北欧ドラマ「ルーム301~秘密の扉~」(全6話)についてまとめました。
12年前の悲劇を引きずるフィンランドの家族が、ミッドサマー(夏至祭)にギリシャのリゾートホテルを訪れたことから始まる緊迫のストーリー。IMDbの評価は6.8。
現在と12年前を交錯させた、北欧作品らしいダークでスタイリッシュなミステリードラマです。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOWプライム
- 放送時間:2021年7月4日(日)13:00~ ※全話一挙放送
- 製作国:フィンランド(2019年)
- 原題:HUONE 301
- 企画・脚本:ケイト・アシュフィールド
あらすじ
2019年夏、ギリシャのリゾートホテルにフィンランドの三世代の一族が集まる。リストを祖父とする彼らだが、12年前の2007年の“ミッドサマー(夏至祭)”、リストの長男セッポのまだ2歳だった息子トンミが、森で撃たれて亡くなるという悲劇が起きていた。幼いトンミに銃を向けたのは、近所に住むエリアスという少年だった。家族は今も、その悲しい記憶を忘れられずにいる。
WOWOW公式サイトより
休暇に訪れたギリシャのホテルで、リストはエリアスの面影を持つ男、レオを見掛けて動揺する。旅行の直前、リストはエリアスらしき人物から不穏な手紙を受け取っていたのだ。レオは何食わぬ顔で、リストの孫カッレに近づき……。12年の時を経て、悲しい事件が再び動きだす。
予告動画
登場人物(キャスト/吹き替え)
リスト・クルッティ(アンティ・ヴィルマヴィルタ/声:久保酎吉)
一族の長。旅行の直前、不穏な手紙を受け取る。ギリシャのホテルでエリアスにそっくりな男性レオと遭遇し、疑心暗鬼に囚われる。
セッポ・クルッティ(ユッシ・ヴァタネン/声:小椋毅)
リストの長男。設計士。12年前に2歳の息子トンミを亡くし、今も過去の記憶に苦しめられている。妻オリヴィアとはトンミの死の直後に離婚し、現在は独り暮らしをしている。アルコール依存症を克服するため断酒会に参加している。
オリヴィア(レーナ・ポイスティ/声:小山萌子)
セッポの元妻。かつてセッポの弟ミッコと密かに関係を持ち、彼の子供であるトンミを出産した。アルコール依存症で破壊的な行動を取るセッポに耐えられず、離婚を切り出した。現在は娘たちと3人で暮らしながら、ペッカと付き合っている。
エリアス・レッポ(ヴィルヤミ・ラハティ/声:小林諒音)
12年前のトンミの死に深い関わりを持つ赤毛の少年。12歳。貧しい家庭で育ち、不法侵入や万引の常習犯だった。現在の消息は不明。
レオ・エスコラ(エリアス・ゴールド/声:前田一世)
エリアスの面影を持つ赤毛の男性。クライミングのインストラクター。デートアプリで知り合った女性ニーナとともに、ホテルの301号室に泊まっている。ミッコの息子カッレに声をかけ、クライミングに誘う。
ミッコ・クルッティ(アンドレイ・アレン/声:渡邊りょう)
セッポの弟。大工。旅行先のホテルでも仕事のことばかり気にしている。12年前はオリヴィアと不倫関係にあり、トンミが自分の子供であることを知っている。
レーナ・クルッティ(クレータ・サルミネン/声:今泉舞)
ミッコの妻。家族に無関心な夫ミッコに不満を抱いている。
カッレ・クルッティ(ヴィルホ・ロンッコネン/声:小林由美子)
ミッコの息子。12歳。ギリシャのホテルで宿泊客のレオに声をかけられ、一緒にクライミングを楽しむなど仲良くなる。
エーヴァ・クルッティ(カイヤ・パカリネン/声:大西多摩恵)
リストの再婚相手。ホテルでのリストの行動がエスカレートするのを心配し、セッポに連絡する。
アンナ・クルッティ(アスタ・フリーマン/声:横山友香)
セッポの娘。現在は母親のオリヴィアと暮らしている。恋人のダニエルのことをトゥッティに話せずにいる。
トゥッティ・クルッティ(リンネア・スコーグ/声:イブ優里安)
セッポの娘。現在は母親のオリヴィアと暮らしている。アンナが内緒で恋人と会っていることに気づき、傷つく。送別会で知り合ったエッルと仲良くなる。
ダニエル(ミッコ・カウッピラ/声:成河)
アンナの秘密の恋人。
エッル(エリアス・サロネン/声:亀田佳明)
トゥッティが幼なじみの送別会で知り合った男性。
ペッカ(Juha Varis/声:松川裕輝)
オリヴィアの現在の恋人。オリヴィアとの結婚を望んでいる。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
クルッティ家の長男セッポは、12年前のミッドサマー(夏至祭)に2歳の息子トンミを亡くしていた。セッポの父リストは、墓参りの直後に「花も持たずに墓参りか。俺の話はしたか?」と書かれた手紙を受け取る。
送り主はエリアスかもしれないとセッポに伝えると、取り乱したセッポはギリシャ旅行を中止する。エリアスは、12年前に森でトンミを銃殺した当時12歳の少年だった。
リストは家族で休暇を過ごすため、妻エーヴァ、セッポの弟ミッコと妻レーナ、その息子カッレを連れて、予定どおりギリシャのコス島へ向かう。ヘルシンキに残ったセッポは元妻オリヴィアを訪ね、自分に手紙が届いていないかと尋ねるが、何も届いていなかった。
リストたちはホテルにチェックインするが、12歳のカッレは遊び相手が見つからず退屈してしまう。プールで寂しそうにしているカッレに声をかけたのは、レオとニーナという若いカップルだった。リストはエリアスの面影を持つレオを見て激しく動揺する。
2007年。12歳の貧しい少年エリアスは、湖畔にあるクルッティ家の別荘にときどき忍び込んで食べ物を盗んだり、ソファに寝転んだりしていた。そこへセッポたち家族が休暇を過ごすためにやってくる。
面白くないエリアスは酒を飲んで店の物を盗もうとし、たまたまセッポに見つかって注意される。店を出たセッポは車に傷がついているのを見てエリアスの仕業だと思い、農場を営むエリアスの父ヨエルに注意するが、厄介払いされてしまう。
2007年。12歳のエリアスは、湖畔の別荘で休暇を過ごすクルッティ家のようすを遠巻きに眺めていた。
セッポの妻オリヴィアは義弟のミッコと密かに不倫関係にあり、2歳の息子トンミはミッコとの間にできた子供だった。エリアスはキッチンに忍び込み、2人の秘密の会話を盗み聞きする。
何も知らないミッコの妻レーナは、家族全員の前で妊娠したことを発表する。動揺したミッコはレーナを問い詰め、レーナは彼の思いがけない反応に傷つく。
セッポはがんに侵された母と自分を捨てて愛人エーヴァのもとに走った父リストを未だに恨んでおり、酒に酔って暴言を吐く。耐えかねたオリヴィアは離婚を切り出す。
2019年。リストは不穏な手紙を受け取ったことを妻エーヴァに打ち明け、レオと名乗る宿泊客がエリアスに違いないと話す。エーヴァはセッポに連絡し、エリアスの居場所を確かめてほしいと頼む。
レオはクライミングのインストラクターであることを告げ、母親レーナの許可をもらってカッレをクライミングに連れて行く。カッレがレオたちと一緒に出かけたと聞いたリストは動揺するが、カッレは無事に帰ってくる。リストはレオに「どういうつもりだ」と食ってかかる。
セッポはエリアスの父ヨエルを訪ね、エリアスの職場を突き止める。だがエリアスは2週間の休暇を取り、旅行に出かけていた。それを聞いたセッポはギリシャへ向かう。
リストの携帯に「真実は明らかになるぞ」というメールが届く。
2019年。リストはレオを監視し、レオの恋人ニーナに「気を付けろ」と忠告する。不安になったニーナはレオの荷物を調べ、バッグの中からサバイバルナイフを見つける。
セッポはギリシャを訪れ、エリアスが2週間の休暇を取っていることをリストに知らせる。動揺するリストの携帯に「孫たちは無事か?」というメールが届く。焦ったセッポはトイレにいたレオに話しかけ、12年前の事件について謝罪する。レオは「何のことかわからない」と言って立ち去るが、トイレの個室にいたカッレが2人の会話を聞いてしまう。
一方ヘルシンキでは、セッポの娘アンナとトゥッティが幼なじみの送別会に出かけていた。アンナに恋人がいることに気づいたトゥッティは傷つき、黙っていたアンナを責める。アンナは恋人ダニエルのもとへ向かい、トゥッティは送別会で知り合ったエッルという青年の家に泊まる。エッルの本名はエリアスだった。
セッポはヘルシンキにいる元妻オリヴィアに「あの時トンミを撃ったのは僕だ」と告白し、娘たちが危険かもしれないと警告する。
2007年。12歳のエリアスは父親に褒めてもらおうと一人で牛の皮を剥ぐが、クルッティ家の別荘から盗んだナイフを使ったことで叱責される。苛立ったエリアスは父親の猟銃を持ち出し、森へ向かう。
別荘では、セッポが酒に酔って眠っている間にトンミが家を出ていってしまう。気づいたセッポは慌てて辺りを捜し回る。エリアスが森の中で猟銃を試し打ちしていると、トンミが現れる。
2019年。セッポからの留守電を聞いたオリヴィアは娘たちと連絡を取ろうとするが、繋がらない。だがオリヴィアの心配をよそに、アンナとトゥッティは無事に帰宅する。オリヴィアの恋人ペッカは、オリヴィアがいかに心配していたかをアンナたちに伝え、サプライズで恋人を夕食に招待してはどうかと提案する。
リストは金で問題を解決しようと考え、口座から4万ユーロを引き出してニーナに渡す。蓄えを失ったエーヴァは怒り、「あなたがやったことは異常よ」と告げる。
カッレは両親の目を盗んで部屋を抜け出し、レオと2人でクライミングに出かける。カッレがいないことに気づいたミッコとレーナはエーヴァを問い詰め、レオがエリアスであることを知らされる。ミッコが301号室を訪ねると、レオのバッグに入ってたナイフが消えていた。
2007年。森の中で銃声を耳にしたセッポは、猟銃を手にしたエリアスがトンミに銃口を向けているのを目撃する。警察に通報すると脅すセッポに対し、エリアスはトンミがセッポの子供ではないことを話す。
セッポはエリアスから無理やり銃を奪うが、倒れた拍子に誤って発砲してしまう。トンミが倒れているのを見て銃弾が当たったことを知り、パニックに陥るセッポ。エリアスは銃を拾って自宅に逃げ帰る。
一部始終を目撃していたリストは、「ライフルを持った少年が撃った」と警察に通報。警察の取り調べを受けたエリアスは「撃ったのは俺じゃない」と主張するが、日頃から嘘をつき問題ばかり起こしていることから信用してもらえない。
セッポは警察からエリアスの写真を見せられ、「息子を撃ったのは彼だ」と証言する。
2007年。セッポはオリヴィアとの離婚を決意。オリヴィアはミッコと別れることを決め、「生まれてくる子供を大切にしてあげて」と告げる。リストから事件の真相を打ち明けられたエーヴァは、すぐに警察に電話して本当のことを話すよう促すが、リストは「セッポを刑務所には行かせない。エリアスは未成年だから大事にならない」と拒む。
エリアスの母マルッタは「撃ってない」という息子の主張を信じるが、父ヨエルは世間の目を恐れ、専門家のいる施設にエリアスを預けることを決める。
2019年。ミッコはレオとカッレを追って山に登り、レオを締め上げようとする。カッレは12年前にトンミを殺したのはエリアスではなくセッポだと告げ、レオはエリアスじゃないと訴える。
カッレを連れてホテルに戻ったミッコは、真実を隠して12歳の少年に罪を着せたリストを責める。「家族のためだ」と主張するリストに、レオがエリアスではないことを伝えるミッコ。レオはニーナから金を受け取るが、捨ててしまう。
セッポはヘルシンキに戻ることを決める。ヘルシンキでは、オリヴィアの家にアンナの恋人ダニエルと、トゥッティの恋人エッルが招かれ、夕食をともにしていた。夕食のあと、2組のカップルはそれぞれ週末旅行に出かける。
テーブルの上には、かつて12歳のエリアスが持っていたのと同じキーホルダーが残されていた。
2019年。トゥッティはエッルの新居に招かれ、アンナはダニエルに連れられて湖畔のロッジを訪れていた。セッポはヘルシンキに戻って元妻オリヴィアの家を訪ね、テーブルの上に残されていたキーホルダーを見てダニエルとエッルのどちらかがエリアスだと悟る。
セッポから連絡を受け、エリアスがヘルシンキにいると知ったリストは、エーヴァの説得も聞かずに荷物をまとめてホテルを出ていこうとする。だが部屋を出たところで倒れ、意識を失って病院に搬送される。
セッポはエッルとトゥッティの居場所を突き止めるが、彼はエリアスではなかった。キーホルダーはダニエルのものだとわかり、エリアスの実家へ向かうセッポ。
ダニエルの様子を怪しんだアンナは、ロッジを出て行ったダニエルを尾行し、彼がクルッティ家の別荘へ入っていくのを目撃する。ダニエルがエリアスだと気づいたアンナは、彼が持っていた猟銃を奪って森の中へ逃げ込む。
アンナに銃口を向けられたエリアスは、「君を殺す気だった」と打ち明ける。アンナは銃を捨て、「あなたはそんな人じゃない」と否定する。そこへ銃声を聞きつけたセッポが現れ、12年前の無実を証明すると約束する。
だがすべてを奪われて人生に絶望したエリアスは、銃を手に取り、自殺しようとする。アンナはエリアスを説得し、銃を奪って彼を抱きしめる。
エーヴァとミッコたちは、病院でリストの死を告げられる。
感想(ネタバレ有)
先が気になって一気見してしまいました。北欧ミステリーのダークな雰囲気が大好きです。
ストーリーの軸となるのは、12年前の事件の真相と、手紙の送り主(=エリアス)は誰か、という2つの謎でした。事件の真相については早い段階でわかりましたが、手紙の送り主についてはミスリードが満載で、惑わされました。
でもよく見ると、ポスター画像にばっちり答えが出てますよね。
なぜ最初からエリアスの写真を探さなかったのかとか、なぜ少年時代と髪の色が違うのかとか、なぜみんながみんなそんなに怪しげな行動を取るのかとか、ツッコみだしたらきりがありませんが…ちょっと気になりました。
ことの起こりは、一族の長であるリストが12年前の事件を隠蔽し、長男セッポがそれに従ったこと。それによって、たった12歳の少年が犯人に仕立て上げられてしまいました。
リストは「家族のため」という言葉を免罪符のように使い、卑劣な行為を正当化していました。彼にとって家族以外の人間がどうなろうと、どうでもよかったんでしょうね。
エーヴァが最後に突き付けた言葉が何より的を射ているように思いましたが、たぶんリストには届いてないだろうな。
「あなたは家族より自分のことだけ。みんなのためにやってるって言ってるけど、あなたはいつだって自分の思いどおりにしたいだけなのよ。一度立ち止まって周りを見回してみたら? 自分は孤独な人間だってわかる」
結局、エリアスにもレオにも謝罪することなく、リストはあっさり逝ってしまいました。ずるいなぁ。
いちばん気の毒だったのは無実の罪を着せられたエリアスに違いないけど、勝手に人違いされて恋人との旅行を台無しにされたレオも可哀想。たまたま同じホテルに居合わせただけの、気のいい青年だったのに。
4万ユーロをあっさり捨てるところが好きだわ。ニーナとの仲はこじれずにすんだから、幸せになってほしいです。
リストを失ったクルッティ家は、この先バラバラになってしまうかもしれないですね。セッポはこれから贖罪の人生が待っているし、ミッコとレーナは離婚しそうだし。でも秘密で繋がった見せかけの家族よりも、それぞれが自分の人生を大切に生きるほうがずっといい。
そうとわかっていても、切り離せないのが家族なのかもしれませんが。