンは、アンドレアスとともにクレタ島に戻ることを決める。ネイサンの出版社からオファーがあり、フリーランスとして仕事を受けることになったのだ。
ホテルの雑用から解放されたスーザンは、もう一度『愚行の代償』を読み直す。そしてアランが本の中に仕掛けた細工に気づく。
アランは物語の中に「ライオン」をちりばめ、レオが真犯人だと示唆していた。村のパブ「赤獅子亭」、エリックが読んでいる漫画「ライオン」、アルジャーノンの車のナンバー「L10 N5」。俳優バート・ラーは映画「オズの魔法使」のライオン役だった。
アンドレアスは「もうアランに人生をかき乱されるな」と言い、島で一番美しい場所“サイクロ洞窟”へスーザンを案内する。スーザンはジェイムズにもらったアランの資料を焚火に投じて燃やす。
「マデレン・ケイン(Madeline Cain)」は、「エイデン・マクニール(Aiden MacNeil)」のアナグラムだった。
感想(ネタバレ有)
今回もとても楽しませてもらいました。このシリーズ、大好きです!
個人的にいちばん気に入ってる点は、物語の中にもうひとつの物語が埋め込まれていて、2つの本格ミステリを楽しめるところです(メタフィクションミステリーと呼ぶらしい)。2倍おいしい。素敵。
ひとつは現実世界で、編集者スーザン・ライランドを主人公とする「セシリー・マクニール失踪事件」と「フランク・パリス殺人事件」。
もうひとつは空想世界で、名探偵アティカス・ピュントを主人公とする「メリッサ・ジェイムズ殺人事件」。こちらはスーザンの担当作家アラン・コンウェイが8年前に執筆した小説『愚行の代償』の物語という設定。
2つの物語は、同時進行で交互に描かれます(原作は未読なので、ドラマとは違っているかもわかりません)。こういうところが、すごく好みなんですよね!
そして何より、『愚行の代償』の時代設定が1954年で、アガサ・クリスティを彷彿とさせる世界観というのがたまらない。見ているだけでわくわくするし、楽しい!
でも、「カササギ殺人事件」のラストがあんなことになってしまったので、まさか続編が出るとは思ってもみませんでした。
スーザンはロンドンを離れてクレタ島に渡ってしまったし、アランは殺されてしまったし。アランがいないと、このシリーズは成立しないだろうから。
ところが今回もアランは(回想シーンで)ちゃっかり登場し、相変わらずの性格の悪さでひっかき回してくれます。本の中に“真犯人”を隠すとか、もう本当に笑っちゃうくらい意地悪だよね。普通に警察に行けよ!って思うよね。
『愚行の代償』には、事件の関係者をモデルにしたと思われる登場人物が何人か登場します。
- 殺された女優メリッサのモデルは、ホテルの総支配人リサ
- 詐欺師アルジャーノンのモデルは、エイデン
- ヨルガオ館の支配人夫妻は、ブランロウ・ホールの経営者トレハーン夫妻
- フィリスとエリックの親子は、ホテルの従業員デレクと母グウィネス
- 映画プロデューサーのオスカーは、被害者のフランク・パリス
- チャブ警部補は、ロック警視
でもこれ、あんまり深い意味はないんですよね。
例えばフィリスとエリックの親子がひどい人物に描かれている理由、スーザンは「何か意味があるのでは」と考えていたけど、フタを開けてみれば、デレクとグウィネスが取材を断ったのでその腹いせに意地悪をしただけだった。
トレハーン夫妻が悪人に書かれているのも、同じ理由かと。どんだけ性格悪いのアラン。
スーザン(レスリー・マンヴィルがキュートすぎる!)がピュントの幻覚と会話するシーンが毎回好きでした。なんかほっこりするし、ピュントがさりげなくヒントを出すところもいい。
『愚行の代償』の謎解きも最高でした。個人的にはフランク・パリス事件よりも面白かった。
わたしは第2話で、マデレンがメリッサの寝室で倒れた時に「この人怪しい!」と思ったのですが、その後「あれ、やっぱり怪しくないか」と思い直し、すっかりだまされました。
最高でしたね、マデレン。
噂によると作者のホロヴィッツは第3作に意欲的らしいので、もしかしたら続編あるかも。楽しみぃ!!
時系列(ネタバレ有)
- フランク・パリスがロンドンで若い男たちと乱痴気騒ぎをして遊びまわる(男娼のレオと出会う)
- アランが2作目を書き上げ、フランクから男娼のジェイムズを紹介される
- フランクがオーストラリアに移住し、事業を始める(その後すぐ破綻)
- フランクが英国に戻り、ホテル「ブランロウ・ホール」でレオ(エイデン)と再会する
- フランクが妹のジョアンと相続の件で揉めた後、ホテルの部屋で殺害される
- フランクを殺した犯人としてステファンが逮捕される
- スーザンがアランの担当編集者になり、3作目の題材としてフランク・パリス事件を勧める
- アランが事件の関係者に取材をし、3作目となる『愚行の代償』を書き上げる
- アランが末期がんを患う
- アランがシリーズを終わらせるために『カササギ殺人事件』を書き上げ、殺害される
- スーザンが事件の真相を暴き、編集者を辞めてクレタ島に渡る
- 『愚行の代償』を読んで真犯人に気づいたセシリーが失踪する
- スーザンがトレハーン夫妻の訪問を受け、調査を依頼される
- スーザンが英国に渡り、フランク・パリス事件とセシリー失踪事件を解決する
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