WOWOWの連続ドラマ「向こうの果て」(全8話)についてまとめました。
殺人事件の容疑者として逮捕された主人公の数奇な人生と、彼女によって人生を破滅させられた男たちの姿を描いたミステリードラマ。
監督は「ミッドナイトスワン」で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治氏。謎めいた主人公・池松律子を松本まりかさんが演じます。
一瞬にして作品世界に引き込まれてしまう、独特の空気感に圧倒されます。松本まりかさんの鬼気迫る演技も必見。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOWプライム
- 放送時間:2021年5月14日(金)から毎週金曜23:00~ほか
- 原案:ゴツプロ!第六回公演『向こうの果て』
- 脚本:竹田新
- 監督:内田英治
- 音楽:牧戸太郎
- 主題曲:小山豊「時雨」
あらすじ
昭和60年の東京。マンションの一室で放火殺人が発生する。逮捕された池松律子(松本まりか)と、死亡した小説家の君塚公平(松下洸平)は幼なじみだった。律子は事件を担当する検事・津田口(柿澤勇人)の取り調べを、どこか浮遊しているような態度でするりとかわしていく。津田口は事件の真相を追って、これまでに律子と関わってきた人物たちと接触し始める。
WOWOW公式サイトより
次第に明らかになってくる律子の数奇な人生と、彼女を取り巻く男たちの姿。しかし、彼らが口々に証言する律子の印象は、すべてがバラバラであった。津田口は事件を深追いするほどに、徐々に律子という人物そのものに傾倒していく。やがて津田口は、律子と公平が幼少期を過ごした昭和30年代の青森・津軽に、この殺人事件の真相を解く鍵があるとにらみ始める。
舞台版・小説版について
本作は、ドラマ・舞台・小説の3つのコンテンツで展開される、オリジナルシナリオの連動プロジェクトとなっています。
舞台版は劇団ゴツプロ!が手掛け、2021年4月23日より下北沢・本多劇場にて上演されます。舞台版キャストはドラマ版キャストとは異なり、小泉今日子さんが律子を演じることが決定しています。
小説版は、ドラマ版および舞台版の脚本を手掛けたゴツプロ!の座付き作家でもある脚本家・竹田新氏によって書き下ろされ、2021年4月8日に発売されました。
登場人物(キャスト)
主要人物
池松律子(松本まりか/幼少期:伊礼姫奈)
放火殺人容疑で逮捕された女性。青森出身。被害者の君塚公平は彼女の同棲相手で、幼なじみだった。検事・津田口の取り調べを受けるも、捉えどころのない態度で追及をかわす。
君塚公平(松下洸平/幼少期:南出凌嘉)
放火殺人事件の被害者。小説家。律子とは青森にいた頃からの幼なじみだが、彼女から日常的に暴行を受けていた。末期の膵臓がんを患い、遺言を残して律子を保険金の受取人にしていた。
津田口亮介(柿澤勇人)
律子の担当検事。自身も両親に捨てられ、姉と2人で世間を生き抜いてきた辛い過去を持つ。事件の真相を追って律子の関係者たちと接触し、次第に律子に傾倒していく。
南川澄子(山野海)
検察事務官。ときに感情的になる津田口を冷静に戒める。
律子の関係者
池松喜平(塚原大助)
律子の父。民謡一座〈池松喜平一座〉の歌手。酒癖が悪く、酒を飲んでは一座の仲間たちや家族に暴力を加え、横暴に振る舞っていた。23年前に火事で亡くなっている。
村上姫昌(加治将樹/幼少期:田村継)
青森の刑事。律子と公平のもう一人の幼なじみ。子供の頃から律子に想いを寄せる一方で、律子と公平が互いに好き合っていることに気づき、嫉妬する。一時期、律子と夫婦同然の暮らしをしていた。律子を「嘘つきな女」と語る。
京波久雄(豊本明長)
大手企業〈京波製菓〉の社長。律子が18歳の時に結婚した最初の夫で、火事の第一発見者でもある。離婚後も律子のことが忘れられず、探偵のように彼女の生活を監視し続けていた。律子を「贅沢な女」と語る。
山之内一平(渋川清彦)
律子の二番目の夫。元プロ野球選手。律子と出会ってからケガが原因で球団を解雇され、転落の一途をたどってヤクザの組員となった。律子を「残酷な女」と語る。
行島道夫(宇野祥平)
東京に住む律子の叔父。律子の両親の死後、幼い律子を引き取った。愚直で不器用な男。律子を「娼婦のような女」と語る。
そのほか
木田武(辰巳琢郎)
東京地検中央支部・支部長。津田口の上司。律子の事件を単純な保険金殺人と考えており、事件の背景にこだわる津田口を理解できない。
君塚隼吾(浜谷康幸)
公平の父。民謡一座〈池松喜平一座〉の三味線奏者。律子の父・喜平とは幼なじみで、2人で一座を立ち上げた。律子の家の隣人でもあり、日頃から父親の暴力を受けている律子を気にかけていた。
村上松夫(泉知束)
姫昌の父。民謡一座〈池松喜平一座〉の手踊り担当。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
昭和60年、東京。マンションの一室に火をつけ、同棲相手の君塚公平(松下洸平)を殺害した容疑で逮捕された池松律子(松本まりか)。担当検事・津田口(柿澤勇人)は律子の取り調べを行うが、彼女は捉えどころのない態度で追及をかわす。
被害者の君塚公平は末期の膵臓がんを患っていたが、治療を拒み続けていたという。律子はそんな公平をヒモ扱いし、所構わず罵倒して殴る蹴るの暴行を加えていた。公平は遺言を残して律子を保険金の受取人にしており、律子は「保険金目当てで殺した」と供述する。
昭和35年、青森。律子の父・池松喜平(塚原大助)は、自身が立ち上げた「池松喜平一座」の民謡歌手だった。三味線奏者だった公平の父・君塚隼吾(浜谷康幸)とは親友同士だったという。
だが律子は母親がほかの男と浮気をしてできた子供だという噂があり、周囲の彼女に対する視線は厳しかった。父・喜平もまた、律子に暴力をふるうなど辛くあたっていた。幼なじみの公平は、そんな律子の数少ない理解者だった。
律子の両親は23年前に火事で亡くなっており、津田口は何があったのか問い詰めるが、彼女は答えようとしなかった。
放火殺人容疑で逮捕された池松律子の両親は、23年前に父・喜平の焼身自殺により亡くなっていた。当時12歳だった律子は、東京に住む叔父の行島道夫(宇野祥平)に引き取られる。
検事の津田口は行島に会いに行き、律子について話を聞く。律子は15歳のとき行島の家を出ていたが、その際、両親の保険金を渡されたという。おそらく手切れ金のつもりだったのだろうと行島は言い、「律子は娼婦のような女でした」と語る。
律子は14歳の夏に堕胎手術を行っていた。津田口が相手の男性について追及すると、「あれは叔父さんと暮らすための儀式だったの」と言う律子。行島が見合いをすることになり、自分の居場所を失うことを恐れた律子は、行島を誘惑して男女の関係に持ち込んだのだった。
弘前東署の刑事・村上(加治将樹)が書類を持って地検を訪ねてくる。彼は池松喜平一座の手踊り担当だった村上松夫(泉知束)の息子で、律子と公平の幼なじみだった。そして23年前の青森の火事の通報者でもあった。
律子と公平のもうひとりの幼なじみ・村上姫昌の話を聞く津田口。姫昌は「卑しい芸人の子供だった自分たちの気持ちが、お前にわかるはずがない」と吐き捨てながらも、律子との思い出を語り始める。
昭和35年。池松喜平一座は津軽で人気を博した一方、律子の父・喜平の粗暴な態度が原因で人間関係は複雑だった。喜平は公平の父・隼吾と、姫昌の父・松夫を下僕のように扱い、横暴に振る舞っていた。
その後、律子の両親が亡くなり、彼女は叔父に引き取られて東京へ。高校を卒業した姫昌は津軽で警官になっていたが、非番のたびに東京に出て律子を探したという。姫昌が新宿の風俗店で働く律子を見つけたのは、昭和46年のことだった。
律子に店を辞めさせると、2人は自然と男女の関係に。やがて結婚を考えるようになるが、律子が昔から公平に想いを寄せていることを知っていた姫昌は、嫉妬から律子の本心を疑うようになる。
ある日、公平が小説家になって賞を取ったと聞いた律子は、密かに彼のサイン会に出かける。だが遠くから見るだけで、声を掛けることはできかなかった。その様子を見ていた姫昌は、2人で書いた婚姻届を破り、部屋を荒らして出ていってしまう。
津田口の取り調べを受けた律子は、「あのときの私のホントの気持ちを、最後までわかってもらえなかった」と静かに涙を流す。律子の前に現れた姫昌は、「池松律子は嘘つきな女だ」と告げる。
律子の最初の夫だった京波久雄(豊本明長)が検察を訪れる。彼は事件の第一発見者でもあった。津田口の質問に答え、律子とのなれそめを語り始める久雄。中学卒業後、律子は京波製菓に就職。18歳のとき、若社長である久雄と結婚していた。
だが3年後、会社が倒産の危機を迎える。もともと律子との結婚に反対していた久雄の両親は、会社を立て直すために律子と別れて債権者の娘と結婚してほしいと懇願。それを聞いた律子は人が変わったように飲み歩くようになり、浮気をして家を出て行ったという。
「彼女はいつも人のためにばかり生きてる」という久雄に、思わず「そんなはずはない」と反論する津田口。久雄は津田口が律子に取りつかれ始めていることを指摘し、律子の担当をやめたほうがいいと警告する。
離婚後も律子のことが忘れられなかった久雄は、探偵のように律子を監視し続けていた。やがて彼女が公平との同棲生活を始めると、公平に会って別れるよう説得したりもした。暴力でしか繋がれなかった2人の関係に、羨ましささえ感じたという。
津田口は7年前から昏睡状態が続いている姉・美奈子を思う。彼女は夫から日常的に暴力を受け、首を絞められて病院に運び込まれたのだった。夫は心神喪失が認められ、無罪となっていた。
「あなたのことがますますわからなくなってきた」と告げる津田口に、律子は不敵な笑みを浮かべて「お父さんとお母さんも殺したのも私なの」と打ち明ける。
検事の津田口は律子の2番目の夫、山之内一平(渋川清彦)を訪ねる。元プロ野球選手だった山之内は律子と出会ってからケガが原因で球団を解雇され、今はしがないヤクザの組員となっていた。
律子には自分の感情がなく、一緒になった男と同化していく、と語る山之内。球団を解雇されてからギャンブルにはまり、転落の一途をたどる山之内に対しても、諌めるどころか喜んで稼いだ金を与えたという。「結局、律子って女は残酷な女だよ」と振り返る。
昭和37年、青森。律子は父・喜平に殴られる母をかばい、父に「淫売女」と罵られる。母キミもまた「あんたなんか産まなければよかった。全部あんたのせいだ」と律子を憎む。
父親に家から放り出され、公平が自宅に連れて帰る。公平の父・隼吾は怪我をした律子を放っておけず、手当をする。公平は隼吾と律子の首の後ろに同じあざがあるのを見つける。律子もまた、迎えに来た母キミと隼吾の間に秘密めいた空気を感じ取る。
律子の過去を知るため、青森県弘前市を訪れる津田口。律子の幼なじみだった村上姫昌の案内のもと、村上の父・松夫や公平の父・隼吾の話を聞く。
律子の父・池松喜平が妻キミに手を上げるようになったのは、律子が産まれてからだった。津田口がその理由を問うと、松夫は頑なに口をつぐみ、隼吾も「今さら何を調べても公平は生き返らない」と背を向ける。
真実を語ろうとしない親たちに、姫昌は「こうなったのは、あんたたちが逃げてきたからだ」と怒りをぶつける。「律子の本当の父親はあなたですね」という問いに、ようやく頷く隼吾。
キミは夫の喜平に相手にされず、喜平と隼吾の互いを必要とする関係に嫉妬していた。喜平の唄には隼吾の三味線が、隼吾の三味線には喜平の唄が必要だったのだ。それゆえに、キミが律子を産んだ後も離れることはできなかったという。
昭和37年、青森。律子は喜平の暴力に耐えるよう母キミに諭され、本当の父親は隼吾だと教えられる。律子は兄妹であることを公平に隠したまま、強くなるための儀式として公平と肉体関係を結ぶが、行為の後で姫昌から真実を聞かされた公平は動揺する。
律子に同情し、取り調べ中に涙を流す津田口。上司の木田は津田口を不適任と見なし、律子の事件の担当から外す。代わりに担当となった木田は、事務的に律子の取り調べを終わらせる。
津田口が異動になったと聞いた律子は、「私なんかに同情しちゃってバカみたい」と笑う。
村上が裁判で証言するため上京したことを知り、会いに行く津田口。23年前に律子の両親が死んだ火事について、津田口は村上と公平が関与しているのではないかと疑っていた。すると、村上は公平が死ぬ前に預けたという原稿を津田口に渡す。それは公平が律子のために書いた小説だった。公平は「あの火事の日からずっと後悔してる」と村上に語り、律子が生きるはずだった幸せな世界を物語にしたという。
昏睡状態だった津田口の姉・美奈子が亡くなる。津田口は検察支部長の木田に「もう一度やらせてほしい」と嘆願し、律子の事件の担当に復帰する。公平が書いた小説『太陽のような女』を渡すと、律子の目に涙があふれ、23年前の火事について語り始める。
昭和37年、青森。父・喜平から日常的に暴力を受けていた律子。公平と姫昌は律子を守るため、彼女の家を見張るようになっていた。ある日、喜平が律子の首を絞めるのを見た2人は、喜平を殺すことを決意。律子の母キミが出かけた夜、眠っている喜平を起こさぬよう家の中に石油を撒く。
公平が律子と姫昌を家の外に出し、石油に火をつけようとしたとき、喜平が起き出して律子の居場所を聞く。
津田口の懸命な取り調べに、心を開き始める律子。23年前の青森の火事は、公平と姫昌が律子に持ちかけたのが発端だった。3人は律子に暴力を振るう父・喜平を殺そうと計画するが、火をつける直前に目を覚ました喜平は、公平からマッチを取り上げ、自ら火をつけたのだった。喜平の最期の言葉は「律子さ伝えてけれ。“お前は生きろ”」だった。
公平が死んだ日、律子は弁護士に呼び出され、公平が保険金の受取人を律子にするための遺言書を作ったことを知らされる。公平が余命わずかと知った律子は「私を殺して」と公平に頼むが、彼にはできなかった。
律子は公平の腹部を刺し、流れる血を見てパニックになる。律子はずっと公平がこの世に存在しているのかどうか半信半疑だったのだ。彼に殴る蹴るの暴行を加えていたのも、生きていることを確かめるためだった。
公平は部屋に火をつけ、自ら腹を刺す。駆け込んできた京波に「律子を頼みます」と託し、かつての喜平と同じように、ひとり部屋に残って三味線を弾く公平。京波は公平が自ら腹を刺して火をつけたと警官に説明するが、律子は「私の男を、私が殺しました」と告げる。
律子の関係者たちが傍聴席で見守る中、裁判が始まる。津田口は起訴状の“殺人”から罪状を“嘱託殺人”に変更し、法廷は騒然となる。
後日。律子は獄中で首吊り自殺を図り、この世を去る。検事を辞めた津田口は、公平が書いた小説『太陽のような女』を読む。物語の中で、律子はリンゴ農園を営む夫・公平と2人の子供たちとともに、幸せに暮らしていた。太陽のように明るい笑顔で。
感想(ネタバレ有)
昭和の貧しさだけでなく
みごとな作品でした。終始、松本まりかさんの演技に圧倒されました。
昭和の空気の再現度もかなり高かったように思います。昭和を表現するときに用いられる「くすんだ色合い」って、当時の記録がアナログ映像だったこともあるのでしょうけど、やっぱり“貧しさ”の象徴なんだろうなと思います。
律子が青森にいた昭和35年頃、日本は高度経済成長期のまっただ中。ひたすら働いて働いて、それでもほとんどの人は貧しかった時代。津田口の取り調べが行われている昭和60年も、バブルの手前でした。
作品を通して、どの場面でも(律子が贅沢な暮らしをしているときも)画面から“貧しさ”が伝わってきた。昭和の時代を表すだけでなく、それが律子の心の状態だったのかなとも思いました。
律子にとっての太陽
希望も喜びもない人生の中で、公平だけが律子にとっての太陽だったのでしょう。その公平すら失った律子に、公平と父・喜平が最期に残した「生きろ」という言葉が、残酷な“呪い”のようにまとわりつきます。
まるで罪悪感などないかのように、人を食った態度で取り調べに応じる律子。真面目な津田口は律子に茶化されるたびにむきになり、律子という沼に嵌まっていきます。しかし同時に、津田口だけが彼女の“ウソ”を感じ取っていたのではないでしょうか。
終盤で明らかになりますが、律子は津田口の姉・美奈子に似ています。弟である津田口を検事にするために体を売って金を稼ぎ、その後結婚するも夫から理不尽な暴力を受け、植物状態になってしまった美奈子。
律子はこの世で唯一人愛する公平に「殺して」と頼みますが、美奈子もまた愛する弟に「死なせて」と頼んでいました。ずっと美奈子を見てきた津田口だけが、律子の“ウソ”を見抜く目を持っていたのです。
律子が真相を語らなかった理由
律子が事件の真相を語ろうとしなかった理由が、最終話で明らかになります。
公平が火事で死んだ日、第一発見者である律子の元夫・京波は、現場に駆けつけた警官に「男が自分の腹を刺して部屋に火をつけた」と説明しますが、律子は「あんたなんかが分かるもんか!」と激怒します。
律子と公平の間に起きたこと。2人がこれまでに抱えてきた想い。公平の死を語るには、それを客観的な言葉で説明しなければならないけれど、たぶん律子にはそれができなかった。したくなかったのだと思う。
「わぁたちの間さ、誰も入れてやらね」
律子の気持ち、少しわかる気がします。
この世の中には言葉で説明できないことが山ほどあるけれど、社会で生きていくためには、無理やりにでも言葉にして他人に“説明”しなければなりません。平凡に生きているわたしでさえ、時々それが嫌になることがあります。
それが自分にとって大切な、何よりもかけがえのないものであればあるほど、他人にわかるように説明するなんて不可能だと思ってしまうし、したくもなくなります。
わたしの大切な場所に、誰も踏み込ませたくない。そういう気持ち。たぶん子供の頃、自分の話に頷いてくれる人が身近にいなかったから、そう思うんでしょうね。律子も同じだと思います。
向こうの果て
律子の心に寄り添い、彼女の口から“言葉”を引き出した津田口でさえ、律子を救うことはできませんでした。公平がいない世界を生きることは、彼女にとって光のない絶望の世界を生きることだったのかもしれません。
きっともうずっと前から、律子は現(こちら)と夢(向こう)の境を歩いていた。公平がこの世の人間かどうかもわからなくなるくらい。
公平が小説に書いた世界は「向こうの果て」に存在して、今は2人がそこで幸せに暮らしていると思いたい。
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