中国ドラマ「天地に問う~Under the Microscope~ 」(全14話)についてまとめました。
「長安二十四時」などで知られる歴史小説家・馬伯庸(マー・ボーヨン)が、自身の小説をもとに自ら脚本も担当したサスペンス時代劇。
数字の計算に誤りを見つけると正さずにはいられない“算術バカ”の主人公を演じるのは、「慶余年~麒麟児、現る~」で大ブレイクしたチャン・ルオユン。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2024年2月7日(水)から毎週水・木曜20:00~ほか
- 製作国:中国(2023年)
- 原題:顕微鏡下的大明
- 脚本・原作:マー・ボーヨン
- 監督:パン・アンズ
あらすじ
数字に誤りを見つけると正さずにはいられない“算術バカ”の帥家黙(チャン・ルオユン)は、ある日、侵入した役所の帳簿から、八つある県のうち仁華県のみが、存在しないはずの税を100年前から支払っていることに気付く。得意の算術を駆使して不正を暴くべく奔走する帥家黙だったが、やがて事件は幼い頃に死別した両親の死の真相につながっていることを知るのだった。
WOWOW公式サイトより
予告動画
登場人物/キャスト
帥家黙(シュアイ・ジアモー)/チャン・ルオユン
数字にめっぽう強い“算術バカ”。数字に関しては一切妥協できない。純粋で正直すぎるゆえに人の心の機微やその場の空気が読めず、周囲からは変人扱いされている。100年前から仁華県だけが“人頭絹布税”の名目で3530両を毎年支払っていることに気づき、その謎を解くため調査に乗り出すが、さまざまな妨害に遭う。7歳のときに両親を火事で亡くしており、当時の記憶を失っている。
豊宝玉(フォン・バオユー)/フェイ・チーミン
〈豊氏火腿舗〉の放蕩息子。帥家黙の幼なじみで友人。仁華県県学の生員だが、賭け事が大好きで賭場にばかり通っている。算術には弱いが友情に厚く、全力で帥家黙を助けようとする。
豊碧玉(フォン・ビーユー)/チー・ウェイ
宝玉の姉。父親から〈豊氏火腿舗〉を任され、番頭をしている。遊び人の弟・豊宝玉が悩みのタネ。帥家黙の訴えが彼の過去に繋がっていることを知り、姉弟で協力する。
程仁清(チョン・レンチン)/ワン・ヤン
有名な訟師。法律に詳しく弁が立つ。“報酬に見合うだけの判決を勝ち取る”ことで知られており、訴訟に勝つためなら手段を選ばない。范淵に命じられて帥家黙の訴えを阻むべく、狡猾に立ち回る。亡き妻・雲娘から贈られた愛馬を大切にしている。
黄凝道(ホアン・ニンダオ)/ガオ・ヤーリン
新たに着任した金安知府。野心家だが朝廷での闘争に敗れ、地方に左遷された。金安府のよどんだ空気を一掃したいと考えているが、度胸がなく、自ら動こうとはしない。帥家黙の訴えを知って好機とばかりに調査させるが、知県たちから猛反対される。
宋仁(ソン・レン)/ファン・ズービン
金安府の通判。帥家黙の父の旧友で、20年前の事件を知る人物。算術しかできない帥家黙の行く末を案じている。
方懋珍(ファン・マオジェン)/ホウ・イエンソン
仁華知県。“方石像”という異名を持つ。事なかれ主義で、何かにつけて問題を先延ばしにする。帥家黙の訴えについても「面倒を起こしたくない」という理由で、ほかの知県たちと手を組んで必死にもみ消そうとする。
毛攀鳳(マオ・パンフォン)/ディ・シャオシン
攬渓知県。気性が荒く、毎朝武術の稽古をするのが日課。帥家黙が人頭絹布税の件を金安府に訴えた際、方懋珍に呼び出されて裁きの場に同席し、ほかの知県らと結託して訴えを阻んだ。貧しい家の出で、范淵の威光を借りて功を立てようとしている。
鄧思斉(ドン・スーチー)/チャン・ファン
同陽知県。算術が得意で、帥家黙のことも一目置いている。個人的には人頭絹布税について議論したいと思っているが、知県の立場上あいまいにしておくべきとも考えており、皆で結託して帥家黙の訴えを阻む。
任意(レン・イー)/チエン・チー
万成主簿。知県が欠員のため、一時的に県務を代行している。ほかの知県らと結託して帥家黙の訴えを阻む。家黙の父・敦誠が残したある書物に関する秘密を知っている。
范淵(ファン・ユエン)/ウー・ガン
金安府の有力者。かつて朝廷の中枢にいた元高官。引退後、故郷である金安に戻り、巨大な利益共同体組織を作り上げた。帥家黙とは因縁があり、家黙の訴えを阻止すべく程仁清を送り込む。
鹿飛龍(ルー・フェイロン)/ハン・チン
攬渓出身の高利貸し。仁華県で賭場を開いている。范淵の手先でもあり、帥家黙と豊宝玉の命を狙う。
劉景(リウ・ジン)/ワン・トンフイ
奉興の巡按御史。帥家黙と豊宝玉が持ち込んだ訴状を見て黄凝道の意図を悟り、攬渓県に乗り込んで架閣庫を開かせる。
馬文才(マー・ウェンツァイ)/カン・ジエ
奉興の按察使司僉事。范淵と共謀し、人頭絹布税の調査を阻む。程仁清の同級生で、かつて程の恋人・雲娘に横恋慕していた。科挙の試験会場で程に不正行為の濡れ衣を着せ、出世の道を閉ざした。
陳大山(チェン・ダーシャン)/ファン・ハオジュン
仁華の農民。病気の妻の看病のために鹿飛龍から金を借りるが、返済できず、泣く泣く土地を売ることに。その後は同陽県の山奥に移り住み、娘の小枝と2人で荒れ地を開墾する。
陳小枝(チェン・シャオジー)/タン・ムージャー
陳大山の娘。父が仁華県の土地を売ったあと、ともに同陽県に移り、山奥で開墾して暮らしを立てている。逃亡中の帥家黙と豊宝玉に遭遇し、怪我をした豊宝玉を介抱するうちに心を許すようになる。
帥敦誠(シュアイ・ドゥンチョン)/リー・ボー
家黙の父。20年前に火事で焼死した。仁華県戸房で筆写を行い、算術に通じていたが、人頭絹布税3530両を着服した疑いをかけられ、裁きを恐れて夫婦で自害したと噂されている。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
算術にめっぽう強い帥家黙は、ある日、測量した土地が権利書の面積よりも少ないことに気づき、頭を悩ませる。そんな中、家黙は友人の豊宝玉に誘われて攬渓人が営む賭場へ行く。宝玉は家黙の才能を利用して大儲けするが、2人の噂を聞きつけた元締めの鹿飛龍は家黙に勝負を持ちかけ、イカサマで勝利する。
鹿は、家黙に賭場の帳簿の計算を命じ、宝玉には銀子200両を要求。それを聞きつけた宝玉の姉・豊碧玉は賭場に乗り込み、乱闘騒ぎを起こす。鹿飛龍に借金の返済を迫られていた陳大山は、騒ぎに乗じて鹿を殴り、権利書を奪おうとする。
豊宝玉と帥家黙は仁華県の役所に訴え、賭場で儲けた金を取り返そうとする。だが鹿飛龍が雇った程仁清という訟師の巧みな弁舌により、2人の儲けは帳消しにされ、陳大山は借金の代わりに土地を差し出す羽目になってしまう。
帥家黙は賭場の帳簿を計算した際、どの田地も権利書と実際の面積が違っていることに気づき、誤差を確認するため、豊宝玉に頼んで魚鱗図冊が保管されている架閣庫に侵入する。だが帳簿を確認していると、突如として幼い頃の記憶が蘇り、家黙は気を失ってしまう。
架閣庫に侵入して気を失った帥家黙は、豊宝玉の姉・豊碧玉が番頭をしている店〈豊氏火腿舗〉で目を覚ます。帥家黙は仁華県署に駆け込み「仁華県の税に大きな問題がある」と訴える。本来、金安府8県で均等に負担すべき税3530両を、“人頭絹布税”の名目で仁華県だけが負担していたのだ。
事なかれ主義で“方石像”の異名を持つ仁華知県の方懋珍は、架閣庫に侵入した罪で家黙を罰し、板打ち10回を命じる。黄凝道が金安知府に着任したばかりで、面倒を起こしたくなかったのだ。
豊碧玉は、家黙が子供の頃に壁に彫っていた数字が「3530」であることを思い出し、人頭絹布税の数字と同じだと気づく。豊碧玉と豊宝玉の協力により、帥家黙は「金安府の賦税に間違いがある」と県に正式に訴えることに成功。碧玉は訴えを起こした2人をの噂を町中に広める。
方懋珍ははなから調査を先延ばしにするつもりだったが、金安知府の黄凝道は、「帥家黙に調べさせよ」と命じる。家黙は金安8県の納税記録を調べ、5日以内に結果を出すと宣言する。
帥家黙はかつて父から「この数字を忘れるな。必ず覚えておけ」と言われたことを思い出す。調査を終えた帥家黙は、報告のため金安府署に赴くが、そこへ府下3県の高官が現れる。同陽知県の鄧思斉、攬渓知県の毛攀鳳、万成主簿の任意だ。家黙の訴えを快く思わない方懋珍が、ひそかに呼び寄せていたのだ。
3県の高官たちが傍聴する中、家黙は人頭絹布税の起源について語り始める。成化9年、倭寇襲来時に朝廷が軍費として徴収した協餉が常態化し、毎年納めることになったと説明。しかもそれは金安府全体で納めるべき協餉だったが、なぜか現在は仁華県が全額納めているという。
百年来の賦税の方式を変えたくない知県たちは、家黙の主張にこぞって反論。成化9年の協餉がその後の人頭絹布税である証拠を示せと迫る。数年分の税帳がないため証明することはできないと言う家黙に対し、黄凝道は各県の架閣庫を開いて調べることを提案する。
一方、訴訟の行方を心配する豊碧玉のもとに、訟師・程仁清が現れる。豊碧玉から家黙の過去を聞き出した程は、金安府署を訪れ、審理を中断して対策を講じていた知県たちに入れ知恵する。
中断されていた審理が再開される。黄凝道は帥家黙の訴えが真実かどうかを証明するために、金安8県すべての架閣庫を開き記録を調べるべきだと主張する。だが知県たちは、家黙が人頭絹布税を掘り起こすのには魂胆があると言い出す。
程仁清が呼び出され、家黙の悲惨な過去について語り始める。20年前、家黙の父・帥敦誠と母・柳月娥は、火事に見舞われ焼死。家黙だけが生き残った。帥敦誠は仁華県戸房で筆写を行い算術に通じていたが、公金横領の疑いをかけられており、夫婦は裁きを恐れて自害したという噂が立った。帥敦誠が着服したのは人頭絹布税で、その額が3530両だったという。
程は当時7歳だった家黙が成長するにつれて両親の死に疑問を抱き、金安府への憎悪を深め、得意な算術を使って復讐しようとしたのだと説明する。家黙は報復のために訴えを起こしたと見なされ、拘束されて獄房に入れられる。程は「つつがなく終了」と元高官の范淵に報告する。
豊宝玉は獄房を訪れ、本当に復讐なのかと家黙を問い詰める。家黙は否定し、両親のことは何も思い出せず、記憶が混乱して何が真実かもわからないと答える。そして自分にとっては算術だけが唯一の興味であり、求める道だと話す。
豊宝玉は断罪を先送りにした黄凝道の意図を読み取り、わざと帥家黙を重罪にする。黄凝道は罪が重すぎるとして釈放を命じ、家黙に「これ以上、金安府で訴えることは考えるな」と忠告する。家黙と宝玉は金安府以外で訴えることを考え始める。
帥家黙と豊宝玉は、黄凝道が手を加えた訴状を持って省城に向かう。そうとは知らず妓楼で遊んでいた程仁清は、范淵に呼び出され、2人の訴えをなんとしても阻むよう命じられる。
省城に到着した家黙と宝玉は、訟師の荘三惕に大金を払い、訴状の書き直しと面倒な手続きを頼むことに。そんな中、家黙は自分たちを追ってきた程仁清と偶然出くわし、池に落ちた彼を助ける。家黙が根っからの善人だと知った程は、「努力は徒労に終わるぞ」と忠告する。
程はかつての学友と会い、昔話に花を咲かせる。皆から嫌われていた同級生の馬文才は科挙に合格し、順調に出世しているという。一方、優秀だった程は試験での不正が発覚し、生涯科挙から追放され、君子になる道を閉ざされたのだった。
家黙と宝玉は各所に根回しをし、万全の準備を整えて訴訟の列に並ぶが、訴状は却下されてしまう。家黙は、朝廷が地方に送る監察官“巡按御史”に訴えることを思いつき、仁華へ戻る途中、巡按御史がいる厳州府へ立ち寄ることを決める。
2人が省城を発つ日、程が現れ「今は仁華に戻らないほうがいい」と忠告するが、2人は無視して帰路につく。范の配下である鹿飛龍は、手下とともに家黙と宝玉を尾行し、宿駅で寝込みを襲って命を奪おうとする。だがひそかに程が阻止し、2人は難を逃れる。
帥家黙と豊宝玉は、厳州府に滞在していた巡按御史・劉景に訴状を渡す。だが訟師を毛嫌いする劉景は、荘三惕が書いた訴状を気に入らず、追い返そうとする。家黙が書き直す前の訴状を出すと、それを見た劉景は金安知府・黄凝道の意向を理解し、訴えを正式に認める。宝玉は劉がなぜ訴状についていた邸報を重視するのかわからず、首を傾げる。
劉は仁華に戻る2人に同行し、その途中の攬渓県に立ち寄ると、攬渓知県・毛攀鳳に架閣庫を開くよう命じる。そして2人の腹心を家黙につけ、人頭絹布税の裏付けを取るよう指示する。家黙は3日以内に調査を終わらせると宣言する。
焦った毛攀鳳は、程仁清に助けを求める。程は言葉巧みに豊宝玉を誘い、訴状に邸報がつけられていたことを聞き出す。毛知県と程、そして范淵の3人は邸報を読み解き、朝廷が税収を増やす目的で田畑の測量を全国的に実施しようとしていることに気づく。
劉景は訴状についていた邸報を見て朝廷の計画を予想し、穏田の多い奉興で率先して測量を行うことで手柄を立てようと目論んでいるのだ。范淵と毛知県は劉の思惑通りにはさせまいと、劉を豪華な宴に招いてもてなす。
架閣庫で調査に没頭する家黙の前に鹿飛龍が現れ、「証拠を渡さなければ宝玉を殺す」と脅す。やむなく鹿に証拠を渡し、宝玉を助けようとする家黙だったが、鹿は2人を架閣庫に閉じ込めて火を付ける。
燃え盛る炎の中、家黙は過去の記憶が蘇り、父が持っていた書が「絹布全書」だったことを思い出す。拘束を解いた2人は扉を壊してなんとか脱出するが、気を失ってしまう。
宴のさなか、毛知県のもとに架閣庫で火事が起きたという知らせが届く。家黙と宝玉が架閣庫に閉じ込められたと知った劉は、毛知県のしわざだと思い込み、激怒する。
鹿飛龍が起こした火事により、帥家黙と豊宝玉は危うく命を落としかける。程仁清は事実を隠蔽するため、家黙と宝玉が言い争いの末に火事を起こして逃走したかのような筋書きを作り、劉景に報告する。
鹿によって同陽県の山中に運ばれた2人は、隙を見て逃げ出すものの、宝玉が狩猟用のわなで足を怪我して動けなくなってしまう。2人を助けたのは、かつて鹿に借金をして土地を奪われた陳大山と小枝の父娘だった。仁華の土地を失った父娘は、同陽の山奥で荒れ地を開墾して糊口をしのいでいた。
家黙は医者を呼んでもらうため、同陽にある豊家の店舗へ行くが、そこで待ち構えていた捕吏に捕まってしまう。同陽県の知県・鄧思斉は、家黙の話を聞いて同情するが、金安8県の盟約がある以上、解放することはできないと告げる。そして人頭絹布税の調査についても、利益が絡んでいるので反対せざるを得ないと苦しい心の内を明かす。
算術の話で鄧知県と意気投合した家黙は、亡き父が考えた難解な測量術「推歩聚頂」について話す。その方法を使えば、複雑な形状の田でも瞬時に面積を算出できるという。だがその計算方法は帥家黙にもわからず、父・帥敦誠が書いた「絹布全書」に記載があるかもしれない、と。
父が残した書や、両親の死について疑問を抱く家黙を見て、鄧知県は万成県の任主簿なら昔のことを知っているかもしれないと助言し、攬渓へ向かう途中に彼と会えるよう計らうと約束する。
豊宝玉は陳大山と小枝の家に匿われ、重税に苦しむ農民たちの悲惨な暮らしを知る。怪我が回復した宝玉は役人に連行されるが、小枝に玉佩を預け、「事が済んだら取りに来る」と約束する。
豊碧玉は弟の宝玉を助けに行こうとし、程仁清に止められる。程の助言を受け入れ、碧玉は仁華県の方懋珍知県のもとへ。彼の自尊心を利用して言いくるめ、2人を助けるために金安府に知らせてほしいと訴える。
家黙と宝玉は同陽県から攬渓県へ連行される途中、万成県で任意主簿と再会する。任主簿は家黙の父・帥敦誠の旧友だったことを明かすが、「絹布全書」の内容について教えてほしいという家黙に対し、「人頭絹布税の訴えを取り下げれば、私が覚えている書の内容を教える」と取引を持ちかける。家黙は人頭絹布税の間違いを正すほうを選び、取引を断る。
范淵によって捕吏の身分を得た鹿飛龍は、家黙と宝玉を引き取り、山中で殺害しようと企む。だが金安府からの使いが現れ、2人の身柄は仁華県へと引き渡される。
金安府で合同審理が行われることになり、家黙と宝玉は仁華県で拘束される。そこへ家黙の父の旧友だった宋仁が現れ、「父のように己の立場を間違えるな」と家黙を諭し、合同審理では何も言うなと助言する。
金安知府・黄凝道は、攬渓県の架閣庫が放火された事件について、巡按御史の劉景、および攬渓知県の毛攀鳳とともに合同審理を開く。放火の容疑をかけられた帥家黙と豊宝玉は「犯人は鹿飛龍だ」と主張するが、程仁清によって否定される。
だが程が証人として呼んだ架閣庫の老吏が偽証したことが判明し、家黙と宝玉は無罪放免となる。さらに人頭絹布税の計算方法について尋ねられた家黙は、架閣庫の帳簿がなくとも各県の賦役白冊を調べれば税額を割り出せると答える。
記録の提出を渋る毛知県に対し、仁華知県の方懋珍は「帥家黙を支持する」と発言。金安8県の同盟に亀裂が生じることに。
そこへ按察使司の僉事である馬文才が到着し、審理を傍聴したいと申し出る。黄知府と劉巡按は、范淵と親しい馬が人頭絹布税の調査を妨害するのではないかと警戒する。
家黙の父・敦誠の友人だった宋仁は、「この件に関わるな」と家黙を説き伏せようとするが、家黙は考えを変えようとはしなかった。
かつて、敦誠は自身が考えた測量術「推歩聚頂」を使って范家の土地を測量した。范家に与する宋は、敦誠を買収して実際よりも少ない数字を記録させようとしたが、敦誠は聞き入れようとしなかった。
程仁清は過去に遺恨がある馬文才から見下され、敵意をあらわにする。審理が再開され、裁きの場に仁華県と攬渓県の賦役白冊が持ち込まれる。帥家黙は記録から税額を割り出し、課税が不公平だったことを証明する。
黄凝道と劉景は金安府8県で田畑を再測量し、正しい面積に基づいて税を分担するべきだと結論づける。そしてなぜか范淵の意を受けているはずの馬文才も再測量を支持するのだった。
黄知府は不審に思いながらも8県の測量実施を決定、審理を妨害した程仁清に板打ち刑を命じ、県学から追放する。程の処刑の場に現れた馬は、かつて科挙の試験会場で程に不正の罪を着せたのは自分だと告白する。
心身ともに打ちのめされた程は、范淵のもとに運ばれる。范淵は、程がひそかに帥家黙と豊宝玉を架閣庫の火事から助けたことや、豊碧玉に助言して仁華知県・方懋珍のもとへ嘆願に行かせたことを知り、程を見限る。
家黙は、范の手下たちによって痛めつけられた程を家に連れて帰り、傷の手当をする。算術にしか興味を示さない家黙に、妻・雲娘との出会いや、貧しくも穏やかな結婚生活について語る程。しかし程は同級生の馬の策略によって将来を絶たれ、雲娘は病で亡くなったのだった。
一方、豊宝玉は万成県へ向かい、任意主簿に会う。家黙の父・敦誠が書き残した「絹布全書」について聞くためだった。
金安府内で田畑の測量が始まる。金安知府・黄凝道の目的は范淵ら郷紳たちが所有する隠田をあぶり出すことだったが、測量を行う役人たちは范淵の指示に従って隠田を素通りし、代わりに農民たちの畑の面積を過大に記録する。
農民たちは理不尽な仕打ちに憤り、その怒りは測量を実施した劉景と黄凝道に向けられる。それを知った豊宝玉は同陽知県・鄧思斉に抗議しに行くが取り合ってもらえず、程仁清に相談する。話を聞いた程は、すべて范淵と馬文才による陰謀だと見抜く。
范淵の狙いどおり、各県の農民たちは鹿飛龍が流した噂にまどわされて暴徒化し、劉景と黄凝道に抗議するため仁華県衙へ殺到する。その中には陳大山・小枝親子の姿もあった。騒動をまのあたりにした劉景と黄凝道は、そのとき初めて宋仁が范淵の手先であることを知る。
そこへ折よく馬文才が現れ、その場で測量の命令を撤回。自分が金安府の防備を引き継ぐと宣言し、劉景と黄凝道に自粛を命じる。さらに、測量を提唱した帥家黙が元凶であるとして、家黙の斬首を決定する。
馬文才は帥家黙を捕らえ、人心を惑わしたという理由で死刑を命じる。仁華知県・方懋珍は、正式な手続きも踏まずに処刑を断行しようとする馬に抗議する。
一方、豊宝玉と程仁清はかつて家黙の父から「絹布全書」を託された万成主簿・任意を説得し、ついに「絹布全書」を手に入れる。それは20年以上前に金安の郷紳たちが土地測量をごまかした記録だった。そしていずれの不正にも、当時戸房掌案だった宋仁が関与していることが判明する。程は家黙を救うため、「絹布全書」を持って省城へ向かう。
いよいよ家黙の刑が執行されることになり、家黙は刑場に連行される。豊宝玉は時間を稼ぐため、集まった各県の民たちを煽ってわざと騒ぎを起こさせる。さらに「俺も殺せ」と自ら名乗り出て、家黙とともに刑を受けることに。
まさに2人の首が切り落とされようというとき、程が刑場に駆け込んできて処刑を阻止する。そして奉興巡撫・右副都御史の李世達が姿を現す。
巡撫・李世達は、省城に移送された劉景から事情を聞いて仁華に来たという。くしくも李は20年前、帥家黙の父・帥敦誠による横領事件の調査に関わっていた。当時、敦誠は隠田の隠蔽に加担したことを自白するも、賄賂を受け取っただけで横領はしていないと否定。「この件には裏がある、証拠を揃えて出頭する」と約束した数日後に自害していた。
実は李の知らないところで、ともに調査をしていた范淵が密かに敦誠を呼び出し、証拠の帳簿が家にあることや、敦誠が帳簿の内容をすべて暗記していることを聞き出したうえで、薬入りの酒を持ち帰らせていた。
家黙が敦誠の息子だと知った李は、家黙を早く処刑してしまおうとする馬文才らの意見を退け、合議を開くことを決定する。合議には各県の民の代表や、范淵ら各地の郷紳、そして程仁清も招かれる。
李は程から預かった「絹布全書」を上げ、その内容について問題視するが、馬文才らは偽物だと主張。それに対し程は、馬の母親の実家である費家が時価の半値で土地を売ったという記録を取り上げる。
買い手は科挙の試験官・趙好古の甥で、土地売買の翌月に科挙が実施されていることから、程は馬文才を不正合格させるための根回しだったのではと指摘する。事実と判断した李は朝廷に報告すると告げ、馬を即刻退場させる。
さらに、程は宋仁を追い詰め、彼が帥家黙の父母を殺害した犯人だと宣言する。その様子を見ていた帥家黙は、20年前の記憶を取り戻す。
宋にたぶらかされた父・敦誠は、家黙のためにと一時は不正に加担するものの、良心の呵責から手を引くことを決意。そして重税に苦しむ民を救うため、土地測量の改ざんの証拠となる「絹布全書」を提出し、告発しようとしていた。
事件当日、敦誠は范淵からもらった酒を疑うことなく夫婦で飲み、そして2人が眠っている間に、宋が家に侵入し火をつけたのだった。
帥家黙は20年前の記憶を取り戻すと同時に卒倒してしまう。程仁清は、宋仁が帥敦誠を利用して莫大な利益を得た後、手を引こうとする彼に横領の罪を着せて殺害したと断じる。李は宋を退場させると同時に、合議をかき乱したとして程に板打ちの刑を命じる。
程に後を託された豊宝玉は、再度土地を測量して穏田の所有者に税を払わせ、厳しく罰するべきだと主張する。同陽の農民たちも胥吏たちが横暴な振る舞いをしたことを証言し、豊宝玉を後押しする。
さらに、豊宝玉は攬渓知県・毛攀鳳が故意に架閣庫を焼いて自分と家黙を殺そうとしたと言い、証人として自殺したと思われた張老吏を連れてくる。張老吏は毛攀鳳らに命じられて手を貸したことや、「自害しろ」と脅されたことを証言する。
怒りを爆発させた張老吏が毛に襲いかかり、その場は大騒ぎに。そのどさくさに紛れて范淵が「絹布全書」を燃やしてしまい、不正の証拠が消えてしまう。
豊宝玉は范淵こそ不正の大半に関わっている黒幕だと告発する。言い逃れをする范淵に対し、帥家黙は「所有地を測量すれば、魚鱗図冊と合致するかどうかわかる」と測量を提案する。
家黙をあなどった范は、最も測量が難しいとされる仁華の妖田を選ぶ。だがその土地は、かつて父・敦誠が3度も測量し、幼い家黙に「推歩聚頂」の術を教えて面積を計算させた妖田だった。
帥家黙はその土地へ足を運ぶまでもなく、その場で「10畝6分」と答えを出す。その数字が本当であれば、魚鱗図冊に記されている「9畝2分」とは合致せず、実際の面積をごまかしていることになる。
李が配下に命じて土地を測量させると、家黙の言う通り10畝6分であることが判明。焦った范は李を丸め込んでその場を逃れようとするが、失敗する。
帥家黙は「推歩聚頂」の術を使えば10日で仁華の土地をすべて測量できると宣言。農民たちも測量に協力し、家黙を歓迎する。
馬文才は科挙の不正、毛攀鳳は反乱の扇動、宗仁は殺人などの罪で審理されることに。悪事に加担した鹿飛龍は流刑に処される。范淵は土地をすべて没収される。人頭絹布税は仁華県のみ1000両が課され、残りの2530両は范淵の田畑で充当することで決着がついた。
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