海外ドラマ「クイズ~100万ポンドを夢見た男~ 」(全3話)についてまとめました。
全英ITV系で放送されている「Who Wants to Be a Millionaire?」(日本版は2000~07年に「クイズ$ミリオネア」として放送)の誕生の裏側から、本国イギリス版で起きた賞金100万ポンドをめぐる不正事件の顛末までを実話に基づいて再現したドラマ。
2020年4月に英ITVで放送されました。IMDbの評価は7.4です。
クイズ番組の司会者クリス・タラント役には、「プロディガル・サン 殺人鬼の系譜」でシリアルキラーを演じているマイケル・シーンが扮します。
監督は映画「クィーン」「ヴィクトリア女王 最期の秘密」などのS・フリアーズ。
Contents
作品概要
- 放送局:WOWOWプライム
- 放送時間:2020年1月3日(日)18:00~一挙放送
- 製作国:イギリス(2020年)
- 原題:Quiz
- 原作:Bob Woffinden/James Plaskett『Bad Show: The Quiz, The Cough, The Millionaire Major』
- 脚本:ジェームズ・グレアム
- 監督:スティーヴン・フリアーズ
- 製作総指揮:アンディ・ハリース/ウィリアム・ヴィレッジほか
あらすじ
2003年、ロンドン。TV番組「目指せ!ミリオネア」に出場し、賞金100万ポンドを不正に獲得した罪に問われた、陸軍少佐チャールズとその妻ダイアナ、大学講師ウィトックの裁判が始まる。
WOWOW公式サイトより
1997年、TV制作会社セラドールのCEOポール・スミスは、これまでにないクイズ番組を作ろうとITVの制作のトップ、リディメントに企画を提案。自宅を抵当に入れてまで実現させたクイズ番組「目指せ!ミリオネア」は、高視聴率を獲得し、出演応募の電話が殺到する。クイズ好きのダイアナとその兄エイドリアンはすぐに番組に夢中になるが、クイズにそれほど興味がないチャールズはそれに付き合いながら、冷めた目で番組を見ていた。エイドリアンは何度も電話をかけ番組に出場を果たすが、予選の早押しクイズで敗退してしまう。しかし、ほかの出場者から互いに情報を交換し合うクイズ攻略組織“シンジケート”があることを知らされて……。
予告動画
登場人物(キャスト)
チャールズ・イングラム(マシュー・マクファディン/声:宮本充)
陸軍少佐。クイズが苦手で「目指せ!ミリオネア」にもまったく興味がなかったが、妻ダイアナの頼みで出場することに。誰もが驚く活躍ぶりで賞金100万ポンドを手に入れるが、のちに不正をしたとして逮捕される。
ダイアナ・イングラム(ショーン・クリフォード/声:加藤美佐)
チャールズの妻。クイズ好きで、新しく始まったクイズ番組「目指せ!ミリオネア」に夢中になる。途中敗退した兄のために番組に出場し、3万2000ポンドを手に入れる。のちにチャールズとともに逮捕される。
エイドリアン・ポロック(トリスタン・グラヴェル/声:丸山壮史)
ダイアナの兄。多額の借金を抱えている。クイズ番組「目指せ!ミリオネア」の賞金100万ポンドを手に入れようと、クイズ攻略の地下組織“シンジケート”に接触。4回出場するが、途中で敗退してしまう。
パディ・スプーナー(Jerry Killick)
クイズ攻略の地下組織“シンジケート”を仕切る男。さまざまな手段を駆使して、何百人もの“客”を「目指せ!ミリオネア」に出場させる。
テクウェン・ウィトック(マイケル・ジブソン/声:魚建)
大学講師。クイズマニアで、過去に何度かクイズ番組に出場している。チャールズが「目指せ!ミリオネア」に出場した際、ダイアナと共謀して挑戦者席から“咳”でチャールズに答えを教えていたとして、逮捕される。
ポール・スミス(マーク・ボナー/声:村治学)
制作会社セラドールのCEO。クイズ番組「目指せ!ミリオネア」を企画し、ITVに売り込む。番組が高視聴率を獲得して喜ぶが、ブリッグスから「何かおかしい」と聞かされ、調査に乗り出す。
デヴィッド・ブリッグス(エリオット・レヴィ/声:斎藤寛仁)
制作会社セラドールの社員。ポールとともに「目指せ!ミリオネア」の企画・制作に関わる。番組に出場する挑戦者たちの雰囲気が似通っていることに気づき、不正を疑い始める。
デヴィッド・リディメント(リスタード・クーパー/声:菊池康弘)
ITVネットワーク社の制作のトップ。ポールからの提案を受け、斬新なクイズ番組「目指せ!ミリオネア」を帯番組として放送することを決定する。
クローディア・ローゼンクランツ(アシュリング・ビー/声:小林さとみ)
ITVネットワーク社の社員。
クリス・タラント(マイケル・シーン/声:関智一)
クイズ番組「目指せ!ミリオネア」の司会者。
ソニア・ウッドリー(ヘレン・マックロリー/声:渡辺ゆかり)
チャールズとダイアナが雇った弁護士。裁判で証拠として提出された収録のテープが意図的に編集されていることを指摘し、番組スタッフによる決めつけだと反論。偶然が重なっただけで、不正はなかったと主張する。
各話のあらすじ(ネタバレ有)
1997年10月。制作会社セラドールのCEOポール・スミスは、ITVの制作トップであるデヴィッド・リディメントに新たなクイズ番組の企画を提案。賞金100万ポンドを掲げる「目指せ!ミリオネア」の放送が始まる。
番組はドラマチックな演出が受けて高視聴率を獲得し、出演応募の電話が殺到。ウィルトシャー州アップアボンに住むクイズ好きのダイアナも、たちまち夢中になる。ダイアナは陸軍少佐の夫チャールズと、娘3人とで穏やかに暮らしていた。
ダイアナの兄エイドリアンはさっそく番組に応募。出場権を得るが、予選の早押し並べ替えクイズで負けてしまう。クイズ攻略の地下組織“シンジケート”の存在を知ったエイドリアンは、パディ・スプーナーと接触。クイズに勝つ裏技を教わる。
エイドリアンは何度も出場権を得るが、早押し並べ替えクイズで勝つことができず、センターシートに座れない。そこで早押しの練習機を自作し、猛特訓を重ねる。やがて4回目の挑戦で予選を勝ち抜き、念願のセンターシートに座る。だがテレフォンで父のアーサーが怪盗を間違え、敗退。賞金3万2000ポンドを受け取る。
実はエイドリアンには多額の借金があった。事情を打ち明けられたダイアナは、エイドリアンのために賞金を得ようと番組に出場。しかし兄と同じ3万2000ポンドで終了する。その頃、ポールと部下のブリッグスは、出場者がみな似通っていることに気づき、「何か裏がある」と不正に感づき始める。
エイドリアンは“シンジケート”の連絡先をダイアナに渡して姿を消す。ダイアナは乗り気ではない夫チャールズを説得し、番組に出場させる。
2001年9月9日、チャールズは番組に出場することになり、スタジオで収録に参加。ダイアナと兄エイドリアンもスタジオに行く。
ブリッグスはチャールズの妻や義理の兄が番組に出場していたことを知って警戒するが、リハーサル時の様子から彼が勝ち抜くのは無理だと判断する。
しかし本番ではチャールズが予選を制し、センターシートに座ることに。チャールズはライフラインを2つ使い、かろうじて勝ち残る。その日の収録が終わった後、ダイアナは明日の出場者の中に知り合いの大学講師テクウェン・ウィトックがいることを知り、彼に電話をかける。
翌日、チャールズは昨日の弱腰な態度から一転、果敢に責める戦略を採る。何の根拠もない解答で次々と問題をクリアしていく彼を見て違和感を覚えたブリッグスは、「明らかに何か起きている」とポールに異変を伝える。
周りのスタッフも何かがおかしいと感じ始め、スタッフのひとりがテクウェンの“咳”が合図になっていることに気づく。最後の問題に正解したチャールズは見事100万ポンドの賞金を手にしてスタジオを後にするが、ポールとブリッグスは不正を疑う。
翌朝、スタッフとともに映像を検証したポールは、警察に通報。ポールはチャールズにその旨を伝え、収録を放送しないこと、賞金の小切手を承認しないことを告げる。
チャールズとダイアナは局の対応に異議を唱えるが、特別捜査班のサム・ファーガソン巡査部長が家に押しかけてきて、二人はその場で逮捕される。
2001年9月。不正の疑いで逮捕されたチャールズとダイアナは、潔白を主張。テクウェン・ウィトックとはただのファン仲間で、違法なことは何もしていないと反論する。2人の逮捕は世界中のニュースとなり、「咳の少佐」として有名になったチャールズは休職を余儀なくされる。ダイアナや子供たちも嫌がらせを受ける。
裁判で争うことを決めた2人は、優秀な弁護士ソニアを雇う。ソニアはウィトックに持病があり咳をコントロールできなかったことや、証拠として提出された収録のテープが意図的に編集されたものだと反論する。
ポールはネットの掲示板でパディ・スプーナーとシンジケートの存在を知る。パディと会ったポールは、彼が番組の盲点を突く“裏技”を駆使し、これまでに何百人もの“客”を出場させたと知って衝撃を受ける。だがチャールズとダイアナ夫妻の話になると、スプーナーは「彼らは俺の客じゃない」と断言する。
裁判の証言台に立ったポールは「彼が不正を働いたことは確かだ」と主張。それに対しソニアは、収録中にスタッフたちが「怪しい」と内輪で話していたことを挙げ、彼らが思い込みによって現実を歪めた可能性があると反論する。
ウィトック、ダイアナ、チャールズは有罪となり、懲役1年6か月、執行猶予2年の判決を言い渡される。その後、チャールズとダイアナは数々の取材を受けることに。ドキュメンタリー「咳の少佐」はITVの視聴率新記録を達成し、ポールやリディメントたちは大喜びする。
夫妻は現在も無実を訴え続け、評決を覆すために控訴する活動を続けている。
感想(ネタバレ有)
意図的に盛り込まれた怪しい伏線
まんまと騙されました~!
チャールズとダイアナ、途中まで完全にクロだと思ってました。最後には、2人がどのようにしてクイズを攻略し、まんまと100万ポンドを手に入れたのか、その不正の詳細がつまびらかになるのだろう、と。
でもそうじゃなかったんですね。このドラマは、2人がどのような経緯で不正を疑われ、逮捕に至ったかを描いたものだったんですね。
ドラマの作り方がうまいと思ったのは、視聴者を番組スタッフと同じ目線に立たせて、彼らが当時チャールズたちに抱いたのと同じ疑心を視聴者の心に植え付けたことです。
序盤から意図的に盛り込まれていた“怪しい”伏線が効果的でした。それらによって、わたしは「無意識のうちにそのストーリーに沿って現実を歪めていき、一致させ」てしまいました。
でも振り返ってみると、彼らが「不正をした」と確実にわかるシーンは、ひとつもないんですよね。
チャールズとダイアナは有罪判決を受けましたが、現在も無実を訴え続けていて、真相は誰にもわかりません。この事件の真偽は別として。
弁護士のソニアが裁判で指摘していた「記憶の塗り替え」や「思い込みによる取捨選択」は、日常生活においても起こりえること。注意しなきゃいけないなぁと思いました。
クイズが好きなイギリス人
今回、イギリス人がクイズ好きという事実を初めて知りました。クイズ攻略の地下組織“シンジケート”とか、ちょっと信じがたくて笑っちゃったんですけど、番組制作者にしてみれば恐怖ですよね。
スタッフのブリッグスが「最近、挑戦者の雰囲気が似通っている」と気づくシーンなんて、ある意味ホラーでした。
余談ですが、わたしは普段あまりクイズ番組を見ません。「クイズ$ミリオネア」も1、2回しか見た記憶がないなぁ。なのでクイズに関しては、チャールズの立場にいちばん共感できたかも。