【ネタバレ有】Netflix「新幹線大爆破」あらすじ感想|50年前の絶望から現代の希望へ

Netflix映画「新幹線大爆破」ネタバレあらすじ感想

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Netflixで配信中の映画「新幹線大爆破」のあらすじと感想です(ネタバレ有)。

新幹線に仕掛けられた「時速100km以下で爆発する」爆弾をめぐる、息もつかせぬサスペンス&パニック・ムービー。

1975年に公開した同名映画のリブート作品。

鉄道に詳しくないので、そのへんのすごさをあまりわかってないかもしれない。それでも夢中で食らいついて観るほど面白かった。堪能しました。

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あらすじ(ネタバレ有)

車掌の高市和也(草彅剛)は、便乗車掌の藤井慶次(細田佳央太)とともに新青森発東京行き「はやぶさ60号」に乗り、「お客様を安全に目的地までお届けする」といういつもと変わらぬ思いで乗客を迎える。

はやぶさ60号には、衆議院議員の加賀美裕子(尾野真千子)と秘書の林(黒田大輔)、起業家Youtuberの等々力満(要潤)、臺葉工大付属高校2年の小野寺柚月(豊嶋花)ら修学旅行生たちが乗り込む。

発車からまもなく、JR東日本に「はやぶさ60号に爆弾を仕掛けた」という電話が入る。爆弾は時速100キロ以下になると即座に爆発するという。

犯人は同じ爆弾を青ヱ森鉄道線の貨物2074に仕掛けたと言い、その言葉通りに貨物2074は爆発する。

新幹線統括本部長の吉村(大場泰正)から連絡を受けた総合指令所の総括指令長・笠置雄一(斎藤工)は、はやぶさ60号にルートをあけるため、全列車を退避させることを決断。

はやぶさ60号の運転士・松本千花(のん)に連絡し、ATC(自動列車制御装置)を解放して時速120キロを保ち、八戸駅を通過するよう指示する。

警視庁から刑事の川越(岩谷健司)と茂木(谷口翔太)が到着し、指令所に対策本部を設置する。まもなく犯人から、爆弾解除料1000億円を全日本国民に要求するという電話が入る。

内閣総理大臣補佐官の佐々木(田村健太郎)は、犯人の情報を募るため、はやぶさ60号の乗客に爆弾の件を公表するよう命じる。官房長官の諏訪(坂東彌十郎)は会見を開き、「テロリストの要求には応じない」と断言する。

日本政府の対応に不満を持った犯人は、はやぶさ60号に爆弾を仕掛ける動画を公開し、爆弾解除料1000億円を要求すると公表する。動画を見た等々力は集金サイトを作成し、車内アナウンスを通じて乗客たちに拡散を呼びかける。

刑事の川越らは、今回の犯行が50年前の「109号事件」にそっくりだと気づき、何らかのつながりがあるのではないかと推測する。

はやぶさ60号に乗っていた私人逮捕系Youtuberの金本(岡部ひろき)と島(金子鈴幸)は、乗客の中に「ゴートゥーヘリサービス」の社長・後藤正義(松尾諭)がいるのを見つけ、動画を撮りながら彼を糾弾する。

後藤は観光ヘリ墜落で8人を死なせた責任を問われていた。自暴自棄になって暴れ出した後藤は、頭部を負傷。彼を介抱する高市に、藤井は「助けた意味あったんですか?」と疑問をぶつける。

総合指令所では、笠置と新幹線運輸車両部マネージャーの山本由紀乃(西野恵未)らが、はやぶさ60号の最後尾を走行中に切り離し、救出車両を連結させる作戦を打ち出していた。

高市とアテンダントの二宮(大原優乃)らは、併走するALFA-X(新幹線高速試験電車)から必要な機材を受け取り、乗客で第一種電気工事士の篠原(六平直政)の手を借りて後部車両の連結を解除、9号車と10号車の切り離しに成功する。

そこへ福岡(尾上松也)が運転する救援列車が追いつき、はやぶさ60号の最後尾と連結、乗客らを救出車両へ移動させる。

ところが乗客の後藤がふたたび暴れ出し、「死なせてくれ」と叫んで救出車両への移動を拒否する。教師の市川(大後寿々花)は生徒の柚月がいないことに気づき、探しに行く。

運転士の松本は、救出号の非常ブレーキが動作してスピードが下がり始めていることに気づき、急ブレーキをかけて連結部分を破壊、救出車両を無理やり切り離す。

高市、藤井、松本、加賀美、林、等々力、後藤、市川、柚月の9人は爆弾が仕掛けられたはやぶさ60号に取り残され、藤井は瀕死の重傷を負ってしまう。

高市は、東京駅で東北新幹線と東海道新幹線の線路をつなぎ合わせ、はやぶさ60号を鹿児島中央まで走らせることを思いつき、総合指令所の笠置に提案する。

笠置らは急いで保線員の新庄一(田中要次)らを東京駅に駆り出し、作業にあたらせるが、政府はこれを許可せず、作戦は中止となる。

そんな中、柚月は自分を虐待してきた父・小野寺勉(森達也)に電話し、自分が新幹線に爆弾を仕掛けた犯人だと告白する。そして自宅に仕掛けた爆弾の起爆スイッチを入れ、勉を爆死させる。

柚月は高市らの前で「犯人」として電話し、爆弾を解除する方法は自分を殺すことだと告げる。

柚月の体内には持病の合併症に備えて小型の心臓モニターが内蔵されており、モニターが心拍を検知されなくなるとスマホのアプリが信号を発信し、爆弾が解除される仕組みだという。

川越らの調べで、柚月の父・小野寺勉は元警察官で、50年前の109号事件の犯人グループの1人、古賀勝を確保する現場に居合わせていたことが判明。

古賀勝はその場で自死したが、犯人を死なせた責任を回避しようとした警察上層部は、小野寺が射殺したことにして彼を英雄に仕立て上げたのだった。

そして小野寺自身も自分の手柄のように吹聴し、今の新幹線があるのは自分のおかげだと繰り返し語っていたという。

柚月のSNSには「嘘の普通を壊す」と書かれており、ある人物と頻繁にメッセージのやりとりをしていたことがわかる。それは古賀勝の息子・古賀勝利(ピエール瀧)だった。警察は古賀を逮捕し、彼が柚月に爆弾を提供していたことを知る。

望みを絶たれた高市は、柚月を殺そうと彼女の首に手をかけるが、殺すことができない。

総合指令所には、官邸から強制停止を実行しろという命令が下る。首都機能へのダメージを回避するため、東京駅の前ではやぶさ60号を強制的に止めるというのだった。

絶望感に打ちのめされる笠置だったが、古賀の供述により、爆弾が仕掛けられている車両が1号車、4号車、6号車の3つだと判明する。笠置は2つのポイントを利用して、はやぶさ60号を走行したまま切り離すという作戦を打ち出す。

諏訪官房長官の許可が下り、作戦を実行するため準備に取りかかる面々。はやぶさ60号では、高市らに運転士の松本も加わり、脱線の衝撃に備えて緩衝材になるものをかき集める。

連結切り離し地点に到達したはやぶさ60号は、1号車から6号車までが切り離され、鷲宮保守基地への分岐線で脱線。1号車、4号車、6号車は爆発して炎上する。高市らが乗る8号車は脱線するも、線路上で停止する。

レスキュー隊員が救助に向かい、高市ら9名の生存を確認する。喜びに浸るまもなく、すぐに待機中の列車を戻す作業にあたる笠置たち。

現場では、重傷を負って意識不明の藤井が救急車に乗せられ、搬送される。柚月は救急車の中で川越と面会し、等々力の集金サイトが目標金額1000億円を達成したことを知らされる。

高市は搬送される柚月や、加賀美ら乗客を見送り、運転士の松本と合流。JR東日本の仲間たちに拍手で迎えられる。

感想(ネタバレ有)

まず驚いたのが、1975年の原作映画と同じ世界線、という設定。リブートでありつつ、続編でもあるという、なんとも思い切った仕掛け。

1975年の映画が、本作の登場人物たちによって「1975年の109号案件」として語られるエモさ。ときおり挟まれる過去の映像。公開当時をよく知らないわたしですら、ちょっと感動してしまった。原作映画を先に見ておいてよかったと思った。

109号案件から50年後の世界を描いている本作。新幹線の性能も、社会背景も、人々の価値観も、それらすべてを包み込む世の中のスピード感も、50年前とはまるで違う。

原作映画では、警察がまず最初に疑ったのは過激派グループだった。犯人グループのひとりで、本作においても重要な存在となる古賀勝は、過激派くずれという設定だった。

いまの世の中は、昔に比べて凶悪犯罪は少ないんです。銀行強盗も営利誘拐もないし、爆弾を仕掛けて身代金を要求するような犯罪は、現在の警察力の強さの中では成立しない。では、なぜそんな犯罪をするのか? という部分を、脚本家チームやプロデューサーなど、みんなで話し合いました。

VECTOR magazine 公式サイトより

樋口監督がインタヴューで語っていたように、「新幹線に爆弾を仕掛ける」という犯罪そのものが、現代においてはリアリティを欠いてしまっている。

いちばん重要な作品の「軸」がぐらついている状態で、ストーリーに説得力を持たせなければならない難しさ。

その時代での『新幹線大爆破』がどうなるだろうかを考えたときに、乗客の話にするべきなんじゃないかと。犯人の話をずっと追いかけても、それは原作の持っている「時代性」には、絶対かなわないはずなので。

VECTOR magazine 公式サイトより

原作が犯人側の物語をメインとし、彼らの行動から始まっていたのに対し、本作では後半になるまで犯人の正体が明らかにならない。顔が見えない犯人に、不気味さが募っていく。

犯人の人物背景を描く時間が短い分、印象を強烈なものにしなきゃいけない。じゃあどうするかという話になって出てきたのが……、

VECTOR magazine 公式サイトより

爆弾が仕掛けられた新幹線はやぶさ60号に乗っていた女子高生・小野寺柚月が犯人だとわかったとき、わたしは少なからず違和感をおぼえた。犯罪のスケールに対して、犯人像が弱すぎるというのが最初の印象だった(柚月を演じた豊嶋花さんは文句なしによかった)。

彼女の父親が、50年前に古賀勝を射殺した(ということに表向きはなっている)警察官だという設定も、やや強引に思える。ましてや、古賀勝の息子が彼女の共犯者だなんて…うーん。

原作は、時代に取り残された男たちが凶悪犯罪という手段で世の中に復讐をする物語だった。最終的に犯人は3人とも死んでしまったけれど、復讐という目的は達成されたとも言える。

本作では、警察組織がたまたま当時現場にいた柚月の父を英雄に仕立て上げ、古賀勝の自死をもみ消したことになっている。警察が本当に隠したかったのは、「復讐が成し遂げられたこと」ではなかったか。

柚月の言う「嘘の普通」とは、柚月や50年前の犯人たちのような社会的に歪な存在を透明化して、平安をとり繕うことだ。

JRと警察と政府、そして日本国民が結束して、柚月の復讐を止める。柚月を生かすことで、彼女を含む“乗客”全員を救う。どちらも、50年前にはできなかったことだった。

予定調和といえばそうかもしれない。違和感は残る。残るけれども。50年前の絶望から希望を紡いだラストには、やはり胸を打たれた。

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