WOWOWの連続ドラマ「雨に消えた向日葵」(全5話)についてまとめました。
ある少女失踪事件の真相を追う刑事と、失踪した少女の家族の苦悩と執念の日々を描いたヒューマンミステリー。原作は吉川英梨さんの同名小説。
過去のある出来事に大きな後悔を抱える刑事・奈良健市をムロツヨシさんが、失踪した少女の父・石岡征則を佐藤隆太さんが演じます。終始シリアスなムロさんが新鮮でした。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOW
- 放送時間:2022年7月24日(日)から毎週日曜22:00~ほか
- 原作:吉川英梨『雨に消えた向日葵』
- 脚本:関えり香
- 監督:土方政人/岩田和行
- 音楽:眞鍋昭大
あらすじ
ある豪雨の日、向日葵の咲く田んぼ道で小学5年生の少女、石岡葵(大島美優)が傘1本だけを残し、突然姿を消した。埼玉県警捜査一課の警部補、奈良健市(ムロツヨシ)は失踪の一報を受け現場へ急行。そこには捜索活動に参加する葵の父、征則(佐藤隆太)の姿があった。妻の秋奈(遊井亮子)と離婚調停中で葵たちとは別居していたが、知らせを受けて飛んできたのだという。葵の失踪は誘拐か、事故か、あるいは両親の不仲を理由にした家出か……。
WOWOW公式サイトより
葵の捜索が難航する中、征則ら家族の悲痛な気持ちに向き合う奈良も、妹の真由子(平岩紙)のことで苦悩を抱えていた。真由子は過去に暴漢に襲われて以来心を閉ざし、奈良はその事件を機に刑事を志したのだった。妹を守れなかった後悔を胸に、何としても葵を捜し出したい奈良と、娘の無事を一途に願い続ける家族。情報が錯綜し、家族が焦燥に駆られる中、奈良は執念の捜査で真相に迫る。
原作について
このドラマの原作は、吉川英梨さんのミステリ小説『雨に消えた向日葵』(2019年刊行)です。
登場人物(キャスト)
※一部ネタバレを含みます
捜査関係者
奈良健市(ムロツヨシ)
埼玉県警・刑事部捜査一課の警部補。正義感が強く、上司や同僚からの信頼も厚い。過去に事件に巻き込まれ、トラウマを抱える妹・真由子の存在が奈良を職務に駆り立てる大きな原動力となっている。失踪した少女・葵を見つけ出すため、捜査に奔走する。
奥村悠太(今野浩喜)
坂戸署・刑事課強行班係の巡査部長。古くから知る奈良を尊敬している。奈良の相棒として、少女失踪事件を捜査する。
比留間賢作(堀部圭亮)
埼玉県警・刑事部捜査一課の調査官。少女失踪事件の陣頭指揮を執る。部下の奈良を信頼し支えている。
大前緋沙子(中越典子)
埼玉県警・刑事部捜査一課・継続強行班係。奈良とは警察学校時代の同期。奈良の妹・真由子のことも気に掛けている。
小山啓泰(阪田マサノブ)
埼玉県警・刑事部捜査一課の巡査部長。奈良班のメンバーだが、新人時代に面倒を見ていた奈良には厳しく接する。小児性愛者の浮島を犯人と決めつけ暴力的な尋問を行うなど、暴走しがち。
森川淳一(加治将樹)
埼玉県警・刑事部捜査一課の巡査部長。奈良班のメンバー。アニメオタクで、独自の情報網を捜査に活用する。
古谷栄介(小松利昌)
埼玉県警・刑事部捜査一課の調査官。比留間の後任として、少女失踪事件の捜査本部を指揮する。
呉原信二(坂田聡)
坂戸署・刑事課強行班係長の警部補。所轄の捜査担当として、埼玉県警の奈良、小山、森川らと行動を共にする。
被害者とその家族
石岡葵(大島美優)
石岡家の次女。地元のタウン誌の表紙を飾るなど、美しい少女として知られている。雨が降る夏の日、向日葵の咲く田んぼ道で突然姿を消す。イラストや漫画を描くのが好きで、友人の絵麻と交換日記をしていた。
石岡征則(佐藤隆太)
葵の父。都内の銀行に勤める会社員。妻・秋奈と離婚協議中で家族とは別居していたが、失踪を機にすべてを投げ打ち、娘の捜索に心血を注ぐ。葵が漫画に熱中することに反対していた。
石岡秋奈(遊井亮子)
葵の母。葵が失踪する前、「大雨だから迎えにきてほしい」という連絡を受けるも、池袋にいたため断った。葵の失踪時に中学時代の同級生と会っていたことから、世間から誹謗中傷を受ける。
石岡沙希(米倉れいあ)
葵の姉。中学生。葵が生きていることを信じ、帰りを待ち続ける。学校でいじめにあい、正則と一緒に東京で暮らすことになる。
容疑者
浮島航大(金井勇太)
葵のクラスの担任教師。葵の傘に指紋が付着していたことや、児童ポルノを大量に所有していたことから容疑者となる。
田中晃教(中江翼)
ピアノ教師。葵の交換日記が見つかった車両に乗っていた。征則ら家族と面識はなかったが、消防団員として葵の捜索に協力していた。
岡部正克(田本清嵐)
静岡県警に勤務する警部補。父親は警察庁次長。“夜盗ミルク”というペンネームで少女誘拐を扱った漫画を描いている。
中本郁也(大水洋介)
通称“ナカイク”。夜盗ミルクのファンで、作品のオリジナルグッズを個人的に作っている。事件の前から葵をつけ回していた。
松波紀道(高杉亘)
芸能プロダクションの社長。過去に少女に関わるトラブルを起こしている。タウン誌の表紙を見て、葵をモデルにしないかと何度も石岡家を訪ねていた。
そのほか
奈良真由子(平岩紙)
奈良の妹。18歳のとき性被害に遭い、それ以降トラウマに苦しんでいる。兄の支えを受け、社会復帰しようとするが…。
奈良ふみ代(梅沢昌代)
奈良の母。娘の真由子が過去の事件のことで社会復帰できないことを心配している。
浅見多恵(沢井美優)
東都テレビのディレクター。ワイドショー班に所属しているが、元々報道志望で葵の失踪事件を取材する。征則にテレビの生番組に出演しないかと持ちかける。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
2020年7月2日。埼玉県坂戸市で、小学5年生の少女・石岡葵(大島美優)が学校帰りに行方不明になる。失踪した通学路は畑を突っ切る一本道で、周辺に民家はなかった。
葵の両親は離婚調停中で、親権を巡って争っていた。母・秋奈(遊井亮子)は池袋に買い物に出かけており、葵からの「大雨なので迎えにきてほしい」という頼みを断っていた。都内在住の葵の父・石岡征則(佐藤隆太)は連絡を受けて駆けつけ、必死に葵を探す。
埼玉県警捜査一課の警部補・奈良健市(ムロツヨシ)は現場に急行し、葵が一か月前に不審な男に写真を撮られ車に連れ込まれそうになっていたことや、地元タウン誌の表紙を飾っていたことを知る。
失踪から24時間が経過。犯人から身代金の要求がないことから、警察は捜査本部を立ち上げ公開捜査に踏み切る。石岡のもとにはマスコミが殺到し、容赦ない質問が浴びせられる。
発見された葵の傘から担任の浮島航大(金井勇太)の指紋が検出される。浮島の犯行と睨んだ小山(阪田マサノブ)は独断で彼を尾行し、浮島が川に児童ポルノ関連の雑誌やDVDを捨てるところを目撃。すぐさま浮島を連行して尋問するが、浮島は犯行を否定し、家宅捜索でも証拠が見つからない。
葵が持っていた友人との交換日記が、失踪当日の夜に坂戸駅を出た電車の中で発見される。その車両に乗っていたピアノ教師・田中晃教(中江翼)は、消防団員として葵の捜索に協力していた。
奈良の使命感の裏側には、妹の真由子(平岩紙)に関する後悔の念があった。真由子は学生時代に見知らぬ男に襲われ、それ以来心を閉ざしていた。そんな奈良のもとに、高麗川で女性の遺体が見つかったという知らせが届き…。
川で見つかった遺体は葵ではなかった。浮島は児童ポルノ所持容疑で送検されるも、葵の失踪には関与していないと思われた。奈良は相棒の奥村(今野浩喜)と、通学路で葵の写真を撮影していたという不審な男を追い始める。
葵の失踪から1か月。男が持っていたスマホケースに描かれたキャラクターは、“夜盗ミルク”という人物が描いた同人誌のキャラクターであることが判明。夜盗ミルクの正体は警察官僚を父親に持つキャリア警察官・岡部正克(田本清嵐)だった。奈良は岡部を脅し、“ナカイク”と呼ばれる男が作品のオリジナルグッズを作っていることを聞き出す。
葵の失踪から2か月。葵の写真を撮り連れ去ろうとした男・中本郁也(大水洋介)が見つかる。中本は葵の写真を撮ったことは認めるものの、事件への関与は否定。失踪当日にアリバイがあることも確認された。
中本のスマホを分析すると、ダークウェブに入っていたことが判明する。中本は葵の情報をサイトに流し、自分の代わりに葵を誰かに襲わせようとした、と明かす。しかしサイバー犯罪対策課をもってしてもサイトの管理者や閲覧者を追うことはできなかった。
数か月後、比留間(堀部圭亮)の後任として古谷栄介(小松利昌)が着任する。古谷は既に葵が殺されて遺棄されている可能性が高いと考え、殺人死体遺棄に重点を置いて捜査を展開すると宣言する。葵はきっとどこかで生きていると信じる奈良だったが、命令に従い遺体と遺留品の捜索に加わる。
葵の失踪から6か月、ついに彼女のランドセルの一部が見つかる。
ゴルフ場の池の中から、切り刻まれた葵のランドセルが見つかる。細かく切り刻んだのは、ゴルフバッグに隠してプレー中に捨てるためと思われた。奈良たちはゴルフ場を捜索するも、ランドセル以外の所持品は見つからない。
ゴルフ場の利用客の中には、かつて葵をしつこくスカウトしに来たという芸能プロダクションの社長・松波紀道(高杉亘)がいたが、彼には失踪当日のアリバイがあった。
征則と秋奈は過去の自分たちの行いを反省し、もう一度やり直すことを決める。そんな中、葵の姉・沙希は警察を装った人物からの電話を受け、48万円を騙し取られてしまう。正則が担当していた顧客が融資を断られて倒産したのを逆恨みし、石岡家の情報を闇サイトに売ったことが原因だった。
葵が失踪して1年。正則は銀行を辞め、川越の知り合いの会社で働きながら葵の捜索を続けようと決意する。奈良は妹・真由子が過去の事件から立ち直れずにもがく姿に心を痛め、同じ被害者家族である正則らの心情にも寄り添う。
ゴルフ場の利用客の中でただひとり、身元が判明しない謎の人物“真壁巧”が浮上。だが手がかりは一切なく、「額に傷があった」という目撃情報のみだった。奈良たちは“真壁巧”を捜すも見つからず、古谷調査官から捜査本部の解散を告げられる。
征則は東都テレビのディレクター・浅見多恵(沢井美優)の訪問を受け、行方不明者を捜す公開生番組に出演しないかと打診される。
征則たち家族は葵の捜索を続けるものの、新しい情報は入ってこない。事件が忘れ去られてしまうことを危惧した征則は、テレビの生放送に出演して情報提供を訴えることに。放送後、石岡家や警察に数々の情報が寄せられるが、どれも有力な情報ではなかった。
そんな中、征則は失踪被害者家族会の代表・矢島と出会い、海外では牛乳パックに失踪者の写真を載せるのが一般的だという情報を得る。さっそく牛乳の製造会社を訪れる征則だったが、印象が悪いと受け付けてもらえなかった。
奈良は捜査を引き継いだ継続強行犯係をひんぱんに訪れ、もう一度徹底的に捜査するようハッパをかける。真由子を助けることができなかったという後悔と無力感が、奈良を突き動かしていた。
未だ過去の事件から逃れられない真由子は、奈良が休みの日まで働いていることを知り、トラウマと向き合うべく被害者の会を訪れる。
2022年1月。牛乳パックに葵のイラストが印刷され、テレビで取り上げられるほど話題になる。数か月後、下新田の駅前郵便局で、書き損じて持って来られた年賀葉書の中に同じ絵が描かれていたものがあった、という情報が入る。
葉書は既に郵便局には残っておらず、防犯カメラの映像も消去され、持ち込んだ人物を特定することはできなかった。奈良はその葉書が葵からのSOSかもしれないと考え、配送センターに送られた葉書を見つけ出すため、人員を割いてほしいと古谷に訴える。
古谷の許可を得て、奈良のもとに集結する捜査員たち。2000万枚ものはがきの中から、たった1枚を見つけるべく執念の大捜索が始まる。
2か月が経過し、はがきの残りは72万枚となるが、犬のイラストが描かれたはがきは未だ見つからない。焦った奈良はもう一度郵便局を訪ね、応対した職員に何か気付いたことがなかったか尋ねる。すると、はがきを持ち込んだ人物は右手でボールペンをカチカチとならしながら、左手で鍵盤を叩くような真似をしていたという。
奈良は初動捜査で浮上したピアノ教師・田中晃教が同じような動作をしていたことを思い出し、隣家の住民に話を聞きにいく。田中の写真を見せてもらうと、額に傷があった。
同じ頃、はがきの捜査をしていた奥村が残り一箱の中から犬のイラストが描かれたはがきを発見。はがきには田中の名前と住所が印刷されており、検出された指紋は切り刻まれたランドセルから検出された指紋と一致した。
2022年4月2日、再び捜査本部が設置される。奈良たちは令状がおりるのを待って、外出中の田中を確保。南京錠を壊して裏口の扉を開け、中から飛び出してきた葵を保護する。連絡を受けた征則たち家族は病院に駆けつけ、1年9か月ぶりに葵と再会する。
葵は失踪当日、車に乗った田中から父親が事故にあったと声をかけられ、車のトランクに放り込まれたのだった。その後は田中の家に閉じ込められ、逃げることもできずにいたが、テレビで牛乳パックにプリントされた自分の絵を見て家族が捜していることを知り、田中の目を盗んで年賀はがきに犬の絵を描いたという。
犯人の田中は、葵をほかのロリコンの男たちから守りたかったと供述。葵は性的被害には遭っておらず、その後無事に退院して帰宅し、家族とともに13歳の誕生日を祝う。
2022年7月2日。奈良は葵が失踪した道で征則と会い、感謝の言葉を伝えられる。真由子は家を出て長野へ行くことを決め、「もう1人で大丈夫」と奈良に告げて旅立つ。そんな真由子の背中を、奈良は泣きながら見送る。
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